事例紹介
ケース紹介
離縁(養子縁組解消)の調停事例
養子縁組を解消する「離縁」は、協議・調停・裁判によって進める手続です。
この記事では、離縁の基本的な意味、3つの種類、裁判で必要となる法定離縁事由、離縁調停の流れ、離縁後の氏や相続権への影響、解決事例まで整理して解説します。
離縁手続きの基礎知識
養子縁組は、法律上の親子関係を創設する制度ですが、縁組後に養親・養子の間で関係が悪化したり、縁組の目的が達せられなくなった場合には、その縁組を解消する「離縁」という手続きが認められています。

離縁とは何か
離縁とは、養子縁組によって生じた法律上の親子関係(養親子関係)を解消する手続きです。
婚姻関係を解消する「離婚」に相当する制度が、養子縁組においては「離縁」にあたります。
養子縁組は、当事者の合意と届出によって成立する法律行為であり(民法802条)、いったん縁組が成立すると、実の親子と同じ法律上の親子関係が生まれます。
具体的には、養子は養親の氏を名乗り(民法810条)、相互に扶養義務を負い(民法877条)、相続権も発生します(民法887条・889条)。
これらの権利義務関係を解消するのが離縁であり、その効果は離縁成立時から生じます(遡及効はありません)。
離縁の種類
離縁には、当事者間の合意の有無や手続きの段階に応じて、次の3種類があります。
離婚と同じ感じです。

協議離縁
養親と養子(養子が15歳未満の場合は離縁後に法定代理人となる者)が協議し、合意に至った場合には、市区町村役場に「離縁届」を提出することで離縁が成立します(民法811条)。
当事者双方が同意している限り、裁判所の関与なく離縁が可能です。
【注意】協議離縁が有効に成立するためには、当事者双方が離縁の意思を持っていることが必要です。詐欺・強迫による離縁届の提出は取り消すことができます(民法812条、民法96条)。
調停離縁
当事者間で離縁についての合意が得られない場合や、相手方が話合いに応じない場合には、家庭裁判所に離縁調停を申し立てることになります。
調停委員を交えた話合いによって合意が成立すれば、調停調書が作成され、確定判決と同一の効力を持ちます。
裁判離縁(審判・訴訟)
調停でも解決しない場合には、家庭裁判所に離縁の訴えを提起することができます。
裁判で離縁が認められるためには、民法814条に定める法定事由が必要です。
離縁手続きの全体像
① 当事者間での話合い(協議離縁)→ 合意できれば離縁届を提出
② 話合いが難しければ → 家庭裁判所に離縁調停を申立て
③ 調停不成立 → 離縁訴訟(裁判離縁)または審判

このステップも離婚と同じです。
離縁ができる事由(法定離縁事由)
協議離縁の場合は双方の合意があれば理由を問いませんが、裁判による離縁(訴訟)を求める場合は、民法814条に定める法定事由が必要です。
【民法814条(離縁の訴え)】
縁組の当事者の一方は、次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。
一 他の一方から悪意で遺棄されたとき。
二 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。
三 その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。

悪意の遺棄
「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく養親子としての義務(同居・扶養・協力など)を履行しないことをいいます。
たとえば、養親が一切の扶養をせずに養子を放置するケースや、養子が成人後も養親の扶養に一切協力しないケースなどが典型例です。
生死不明(3年以上)
養親または養子の一方が、3年以上にわたってその生死が全く不明である場合です。
連絡が取れないという程度では足りず、生きているか死んでいるかすら不明な状態でなければなりません。
縁組を継続し難い重大な事由
実務上、最もよく問題となる事由です。
具体的には以下のようなケースが認められてきました。
・養親による養子への虐待・暴力・精神的DV
・養子の著しい不行跡・素行不良(繰り返される犯罪行為等)
・養親と養子の間の長期かつ深刻な不和・断絶
・養子縁組の目的となっていた事情が消滅したとき(相続対策のみの目的で縁組した場合等)
・養子が実親のもとへ戻ることを強く望んでいる場合
・養親・養子が互いに全く交流を断ち、関係が完全に破綻しているとき
単なる性格の不一致や一時的な感情的対立では「縁組を継続し難い重大な事由」とは認められません。

調停においては、法定事由がなくても、双方が納得すれば離縁を成立させることができます。
しかし、相手方が離縁に応じない場合、訴訟で離縁を求めるには法定事由の主張・立証が不可欠です。
離縁調停の手続き
当事者間の協議が整わない場合、まず家庭裁判所に「離縁調停」を申し立てることが原則です(調停前置主義・家事事件手続法257条)。
いきなり裁判を起こすことはできず、まず調停をしないといけないわけですね。
申立て
申立先:相手方の住所地を管轄する家庭裁判所
申立費用:収入印紙 1,200円、郵便切手(裁判所ごとに異なる)
主な必要書類:申立書、申立人・相手方の戸籍謄本、縁組前の戸籍謄本(場合による)
申立人:養親または養子(どちらからでも申立て可)
調停の流れ
1)申立人・相手方が別々に待合室で待機(直接顔を合わせない設計)
2)調停委員(男女各1名程度)が各当事者と交互に面談し、事情を聴く
3)調停委員が双方の意見を調整し、合意点を探る
4)合意できた場合 → 調停成立(調停調書の作成)
5)合意できない場合 → 調停不成立(審判または訴訟へ)

