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裁判例紹介

差押えの取消と強制執行費用の負担は?

差押えがされたものの取り消しになった場合、その強制執行にかかった費用の負担について判断した最高裁の決定紹介です。

最高裁平成29年7月20日決定です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.28


事案の概要

不動産の共有者間の紛争です。

Yさんが本件不動産に居住。

共有者であったXは、Yに対し共有物分割請求をしました。あわせて、不当利得返還請求権または不法行為に基づく損害賠償請求権を根拠として、Xの共有持分の賃料相当損害金の支払を求めました。

Xの主張は認められ、共有物分割、明渡しか共有関係の解消まで賃料相当損害金を命じる判決が出て、確定。

Xは、賃料相当損害金が払われないことから、これを請求債権として、本件不動産のYの共有持分について強制競売を申し立て。

裁判所が強制競売開始決定。

現況調査命令、評価命令。売却実施処分。


Yは、民法494条に基づいて、弁済金を供託。
供託により、本件請求債権が消滅したとして請求異議の訴えを提起。

請求異議の訴えが認容、確定。

これにより、本件強制競売手続は取り消されました。

 

これに対し、Xは強制競売に関する執行費用をYの負担とすることを求める申立てをしました。

共有者間の長い紛争が続いた後の、執行費用に関する紛争です。

 

原審までの判断

第1審では、強制執行が目的を達しないで終了した場合、民法485条の適用により、執行費用は弁済の費用にあたるという理由で、債務者Yの負担としました。

原審では、結論として債務者Yの負担としたものの、その理由は違いました。

執行費用は、債権者による取下げや債務名義を遡及的に取り消すような裁判の確定等により強制執行が終了した場合を除いて、原則として債務者の負担とすべきとしました。

本件では、このような例外にあたらないとして、債務者Yの負担と結論付けました。

これに対し、Yは抗告許可を申し立て。

原審により抗告が許可され、最高裁が判断することになりました。

 


最高裁決定による判断

抗告棄却。


まず、前提として、民事執行法42条1項は、強制執行の費用で必要なものを執行費用として債務者の負担とする旨を定めているところ、強制執行が目的を達して終了した場合に同項の規定により執行費用が債務者の負担とされることは明らかであると触れました。

これに対して、既にした執行処分の取消し(同法40条1項)等により強制執行がその目的を達せずに終了した場合に、当該強制執行が終了するに至った事情を考慮することなく、一律にその執行費用を債権者又は債務者のいずれか一方が負担すべきものと解するのは、衡平の見地に照らし相当とはいえないとしました。

同法42条1項は、強制執行がその目的を達せずに終了した場合について定めるものではないと解されるから、同法には上記の場合の執行費用の負担についての『特別の定め』(同法20条)は設けられていないことを指摘。


したがって、既にした執行処分の取消し等により強制執行が目的を達せずに終了した場合における執行費用の負担は、執行裁判所が、民事執行法20条において準用する民訴法73条の規定に基づいて定めるべきものと解するのが相当であるとしました。


民事執行法20条において準用する民訴法73条1項の裁判の申立てを受けた執行裁判所は、上記強制競売が終了するに至った事情を考慮して、同条2項において準用する同法62条の規定に基づき、同強制競売の執行費用を抗告人の負担とする旨の裁判をすることができると結論づけました。

 

強制執行費用の負担の原則は?


まず、最高裁が触れた民執法42条1項。

ここでは、執行費用を債務者の負担とする旨が規定されています。

しかし、申立前に債務者が負担することはなく、まず、債権者が強制執行申立ての準備に要する費用を負担し、執行申立て時にも予納金を負担します。

立て替えたうえで、後から取り立てることになります。

 

強制執行が取り下げや取消になった場合には?

これに対して、強制執行や差押が、取下げや取消しで目的を達せずに終了した場合は、ハッキリした規定はありません。

そのため、執行費用をどうするのか争いが生じるのです。

特に不動産の強制執行の場合には、執行費用も高額になるため争いが起きやすいです。


本件では、強制競売開始後に弁済金が供託され請求債権が消滅したとして請求異議判決が出され、競売が取り消されたという事情があります。

本来、取り下げなどであれば、強制執行の理由がないことになるので、そのような強制執行の申立をした債権者に負担させても良さそうです。

他方で、本件のように、申立時には強制執行の理由があるのに、その後に、債務者側の行動によって理由がなくなったという場合には、債務者負担とした方が公平そうだとも考えられます。

 

最高裁による条文の解釈

最高裁では、以下の条文の流れにより、債務者負担としました。

民事執行法上には「特別の定め」がない。

そこで、民事執行法20条が準用する民事訴訟法73条1項の規定に基づくことになる。

73条1項本文

「訴訟が裁判及び和解によらないで完結したときは、申立てにより、第一審裁判所は決定で訴訟費用の負担を命じ、その裁判所の裁判所書記官はその決定が執行力を生じた後にその負担の額を定めなければならない。」


民事訴訟法73条2項が準用する民事訴訟法62条に基づいて債務者負担。

62条

「裁判所は、事情により、勝訴の当事者に、その権利の伸張若しくは防御に必要でない行為によって生じた訴訟費用又は行為の時における訴訟の程度において相手方の権利の伸張若しくは防御に必要であった行為によって生じた訴訟費用の全部又は一部を負担させることができる。」

 

このような考えで行くと、強制執行の目的を達しなかったときには民訴法62条によって「必要でない」ものだったかどうかが検討されることになります。

この検討の際に、具体的事情を考慮していくことになるでしょう。

 

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