事例紹介
ケース紹介
離婚裁判の事例
70代男性の離婚裁判の相談でした。
相手が外国人、所在不明ということで、公示送達を使っての裁判事例です。
離婚事件の管轄及び準拠法
本件は外国人相手の渉外事件です。
ただ、被告は住居所不明であるため、日本国の裁判所に国際裁判管轄が認められるとされます。
離婚請求については、法の適用に関する通則法27条但書により、原告の本国法である日本法が適用されます。
婚姻の成立
相談者は、被告の妹から縁談を持ちかけられました。
妹は、日本人男性と婚姻し県外に居住していました。
被告は、中国人の夫と死別し未亡人となっていました。
そこで、相談者は、被告の妹とともに中国にいる被告の両親の住居を訪れて、被告と対面。
中国の方式により婚姻。相談者は、帰国後、市役所に証書を提出したという流れです。
離婚原因、同居なし
相談者は、被告を日本に呼び寄せて同居生活を開始すべく、被告の妹とともに3回にわたって東京入国管理局横浜支局を訪れ、被告の入国申請を行いました。
ところが、原因は不明ですが、被告の入国は許可されませんでした。
結局、被告は来日することができず、相談者は婚姻後被告と同居するどころか、一度も顔を合わせることもなく、既に20年以上が経過しているという事件でした。
被告の婚姻関係は破綻しており、「婚姻を継続し難い重大な事由」が存すると認められます。
被告の国外の住所
時間が経ちすぎていることもあり、被告の所在も不明でした。
訴状では国籍を中国と記載、住居所不明としています。
公示送達の上申書
裁判では、訴状は裁判所から被告に送らなければなりません。これを送達といいます。
しかし、相手方の住所がわからないこともあります。行方不明者相手の離婚裁判などでは、公示送達という方法があります。
これは、内容を公示することで、相手に届いたものとみなすという制度です。
実際に相手の家に届けるものではなく、相手も見ないで裁判が進んでしまうため、所在地についてはそれなりの調査が必要です。
どうしても住所がわからないので、公示送達をするという流れなのです。
本件では、
離婚請求事件について、国際司法共助に基づく送達の嘱託(民事訴訟法108条)によっても送達をすることができないと認められるため、被告に対する訴訟に関する書類の送達は公示送達によって送達されるよう申し立てる(同法110条1項3号)として上申書を提出しています。
公示送達に関する報告書
公示送達の上申書に添付する報告書で住所がわからない旨の記載をします。
以下の報告をしています。
離婚請求事件について、被告の住居所等に関し、下記のとおり報告します。
1 訴状記載のとおり、被告の入国申請は許可されなかったため、被告は日本に入国していません。
したがって、日本国内に被告の住居所はありません。
2 原告が、平成●年、被告との婚姻手続のため中国を訪れた際、滞在したのは被告の両親の住居でした(住所不明)。被告が同所で両親と同居している形跡はありませんでした。
3 平成●年、被告から原告に手紙が届きました。
この手紙には、被告の住所として「中国 ●省●号」の記載がありました。
原告は同住所宛てに返信を送りましたが、後日被告の妹を通じて確認したところ、原告の手紙は被告に届いていないとのことでした(原告の手紙が宛所不明で戻ってくることもありませんでした)。
その後も、原告は1~2回、上記住所宛てに手紙を送りましたが、被告から返信が来ることはありませんでした。
4 平成●年頃、原告が被告の妹の携帯電話に架電したところ、「現在この番号は使われていません」というアナウンスが流れる状態でした(携帯電話番号は既に消去してしまい、残っていません)。
原告は被告の妹の氏名を記憶しておらず、同人の住所も把握していませんでした。
5 本件訴訟提起に先立ち、令和4年1月、原告は被告の上記住所宛てに手紙を送りましたが、やはり返信はありませんでした。
6 上記のとおり、「中国 ●省●号」の住所に対しては、平成12年当時から手紙が届かない状況です。そもそも、平成12年当時、同所に被告の居住実態があったのかどうかも不明です。
したがって、国際司法共助に基づく送達の嘱託により上記住所に送達を試みたとしても、奏功するものとは到底考えられません。
公示送達後の離婚裁判
公示送達で裁判が進められる場合、裁判官の判断になりますが、離婚事由の立証として、陳述書の提出、本人尋問が行われることが多いです。
第1回期日に、原告本人も出席し、簡単な尋問を行い、裁判官が事実認定をするという流れです。
今回も、そのような流れで進められました。
離婚裁判の陳述書
公示送達の場合には、最初から陳述書などの証拠を提出しておくのが通常です。
本件でも離婚の経緯等の陳述書を提出しています。
職場の男性が中国人の女性と結婚していましたが、その女性の姉が中国人の夫と死別し、未亡人となっているということでした。この未亡人というのが被告だったという経緯。
縁談を持ち掛けられ、妹が写真を持って福島県から神奈川県にやって来る等して、縁談が進められた経緯。
結婚を決意し、妹とともに中国の両親の住居を訪れ、被告と対面、被告が片言の日本語を話すことはできましたが、会話は専ら妹に通訳を頼む形だった経緯を記載しています。
そのほか、中国の方式により婚姻手続をとり、日本に帰国後、市役所に婚姻の届出をした経緯を記載しています。
婚姻手続後、入国管理局に入国の申請をし、日本に呼び寄せて一緒に生活する予定でした。妹から、婚姻を先行させた方が入国審査がスムーズにいくし、自分もそのようにしたと聞いていたからでした。
妹とともに3回にわたって東京入国管理局横浜支局を訪れ、入国申請の手続をしましたが入国は許可してもらえませんでした。
結局、被告は来日することができず、夫婦生活を送ることができなくなってしまった経緯を説明しています。
その後の手紙のやりとりについても記載し、返信が来ることはなかった点にも触れています。
離婚裁判での本人尋問
尋問期日では、陳述書の内容を簡単に確認する程度でした。
通常の本人尋問では、主尋問・反対尋問・補充尋問という流れで、相手方からの反対尋問がされます。
しかし、公示送達では、相手が出席しませんので、反対尋問がありません。
裁判官による補充尋問が行われ終了となります。
離婚判決と戸籍
第1回期日により結審、その後に離婚を認める判決が言い渡されました。
確定後、離婚届を役所に提出して、戸籍にも反映されたという流れで終了しています。
特に外国人相手の離婚事件で、相手が行方不明という場合も少なくないです。
同様の手続きの場合には参考にしてみてください。
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