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ケース紹介

 

貸金返還請求訴訟の事例

貸金返還請求の訴訟を起こされたということで、被告にされた方からの依頼を受けたケース紹介です。

何年間も請求がなかった貸金の請求が、突然、裁判を起こされたという相談でした。

知人から借金をしたことはあるものの、何度も貸し借りをしていたため、残金があるのか複雑な状況でした。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.28

貸金裁判のポイント

貸金の返還請求では、請求する側が、返済の合意金銭の交付を立証しなければなりません。

ほかにも返済期限などありますが、大きく争いになるのは、この2点です。

この2点をめぐって、お金を受け取っていない、受け取ったがもらったものだ、などと攻防が繰り広げられるのです。

Q.貸金返還請求のポイントとは?

 

貸金裁判では、とにかく借用書が重要

貸金裁判の際に重要な証拠が、借用書となります。

貸付が1回であれば、さほど複雑な裁判にはならないのですが、貸し借りを何度もしているようなケースだと、完済をした借用書の返還もされておらず、明らかに不自然な借用書が何枚も出てくるというケースもあります。

完済しても元の借用書を回収できておらず、何も資料がない、または領収書や受領書を発行することもあります。領収書などがあれば証拠になりますが、これが紛失して、借用書だけ残っていると、客観的には、まだ返せていないように見えてしまうのです。

 

借用書の偽造を争う

裁判によっては、借主から借用書の成立を争われれることがあります。

偽造などの主張です。

実際に、偽造文書の借用書も出回ることがあり、このような争われ方は少なくありません。

この紛争を避けるには、実印です。

民事裁判では、実印によって作成された文書は、本物の印鑑であると推認され、本物の印鑑であれば、本人が押したと推認されます。

そのため、本物の文書だと推認されやすいという、証拠価値が極めて強くなるのです。

印鑑は不要、という社会の流れに反するようですが、このような証拠価値を考えると、実印を使った方が無難なのです。

 

貸金の返済も争われる

借りたものの、返済をしたという場合には、返済については借主側が主張・立証責任を負います。

こちらでも、金銭の交付や、その貸付に対する返済だったのかなどが争われます。

このように、内容によって主張・立証責任を負う側が変わってくるので、複数の貸し借りがあるようなケースだと、複雑な裁判になってきます。

 

借用書なしの貸金裁判

借用書なし、という事件では、金銭の交付から争われるリスクが高いです。

すべての入出金を預貯金通帳などに残していれば、まだ立証はしやすいのですが、そのようなものでなく、手渡し等だとすると、なかなか客観的な証拠がないということもあります。

お金の流れを少しでも証明していくことになります。

 

複数の貸付をまとめる借用書

複数の借り入れをまとめるようなケースで、新たに書面を作成するときには、過去の借用書などは精算しておかないと、借用書が複数枚あるという不自然な状態になってしまいます。

過去の借用書を破棄できないようなケースでは、新しく作る書面では、過去の借用書をまとめたものであるということを明記すべきです。その際には、その借用書の内容をはっきりと記載しておく必要があるでしょう、そのようなつながりがないと、反論しにくくなってしまいます。

特に、長期間の貸し借りがされているようなケースで、当事者のどちらかが死亡してしまったようなケースだとすると、詳しい事情わかる人は誰もいない事例もあります。

そのようなケースは、貸金の請求であっても、非常に複雑になってくるので、貸した側も、借りた側も、客観的な証拠を残すように努めておきたいところです。

 

 

和解による解決

このように色々と問題が出る貸金裁判の場合、和解で解決することも多いです。

今回の事例でも、和解によって解決となりました。

 

被告側としては、過去の抵当権の状況、預貯金の動きなどを証拠で出し、完済されているという主張をしていきました。

当事者の尋問もされましたが、微妙なところもあったため、裁判官が間に入り、和解を勧めてきました。

依頼者も納得したうえで、一定額を支払う内容の和解が成立し、解決となったものです。

依頼から裁判所での和解が成立するまで、約10か月というケースでした。


 


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