店舗の立退料相場と裁判例の解説。正当事由なしとして更新拒絶を否定。

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FAQ(よくある質問)

 

Q.店舗の立退料相場は?

店舗物件は立退料が高額になりがちです。相場は、代替店舗の可能性や建物利用の必要性など諸事情から判断されますが、高額の立退料でも明渡が認められないこともあります。

老朽化した建物で、立退料の提示をしても、賃貸借契約の更新拒絶が認められない、明渡が否定されることも多いです。それだけ借主の権利は強いです。

店舗物件で、貸主が得ていた賃料が月額10万5000円、かなりの老朽化、立退料提示1000万円でも、貸主の明渡請求が否定された裁判例があります。

東京地方裁判所令和2年8月31日判決です。

この記事は、

  • 立退料の紛争中
  • 建物所有者で、明け渡してもらいたい

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.6

 

事案の概要

事業用賃貸物件の建物の明渡請求事件です。

原告が貸主。

賃貸借契約を被告株式会社Y1との間で締結。

賃貸借契約の更新を拒絶して明渡を求めた内容。

建物は耐震診断の結果によると倒壊の危険が高く建て直す必要があることなどから、原告による更新拒絶には正当事由があると主張。

被告Y1は、被告株式会社Y2との間で転貸借契約もしており、これも終了したと主張。

主位的に無条件に、予備的に1000万円又はこれと格段の相違のない範囲において裁判所が認定する相当額の立退料の支払と引換えに、明渡しを求めました。

 

本件建物と賃貸借契約の内容

本件建物は、登記簿上2棟の建物で、木造瓦葺2階建となっているものの、現況は1棟の建物で、木造亜鉛メッキ鋼板葺3階建。

平成27年6月1日当時、前所有者が所有。

前所有者は、平成27年6月1日、被告Y1との間で、本件貸室を次の約定で賃貸する旨合意し、その頃、被告Y1に対し、同合意に基づき、本件貸室を引き渡しました。


使用目的 被告Y1は、第三者に転貸する目的をもって本件貸室を使用する。ただし、被告Y1が本件貸室を使用することを妨げない。
賃料 賃料は、1か月10万5000円(消費税別)と定め、被告Y1は、毎月28日限り翌月分を支払う。

保証金 被告Y1は、保証金として70万円を前所有者に預託する。保証金は、解約時に15%(別途消費税)を償却して返還。

賃貸借期間 賃貸借期間は、平成27年6月6日から3年間。

特約 賃借人及び転借人は、本件貸室の使用に当たり、騒音等の迷惑行為を行ってはならない。賃貸人は、賃借人が当該義務に違反した場合において、当該義務違反により契約を継続することが困難であると認められるに至ったときは、契約を解除することができる。

 

本件建物は店舗として利用

被告Y1は、平成27年6月頃、被告Y2との間で、賃料月額16万円(その後、月額17万円に変更)の約定で本件貸室を転貸する旨合意し、引き渡し。

被告Y2は、本件貸室において、「B」という名称のレストランを営業

原告は、平成29年3月24日、前所有者との間で、本件建物を買う旨合意し、その所有権を取得。

 

明渡の調停

原告は、平成29年9月5日、東京簡易裁判所に対し、被告Y1を相手方として明渡しを求める民事調停を申し立て。

被告Y1に対し、調停申立書をもって、本件賃貸借契約を更新しない旨通知。同調停は、平成30年1月19日、不調により終了。


原告は、平成30年5月10日送達の本件訴状をもって、被告Y2に対し、本件賃貸借契約が同年6月5日期間満了により終了することを通知。

 

被告らの立退料に関する主張

被告Y1は、本件貸室を自由に転貸することができるものとして賃借しており、現在の転借人が撤退しても他のテナントに賃貸することで永続的に賃料収益を上げることができたのであるから、立退料としては2810万円が相当であると主張。

被告らは、本件建物は、改修工事が可能な状態と主張。

修繕義務を負う原告が上記費用を負担として補強工事を行うべきであると主張しています。

被告Y2は、立退料として、本件貸室から移転することを余儀なくされることにより、少なくとも4423万8901円(内装工事費2127万6000円、差額賃料242万9544円、新規物件礼金26万1131円、仲介手数料26万1131円、営業利益補償949万9080円、人件費補償1011万2015円、引越し業者費用30万円、産廃費用10万円)の損失が生じ、本件更新拒絶に正当事由が充足されるためには、立退料として、上記損失が補償されることが必要であると主張しています。

 

 

