滞納家賃の保証人への請求が一定額に制限された裁判例を解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.滞納家賃の保証人への請求は?

家などの建物を借りる賃貸借契約の保証人の責任が問題になることは多いです。

長期間、家賃が滞納した後に保証人に請求がされたとして、あわてた保証人からの相談があります。

このような請求は、過去の滞納状況、請求の有無によって、一定額に制限されることもあります。

東京地方裁判所令和2年11月10日判決でも、このような制限がありましたので、紹介しておきます。

 

この記事は、

  • 家賃の保証人として多額の請求書が届いた
  • 家賃滞納がある大家さん

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.8

 

事案の概要

原告が本件建物の貸主。

A社が賃借人。被告が保証人でした。

貸主から保証人である被告に対し、保証債務履行請求権に基づき、

未払賃料421万2447円及び賃料に対する平成31年2月28日までの確定遅延損害金38万9581円、

未払更新料23万円、

賃貸借契約解除日の翌日である平成31年3月21日から本件建物の明渡日である同年7月11日まで1か月46万円の割合による賃料相当損害金合計170万6450円等の支払を求めた事件です。

 

賃貸借契約の内容

原告は、不動産の売買・賃貸・所有・管理及び利用等を目的とする有限会社。

原告は、A社に対し、平成21年8月7日付けで、本件建物を賃貸。

ア 契約期間 平成21年8月18日から平成23年8月17日
イ 賃料及び支払方法 月額23万円(毎月末日限り翌月分を支払う。)
ウ 更新料及び支払方法 賃料1か月分(契約期間満了日までに支払う。)
エ 賃料及び更新料の遅延損害金 年14%
オ 明渡遅滞による損害金 賃料の2倍相当額

被告は、原告との間で、平成21年8月7日付けで、本件賃貸借契約から生じるA社の債務を連帯して保証するとの合意を書面でしました。

なお、被告は、当時、A社の代表者と婚姻していたが、その後離婚という関係。

 

賃貸借契約の更新条項

本件賃貸借契約の契約書には、自動更新の条項が設定されています。

賃貸借契約期間満了の2か月前までに賃借人(A社)からの期間満了により賃貸借契約を終了させる旨の書面による通知がなく、かつ期間満了の6か月前までに賃貸人(原告)からの正当な事由があると認められる更新拒絶の通知がなかった場合には、期間満了の翌日から起算して更に2年間本契約は更新される旨の条項がありました。


本件賃貸借契約は、本件更新条項により、平成23年、平成25年、平成27年及び平成29年の各8月18日、それぞれ契約期間を2年間として更新。

 

賃貸借契約の解除と訴訟提起

原告は、A社に対し、平成31年3月16日到達の書面により、未払賃料402万5000円を同月20日までに支払うよう催告するとともに、同日までに支払がなければ本件賃貸借契約を解除するとの意思表示をしました。

A社は、催告期間内に上記未払賃料を支払わず、本件賃貸借契約は、平成31年3月20日の経過により解除されました。

原告は、平成31年3月28日、A社及び被告に対し、本件訴訟を提起。

その後、A社に対する弁論は分離され、令和元年7月12日、原告の請求を全部認容する判決がなされ、確定。

A社は、原告に対し、令和元年7月11日、本件建物を明け渡し。

ここで、被告の保証人としての責任が問題となったのです。


 

家賃滞納に至る経緯

A社は、平成24年夏頃から度々賃料を滞納するようになり、平成26年6月末には滞納賃料額が3か月分となり、その後も1か月分ないし2か月分の賃料の滞納が継続し、平成27年3月末には滞納賃料額が4か月分に達しました。

平成27年8月18日の契約更新時における滞納賃料額は23万円。

その後、同年12月24日に至るまで賃料の支払はなく、同年11月末には滞納賃料額が5か月分に。

以後、期間満了日である平成29年8月17日までの間、ほぼ常に、滞納賃料額が3か月分以上に達しており、賃貸人から更新拒絶の通知をする期限である同年2月17日時点で135万3317円、期間満了日である同年8月17日時点で119万1102円の賃料の滞納が累積。

原告及びA社のいずれも更新拒絶通知をしなかったため、本件賃貸借契約は、本件更新条項により、平成29年8月18日、契約期間を2年間として更新。

上記更新後、平成31年3月20日に原告が本件賃貸借契約を解除するまでの間、A社は、原告に対し合計115万円の賃料を支払うにとどまり、解除時点で滞納賃料額は421万2447円に。

 

滞納賃料の督促

原告は、平成26年以降、A社が賃料を滞納する都度、B社を介してA社への支払督促を行っていたほか、A社に対して内容証明郵便を送付し、賃料の支払を求めたこともありました。

原告代表者は、A社の賃料滞納について、大家の会で相談するなどしていたが、賃貸借契約を解除するには滞納が3か月以上連続する必要がある(累積3か月分以上では足りない)との法的に不正確な理解を有していたことや、明渡しの裁判を行うには費用や手間がかかるとの認識があったことから、契約解除に踏み切るのが遅れ、平成31年3月20日に至って本件賃貸借契約を解除し、同月28日に本件訴訟を提起。

 

