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ツイッターでの写真公開とプライバシー、肖像権

ツイッター上での写真投稿が不法行為になるか争われた事案です。

他のところで公開されている写真を、ダウンロードして投稿した行為が違法になるか争われました。

東京地方裁判所平成30年9月27日判決です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.28

 

事案の概要

被告は、原告が被写体となっている写真1点を原告に無断で複製してインターネット上の短文投稿サイトTwitter上にアップロード。

原告は、原告の当該写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権)、肖像権及びプライバシー権を侵害すると主張。

被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、著作権法114条3項による使用料相当額12万1500円、慰謝料200万円及び弁護士費用20万円を請求。

 

原告は、アカウント名「D」、ユーザー名「E」との登録によりツイッターを利用している女性。


被告は、アカウント名「F」、ユーザー名「G」との登録によりツイッターを利用している男性。


原告と被告は、ツイッター上で知り合い、オフ会として開催された飲み会で面識を持ち、被告の妻も含め、直接の交流を行うに至り、互いに氏名、住所を知る関係にありました。

本件写真は、民家風の建物の畳敷きの室内において、訴外Cが鞭を持って座っている正面に、原告が縄で緊縛された状態で柱に吊るされている状況が撮影されたものでした。

本件写真は、平成29年10月27日当時、訴外Cのツイッター上に、「I」との源氏名で掲載され、公開されていました。

被告は、本件写真を複製し、同日、本件写真を自らのツイッター上にアップロード。

 

著作権侵害

第一の争点が著作権侵害でした。

まず、裁判所は、本件写真は、民家風の建物の畳敷きの室内において、鞭を持って座っている男性の正面に、女性が縄で緊縛された状態で柱に吊るされている状況が撮影されたものであるところ、被写体の選択・組合せ・配置、構図・カメラアングルの設定、被写体と光線との関係、陰影の付け方、部分の強調、背景等の総合的な表現に撮影者等の個性が表れており、創作性が認められ、著作物に当たると認定。

本件写真は、平成25年6月21日、被写体となっている原告と訴外Cが共同して創作したこと、及び同日、訴外Cが自己の著作権を原告に譲渡したと認定しました。

被告は、訴外Cのツイッター上に掲載されていた本件写真を複製し、平成29年10月27日、本件写真を自己のツイッター上にアップロードした(本件被告行為)ものであるから、被告は、本件被告行為により、原告の本件写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したものと認められるとしました。

 

この点、被告は、本件写真は、原告及び訴外Cのツイッターアカウントにおいて公開している写真である旨、被告による転用はツイッター上のみのことであり、ツイッター本来の使用目的に照らし正当なものである旨を主張していました。


しかしながら、本件写真がツイッター上で公開されているものであること、また、転用(転載の趣旨と思われる。)がツイッター上のみであることは、何ら著作権侵害を否定する理由とはならないとしました。


プライバシー権侵害

次に、プライバシー侵害の点が問題となりました。

本件写真は、鞭を持って座っている男性の正面に、女性である原告が縄で緊縛された状態で柱に吊るされている状況を撮影したものであり、被写体の女性においては、その内容に照らし、一般人の感受性を基準にして公開を欲しないものといえるから、このような写真を本人の許諾なく公開することはプライバシー権を侵害し得るものであるとしています。

ところで、本件写真は、被写体の向き等により被写体の女性が原告であると同定することはできないものでした。

しかし、原告と被告は、ツイッター上で知り合い、オフ会として開催された仲間内の飲み会で面識を持っていたこと、原告のツイッターのプロフィール画像には平成29年9月頃まで1年以上にわたり原告の写真が使用されていたことが認められ、これらの事実からすれば、原告及び被告のツイッター仲間は、アカウント名「D」が原告、アカウント名「F」が被告であることを認識していたものと認められるとしています。

そして、本件写真がアップロードされた被告のツイッター上には、本件被告行為以前、原告のツイートや原告を擁護する第三者のツイートが引用され、これに対する被告のコメントがツイートされており、また、被告のツイート中に原告のアカウント名「D」が記載されていることが認められるから、当該一連のツイートを見た原告のツイッター仲間等は、当該一連のツイートが原告について書かれたものであると認識することができるものと認められるとしました。

