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仮差押と損害賠償請求

仮差押は、裁判が確定する前に相手の財産を仮に差し押さえる制度です。債権回収率を高めるための民事保全手続です。

ただし、債権回収方法の一つである仮差押をしたことによって、損害賠償請求を受けることもあります。

これが問題になった最高裁平成31年3月7日第一小法廷判決を紹介します。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.28

事案の概要

当事者は、原告が印刷物の紙加工品製造等を目的とする株式会社。

被告が、日用品雑貨の輸出入および販売等を目的とする株式会社

会社間の紛争です。原告は、被告に対して、印刷物等を販売していました。

被告は、平成22年から平成27年までの年間売上高が26億円から57億円程度。現金、預金債権および売掛金債権などの資産についても16億円程度あるとされていました。

原告は、被告に対し、印刷物等の売買代金等の支払を求める訴えを提起。

第1審の地方裁判所では、平成28年1月、原告の請求として1310万1847円を認める判決。

双方が控訴。

 

このタイミングで、原告が仮差押に動きます。
平成28年4月18日、本件売買代金債権を被保全債権として、被告の取引先に対する売買代金債権を仮差押えようと申立てます。

同月22日、債権仮差押命令が発令。

同月23日、本件第三債務者に送達。

同月28日、被告は、本件仮差押命令において定められた仮差押解放金約1497万円を供託。

仮差押命令の執行を取り消す旨の決定がされ、第三債務者に対しても通知。

 

被告は、本件仮差押命令の取消しを求める保全異議の申立て。

同年7月、本件仮差押命令について、保全の必要性がないとして取り消し、本件仮差押申立てを却下する旨の決定。

原告は、不服として保全抗告をするも、棄却。


被告は、売買代金訴訟の高等裁判所における平成28年6月の弁論期日で、原告に対し、本件仮差押申立てが違法だと主張し、不法行為による損害賠償債権と対当額で相殺する旨の意思表示をしました。

不法行為の内容は、本件仮差押申立てにより被告の信用が段損された、その後、第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったことにより逸失利益を理由とする損害の発生を主張するものでした。

 

原審の大阪高等裁判所は、本件損害賠償債権の額を本件逸失利益等の損害合計1522万4244円とし、売買代金債権は相殺によりその一部が消滅したと認めました。

原告が上告受理申立て。

 

最高裁判所の判断

まず、被告と第三債務者であった取引先との取引の実態を認定しています。

被告は、平成27年1月から平成28年4月までの1年4箇月間に7回にわたり本件第三債務者との間で商品の売買取引を行ったものの、被告と本件第三債務者との間で商品の売買取引を継続的に行う旨の合意があったとはうかがわれないし、被告の主張によれば、上記の期間本件第三債務者の被告に対する取引の打診は頻繁にされてはいたが、これらの打診のうち実際の取引に至ったものは7件にとどまり、4、5箇月にわたり取引が行われなかったこともあったというのであって、被告において両者間の商品の売買取引が将来にわたって反復継続して行われるものと期待できるだけの事情があったということはできないとしました。

これらのことからすると、本件第三債務者が被告との間で新たな取引を行うか否かは、本件第三債務者の自由な意思に委ねられていたというべきであり、被告と本件第三債務者との間の取引期間等の原審指摘する事情のみから直ちに、本
件仮差押申立ての当時、被告がその後も本件第三債務者との間で従前と同様の取引を行って利益を取得することを具体的に期待できたとはいえないとしています。

そして、金銭債権に対する仮差押命令及びその執行は、特段の事情がない限り、第三債務者が債務者との間で新たな取引を行うことを妨げるものではないとしています。

また、本件仮差押命令の執行は、本件仮差押命令が本件第三債務者に送達された日の5日後である平成28年4月28日には取り消され、その頃、本件第三債務者に対してその旨の通知がされており、本件第三債務者が被告に新たな商品の発注を行わない理由として本件仮差押命令の執行を特に挙げていたという事情もうかがわれないとしています。

これらのことに照らせば、本件第三債務者において本件仮差押申立てにより被告の信用がある程度段損されたと考えたとしても、このことをもって本件仮差押申立てによって本件逸失利益の損害が生じたものと断ずることはできないとしました。

これにより、本件仮差押申立てと本件逸失利益の損害との間に相当因果関係があるということはできないと結論づけています。

 

仮差押と損害賠償


違法な仮差押えをすれば、不法行為となり、相当因果関係にある損害の賠償請求ができます。

本件では、仮差押によって、第三債務者との取引がされなくなった点が、逸失利益となるか、相当因果関係が認められるかが争われたものです。

原審では、仮差押がされた場合に、第三債務者が、信用状況に疑問を抱くなどして取引を停止することは、原告も予見できたとして、逸失利益との間には相当因果関係があるとしています。

逸失利益の内容としては、取引期間や同業社との取引状況から3年分の逸失利益を損害として認めました。

これに対して、最高裁は、債務者と第三債務者の間に、取引が反復継続する関係があったかどうか、仮差押の執行が第三債務者に対して与えた影響の程度などを考慮し、仮差押によって取引停止とはならないだろうという結論をとっています。

 

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