事例紹介
ケース紹介
不当請求に対する内容証明の事例
「売れたら買い戻す」と言われて山林や原野を買ったものの、約束どおりに買戻しが行われないという原野商法の二次被害は今も続いています。
この記事では、典型的な手口、業者が履行しない理由、買戻しを求める法的根拠、回収を確実にするための実務上の工夫まで、解決事例を交えて解説します。
「売れたら買い戻す」と言われて買った山林・原野
「以前に買った山林を高く売ってあげる、その代わりに別の土地を買ってほしい」
「売却できなければ当社が買い戻す」
このように勧誘されて、地方の山林や原野を高額で購入してしまったというご相談が後を絶ちません。
原野商法とは
「原野商法」とは、ほとんど価値のない山林・原野などの土地を、「近くに新幹線が通る」「リゾート開発が予定されている」「将来必ず値上がりする」などといった虚偽・誇大な説明によって、相場より大幅に高い金額で売りつける商法をいいます。
昭和40年代から50年代にかけて社会問題となりましたが、現在でも形を変えて被害が続いています。
特に近年問題となっているのが、過去に原野商法の被害に遭った方を狙い撃ちにする「二次被害型」の手口です。
被害者リストが業者間で出回っており、「持っている土地を売ってあげる」と言葉巧みに近づいてくる新たな業者によって、再び被害に遭うケースが多発しています。

二次被害の典型的な手口
原野商法の二次被害は、概ね次のような流れで進行します。
・接触
過去に山林等を購入した高齢者宅に、不動産業者を名乗る者から電話・訪問。
「お持ちの土地を高く売却できる買主が見つかった」と持ちかける。
・抱き合わせ提案
「ただし、当社が新たに紹介する別の土地を購入していただければ、所有地もあわせて売却する」と、新たな土地の購入を強く勧める。
・買戻し約束
新規購入土地について「もし期限までに売れなければ、当社が責任を持って同じ価格で買い戻す」
「絶対に損はさせない」と説明する。
・履行拒絶
期限を迎えても土地は売却されず、買戻しの約束も「経営が苦しい」「もう少し待ってほしい」などと先延ばしされ、結局履行されない。

この手口の特徴は、業者が「買戻し」を約束することで購入の決断を後押しする点にあります。
買い手としては、「最悪でも元の金額が戻ってくる」と信じて契約に至るため、買戻し約束は契約の重要な前提となっています。

業者側が買戻しに応じない理由
買戻し約束は、業者の経営状況や販売実態を考えると、最初から守るつもりがないケースも少なくありません。
(1)販売価格と実勢価格に大きな乖離がある
業者が販売する地方の山林・原野は、登記簿上は広大な面積を有するものの、実勢価格は数万円から数十万円程度にすぎないものが大半です。
これを数百万円?1,000万円超で販売しているため、業者が約束どおりに買い戻すと多額の損失を被ります。
(2)業者の体力が乏しい
こうした商法を行う業者は、規模が小さく、現実に買戻し代金を支払う資力に乏しいケースが多くみられます。結果として、業者は履行を引き延ばし、最終的には廃業・破産に追い込まれることもあります。
(3)契約書上の書きぶりがあいまいなことがある
業者は、後で逃げ道を作るために「努力する」「協力する」などと、義務であることをぼかした文言で契約書を作成することがあります。買戻しを明確に約束したかどうかを巡って争いになりやすい点に注意が必要です。

買戻しを求める法的根拠
(1)買戻し合意の効力
業者と買い手との間で、「期限までに売却できなければ業者が同額で買い戻す」という合意が成立していれば、これは一種の再売買予約または停止条件付売買契約として、契約として有効に成立します。
合意が、媒介契約書・覚書・メール・録音などの形で残っていれば、強力な証拠となります。仮に書面が無くとも、業者担当者とのやりとりや状況証拠から合意の成立を立証できる場合があります。

(2)売買代金の返還と登記の引取り
買戻し合意が認められれば、買い手は業者に対して、①売買代金(買戻し代金)の支払いを求めることができます。
これに加えて、所有権の移転と引き換えに、業者に対して②所有権移転登記手続(登記の引取り)を請求することが可能です(物権変動的登記請求権)。