建物の老朽化状態の認定

本件建物は、遅くとも昭和26年頃までに建築されたもので、現在、建築後既に約70年が経過しており、老朽化が著しいと認定。

すなわち、外壁はモルタル仕上げになっているが、ひび割れしており、雨水が浸入してラス網に錆、腐りが生じ、場所によっては既にモルタルが著しく剥落している部分もあると指摘。

本件建物には基礎が存在せず、木造の土台や置石がある部分もあるものの、土台は腐ってしまっており、また、柱が地面に直接置かれ、穴が開いて地面から浮いてしまっている状態。

本件建物1階内部につき、床部分は、コンクリートないし木材が取れ、砂がむき出しになっていると認定。

壁部分には、筋交いは設置されていない状態。

梁は、現在の一般的な規格より細く、割れていると指摘。

天井部分は、2階から水漏れが生じていることによって下がってきており、外側部分のベニヤは簡単に剥がれてしまう状態。本件建物2階部分及び3階部分については、これを調査した証拠はないものの、本件建物外壁及び1階部分の上記状況に照らして、同様の状況であるものと推認されると指摘。


また、建物の耐震性能につき、上部構造評点が0.7未満の場合は「倒壊する可能性が高い」(4段階のうち最も危険性が高い)と評価されるところ、本件建物は、1階部分と外観により耐震診断した結果、1階部分X方向の上部構造評点が0.192、Y方向が0.673、2階部分X方向が0.233、Y方向が0.351であることが認められる状態。

 

耐震強度を備えていない可能性

これらの事実によれば、本件建物は、老朽化等が原因で耐震強度が低下し、十分な耐震強度を備えていない可能性が非常に高く、また、修繕を要する部分が多数存在することが認められ、耐震補強を含む何らかの対応をする必要があるものということができるところ、証拠及び弁論の全趣旨によると、少なくとも本件建物につき上部構造評点を1.0以上(「一応倒壊しない」)とするために必要な耐震補強工事をする場合、約1700万円の費用を要することが認められるとしています。


なお、被告らは、耐震診断書における上部構造評点の計算方法について縷々述べて、その信用性を争っている態度。

確かに上記耐震診断書は、本件建物の1階部分と外観を調査した結果を踏まえて本件建物の耐震性を診断したもので、その意味では本件建物の上部構造評点を推測するものであり、これによって本件建物の耐震性を正確に認定することはできないけれども、その内容からして、上記のとおり、本件建物が老朽化等の原因で耐震強度が低下し、十分な耐震強度を備えていない可能性が非常に高いという事実を認定することができる程度には信用できるものということができるとしています。

また、被告らは、証拠を挙げて、本件建物につき100万円程度から300万円程度、多くても520万円程度で耐震補強工事が可能であるなどと主張するけれども、これらの証拠は、飽くまで一般論、一般例に基づくものにすぎず、上記見積書の信用性を左右するには足りないとしています。

 

本件店舗の収益状況

被告Y2は、平成27年6月から本件貸室において本件店舗を開業して以来、順調に収益を上げており、その売上額は、平成27年が650万9038円、平成28年が3004万7136円、平成29年が3572万7936円、平成30年が4073万6459円で、少なくとも被告Y2代表者及びその家族の生計の維持には、その営業収入が不可欠であると認定。

本件建物内にある本件店舗は、JR駅から徒歩一、二分の場所にあり、その主な客層は周辺の在住者、在勤者で、地域に密着した営業形態であるところ、JR駅周辺で飲食業を営むことができる同水準の代替店舗を確保することが容易であると認めるに足りる証拠はなく、被告Y2代表者が本件貸室を転借し、本件店舗を開店するに至った経緯に鑑みれば、むしろ上記代替店舗を確保するのは容易でないことがうかがわれるとしています。

これらの事情によると、被告Y2が本件貸室を使用する必要性が非常に高いものといわなければならないと認定。

 

更新拒絶の正当な事由は否定

以上を総合すると、本件建物の耐震強度不足、老朽化等の事情を十分考慮しても、本件更新拒絶につき正当事由があると認めることはできず、原告が本件建物を使用する必要性が高いと認定できない本件においては、原告が一定の財産上の給付を申し出ていること斟酌しても、これによって正当事由の不足を補完することはできないものといわなければならないとしました。

老朽化と立退料1000万円でも更新拒絶が否定されてしまっています。

貸主が得ていた賃料が月額10万5000円となると、立退料としては高額に感じますが、店舗の代替性を優先した内容になっています。貸主としては厳しい判断ですね。



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