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各種の交渉

ディズニー感動の交渉

ディズニーの元CEOのアイガーさんが書かれた本で、交渉のお手本ともいえる事例があったので、紹介します。

ディズニーは、ここ数年、多くの会社を買収してきました。

ピクサー、マーベル、スターウォーズのルーカスフィルム、フォックス。

このあたりの買収交渉をCEOとして手掛けたのがアイガーでした。

このなかで、ピクサーとの交渉の話が印象的でした。

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.28

 

動画はこちら。

 

1 理由をつける

 

ディズニーのピクサー買収交渉については、ピクサー側から書かれた本もあります。

ピクサーの当時の大株主は、アップルで有名なスティーブ・ジョブズでした。

ピクサーとの交渉は、実質的に、スティーブ・ジョブズとの交渉でした。

スティーブ・ジョブズについては、『スティーブ・ジョブズ2』という上下巻のノンフィクションに、その生涯が描かれています。

この2巻で、ディズニーのピクサー買収劇が、スティーブ・ジョブズ側から書かれています。

 

この交渉は、2冊を読むことで交渉当事者の両方からの事情を知ることができます。

交渉は、相手がいるわけです。双方の立場から、どのように見えていたのかを分析することで、交渉力は上がるものです。

両方の視点から解説されるような交渉は、チェックするようにしましょう。

 

予期せぬ交渉

 

ディズニーによるピクサー買収というのは、当時、かなりインパクトがある話でした。

なぜかというと、ディズニーの前CEOのマイケル。

彼と、スティーブ・ジョブズの関係は非常に悪く、両社の関係は、断絶といっても良い状態でした。

 

このような状況下、ディズニーのCEOにアイガーが打診されます。

アイガーは、その時点で、ピクサーを買収するのがディズニーにとって良いのではないかと考えました。

しかし、当時の関係は悪く、しかも、相手はジョブズ。

簡単にはまとまらないと見込まれました。

周囲に提案しても、反対される状況。

 

 

交渉は関係性づくりから

そこで、アイガーは買収話を持ちかけるより先に、ジャブを打ちます。

ジョブズとの関係性づくりから入ります。

 

アイガーは、ジョブズに面白い話があると持ちかけます。

何かというと、当時まだ iphoneはありませんでした。

ipodという音楽再生プレーヤーがアップルから出されていました。

 

アイガーは、ジョブズに対し、ipodや itunesで映像を配信できるようにしたらいいのではないかというアイデアを伝えました。

itvというネーミングでした。

 

相手の興味から

ジョブズはそれに食いついてきました。

そして、数週間後、アイガーを訪れ、「実は同じことを考えていたんだ」と言い、試作機を見せるのです。

ビデオ ipod みたいなやつです。

itunes から動画を配信してipodで見ることができるというものでした。

続けて、ジョブズは言います。

「これが実際に完成したら、ここにディズニーの動画を配信してくれるか」と。

 

ディズニーには、多くの動画コンテンツがありました。これを配信できれば、動画配信サービスとしてはインパクトがあります。

この問いに対して、アイガーは「もちろん」だと即答したのです。

 

そして、このサービスの発表の場には、アイガーも同席。

マスコミは驚くわけです。

この発表に向けての共同作業もありました。

 


共通点による好意

アイガーとジョブズには、実は共通点もありました。

ジョブズの伝記に書かれていた内容ですが、アイガーの奥さんは、スティーブ・ジョブズのもと彼女とルームメートだったそうです。

そのような共通点があり、ジョブズは、もともど好印象を持っていたそうです。

そこに共同作業が加わり、関係が良くなっていきます。

 

また、当初のやりとりで、動画配信の可否について、即答したのがジョブズにとっては好印象でもありました。

スティーブ・ジョブズは、職人ぽいタイプで手続き的なことが嫌いでした。

ディズニーは、今まで、旧体制のようで、判断するにも時間がかかっていました。

しかし、今回は即答。


スムーズに話が進んだことに好印象を持ったという話がされています。

 

ダメ元で提案

ここまでは、前哨戦。

その後、実際の買収の話をどうやって仕掛けようかアイガーは考えます。

悩んだ結果、ストレートに伝えるという方法をとります。

ジョブズに連絡して、「とんでもない話があるんだけど」などと言いにくそうな話を伝えます。

そして、「お互いの未来について、いろいろと考えていたんだ」と切り出し、「ディズニーがピクサーを買収するというのはどうだろう」と伝えます。結果を知っている私達としては、弱々しい印象を受けます。

