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スマートな説得術5選
スマートな説得術についての話です。
交渉でも説得術は大事な要素です。
今回の説得術の出典は『シンクスマート』という本です。
この本は『シンククリアリー』というベストセラーになった本のシリーズ。
サンマーク出版
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シンクスマートということで物事の考え方やバイアス、捉え方などが詳しく書かれている本です。
中では、行動経済学的な話、実験内容がよく取り上げられています。
目次を見ると、かなり充実しており、使いやすい本です。
今回は、この中からスマートな説得術として、交渉でも使えそうな話を5つピックアップします。
動画での解説はこちら。
1 理由をつける
まず、1つ目。
理由をつけること。
とりあえず、理由が大事です。
理由あるかないかでは、説得力が変わるのです。
紹介されている例として、『影響力の武器』でも紹介されているコピー機の実験を取り上げてみます。
コピー機に人が並んでいるときに、そこに割り込んでコピーを取らせてもらえないかと頼む実験です。
まず単純に、ちょっと先にコピーを取らせてもらえませんかとお願いするパターン。
次に、「急いでいるので」など何か理由をつけてお願いをしたパターン。
これら比べたところ、「急いでいるのでコピーを取らせていただけませんか」というように、理由をつけた方が、割り込ませてもらえる、譲ってもらえる確率が高かったという結果です。
理由がある方が説得しやすい。
さらに、もう一つ実験されます。
理由をつけずに普通に頼んだパターンと
理由という形だけつけたパターンの比較。
つまり、「コピーを先に取らせてもらえませんか、コピーをとりたいので」というような理由。
よく考えると、何の理由にもなってないパターンです。
コピーをとりたいので、って当たり前のことです。
実質的には、まったく理由になっていない理由でも、形式的にあるだけで譲ってもらえる確率が上がったという結果です。
大事なのは、「~なので」という理由が存在することなのです。
説得や交渉で、もちろん、実質的な理由があれば、それをしっかり伝える。
実質的な理由がない場合でも、理由という形式をとってそれで説得することが大事であるとわかります。
ちなみに、このコピー機の実験は、『めんどうな人をサラリとかわしテキトーにつき合う55の方法』でも紹介していますので、あわせてチェックしてみてください。
2 伝播バイアスを意識する
伝播バイアスのなかで、物と感情の結びつきに着目する方法です。
人は、単なる物質に、感情を一体化してしまうことがあります。
本の中で紹介されている例をとりあげましょう。
あるパーティに行ったときに、素敵なグラスがありました。
そのグラスでワインか何か飲んでいました。
あまりにも素敵なグラスだったので、「とても良いグラスですね、どこで手に入れたのですか?」という質問をしました。
すると「それ、サダム・フセインの屋敷から持ってきたの」との答え。
これを聞いて、飲んでいた人は、吹き出してしまい、飲むのを止めることになります。
サダム・フセインのイメージはよくないですね。
そのような人が使っていたということで、物質的なグラスも悪いイメージを持たれてしまう、そのグラスを使って飲みたくないという気持ちになってしまうという例です。
他にもヒトラーの着ていたセーターは着たくないという話もされています。
物と感情をミックスさせてしまうということです。
他の例として、ダーツを投げる事件があります。
ダーツを正確に当てられる人でも、その的を、お母さんの写真に取り替えてみると、外してしまうことが増えるそうです。
単純に写真という物質なのに、自分の親がそこにいるかのように見えてしまい、外してしまうということです。
このような伝播バイアスを、交渉や説得で使う方法としては、例えば、あるものを放棄させたいという場合が考えられます。
相続の争いなどで、どの財産をどのように分けるかというシーン。
そこで、自分が希望する財産を、相手にとって悪いイメージと結びつけさせることができれば、悪いイメージの財産を放棄したり、譲ってもらえやすくなるでしょう。
3 NIH症候群
