事例紹介
ケース紹介
共有物分割請求の調停事例
海老名市にお住まいの女性から収益不動産の共有物分割請求事件の相談がありました。
もともとは相続財産であった一棟貸しのアパート土地・建物が対象物件です。
相続時に共有としており、相談者が収益を管理、共有持分に応じて分配し続けていた物件でした。
共有者の相続
もともとは、相続の際に遺産分割協議がされ、兄弟姉妹による共有となっていました。
しかし、そのうちの一人が亡くなってしまいます。
兄弟の子が、この共有持分を単独相続し、紛争状態となります。
このように、共有状態の代替わりにより、紛争が勃発することはよくあります。
遺産分割時の事情などを知らない、甥っ子、姪っ子が登場し、法的には共有持分があるため、収益の分配方法、管理状況等の情報開示や改善方法を求める、そのような中で話し合いが進まないと、共有物分割請求をおこない、共有持分を現金化しようとする動きです。
もちろん、代替わり前の兄弟姉妹間での紛争もあるのですが、その子に権利が移ったときに紛争化する方が多いという印象です。甥っ子、姪っ子同士の次の代での紛争というケースも出てきています。それぞれが相続となると、権利者が複数いて、分配もしにくくなっていくという事情があります。
このような事情があるため、相続の遺産分割協議時には、なるべく共有状態は避けた方が良いというのが弁護士の意見です。ただ、実際には、相続財産がほとんど不動産しかなく、売却以外に分割できない、また、タイミング的にも売却がしにくいというケースもあり、共有という解決しかないことも多いです。
共有物分割請求の狙い
このような共有者間で紛争が起きた場合、共有物分割請求をすることができます。
共有物分割請求の狙いとしては、共有状態の解消です。
その奥にある目的は、2パターン。
自分の共有持分を金銭化したいというパターンが一つ。
もうひとつは、自分が不動産全体を取得したいというパターンです。
後者の場合には、他の共有者の共有持分を買い取りたいという動きとなります。
共有物分割請求の手続の選択
共有物分割請求については、その手法にいくつかあります。
交渉を持ちかけ応じてもらえるのであれば、これが一番早いです。
逆に、共有者間での紛争が激化しており、交渉での解決見込みがないような場合には、裁判手続きを選択することも多いです。裁判所への訴えの方法もいくつかあります。
共有持分を現金に換えたいという場合には、共有物全体を競売にしたうえで共有持分による分配をするよう求めるということも考えられます。
また、全面的価額賠償という選択肢もあります。
裁判所への訴えが競売であったとしても、裁判所が突然共有不動産を売ることはほぼなく、通常は、裁判所で和解による解決ができないか検討していくことになります。
そのなかで、鑑定をすることもあります。
このような交渉と裁判の間の手続として、民事調停の申立もあります。民事調停は、裁判所の調停員が間に入って話し合いによる解決をする手続です。
相手方が完全に拒絶するような場合には、結局決裂してしまい調停は不成立となりますが、相続から始まったような共有関係の解消では、親族関係ということもあり、調停手続きを試みることも多いです。
共有物分割調停の申立
本件では、相手方に弁護士が付き、相談者らに対して、共有持分を買い取りたいという話がされました。
共有者間では、お互いに言い分があり、感情的な対立となっていました。相手方の弁護士が間に入ったものの、相手方代理人という立場のため、不信感を強く持っているという状態でした。
相手方の態度も原因で、交渉は進まず、相手方から共有物分割調停の申立がされました。
その段階で、調停の代理人になって欲しいとの依頼がありました。
調停期日外での交渉
共有物分割請求事件での主な争点は、不動産の評価額と分け方です。
調停員や裁判所は、これを分けて考えたがる傾向にあります。
つまり、どう分けるかについて決める(誰が所有するかを決める)、その後に価格調整という手順を踏みたがります。
離婚調停なども、まず離婚の意思があるか確認する、その後に条件調整という手順が取られることが多いです。
そもそも、離婚しないなら条件調整をしても無駄であるという考えが前提になっています。
しかし、実際には、このように分けて考えられるものではなく、条件次第で離婚しても良いと考える人も多くいます。このような意思を伝えて、それに従って、話し合いを進めてくれればよいのですが、型通りの進め方をしてくる調停員も多いのです。