調停は通常、複数回の期日を経て結論が出ます。
1回の期日は概ね2時間程度で、次の期日まで1~2か月程度の間隔が空くことが多く、調停期間全体では数か月から半年以上かかる場合があります。
調停委員の役割
調停委員は裁判官ではなく、弁護士・公認会計士・医師・福祉関係者などから任命された専門家です。
当事者の立場を尊重しながら、合意形成のための仲介・助言を行います。なお、裁判官(家事審判官)も関与し、手続きの進行を指揮します。
調停で話し合われる内容
・離縁の合意の有無(双方が離縁に同意するか)
・離縁後の氏(姓)(養子は原則として縁組前の氏に戻る)
・財産関係の精算(縁組期間中の財産的利益の清算が問題となる場合)
・養育費・扶養料(未成年の養子がいる場合など)

調停が成立した場合
双方が離縁に合意すると裁判所が調停調書を作成します。
調停成立後は、申立人が調停成立日から10日以内に市区町村役場に離縁届を提出します。
協議離縁とは違いますが、届出自体は必要です。調停離縁の場合、離縁届は双方の署名ではなく、届出人のみの署名で提出します。その際、調停調書を資料として提出します。
調停が不成立の場合
合意が得られない場合「調停不成立」となります。
この場合は、家庭裁判所が職権で審判を行う場合があるほか、当事者は離縁の訴えを提起することができます。
申立人は、とりあえず現状維持のままにするか、裁判を起こすかを選ぶことになります。
離縁の効果
・養親子関係の解消
離縁が成立すると、養親子関係は将来に向かって消滅します。離縁後は親子としての法的権利義務は一切なくなります。
・氏(姓)の変化
養子は原則として縁組前の氏に戻ります(民法816条1項)。
ただし、縁組の日から7年以上が経過している場合は、離縁の日から3か月以内に届け出ることで、離縁後も養親の氏を称し続けること(氏の続称)ができます(民法816条2項)。
届出期間を過ぎると縁組前の氏に戻るため注意が必要です。

・相続権の消滅
離縁後は養親と養子の間の相続関係は完全に失われます。
離縁前に養親から受けた贈与や遺贈には影響しません。
・扶養義務の消滅
離縁後は養親子間の扶養義務(民法877条)も消滅します。ただし、離縁に際して当事者間で別途扶養に関する取決めをすることも可能です。
・実親との関係の回復
離縁によって養子縁組が解消されると、未成年の養子については実親の親権が回復します(民法811条6項)。

未成年の養子がいる場合
養子が15歳未満の場合、離縁の協議は養子の代理人(通常は実親)が行います(民法811条2項)。
特別養子縁組の場合
特別養子縁組の離縁は極めて厳格な要件が設けられています(民法817条の10)。
子の福祉を最優先にした制度であり、養子の利益のため特に必要があると認められる場合のみ、家庭裁判所の審判によって離縁が認められます。当事者の合意だけでは解消できません。

離縁に関するよくある疑問
Q. 養子縁組から何年も経っていますが、今から離縁できますか?
A. 離縁には時効や除斥期間はありません。縁組後何十年が経過していても、当事者間の合意または法定事由があれば離縁は可能です。ただし、詐欺・強迫を理由とする取消しには期限がありますのでご注意ください。
Q. 相手方が行方不明で連絡が取れません。調停はできますか?
A. 相手方の住所が不明な場合も調停の申立て自体は可能です。ただし、相手方に呼出状が届かないと手続きが進まないため、住民票や戸籍附票の調査が必要になります。
Q. 離縁調停に弁護士は必要ですか?
A. 法律上、弁護士なしに本人申立てで調停を行うことは可能です。しかし、法定事由の判断・主張の組み立て・証拠収集など専門的な知識を要する場面が多いため、弁護士に依頼することで有利に手続きを進めやすくなることもあります。
Q. 調停中も相手と顔を合わせなければなりませんか?
A. 離縁調停では、申立人と相手方が別々の待合室を使用し、調停委員が交互に聴取する形式が取られます。基本的に当事者が直接顔を合わせることはありません。

弁護士に相談するタイミング
離縁を検討する場合、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。
・現在の状況が法定離縁事由に該当するかどうかの見通し
・協議で解決できる可能性があるかどうか
・調停申立てに必要な書類・証拠の準備方法
・相手方が離縁に応じない場合の対応策
・氏の問題・財産関係・扶養など、離縁に伴う付随問題の整理
特に、縁組期間が長く財産的な問題が絡み合っているケースや、虐待・DV等がある場合には、早期の法的対応が重要です。
離縁調停の解決事例
依頼者は会社員の男性で、元妻の連れ子と養子縁組を行いましたが、婚姻成立からわずか半年で離婚に至りました。
離婚時に離縁をせず、離婚後の養育費の支払い約束をしていました。
離婚後に一切面会のない連れ子との養子縁組関係が残り続けていることから、養子縁組の解消(離縁)を希望。
交渉は到底できないとの感触から、調停による解決を希望していました。
連れ子(血縁関係なし)との養子縁組であること
婚姻期間が約半年と極めて短いこと
離婚後は養子と一切面会がなく、親子としての実態がないこと
実親(元妻)は就労し扶養能力があること
などを伝える調停申立を進めました。

調停の経過(期日の回数と流れ)
横浜家庭裁判所の管轄事件となりました。申立後、第1回期日が決まります。
第1回期日では、双方の言い分を聴取。経緯確認のほか、相手方が離縁に応じる場合の条件を次回期日までに提示することとなりました。
第2回期日前に、相手方から解決金の受領を条件とする離縁の提示がされました。事前に条件を詰め、第2回期日を迎えます。
2回めの期日で、条件交渉に向けた論点が整理され、調停成立となりました。
長期化を避ける趣旨などから、一定の解決金の支払いをしたうえで離縁となっています。
調停調書が作成され、役所に離縁届を提出し、戸籍に反映される流れとなります。

連れ子養子縁組では、離婚と同時に離縁もしておくのが通常ですが、この手続きをしていないと、別途手続きが必要になってしまいます。
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