事例紹介
ケース紹介
婚約時の不貞慰謝料の解決事例
婚姻届前の不貞行為の慰謝料請求訴訟の解決事例です。
不貞慰謝料のご相談自体は多いですが、婚姻届前というのが特徴、また職場の同僚との不貞行為で、故意を争っているため、婚姻関係の認識の立証では、どのような事情がポイントになるのかという点でも参考になる事例といえるでしょう。
婚約時の不貞行為
原告の妻との不貞相手を被告とする慰謝料請求訴訟でした。
ただ、不貞行為の時期が、入籍前であったとのことで、この点が通常の不貞慰謝料訴訟よりも問題となりました。
原告らの間では、新婚旅行なども済ませ、結婚していた認識があったものの、婚姻届の提出自体はしておらず、戸籍上は婚姻関係にない時期に、妻となる女性が被告と関係を持ったという内容でした。
理論的には、原告らの内縁関係時ないし婚約成立時に不貞行為に及んだとの主張となりました。
当時、被告は、妻と職場の同僚という関係でした。
原告は、そのような事実を知らずに入籍。数年後に、この事実を打ち明けられたという経緯でした。行為から数年が経過していることから、各種の証拠が残っていないという事件です。
内縁関係と婚約の違い
まず、内縁関係の主張・立証をしていきます。内縁が認定されれば、婚姻関係と同様の保護がされることになります。
一般的には、婚姻中の不貞行為よりも、婚約中の不貞行為のほうが慰謝料金額は低くなります。婚姻している夫婦のほうが保護してあげる必要性が高いからです。
内縁関係は、法的には、婚姻関係と同じような保護をしてあげる必要性が高いとされます。そのため、婚約中という主張よりも、内縁関係の主張のほうが請求者側には有利となります。
ただ、内縁関係のほうが立証のハードルは高くなります。
内縁関係の成立の主張
まず、内縁でも婚約の主張をしておきます。
原告は、遅くとも○頃までに、妻と婚約をしたとの主張です。
内縁関係であれば、同居しているでしょうから、そのような事実も主張しておきます。○○頃には、原告は、妻と同居する住居の賃貸借契約を締結したとの主張です。賃貸借契約書も証拠提出します。
そして、実際の同居を開始時期等を主張・立証していきます。住民票上の住所を移していれば、この写しを提出します。
新婚旅行と婚約
新婚旅行に行っていた、海外で挙式していたとのことで、婚約、内縁関係の事情として主張しています。
挙式予定があるということは、そこでは婚約関係は発生しているといえます。
また、新婚旅行のため、職場での休暇申請をしており、被告がこれを認識していた可能性が高いことが認められます。
親族とのやりとりと内縁関係
内縁関係が認められるには、周囲に夫婦だと示していたかどうかもポイントとなります。
戸籍への入籍はなくても、夫や妻としての紹介、親族関係でも夫婦と同じように扱われたいた場合には、内縁が認められやすくなります。
今回も、新婚旅行以降、原告の両親、兄弟、叔父や叔母等の親戚に対しても、二人は、夫婦として接していた事実が認められていたので、これを主張しています。
婚姻届の提出
本件では、新婚旅行・挙式から相当期間が過ぎた後に婚姻届を提出しています。
問題となった不貞行為の後に婚姻届という時系列です。
これにより婚約の事実はあったと認められやすいのですが、内縁の主張をするには、なぜ婚姻届をすぐに出さなかったのか問題になります。
不貞行為は、婚姻届の前にされていたため、婚姻届提出のタイミングが争点になっています。
婚姻届の提出を先送りにしていた深い理由はなく、親族から、婚姻届を提出していないことを指摘され、同時期に婚姻届を提出したというものでした。
そのため、内縁関係時の不貞行為の主張をしたうえで、予備的に婚約時の不貞行為という主張をしています。
不貞行為の回数
不貞回数については、妻が明確に覚えていました。
被告は、4回の不貞行為に及んだとのことでした。
