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消費者問題、悪質商法

名義貸しと不実告知

名義貸しと不実告知(割賦販売法)が問題になった事例の最高裁判決です。

 

信販会社が、呉服販売店(呉服や貴金属の卸小売等の業者)との間で、加盟店契約を締結。

販売店は、運転資金を得る目的で、既存の顧客に対して名義貸しを依頼。

顧客との間で架空の売買契約を締結。

これに基づき信販会社から代金相当額の支払を受けていました。

顧客は、信販会社に対してローンの支払をしなければなりませんが、販売店がこれを負担。

このような立替払契約の不正利用の件数は相当ありました。

 

名義貸しの末路

今回、当事者となった顧客は34名。

自宅等で、販売店代表者から、「ローンを組めない人のために、名前を貸してほしい」「支払については責任をもってうちが支払うから、絶対に迷惑は掛けない」などと懇願され、名義貸しを承諾したといいます。

顧客らの割賦金の支払については、販売店が、支払日の前に、顧客らの口座に割賦金相当額を振り込んでいました。

その後に信販会社の引き落としがされるというものです。

運転資金目的であったこともあり、このような仕組みは破綻します。

販売店は、営業を停止。破産手続開始決定。

ここで、問題が信販会社に発覚するのです。

 

信販会社は顧客らに対し、立替払契約に基づき、未払金の支払等を求めました(本訴)。

顧客のうち1名は、信販会社に対し、上記各立替払契約の申込みの意思表示を取り消し、既払金の返還等を求めました(反訴)。

 

争点

各立替払契約には、平成20年改正割賦販売法の適用があるもののとないものが混在していました。

1 改正後の契約については、改正後の割賦販売法35条の3の13第1項6号により上記各立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことができるか

2 改正前契約については、改正前の割賦販売法30条の4第1項で、各売買契約に係る販売店に対して生じている虚偽
表示による無効を信販会社に対抗できるか

 

争点についての一審の判断

改正法で取り消しが認められている不実告知の対象には、契約内容や取引条件のほか、契約締結の動機も含まれるとされました。

支払を実際には負担しなくてよいとする旨の説明は、立替払契約締結の動機になります。

販売店からは、支払い負担がないという虚偽の説明がされたことになります。

しかも、この虚偽の説明がなければ、普通は立替払契約を申込む意思表示はしなかったと認められます。

そのため、この動機は重要性があり、不実告知の対象に含まれるとされました。

 

本件では、購入者が、販売店においてクレジット取引を悪用して信販会社に損害を及ぼす意図があることを知りながらこれに積極的に加担したような事情はないとしました。

これらの理由から、立替払契約の申込みの意思表示は不実告知によるものであり、これを取り消すことができるとしました。

 

2つ目の争点である虚偽表示による無効主張についても認めました。

販売店と顧客との間では、商品を売買する意思がないので売買契約は虚偽表示により無効です。

売買契約が無効となる場合に、この主張を信販会社に対抗できるのか、立て替え払い契約にも影響を与えるのかが問題になったというわけです。

こちらも信販会社に対抗できるとしました。

 

このような結論は、名義貸しをした顧客の行為を認めることにならないか、信義則違反ではないかという点も争われました。

しかし、本件における諸事情や、クレジット取引における立替払契約と売買契約との間の密接な牽連関係、信販会社と顧客との損失負担能力の差をあわせ考えると、取り消しの主張や抗弁の対抗の主張は、信義則に反するものとまでは認められないと判断しました。

 

高等裁判所の判断

原審である高等裁判所は、販売店は、実際に補填している金額もあることから、補填意思がないにもかかわらず補填約束をしたとはいえず、不実告知ではないと評価しました。

改正前契約の争点については、売買契約は虚偽表示などにより無効であるものの、信販会社からの意思確認の電話に対して、契約締結の意思があること、商品を受け取っていると回答していることなどから、保護に値しない購入者の背信行為だとして、抗弁の接続を主張することは信義則上許されない、と判断しました。

 

 

最高裁判所の判断

破棄差戻し。

改正後契約について「立替払契約が購入者の承諾の下で名義貸しという不正な方法によって締結されたものであったとしても、それが販売業者の依頼に基づくものであり、その依頼の際、契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無、契約締結により信販会社に実質的な損害が生ずる可能性の有無など、契約締結の動機に関する重要な事項について販売業者による不実告知があった場合には、これによって購入者に誤認が生じ、その結果、立替払契約が締結される可能性もあるといえる。」

「このような経過で立替払契約が締結されたときは、購入者は販売業者に利用されたとも評価し得るのであり、購入者として保護に値しないということはできないから、割賦販売法35条の3の13第1項6号に掲げる事項につき不実告知があったとして立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことを認めても、同号の趣旨に反するものとはいえない」

名義貸しを必要とする高齢者等がいること、これらの高齢者等を購入者とする売買契約および商品の引渡しがあること、これらの高齢者等による支払がされなくても販売店が確実に顧客らの信販会社に対する支払金相当額を支払う意思および能力があることなどは、契約締結の動機に関する重要な事項といえます。

このような理由で、「告知の内容は、割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう『購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの』に当たる」と判断し、告知内容について顧客らの誤認の有無等を審理させるため、差し戻しました

 

争点2の虚偽表示の無効の抗弁対抗についても、顧客らが名義貸しに応じた動機や、経緯を前提にしても売買契約の無効を信販会社に対抗することが信義則に反するか否かに審理させるため、同じく差し戻しています。

 

ポイント

割賦販売法では、売買契約等のほかに立替払契約など信販会社との間で結ばれます。

本来の売買契約に問題があった際に、それを第三者である信販会社に抗弁対抗できるのが、抗弁の接続などと呼ばれる主張です。

本契約をクーリングオフ、消費者契約法取消、錯誤無効、詐欺取消などした場合に、信販会社にも支払いを拒絶できるようにした制度です。

さらに、法改正があり、不実告知取消規定ができたものです。

ただ、名義貸しの場合には、販売店だけではなく、購入者にも問題があります。

そこで、これを救済すべきかどうか争われるという構造です。

名義貸し事案はよくあります。

資金繰りの苦しい販売店からの勧誘も多いです。

呉服店のほか、自動車など商品単価が高い業種でおこなわれやすいです。

 

今回の事件の特徴は、ローンが組めない高齢者等の人助けのための契約と勧誘された点です。

購入者の背信性を考慮する際に、この動機をどう評価するかが問題になったものです。

 

名義貸し事例では、売買契約の虚偽表示は購入者の背信行為によるから、抗弁事由に一律該当しないという考え方や、原則対抗不能だが、信義則違反でないときは対抗可能とする考え方、原則対抗可能だが、信義則違反の場合は対抗不能とする考え方があります。

後二者の場合には、どのような事情で名義貸しが発生したのかが争われることになります。

不実告知取消のケースでも、名義貸しの態様や動機等の諸事情を考慮して不実告知の有無を判断することになります。

 

 


ジン法律事務所弁護士法人では、このような名義貸しに関係した相談も対応していますので、お困りの方はご相談ください。


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