解決までのステップ
・契約書・関連資料の確認と整理
売買契約書、媒介契約書、覚書、業者担当者とのやりとり(手紙・メール・録音)、振込記録などをすべて整理します。買戻し約束の根拠となる文言・発言を特定することが重要です。
・業者の所在・資力の調査
登記情報・財務情報をもとに、業者の現状(営業状況・所有不動産・差押えの有無等)を調査します。回収可能性を見極めるための重要な作業です。
・内容証明郵便による請求
買戻し代金の支払いと所有権移転登記の引取りを求める内容証明郵便を発送し、業者に対して履行を求めます。任意で応じれば、短期間で解決できることもあります。
・訴訟提起(売買代金等請求訴訟)
任意の交渉で進展がない場合、裁判所に対して、買戻し代金の支払いと所有権移転登記手続を求める訴訟を提起します。
・和解・公正証書の作成と分割回収
裁判の中で業者の資力に応じて分割払いの和解を成立させたり、強制執行受諾文言付の公正証書を作成することで、不履行時には直ちに強制執行できる体制を整えます。担保(抵当権・連帯保証)を取ることも重要です。

回収を確実にするためのポイント
原野商法に関わる業者は、判決を得ても任意に支払わないことが多く、「勝訴判決を得ること」と「実際に回収すること」は別の問題です。
確実な回収のためには、以下のような工夫が重要となります。
連帯保証人を立てさせる……法人の代表者個人を連帯保証人にすることで、法人が支払えない場合でも個人資産から回収できる余地を残します。
担保(抵当権)の設定……業者が所有する不動産に抵当権を設定し、不履行時には競売により回収できる状態を確保します。
強制執行受諾文言付公正証書の作成……和解内容を公正証書化することで、不履行時には訴訟を経ずに直ちに強制執行に着手できます。
期限の利益喪失条項……分割払いの場合、一定額以上滞納した場合に残額全額が一括請求できる条項を入れます。

解決事例 山林の売買代金約1,000万円を全額回収
ご高齢の依頼者は、過去に複数の不動産業者から繰り返し山林・原野の購入を勧誘され、数十回に及ぶ購入・売却を繰り返してきた経歴のある方でした。
今回問題となった取引でも、業者から「お持ちの土地を高値で売却するので、その代わり当社の保有する地方の山林を購入してほしい」と提案され、約1,000万円で山林を購入しました。
その際、業者からは「一定の期限までに当社で売却できなければ、同じ価格で当社が買い戻す」との約束があり、後日締結した媒介契約書にも買戻しの趣旨の条項が盛り込まれていました。
しかし、買戻し期限を経過しても山林は売却されず、業者は買戻しを履行しません。依頼者は、自ら業者に連絡をしても言い逃れを繰り返されるばかりで、らちが明かない状況でした。

当事務所の対応
当事務所は、まず内容証明郵便により業者に対して買戻し代金の支払いと所有権移転登記の引取りを請求しました。
業者側に代理人弁護士が就任しましたが、その後代理人が辞任するなど対応が二転三転しました。
任意交渉の中で、媒介契約書記載の買戻し条項、業者担当者とのやりとり、過去の取引経緯などを総合的に主張・立証し、買戻し合意の成立を明確にしました。あわせて、業者が所有する不動産の調査・査定も行い、相手方の資力・回収可能性も把握したうえで交渉に臨みました。

和解と回収方法の工夫
業者の資力に配慮しつつも回収を確実にするため、以下を内容とする和解を成立させ、強制執行受諾文言付の公正証書として作成しました。
業者が買戻し代金として約1,000万円を、初回のみ少額・以降は毎月一定額の分割払いで支払う
業者代表者個人が支払義務について連帯保証する
業者の所有する不動産に、買戻し代金債務を担保する抵当権を設定する
支払を怠り、滞納額が一定金額に達した場合は当然に期限の利益を喪失し、残額一括+年10%の遅延損害金を支払う
業者が宅建業の登録を抹消する場合には、事前通知する義務を課す
約1年半の分割払いの合意までしかできず、業者倒産リスクはあったものの、最終的には全額回収ができました。

解決のポイント
媒介契約書中の買戻し条項を中心に、過去の取引経緯まで含めて合意の成立を立証した
業者の資力・所有不動産を事前に調査し、現実的に回収可能な分割計画を設計した
連帯保証・抵当権設定・期限の利益喪失条項・公正証書化と、回収の手段を何重にも積み重ねた
原野商法の二次被害は「証拠が弱い」「業者の資力がない」と諦められがちですが、本件のように、契約書中の手がかりを丁寧に拾い、回収のための枠組みを工夫することで、全額回収という結果に結びつけることができるケースもあります。
ご相談(面談)は下のボタンよりお申し込みください。