そうすると、アカウント名「D」が原告であると知る者においては、被告のツイッター上に掲載された本件写真の被写体の女性が原告であると同定することは可能であるとしています。

 


また、本件写真は、訴外Cのツイッター上に掲載され、既に公開されていたものである点が問題となりました。

しかし、訴外Cのツイッターをフォローしている者と、被告のツイッターをフォローしている者は異なること、訴外Cのツイッター上では本件写真の被写体の女性は源氏名で表記され原告であることは公表されていなかったこと、被写体の女性が原告であると気づいた者は原告の認識する限りいなかったこと、以上の事実が認められるとしました。

これらの事実からすると、本件写真の被写体の女性が原告であることは未だ社会に知られていなかった事実といえるところ、本件被告行為によって初めて被写体の女性が原告であるとの同定が可能となり、同事実が公にされるに至ったものと認定しました。

これにより、裁判所はプライバシー侵害と認定しました。

 

肖像権の侵害?

裁判所は、肖像権の争点について、肖像権と呼ぶかは別として、人は、自己の容ぼう、姿態を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益を有すると解されるところ、本件写真は、原告の姿態が撮影されたものであり、被写体の女性において、その内容に照らして公開を欲しないものというべきであり、また、被写体の女性が原告であるとの同定も可能であるから、原告の意に反してこれをツイッター上にアップロードすることは、原告の上記人格的利益を違法に侵害するものと認められるとしました。

肖像権も侵害されたとの認定といえます。

画像自体からは特定ができなくても、他のツイート等から同定ができるのであれば、肖像権の侵害にもなるという論理です。

 


故意・過失

不法行為の要件である故意・過失についても検討されています。

被告は、自己のツイッター上に本件写真をアップロードすることにより、本件写真の被写体の女性が原告であるとの同定を可能ならしめているところ、その際、「プロの縄師は決して素人モデルなんか吊るす事は無い、縄の嗜好を持つ者なら誰でも知っている事実」、「また一つ嘘がバレちゃいましたね!」とツイートしていることも併せ考慮すれば、原告の公開を欲しないであろう写真を暴露するために、本件被告行為を行ったものといえ、プライバシー権及び人格的利益の侵害について故意を有していたものと認められるし、著作権侵害についても少なくとも過失が認められるとしました。

 

損害額

不法行為と認定された場合には、損害がいくらかという点が問題になります。

まず、著作権侵害による損害について認定しています。


被告は、本件写真を平成30年6月4日時点においてもツイッター上に掲載し続けていること、本件写真と同種趣向の写真をインターネットで利用する際の利用料は6か月以上1年未満の掲載期間で12万1500円とされているものがあることを認定。


そうすると、原告が被告からその著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(著作権法114条3項)は、12万1500円と認めるのが相当であるとしました。

次に、プライバシー権等の侵害による慰謝料について検討されます。

本件被告行為により、原告のプライバシー権及び自己の容ぼう等をみだりに公表されない人格的利益が侵害されたものであるところ、本件被告行為により、原告を知る不特定多数の者に本件写真が公表されたこと、本件写真は原告が縄で緊縛された状態で柱に吊るされている状況を撮影したもので、その内容に照らして公開を欲しない程度が高いものであること、被告が本件写真を掲載する際、「プロの縄師は決して素人モデルなんか吊るす事は無い、縄の嗜好を持つ者なら誰でも知っている事実」とツイートし、原告が反復継続して本件写真のようなモデルを務めていることを仄めかすような本件写真の公表の態様も踏まえると、原告の被った精神的苦痛は小さくないものと認められるとしています。

一方で、本件写真は原告の同意のもと訴外Cのツイッター上に既に公開されており、本件被告行為当時は訴外Cのツイッターアカウントへのアクセスは特に制限されていなかったものであるとも指摘。以上の事情を総合すると、原告がプライバシー権等の侵害により被った精神的苦痛を慰謝するのに必要な金額は30万円と認めるのが相当であるとしました。

原告は慰謝料200万円を請求していましたが、他のところで公開されている写真という点も考慮されたというものです。

そのうえで、弁護士費用相当額は5万円と認め、47万1500円を損害として認定しました。

 

 

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