事例紹介
ケース紹介
離婚交渉、公正証書の事例
30代女性からの離婚交渉の相談でした。
子あり、公正証書作成による協議離婚で解決となっている事例です。
離婚交渉では、公正証書作成まで希望する人が多いので、公正証書についても合わせて解説します。
公正証書の重要性とその役割
公正証書は、法的な取引や契約を行う際に重要な役割を果たします。
その中でも特に離婚の際には、公正証書がなければならない事項が多く存在します。
公正証書は、公証人が作成し、その内容を証明する法的な文書であり、通常の契約書よりも証拠能力がはるかに高いとされています。
これは、公証人が法務大臣によって任命された法律経験豊富な元検事や元判事であるため、その作成した文書の信頼性が非常に高いからです。
公正証書には、契約の内容、当事者の意思、契約の成立などが明確に記載され、これにより契約の安全性が確保されます。また、公正証書は、金銭支払の違反があった場合にも、すぐに差し押さえに動けるというメリットがあります。
公正証書は、法的な取引や契約を行う際には必要不可欠な存在と言えるでしょう。
離婚における公正証書の具体的な内容
離婚における公正証書には、離婚や親権者の記載のほか、お金の問題として、主に財産分与、養育費、慰謝料、年金分割などの内容が含まれます。
財産分与とは、夫婦が結婚期間中に共有した財産を分けることを指します。
これには、不動産、車、家具などの物的な財産だけでなく、預貯金や投資などの金銭的な財産も含まれます。
財産分与は、夫婦間で公平に行われるべきですが、具体的な分け方は夫婦間の話し合いによります。
養育費とは、離婚後も子どもの養育に必要な費用を、非監護親が監護親に支払うことを指します。これには、生活費、教育費、医療費などが含まれます。
養育費の額は、夫婦間の話し合いにより決定されますが、子どもの生活水準を維持するために必要な額が考慮されます。話し合いで解決しない場合には、家庭裁判所での調停や審判で決めることになります。この場合、算定表が使われることが多いです。
慰謝料とは、離婚の原因を作った側が、その行為により精神的苦痛を受けた側に対して支払う金額を指します。慰謝料の額は、離婚の原因やその重大性、双方の経済状況などを考慮して決定されます。もともとは不貞や暴力など違法行為をした場合に認定されていましたが、そのような事情がなくても慰謝料の名目で扶養的な解決金が支払われることもあります。
公正証書作成の手続きとその流れ
公正証書を作成するための手続きは、一定の流れに従います。
まず、公正証書の内容を決定するために、夫婦間で話し合いを行います。この話し合いでは、財産分与、養育費、慰謝料などの内容を詳細に決定します。
次に、決定した内容をメモに記録し、公証役場に相談します。
公証役場では、提出されたメモを基に公証人が公正証書を作成します。公正証書の作成が完了したら、夫婦が公証役場に出向き、公証人の前で公正証書の内容を確認し、署名します。
最後に、公正証書の手数料を支払い、公正証書の謄本を受け取ります。
これで公正証書の作成手続きは完了となります。
通常は、公正証書が完成したら、次は離婚届を役所に提出し、離婚を成立させます。
離婚届を提出すると、法的に離婚が成立します。数日後には、離婚後の戸籍謄本を受け取ることできます。
このように公正証書は、最初に、財産分与や養育費等の金額が決まっている場合に作れるものです。この金額が合意できない場合には、公証役場が調整するものではありません。調整が必要な場合には、家庭裁判所の調停や審判となります。
また、本来、公正証書は、当事者が公証役場に出頭しますが、弁護士などの代理人に交渉を依頼しているような場合には、弁護士が代わりに出席して公正証書を作成することもできます。
公正証書のメリットと注意点
公正証書には多くのメリットがありますが、同時に注意すべき点も存在します。
公正証書の最大のメリットは、その法的な効力です。公正証書は公証人が作成するため、その内容は法的に強力な執行力を持ちます。
これは、公正証書に記載された金銭的な約束が実行されなかった場合、裁判所の強制執行を受けることができるという意味です。
公正証書ではない、当事者間で作ったような合意書や契約書では、支払がされなかったときには、家庭裁判所の調停や審判を申し立てないと、相手の給料や財産を差し押さえることはできません。これに対し、公正証書で一定の要件を満たすものは、約束が破られたら差し押さえに動けるのです。このために公正証書があるといっても過言ではありません。
しかし、公正証書には手数料が必要です。その額は公正証書の分量等によります。金額的には数万円というものです。また、原則として、公証役場に日程調整をして出席する必要があります。所要時間は、事前調整をしていれば30分程度で終わることが多いですが、平日の日中に時間を作る必要はあります。
また、本人確認書面として印鑑証明書が必要ですので、この準備もしなければなりません。
離婚の準備: 知っておくべき事項
離婚は人生の大きな転換点であり、それに備えるためには時間と知識が必要です。
