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FAQ(よくある質問)

 

Q.貸金返還請求のポイントとは?

貸金返還請求事件の裁判で争われるポイントは、金銭の交付、返還合意です。

さらに、相手の資力もポイントになるでしょう。

 

この記事は、

  • 貸したお金を返してもらいたい人
  • 貸金返還請求を受けている、裁判を起こされた人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.4.28

 

貸金返還請求とは

貸金返還請求とは、貸したお金を返してほしいという請求です。

貸金返還請求は、法律的には、消費貸借契約に基づく返還請求とされます。

そのうえで、利息契約に基づく利息請求をつけたりとか、遅れている場合には、履行遅滞を理由にする損害賠償請求が付け加えられるという形になります。

 

このようなお金を貸した契約については、他の呼び方をすることもあります。
ローン契約であったり、融資契約などと呼ばれることもあります。
このような呼び方をしていても、お金を貸し付けて返済をするのであれば、民法上では金銭消費貸借契約となります。

 

貸金返還請求の要件

貸金返還請求の裁判では、貸金返還請求の要件を満たすことを主張、立証しなければなりません。

貸金返還請求が認められる要件としては、

  • 金銭を返還する合意
    金銭を交付
    返還時期の合意
    返還時期が到来したこと

とされています。

ここに加えて、利息請求をする場合には、利息の合意となります。

また、遅延損害金の請求をする場合には、

返還時期が過ぎたこと、

法定利率以上の請求をするのであれば、遅延損害金利率の合意などが加わります。

 

貸金返還請求の訴状では、このような要件を満たしているのだという事実を記載しないといけません。

通常は、いつお金を貸し付けたのか、返還時期をいつ決めたのか、そして、その時期が到来したことを記載することになります。

 

貸金返還請求事件で争われるポイント

まず、金銭の交付について争われることが多いです。
明確な受領証、借用書がないようなケースで手渡しだった場合には、お金の動きの立証として、貸主側の預金口座からの出金や、借主側の交付前後の動きなどが1つの事情になってきます。

また、金銭交付自体は争わないものの、お金を返す合意がなかったとの主張も多いです。

贈与の反論などです。

お金を受け取ったけど、借りたのではなく、もらったという主張です。

 

金銭交付のための預金口座取引明細の証拠

金銭の授受が争われた場合、銀行振り込みであれば、預金口座の通帳や取引明細を提出して、これを証明することになります。

この種の裁判では、相手方に証明責任がある内容なら、相手方に証拠を出させれば良いことになります。

逆に、自分側に証明責任があるのであれば、こちら側で取引明細等を準備して証拠提出することになります。

通帳や取引明細を出す際には、関係ない部分はマスキングして提出しても問題ありません。

 

また、解約した預金口座について、通帳も処分しているため、証明できないと誤解している方もいますが、解約口座についてもご自分名義の口座であれば、一定期間の取引明細の取得はできます。

本人確認さえできれば取得できますので、窓口等で問い合わせてみましょう。

銀行振込ではなく、預金口座からの出金で手渡しなどの場合でも、少なくとも出金の事実、お金が動いた事実は示せるため、明細の証拠提出はしておくべきといえるでしょう。

 

 

男女間での金銭交付

男女関係での金銭の貸付等では、このような主張がされることが結構多いです。

男性はお金を貸したと主張、女性側はそれは贈与であったという主張です。

その場合には、男性側から、返還合意があったことを証明していく必要が出てくるのです。

男女関係の解消とともに、このような主張がされることが少なくありません。

お金を貸し借りするような関係だったか、贈与の動機があるのかなどがポイントになってきます。

男女間の関係も、交際相手であったのか、夜のお店での関係、風俗嬢などによっても変わってきます。


男女関係が、愛人愛人関係だったりすると、その男女関係の維持に金銭が絡んでいるとされ、それ自体が公序良俗違反とされることもあります。

それぞれの契約の無効や、不法原因給付等の主張がされる事態まで発展することもあります。

 

利息の発生期間

利息は当然に発生するものではありません。無利息の貸金もあるからです。

利息を請求するには、利息支払の合意が必要です。

利息については、金銭の交付の当日から弁済期まで発生するものとされます。

利率の合意をされているのであれば、この期間の利率を計算し、請求することになります。

 

返還時期の合意がない貸付について

お金を貸したものの、返還時期を明記していないで貸すこともないわけではないです。

この場合には、いつまでに返せという催告が必要になります。

催告があったことを示して、その期日が過ぎたとか、一定期間過ぎたとして返還請求をすることになります。

催告については、催告期間を定めなくても、客観的に見て相当期間が経過した場合には返還請求できます。

裁判前に催告をしていない場合には、催告を、訴状の送達によってするという理屈も可能ではあります。

「相当な期間」とは、どれぐらいの期間があればよいのかという点については、契約の金額や、目的など具体的な事情によって決められるとされます。

 