今回のケースでも、相談者は、金額によっては共有持分を譲渡しても良いという一方で、金額によっては自分たちが共有持分を買い取りたいという意向がありました。
これに対し、相手は共有持分を譲渡する考えはありませんでした。
このような構造だったので、相談者が納得できる金額で、相手が買い取れるかどうかがポイントとなる事件でした。
当方では、調停期日前に、不動産の評価額を検討。
収益物件ですので、 収益還元法による評価額を確認するなどしました。また、不動産会社へのヒアリング等も済ませ、評価の妥当性を確認していました。
ところが、調停申立書では、具体的な評価額の記載がなかったため、相手方が考えている評価額、買取価格を確認する必要がありました。
そこで、調停期日前に相手方代理人に対して、これらの点を打診したものの、まだそこまで詰めていないという状態でした。
双方に弁護士がついている場合には、このように調停期日前に交渉をするなど、期日外で交渉を進めることもあります。
調停期日は、1,2ヶ月に1回しか入らないため、解決までに時間がかかります。そのため、争点が明確な場合には、調停期日外で交渉したり、双方で情報提供をするのが望ましいことも多いです。
調停期日への関係者の出席
調停期日外での交渉がうまく進められない場合には、裁判所での調停期日で話し合うしかありません。
調停期日は、通常、申立人側から事情を聞かれ、その後に相手方(申し立てられた側)が調停室に呼ばれ、事情や意向を聞かれるという流れになります。調停室では、どちらかの当事者だけが入ります。入れ替わる形です。弁護士などの代理人は同席しますが、その他の人は入れません。
今回のケースでは、相談者は高齢で、交渉時には、相談者のお子様が話をしていたので、調停期日では利害関係人として参加希望を出したのですが、相手方代理人がこれを断ったため、期日には参加できませんでした。
交渉などでは、関係者が増えると意見にバラツキがでて話がまとまりにくくなるリスクはあります。
一方で、交渉の場に出てくる当事者が実質的な権限者ではなく、バックに意思決定権者がいるような場合には、意思決定権者の参加を促した方が話はスムーズに進みます。
当方としては、そのような構造を主張したのですが、形式論を重視され、参加はできなかっため、何らかの提案がされても、持ち帰って検討という対応となりました。かえって解決までに時間がかかったことになります。
また、頼りにしていたお子様の出席を拒絶されたことで、感情的な対立が高まってしまったところもありました。
共有物の売買契約、決済
結局、調停期日を複数回重ねたところで、相手方代理人から話が進まないので、期日外で交渉したいという申し入れがあり、期日外交渉で進めることとなりました。
何度かの価格交渉の結果、こちらの納得する価格での共有持分の売却が決まりました。
相手方にて融資を受けることとなったので、売買契約日をもうけて売買契約の締結、その後、融資審査がおりた後に、銀行での決済という流れで進めることとなりました。
決済日に、売却代金を受領、登記移転に必要な書類を引き渡しという流れです。
感情的な対立もあり、他に関連する紛争もありましたが、和解による解決ということで、他の紛争も含めての清算条項を入れて解決しました。
残務の精算も済ませて、調停は取り下げられ、事件解決となっています。
本件のような事件では、最終的に調停の場で決済はしづらいことから、いずれどこかの段階で、調停期日外での話を進める必要があったものと思われます。
感情的な事件では、感情を落ち着かせるために時間をかけることもあるのですが、もう少しスムーズに進めることができたのではないかとも感じた事件です。
共有物分割紛争では、このような感情面の負担もあります。
代理人に弁護士をつけることで多少は減りますが、そのような負担すら嫌だという場合には、共有持分のみ処分するという方法もあります。昔は、共有持分だけで買ってくれる人はほとんどいなかったのですが、最近は、共有持分の処分を取り扱うという不動産業者も増えてきています。
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共有物分割でお困りの方は、ぜひご相談ください。