まずは、離婚についての基本的な知識を身につけることが重要です。法律の観点から、離婚の種類、手続き、権利と義務について理解することが必要です。また、離婚があなた自身、あなたの家族、特に子供たちにどのような影響を及ぼすかを考えることも重要です。
さらに、離婚後の生活について考えることも重要なステップです。
離婚後の生活費のシミュレーション、住居の問題、子供の親権と養育費の問題などが含まれます。
また、離婚手続きが、相手の対応によって精神的にも負担が続くことを認識しておきましょう。
離婚交渉の受任通知
弁護士が離婚交渉の代理人になることを引き受けると、相手である配偶者に対し、その旨を伝えることから始めます。
通常は、受任通知のようなものを送ります。今回は、同居中から別居するタイミングで受任通知を自宅に残してもらう方法としています。
受任通知には、
離婚交渉等について受任することになった旨や、
依頼者側の離婚希望、その理由等を記載します。
今回は、妻側の代理人として、夫のの言動、特にお子様に対する言動に耐えかね、離婚を希望している旨を記載しています。
事前に相談した結果、通知内容には、夫の具体的な問題行動を記載する方針としています。
そのうえで、本件に関しては、家庭裁判所の手続きをせずに、早期に協議離婚による解決を目指した方がお互いにとって良いと考えている旨を伝え、夫の意向を確認するため、一度、面談したいとの希望を出しています。連絡方法を複数提示し、妻への直接の連絡は控えるよう通知しています。
離婚交渉の事例
受任通知後の流れは様々です。
今回は、夫がジン法律事務所弁護士法人まで来てくれ、複数回の面談交渉をして、話を詰めて行きました。
弁護士と夫との間でメールでの交渉を続けてもいます。
当初は、離婚自体に難色を示していましたが、別居後の妻からのストレートな意見も受けた結果、最終的には協議離婚に応じることになりました。
早期離婚を希望し、慰謝料や財産分与は不要、養育費の取り決めを公正証書にしてほしいとのことでしたので、その点を交渉でまとめています。
夫側も、弁護士に相談を何度かしたとのことでしたが、代理人として依頼することはなく、最後までご自身で対応していました。
離婚公正証書の作成事例
養育費の支払いがあったため、公正証書を作成しています。
事前に公証役場と協議し、条項を詰めています。
公正証書の内容は次のようなものでした。
第1条 (離婚の合意)
甲と乙は協議離婚をすることに合意し、本証書作成後、離婚届に所定の記載をして各自署名押印するものとする。
第2条 (離婚の届出)
離婚届については、乙が、令和5年●月●日までに、●●市役所に届け出るものとする。
第3条 (親権者の定め)
甲乙間の未成年の長女及び長男の親権者及び監護者を乙と定める。
第4条 (養育費等)
甲は乙に対し、養育費として、令和5年●月から、丙及び丁が満18歳に達してから最初の3月(大学等の高等教育機関に進学する場合は、その学校を卒業する日の属する月)まで、1名につき毎月末日限り金5万円を、●銀行●支店の妻名義の普通預金口座(口座番号)に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
第5条 (年金分割の定め)
甲(第1号改定者)と乙(第2号改定者)は、本日、厚生労働大臣に対し、対象期間に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合を0.5とする旨合意する。
第6条 (面会交流権)
乙は甲に対し、甲が毎月1回、丙及び丁と面会交流をすることを認容する。
ただし、面会交流の日時、場所、方法等の必要な事項は、丙及び丁の福祉を害することがないように甲乙互いに配慮し協議決定する。
第7条 (清算条項)
甲と乙は、本証書に定めるものの他、相互に何らの債権債務は無い事を確認し、各目の如何を問わず、金銭その他の請求を一切行わないものとする。
第8条 (強制執行認諾条項)
甲は、本証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。
離婚公正証書の手続き
事前に公証役場と条項について詰めておきます。
今回、夫は本人出席、妻は代理人として弁護士のみが出席し、作成しています。
そのため、条項案を添付した妻の委任状を実印でもらっています。
公証役場に支払った費用は、3万4000円程度。事案によって異なります。
今回、費用は折半しています。
離婚公正証書作成については
・双方の印鑑証明書
・代理人の免許証、夫の免許証
・条項案つきの委任状
・戸籍謄本
・年金分割に関する情報
が必要書類とされています。
公証役場とのやりとりは、役場によって違いますが、今回はメールで打ち合わせを進めています。
予約について、夫が対応可能な時間帯での調整を行った結果、2週間程度先の日程での作成となりました。
公正証書作成後に、離婚届に署名をもらい、妻にて市役所に提出し、離婚が成立して解決となっています。
ご相談は下のボタンよりお申し込みください。