期限の利益喪失とは

貸金の際に、元本を何回かの分割払いでするという約束もあります。

このような分割払いを約束した上で、何回か分割払いを怠ったときには期限の利益を喪失するという合意がされていることが多いです。

貸金業者や、銀行からの借り入れの場合には、このような期限の利益喪失約款が必ず盛り込まれています。

この場合、そのような期限の利益喪失の事情を満たすと、分割払いの利益を失って、一括で支払う義務が出てきてしまいます。

そうすると、その後は、遅延損害金利率による支払いをしなければならなくなってしまうのです。

ここでいう期限の利益とは、債務者にとって、その期限まで払わなくても良いとされる利益です。

これを失うので、分割払いができなくなり一括支払いをしなければならなくなるという内容です。

 

分割払いの支払いを怠ったりしたほか、支払い停止や、自己破産の申し立て、差し押さえを受けるなどの、期限の利益喪失の事情に盛り込まれていることも多いです。

 

遅延損害金の合意は不要

返済期限までは、利息が請求できるかどうかという問題、返済期限後は、遅延損害金の問題となります。

返済期限がきていなくても、期限の利益を喪失すると、遅延損害金の問題となります。

期限が過ぎた後の、遅延損害金については法律上発生するものです。

合意がなくても、法律上決められた利率での請求ができます。

2021年時点では、年3%とされ、変動していきます。

これを上回る利率の場合には、合意が必要です。

 

利息制限法違反の利息は元金に

利息の合意がされたとしても、法律では、上限が決められています。

これを上回る利息を払った場合には、債務者から反論ができます。

利息制限法の利率を上回っているという主張です。

過払い金などの問題です。

最近の、貸金業者の裁判では、最初から、利息制限法の計算をした上で請求されることがほとんどになっています。

かつては、利息制限法違反の利息でも、そのまま裁判起こされていたので、裁判を起こされた場合に、被告側から、利息制限法違反の利率について、元本に充当すべきだと主張する必要がありました。

これによって請求金額が減額される関係にありました。

最近でも、貸金業者以外の個人間貸付等での裁判では、このような利息制限法違反の利率での請求がそのままされている可能性がありますので、そのような高い利息の場合には利息制限法違反の支払ってきた利息は、元本に充当されるべきだという反論をする必要があります。

 

高金利貸付に関する無効の主張

ヤミ金融などの違法金利の場合には、そもそも、貸金契約自体が公序良俗違反で無効になるのが原則です。

そのため、貸金請求された場合には、契約が無効であると反論することになります。

個人間融資等でも、出資法違反など、あまりにも高金利の場合は、このような主張することが考えられるでしょう。

また、貸金の目的が、男女関係の維持など公序良俗に反しているようなケースでは、そのような主張することで貸金契約自体を無効にできるケースもあります。

例えば、ひととき融資等では、男女関係の維持が目的だったということが立証できるのであれば、このような主張が認められる可能性が高いです。

 

書面でする消費貸借契約

金銭消費貸借契約については、要物契約とされていました。

契約に、金銭の交付が必要とされているものです。

金銭の交付が要件とされていましたが、2017年に新設された制度として、書面でする消費貸借契約があります。
民法587条の2で規定されています。


この法律ができるまでは、諾成的消費貸借契約として、事実上認められていたものです。

これが、法律で明記されたものです。

書面でする消費貸借契約であれば、金銭の交付がなくても、その交付を約束して返還約束もあれば効力を生ずるものとするとされています。

このような、書面でする消費貸借契約については、借主は、金銭の交付をするまでは、解除できるとされています。

解除した場合には、解除によって損害が貸主に発生すると、貸主は損害賠償請求ができます。

また、書面でする消費貸借契約は、借主が、金銭交付を受ける前に、当事者の一方が破産手続き開始決定を受けると、その効力を失うものとされています。

書面でするとされていますが、電磁的記録によってされた場合であっても、書面によってなされたものとみなされています。

 

相手の資力が事実上のポイント

上記のとおり、法律的な要件としては、金銭の交付や返還合意が争われやすいポイントです。

ただ、それ以外に、最も意識しなければならないのが、相手の資力です。

相手に返済能力があるかどうかです。

裁判所で勝訴判決が出ても、相手に財産がないと回収できないことになります。

また、相手が自己破産をして、免責許可が出てしまうと、支払義務はなくなってしまいます。

そのため、貸金返還請求事件では、相手からの事実上の回収可能性も調査、検討する必要があります。

 


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