別居・離婚紛争中の夫名義の銀行口座からの引き出しが問題になった裁判例

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FAQ(よくある質問)

 

Q.夫の銀行口座からの引き出しはOK?

夫婦間での配偶者名義口座からの出金は離婚時にも争われることが多い問題です。

ただ、共有財産でもあるので、完全に禁止できるかというと、それも難しいです。

裁判例の中には、出金を反対しても、離婚裁判などが提起されていても、出金分の使用が正当化されたケースがあります。

たとえば、東京地方裁判所令和2年3月26日判決です。

この記事は、

  • 配偶者名義の口座からの出金が問題になっている
  • 出金の使途について説明を求められている

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.6.26

 

事案の概要

夫婦間の紛争です。

被告が原告名義の預金口座から原告に無断で金銭を引き出して利得したと主張。

5119万8873円の損失を被ったとして、不当利得返還請求権に基づき、訴えを提起したという事件です。

夫名義の口座から妻が出金、これが問題にされるという構造です。

離婚と絡んでよく問題になります。

 

原告と被告とは、平成3年3月23日、婚姻届を提出。
被告は、平成9年、原告との間の長男を出産。

被告は、平成20年12月23日から平成21年2月14日までの間に、原告名義の預金口座から合計3354万円を引き出し。

また、平成21年1月9日から同月30日までの間に、原告名義の口座から合計1765万8873円を引き出し。

なお、本件引出金のうち、少なくとも原告の給与が振り込まれた分については、原告及び被告の共有財産であることに争いがありませんでした。


2回の離婚訴訟の経過

原告は、平成24年10月10日、被告を相手方として、東京家庭裁判所に離婚訴訟を提起。

しかし、同裁判所は、平成25年8月9日、原告の請求を棄却し、同判決は確定。

同判決において、原告が訴外女性と不貞行為に及んだ旨の事実が認定されています。

 

原告は、平成29年2月20日、被告を相手方として、東京家庭裁判所に再度離婚訴訟を提起。

しかし、同裁判所は、平成30年11月8日、原告の請求を棄却し、原告はこれを不服として東京高等裁判所に控訴したが、同裁判所は、平成31年4月18日、控訴を棄却。

 

そのようななかで、本件出金行為を問題視したというものです。

本件の争点は、被告が本件引出により法律上の原因なく利得したか否かとなります。

 

妻による出金使途の説明

妻は、引出金の使途として、次のように説明しました。

一般的な生活費 約2825万円

平均月額25万円程度であり、平成21年から平成30年までの9年間で使用した生活費の額は、約2825万円。この中には、障害を有する長男及び被告の医療費も含まれていると主張。

長男の学費等 約1310万円

長男の学費及び入学金として、小学校・中学校・高校の各年度初めに毎年130万円、入学金として中学校、高校入学時にそれぞれ25万円。その後、長男は大学に合格し、入学金として20万円を支払い、その後大学の学費として年約110万円を3年分。これらの費用の合計は約1310万円。

長男の習い事費用 約840万円

長男の習い事(音楽、英語、テニス、塾、家庭教師)のために月額10万円を支出していたため、合計で約840万円を支出。

長男の障害に対応する費用 約330万円

被告は、長男の障害に対応するため、月額10万円の小遣い、タクシー料金等の支出を余儀なくされたと主張。その合計額は約260万円。また、被告は、長男の送迎のために自動車を購入したが、被告の病気のため売却せざるを得なかった、その差額が70万円。


転居費用 約66万円

被告及び長男は、平成28年、原告の求めに応じて当時の自宅を退去し、転居。その際に、被告は、転居費用として約66万円を支払。

原告の不貞に対応するための裁判費用等 約470万円

被告は、被告の両親とともに、原告との話合いをするための交通費及び宿泊代として約50万円、興信所の調査費用として約120万円の合計約170万円を支出。また、被告は、原告が申し立てた調停及び裁判への対応のための弁護士費用として約300万円を支出。

夫婦の一方が他方から裁判を起こされた場合に、共有財産から裁判費用を支出してはならないと解するとすれば、固有財産を持たない配偶者は、裁判を起こした相手方の同意がなければ裁判に費用をかけて応訴することができなくなるが、このような結論は常識に反すると主張。

そうすると、夫婦の一方が他方から裁判を起こされた場合には、裁判を起こされた配偶者は、共有財産から裁判のための費用を支出することができると解するのが相当と主張しました。

 