保証人への連絡・請求はなし

原告から被告に対する連絡状況について、原告代表者は、平成29年の春頃及び秋頃並びに平成30年の春頃、被告に対して電話をかけた旨陳述するが、被告はこれを否認。

原告代表者の上記陳述を裏付ける客観的な証拠はない状態。

また、原告から被告に対し、書面にて連絡がなされた形跡はうかがわれません。

 

保証人への家賃請求が信義則違反になるとの最高裁判決

本来相当の長期間にわたる存続が予定された継続的な契約関係である建物賃貸借契約においては、保証人の責任が無制限に拡大する可能性・危険性があることに鑑み、賃借人が継続的に賃料の支払を怠っているにもかかわらず、賃貸人が、保証人にその旨を連絡することもなく、いたずらに契約を更新させているなどの場合には、保証債務の履行を請求することが信義則に反するとして否定されることがあり得ると解すべきであるとの最高裁判決を確認(最高裁平成9年11月13日第1小法廷判決)。

 

解除が遅れたのは賃貸人の責任


A社は、平成24年夏頃から本件賃貸借契約に基づく賃料の支払を怠るようになり、平成25年8月18日から2年間の契約期間においても、滞納賃料額が3か月分に達することが複数回あり、平成27年8月18日から2年間の契約期間においては、ほぼ常に、滞納賃料額が3か月分以上に達しており、賃貸人から更新拒絶通知をする期限である平成29年2月17日時点で135万3317円、期間満了日である同年8月17日時点で119万1102円の滞納が累積。


かかるA社の賃料滞納状況に照らせば、原告が、A社に対し、平成29年2月17日までに更新拒絶の通知をしていれば、更新拒絶につき正当事由があると認められることは明らかであって、同年8月17日をもって本件賃貸借契約は終了していたと考えられるが、原告は、特に合理的な理由もうかがわれないのに更新拒絶の通知をせず、本件賃貸借契約は、本件更新条項により、同月18日、契約期間を2年間として更新されることとなったと指摘。

原告は、上記更新後、さらに1年7か月以上経過した平成31年3月20日に至って本件賃貸借契約を解除し、同月28日に本件訴訟を提起したが、この間、滞納賃料額は増え続け、解除の時点で421万2447円に達していたと認定。

原告による契約解除が遅れたのは、原告代表者が賃貸借契約解除の要件について誤解していたことや、訴訟に要する費用や手間を慮ったことによるもので、専ら原告側の事情に起因すると言わざるを得ないと指摘。

本件訴訟提起前に、原告が、連帯保証人である被告に対し、A社の賃料滞納状況を連絡したり、催告書を送付するなどの措置を行った事実は認められないとしています。

 

賃貸人は更新拒絶をすべきだった責任

原告は、A社に対し、平成29年2月17日までに更新拒絶の通知をし、同年8月17日をもって本件賃貸借契約を終了させるべきであったもので、原告が、被告に対してA社の賃料滞納状況を連絡しないまま、同年2月17日から1年間が経過した後である平成30年2月18日の時点で、未だに更新拒絶も解除もせずに本件賃貸借契約を存続させていたことは、賃貸人としての権利行使を著しく遅滞したものと評価せざるを得ず、同日以降に発生した賃料及び賃料相当損害金を被告に請求することは、信義則に反し、権利濫用にあたり許されないというべきであるとしました。

そうすると、原告の請求は、平成30年2月17日までの滞納賃料150万6273円及び賃料に対する同日までの確定遅延損害金1万0280円の合計151万6553円並びにうち150万6273円に対する同月18日から支払済みまで約定の年14%の割合による遅延損害金、平成29年8月18日の更新時に発生した更新料23万円及びこれに対する弁済期後の日である同月19日から支払済みまで約定の年14%の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないとして、一定の範囲に責任を限定しました。

 

保証人が責任を負った範囲

滞納が続いていたのだから、更新拒絶ができたはず。

更新拒絶通知を出せた時期から1年後までの分についてのみ限定して、保証人の責任を認めています。

賃貸人からの更新拒絶通知時期が更新時期から半年前なので、保証人の責任を更新時期から半年後までと判断しているものです。

家賃が23万円で、滞納賃料150万円の責任なので、約6.5ヶ月分の範囲で責任を認めています。

突然、高額の請求をされた保証人や、滞納家賃がたまっている家主の方は参考にすると良い数字でしょう。

 

保証人の責任と民法改正

2020年の民法改正により、賃貸借契約の保証人でも限度額の明記が必要になっています。

以前の事件では、このように長期間放置された後に保証人に対して責任追及されることがよくありますので、このような主張をしっかりして適正範囲に限定してもらうべきでしょう。

 

このような家賃請求の信義則による制限は、保証人に対するものです。

賃貸人に更新拒絶の義務があるような記載もありますが、借主自身は全責任を負いますので、誤解しないようにしましょう。

 

保証人に請求書が届いたら

突然、家主や不動産管理会社から多額の請求書が届いた場合、払うかどうかは保留にし、まず、事実確認をしましょう。

過去の滞納状況、支払状況を開示してもらう、

賃貸借契約書がなければ、写しをもらう、

現在、明渡が済んでいるかを確認するのが大事です。

明渡が済んでいない場合には、責任が発生し続けるリスクがあるので、借主本人に状況確認をしましょう。

過去の滞納状況が開示されたら、本件のような裁判例をチェックし、争えるポイントがないかどうかを確認していくのが良いでしょう。

 


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