しかし、当時は、それほどあり得ないと言われていた買収です。

これに対し、ジョブズは、「それなら、とんでもないって事でもないな」と回答。

選択肢としてあり得ると、想定内であるかのような回答をされるのです。

 

交渉は、提案であり、ダメ元でも言ってみるものだということがわかります。

最初からあきらめてしまうのは良くない、とにかく提案してみることが大事です。

 

 

論理的に詰める

あり得ない話でもないとされたため、2人は、ロジックで買収を詰めて行きます。

ジョブズは大きなホワイトボードに、買収が成立した時のメリットとデメリットを書いていきます。

ところが、ここでジョブズはデメリットばかり書いていきます。

ピクサーの文化が壊れる、買収過程でピクサーの職人が辞めるとか。

あわててアイガーが、メリットもお互いのコンテンツが活きるとかあげるのですが、ホワイトボードには、圧倒的にデメリットが多く並んでしまいました。

アイガーは、これはちょっとダメだなぁという趣旨の発言をしたのですが、ジョブズは、デメリットは確かにあるけれども、それを上回るメリットもあるな、と冷静に回答。

交渉のロジック段階に来ているので、感情的な話は置いておいて、冷静に分析してくれたのです。

 

 

現場を見る

その後、交渉をどう進めるかというと、アイガーは、ピクサーの現場を見たいと希望します。

それまで、制作現場を見ていなかったので、実際に訪問させてもらうのです。

ジョブズのいないところで、制作現場を見たり、監督のジョン・ラセターから話を聞きます。

そうするうちに、ピクサーは、凄い技術を持っている、ピクサーのアニメ制作力は非常に高いと知り、興奮してしまいます。

ディズニーの周りの取締役には、もう絶対買収しよう、と興奮して話してしまいます。

現場を見ていない取締役は、どことなく冷めた目で見ており、温度差がありまくりです。

 

そして、その興奮を、交渉相手であるジョブズにもぶつけてしまいます。

交渉では、自分の希望を最初からぶつけてしまうと、価格が高くなるなどしてしまい、望ましくありません。

しかし、あまりにも興奮して素直に話してしまったのです。

 

ただ、これが、ジョブズには良かったようです。

ジョブズ本では、ディズニーからの買収に応じた理由として、アイガーのことを

信用できる奴だ、最初にもう全部しゃべってくれた

という趣旨の記載があります。

 

下手に価格交渉などせず、最初から自分の気持ちを伝えたことで、信用を勝ち取れたのだろうと思います。

 

このようにして、買収交渉はまとまっていくことになります。

 

感動の交渉

買収交渉がまとまり、両社の記者会見がセッティングされます。

この発表の30分ほど前に、ジョブズとアイガーは2人になります。

そのとき、ジョブズは、アイガーに優しく「話がある」と切り出します。

何かというと、「がんが再発したのだ」と言い出すのです。

ジョブズは、がんを治療して治ったと言われたのですが、それが再発したという話をされます。

これがやがてジョブズの死因になります。

つまり、自分の命はそんなに長くないと打ち明けたわけです。

しかも、これは、「主治医と妻しか知らない」「絶対に他の人には言うな」というのです。

アイガーパニック。

この本では、アイガーは何度もパニックになるほど振り回されて、かわいそうになります。

 

発表直前で、このような重大事項を打ち明けられ、どうすればよいのか。

買収を中止すべきか?でも、誰にも言うなというし。

しかし、このまま続けて、買収後に問題発覚したら責任問題にも・・・

などと、頭の中で渦巻いていたと思われます。

 

結局、アイガーはそのまま買収を発表。

この買収は結果的にうまく行ったとされます。

 

この直前での病気告白エピソード。

アイガーの本では触れられているのですが、スティーブジョブズの本では触れられていません。

ジョブズ本は、かなり前に出された本ですが、このエピソードは省かれているのです。

買収後も、2人の関係は良好だっと言われます。

 

推測ですが、この買収が結果として失敗に終わってしまったら、この告白がアイガーを苦しめるかもしれない。

そんな配慮で、ジョブズは、このエピソードを省いたのではないか、と考えています。

 

このように、交渉の当事者双方からの視点を追っていくと、色々と見えてきます。

 

まとめ:交渉のポイント

今回の交渉のポイント。

共通点による好意。

初期段階での共同作業で、連帯関係。

相手のタイプを見て、欲求を確認。手続き省いて即断。

ダメ元でも提案してみる。

交渉のロジック段階でも共同作業。

相手の情報を得るために現場を見る。

 

このあたりの話は、なんと、『プロ弁護士の「心理戦」で人を動かす35の方法』に載っている話ですので、ぜひこちらもチェックしてみてください。

 

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