配偶者の口座出金と日常家事債務

夫婦の共有財産に関しては、合意又は審判を通じて財産分与請求の具体的な権利が形成されない限り、夫婦の一方が相手方に主張することができる具体的な権利が発生したとはいえないとしています。

しかし、財産分与の具体的内容が、合意又は審理を通じて確定することとなるのはそのとおりであるとしても、そのことから直ちに、婚姻期間中に形成された共有財産に関して、夫婦の一方が他方に対して何ら権利を主張することができなくなるとまではいえないと指摘。

婚姻関係が継続している場面では、夫婦の資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担するとされ、日常家事債務について連帯責任を負うものとされているとおり、婚姻から生じる費用は夫婦が分担するものとされている一方で、専ら一方の利益のみのために夫婦の共有財産を用いることまでが許容されるものではないとしています。

これらに照らすと、夫婦共有財産である配偶者の一方の名義の預貯金を他の配偶者が管理している間は、婚姻に要する費用を支出するため、預貯金を管理する配偶者は、他方の配偶者の明示又は黙示の委託の趣旨に従って共有財産を管理しているものというべきであり、夫婦の一方が共有財産を家族の生活のために用いる場合には、夫婦又は親子としての扶養義務に著しく反するような態様でない限り、上記委託の趣旨に反するものとはいえないが、委託の趣旨に反するような使用に関しては、不当利得返還請求の対象となり得ると解するべきであるとしました。

日常家事債務もあるので、口座管理を任せている場合には、一定の趣旨の出金は委託によるものと判断されるということでしょう。

 

配偶者が反対しても出金が認められる?

なお、原告は、遅くとも平成24年頃には本件引出金の返還を求めており、被告が本件引出金を使用することに対して明確に反対していることが認められるものの、婚姻関係が解消されていない以上、夫婦の一方の明示の意思に反するとしても、上記委託の趣旨に反しない限り、婚姻に関する費用の分担の履行として、夫婦の共有財産を被告が使用することは正当化されるものと解するのが相当であるとしました。

出金分の使用を反対していても、婚姻関係が続いていれば、使用自体は正当化されるとの理論です。

そこで、裁判所は、個別に出金の使途を確認していきます。

 

生活費、学費、習い事費用、障害対応費用及び転居費用の出金

被告は、被告及び長男の生活費(医療費を含む。)として月額約25万円、長男の習い事費用として月額約10万円、障害対応費用として長男が大学生になって以降月額10万円を使用するなどし、また、転居費用として約66万円を支出したと主張。

原告は、生活費等の内容が判明せず、不相当に高額であるなどと反論。

裁判所は、被告及び長男は東京都内で生活していた上、長男は長期間の診療していたこと、被告に関しても相応の診療が必要であったことを考慮すると、生活費及び医療費として月額25万円の負担が不当に高額であるとまではいえないと指摘。

また、長男の習い事の月謝や、長男に対して負担しなければならなかった費用も、不相当に高額であるとまではいえないとし、学費に関しては原告・被告間に争いはないと確認。


以上に加えて、被告が、上記のとおり説明している支出とは異なる事柄、例えば何らかの被告個人の享楽のための支出等に本件引出金を用いたことをうかがわせる証拠も見当たらないことに照らすと、被告の主張する上記各支出が委託の趣旨に照らして不相当であるとまではいえないとしました。

 


裁判費用等も応訴費用なのでOK


被告は、原告との裁判のための弁護士費用、調査費用等にも本件引出金を用いたと主張するところ、原告との調停・裁判に応じる必要が生じた理由は、原告が被告に対して離婚を求めるためのものであった上、原告の不貞が婚姻関係破綻の原因となっていることや、被告のみが本人として原告の訴えに応じるとすることとの不均衡を考慮すると、被告が、本件引出金を弁護士費用や調査費用に用いることが、直ちに上記委託の趣旨に反するとまではいえないとしました。

他の事案でも出金、使用が正当化されるものではありませんが、有責配偶者からの離婚請求への対応費用などは正当化される可能性もあるということです。

このような点から、裁判費用として支出した分も、上記委託の趣旨に反した支出であるとまではいえないとし、被告による本件引出金の使用が、委託の趣旨に反したものとはいえず、本件引出が法律上の原因のないものとはいえないと結論づけ、夫の請求を棄却しました。

 

不貞問題等があり、離婚裁判が棄却されているという状況下でもあるので、すべての事例でこのような結論になるものではありませんが、使途の例として参考になるのではないでしょうか。


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