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裁判例紹介
悪質リース商法とキャッシュバック
悪質リース商法を詐欺と認定し、キャッシュバックで受け取ったお金は不法原因給付で返還不要と判断した裁判例です。
大阪地裁令和2年9月3日判決の紹介です。
事案の概要
関西地区で悪質なリース契約を次々締結させることで有名だった会社がありました。
販売会社の従業員は、「前のリース契約は解約する」などと称して、かつ電話代が安くなるからという理由で勧誘。
電話機のリース契約を締結させました。
その後もリース料は負担するなどと勧誘し、次々と不要なものをリースさせます。執拗な勧誘、虚偽説明がありました。
家のセキュリティシステム、防犯カメラ、レコーダーサーバー、インターネットのセキュリティシステム、電話機等でした。
リース料を負担するという趣旨は、いわゆるキャッシュバックを利用するというものでした。
原告は、各リース契約の損害について、被告会社に対しては民法715条1項に基づく損害賠償として、被告役員に対しては、民法709条若しくは同715条1項又は会社法429条1項に基づく損害賠償請求をしたものです。
裁判所の判断は損害賠償を肯定
原告の請求を認めた内容となっています。
被告会社及び被告役員は、原告に対し、652万4064円を支払うよう命じています。
被告らの虚偽説明
被告会社の従業員は、平成29年2月24日以降、原告の事務所を訪問した上、夫婦に対して、被告会社の勧めるリース契約を締結すれば、
月額リース料が従前の電話機のリース契約に係るリース料よりも安くなる、
従前の電話機のリース契約については被告会社において解約する、
新たに締結するリース契約のリース料相当額については、被告会社が原告に支払うので原告には実質的な負担は生じない、
などと述べて、次々に、セキュリティー機器や電話機等のリース契約の締結を勧誘。
原告と信販会社との間で、本件リース契約1~5を締結させたと認定。
勧誘時の約束の支払は停止
被告会社は、平成29年6月1日から平成31年1月11日までの間、実際に、原告に対し、従前の電話機のリース契約及び本件リース契約2~5における各リース料におおむね対応する金額を支払ってはいたものの、同日以降は、その支払を停止しました。
このようなキャッシュバックは破綻してしまう仕組みです。
勧誘した従業員が退職したとの主張
なお、被告らは、勧誘従業員は同年7月末で被告会社を退職した旨主張していました。
しかし、裁判所は、そのような事実を裏付ける資料は存在しない上、従業員は、同年8月以降も被告会社の担当者として原告の事務所を訪問しているのであるから、この点に関する被告らの主張は、採用することができないとしています。
リース販売会社の詐欺
新たに締結するリース契約のリース料相当額については、被告会社が原告に支払うので原告には実質的な負担は生じない旨の従業員のの説明は、事実と異なる虚偽のものであったことは明らかと認定。
また、新たに締結するリース契約のリース料相当額を被告会社が負担する旨の説明は、被告会社にとっておよそ経済合理性を欠く内容のものであり、被告会社において、その説明内容どおりにリース料相当額を原告に支払い続けることは、常識的に考えて、およそ不可能なものであるというべきであるから、被告従業員においては、自らが夫妻に対して説明した上記の内容が事実と異なる虚偽のものであることを認識していたとしました。
上記の行為は、原告に対する詐欺に当たり、不法行為を構成すると結論づけています。
今回の判決では、リースの販売会社による勧誘の違法性を認定してくれています。
このような経済的合理性を欠く勧誘が、いまでもおこなされているのが、リース商法の実態です。
原告会社の小規模性の認定
判決では、原告は夫婦のみによって運営されている小規模な会社であることがうかがわれるのであり、このような会社が、短期間に次々にこのような高額なリース契約を締結する合理的な理由は存在しないと指摘しています。
ここから、原告が、本件リース契約1~5を締結するに至ったのは、従業員による上記の欺岡行為によって、錯誤に陥っていたことによるものと推認するのが相当と認定しています。
悪質商法の損害賠償請求では、原告側の消費者性が高い方が保護される確率が高まります。
法人よりも個人。
事業規模も大規模より小規模という方が、要保護性の高い消費者に近い立場だと認定されやすくなります。
そのため、法人の場合でも、事業規模が小規模であるということの主張・立証は大事です。
もちろん、個人の場合、消費者契約法等の消費者保護の法律適用を選択肢とすることも検討します。
キャッシュバックは不法原因給付
裁判所は、キャッシュバックを不法原因給付としました。
つまり、キャッシュバックについて損益相殺をすることは許されないと判断しています。
被告会社が原告に対して上記の支払をしたのは、従業員の行っている詐欺の発覚を防ぎ、更なる詐欺を実行するための手段であったとみるのが相当であるから、原告の被告らに対する損害賠償請求において、上記被告会社が原告に対して支払った金員の額を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として原告の損害額から控除することは、民法708条の趣旨に反するものとして許されないというべきであるとしています。
キャッシュバックを控除しなくても良いという理論です。
これは被害者側の救済には大いに役立つ内容です。
ヤミ金融等で採用された不法原因給付の理論が認められると、このような悪質商法自体をおこないにくくなります。
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