なんか難しそうな名前がでてきました。
これは自分の出したアイディアに固執してしまうという性質のことです。
自分の考えついたことを好きになってしまう性質です。
本の中で著者が作ったソースの話があります。
著者が料理をしてソースをつくろうとしたとき。
レシピどおりではなく、独自の方法でソースを作ってみたのですね。
これを奥さんに提供してみたところ、不評でした。
自分で食べてみたら、おいしいのに。
「お前は、味がわからないやつだな」とか言っちゃうわけです。
2週間後。
奥さんが料理してソースを2種類準備してくれたそう。
一つはとても美味しいのに、もう一つはまずかったのです。
「なんだ、このひどい味は」
とか言ったところ、奥さんは言いました。
「あなたが2週間前に作り出したレシピよ」
2週間たったら、自分が絶賛していた自作ソースもまずく感じるということです。
自分が考え出したと思った瞬間のものを、過大評価してしまう性質があるのですね。
このNIH症候群は、交渉や説得のシーンでは、希望する解決策を相手に自分で思いつかせたかのように誘導すれば良いですね。
上司の説得でも使われますが、企画を通したいときに、早めに相談しアドバイスをもらうなどし、上司が思いついたかのような形ですすめると、通りやすかったりするとも言われます。
交渉でも、同じような使い方ができるでしょう。
解決策は、自分から言い出すのではなく、相手に提案させるのが有効です。
4 エルズバーグのパラドックス
難しそうなネーミングが続きますが、これは曖昧さを回避するという人間の性質です。
エルズバーグは、人の名前。
実験を担当した人ですね。
エルズバーグのパラドックスとは、どういう実験か説明します。
ツボが2つあります。AのツボとBのツボ。
そこにそれぞれ100個のボールを入れます。
このボールには黒色と赤色の2種類があります。
あなたは、どちらかのツボを選んで、赤いボールを取り出せたらお金をもらえます。
Aのツボには、黒:50個、赤:50個の割合で入っています。Bは割合不明。
どちらから取りますか?という実験です。
多くの人は、Aの壺を選択。
Bは赤が入っている割合が不明だからという理由です。
ここからが第二弾。
今度は、黒いボールを取り出せたらお金をもらえます。
どちらから取りますか?
ここでも、多くの人は、やっぱりAのツボを選択するそうです。
それは理論的におかしいのではないか、というのが、パラドックス問題。
1回目の実験で赤いボールをとるために、赤の確率50%のAを選んだということは、Bは、赤の確率が50%未満だと考えたことになります。
そうであれば、Bのツボには、黒の確率が50%以上のはずで、Aより多いはず。
それなのに、Bを選ばずに、Aを選択するのは合理的ではないという話です。
このような不合理な選択をしてしまうのは、Aのツボでは、パーセンテージがハッキリしているから。
何個入っているのか分からない曖昧なBを避けたいという心理が人間にはあるそうあんおです。
これが、エルズバーグのパラドックスと呼ばれる話です。
人間は、このように、よくわからないことに挑戦しにくい性質があります。
交渉や説得の場面でも、このような性質を忘れずに、曖昧な話を避けたほうが良い、確率など数字を示せるようなものはしっかりと示したほうが良いということになります。
5 後悔への恐怖
人は後悔することを非常に嫌がる性質があります。
このため、リスクを取りにくく、普通と違う行動をしにくい性質があります。
とくに、この中で一番大きいのは最後のチャンスを逃してしまうことです。
最後のチャンスだと言われると、人はこれを逃して後悔したくないため、決断しやすくなります。
『影響力の武器』でいう希少性の法則と同様の話です。
交渉時にも、このオファーでまとまらなければ、決裂というシーンがあります。
そのようなときには、最後のチャンスであることを効果的に伝える必要があるでしょう。
今回は、説得や交渉に使えそうな話をピックアップしましたが、本の中では、自分の意思決定、バイアスに関する話もたくさん紹介されています。
交渉力をあげたいという人だけでなく、つい間違えた判断をしてしまうという人も、ぜひチェックしてみてください。
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