経緯については争いがありましたが、妻の言い分では、職場の同僚で、2人で飲食していた後、被告がラブホテルに連れ込み、性行為を要求したというものでした。
その後も、被告は、仕事の連絡手段で使用していたLINEで誘ってきたというもの。
一般的に、このような不貞に至る経緯については、男女で言い分が異なります。
不貞慰謝料については、回数や期間によって認められる金額が変わります。
内縁関係の認識
不貞慰謝料の根拠は、不法行為に基づく損害賠償請求です。これには相手方の故意や過失が必要です。
具体的には、婚姻関係の認識や、知ることができたという注意義務違反です。
今回のような婚姻届前となると、内縁関係や婚約関係を知っていて男女関係になったことなどを主張・立証する必要があります。
挙式の認識
当方の主張では、妻は職場のミーティング場で、海外挙式を挙げるため、結婚休暇を取得させてもらいたい旨の話を参加者に対してしていました。
このミーティングには、同僚であった被告も参加しており、遅くとも同時期には、妻が婚約したとは認識していたはずでした。
実際に、その後、約1週間の結婚休暇を取得し、結婚式を挙げたことなどを職場でも報告。内縁関係になったことも被告にも伝わっていたといえます。
これにより、不貞行為時には、内縁関係にあった事実を認識していたと主張できます。仮に、内縁関係の認識がなかったとしても、少なくとも婚約中であるとの認識はあったと評価できます。
不貞行為の自白
妻は、婚姻届の提出・出産後、不貞行為を自白したものでした。
相談者は、本件不貞の事実を知ってから、睡眠に障害を生じるなど、精神的苦痛による体調不良に悩まされてしまいます。
婚姻関係も維持することができなくなり、離婚することに。
被告への慰謝料請求を弁護士に依頼し、所在調査、内容証明郵便で通知しました。
しかし、請求に対しても何ら支払いをすることがなかったため、訴訟提起を依頼しようと考えました。
内容証明郵便を依頼した弁護士からは、裁判については断られ、担当してくれる弁護士を探して、ジン法律事務所弁護士法人に来たという経緯だそうです。
LINEの証拠
被告からはLINE画像が証拠提出されました。
最近は、男女問題での証拠でLINE画像が使われることも多いです。
妻からの積極的な働きかけがあった等の主張の裏付け証拠でした。被告は婚姻関係の認識を争い、故意・過失を否定する主張でした。
LINE画像の場合、メッセージの文脈を無視して一部だけの言葉が切り抜かれて証拠提出されることもあります。
自分たちにデータが残っていない場合には、やりとりの前後の画像を提出するよう求めることも有効でしょう。
本件では、婚約に関する認識が争点となりました。
被告らの職場の状況は、十数名の従業員のみが所属していた小規模な職場。
新婚旅行で1週間の長期休暇を取れば、全従業員に伝わり、目立つ状況でした。
ミーティングでも海外挙式のことを伝えていました。
被告を含む同僚一同からお祝いも貰っていて、お返しもしていたとのことでした。
職場での姓の変更
翌年度からは、妻は、旧姓から、結婚姓に変えて勤務していました。
当時の同僚からも、証言がとれていました。
職場の規模からすれば、被告もこれを認識していたのが自然です。
裁判後の和解
内容証明郵便には反応しなかった被告ですが、訴訟提起後は、弁護士をつけ応訴してきています。
内縁・婚約の認識を争っており、支払いをする義務はないという主張でした。
当方から、妻を含め関係者の陳述書を提出した後、裁判官からの和解勧告がされました。
双方とも証人尋問をして判決に進むよりは、和解による解決が望ましいとの指摘がされました。
一定額を回収し、和解成立となりました。
依頼者としては、目的を果たしたことができたとして満足だという回答がされています。
訴訟提起から8ヶ月での回収となっています。