名義貸しの利益分配合意を無効とした最高裁判決を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.名義貸しの利益分配合意は無効?

宅建名義貸しの利益分配合意を無効とした判例があります。

最高裁令和3年6月29日 第三小法廷判決です。

違法な名義貸しに関連する合意の場合、無効とされ、その合意内容を裁判で強制できないこともあります。そのような紛争では、参考になる判例でしょう。


この記事は、

  • 宅建の名義貸しトラブル中
  • 名義貸しなどの利益分配合意をした

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.9

 

事案の概要

上告人と非上告人の利益分配合意の効力が問題になった事例です。

ここに宅建士の名義貸しの問題が絡んでいたため、合意が公序良俗違反になる疑いがあるとされました。

 

被上告人は、平成28年10月頃、不動産取引に係る事業を行う旨の計画を立てました。

人脈等を活用して、新たに設立する会社において不動産取引を継続的に行うことが予定。


その後、宅地建物取引士の資格を有する人物が上記計画に加わり、同人を新たに設立する会社の専任の宅地建物取引士とすることになりました。

同人が、平成29年1月、上記計画に従って上告人会社を設立。代表取締役に就任。

同人を専任の宅地建物取引士として宅地建物取引業の免許を受けました。

 

不動産売買契約に関する名義貸し合意

被上告人は、平成29年2月頃までに、不動産仲介業者から、C株式会社の所有する土地建物の紹介を受けました。

被上告人は、本件不動産に係る取引を行うことに。

上告人会社代表者に対する不信感から、本件不動産に係る取引に限って上告人の名義を使用し、その後は関与させないことにしようと考えました。

そこで、同年3月7日、被上告人と上告人との間で、要旨次のとおりの合意が成立。

 

本件不動産の購入及び売却については上告人の名義を用いるが、被上告人が売却先を選定した上で売買に必要な一切の事務を行い、本件不動産の売却に伴って生ずる責任も被上告人が負う。

本件不動産の売却代金は被上告人が取得し、その中から、本件不動産の購入金及び費用等を賄い、上告人に対して名義貸し料として300万円を分配する。

上告人は、本件不動産の売却先から売却代金の送金を受け、同売却代金から上記購入代金、費用等及び名義貸し料を控除した残額を被上告人に対して支払う。

本件不動産に係る取引の終了後、被上告人と上告人は共同して不動産取引を行わない。

この利益分配合意が問題とされたものです。

宅建の名義貸し

 

売買契約の成立

本件不動産については、平成29年3月、Cを売主、上告人を買主とし、代金を1億3000万円とする売買契約が締結。

さらに、同年4月、上告人を売主、Dを買主とし、代金を1億6200万円とする売買契約が締結。

これらの売買契約については、被上告人が売却先の選定、Bとのやり取り、契約書案及び重要事項説明書案の作成等を行いました。

被上告人は、平成29年4月26日、上告人に対し、本件不動産の売却代金からその購入代金、費用等及び名義貸し料を控除した残額が2319万円余りとなるとして、同売却代金の送金を受け次第、本件合意に基づき同額を支払うよう求めました。

上告人は、自らの取り分が300万円とされたことなどに納得していないとして上記の求めに応じず、1000万円のみを支払いました。

 

そこで、被上告人が、上告人に対し、本件合意に基づいて残額として1319万円余りの支払を求めるなどしたものでした。

 

高等裁判所の判断

高等裁判所は、本件合意の効力が認められると判断して、被上告人の請求を認容。

利益分配合意に基づく支払を命じました。

 

最高裁判所は破棄差戻し

最高裁は、合意に基づく1319万円の認容部分を破棄。差し戻しました。

宅建業の名義貸しや利益分配合意は無効、今回の合意内容を審理する必要があるとしました。

 

 

宅建業の名義貸しはNG

宅地建物取引業法は、第2章において、宅地建物取引業を営む者について免許制度を採用して、欠格要件に該当する者には免許を付与しないものとし、第6章において、免許を受けて宅地建物取引業を営む者(以下「宅建業者」という。)に対する知事等の監督処分を定めていると指摘。

そして、同法は、免許を受けない者が宅地建物取引業を営むことを禁じた上で、宅建業者が自己の名義をもって他人に宅地建物取引業を営ませることを禁止しており(13条1項)、これらの違反について刑事罰を定めているとしています。

同法が宅地建物取引業を営む者について上記のような免許制度を採用しているのは、その者の業務の適正な運営と宅地建物取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、これにより購入者等の利益の保護等
を図ることを目的とするものと解されると指摘。

以上に鑑みると、宅建業者が無免許者にその名義を貸し、無免許者が当該名義を用いて宅地建物取引業を営む行為は、同法12条1項及び13条1項に違反し、同法の採用する免許制度を潜脱するものであって、反社会性の強いものというべきであると言及。

 

名義貸しの合意も利益分配の合意も公序良俗違反

無免許者が宅地建物取引業を営むために宅建業者との間でするその名義を借りる旨の合意は、同法12条1項及び13条1項の趣旨に反し、公序良俗に反するものであり、これと併せて、宅建業者の名義を借りてされた取引による利益を分配する旨の合意がされた場合、当該合意は、名義を借りる旨の合意と一体のものとみるべきであるとしました。


したがって、無免許者が宅地建物取引業を営むために宅建業者からその名義を借り、当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は、同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして、公序良俗に反し、無効であるというべきであると判断しています。

名義貸しの合意も、これに関して利益分配の合意がされても、一体として公序良俗違反で無効になるとの判断です。

無効なので、利益分配の合意どおりに支払う義務はないという結論になります。

 

名義貸しの疑い

本件合意は、無免許者である被上告人が宅建業者である上告人からその名義を借りて本件不動産に係る取引を行い、これによる利益を被上告人と上告人で分配する旨を含むものであると認定。

そして、被上告人は本件合意の前後を通じて宅地建物取引業を営むことを計画していたことがうかがわれると指摘。

これらの事情によれば、本件合意は上記計画の一環としてされたものとして宅地建物取引業法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものである疑いがあるとしました。

上告人は、原審において、本件合意の内容は同法に違反する旨を主張していたものであるところ、原審は、上記事情を十分考慮せず、同主張について審理判断することなく本件合意の効力を認めたものであり、この判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中、上告人敗訴部分は破棄を免れないとしたうえで、本件合意の効力等について更に審理を尽くさせるため、上記部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てにつき、本件を原審に差し戻すこととするとの判断です。

不動産取引の名義貸しだけではなく、その合意前後で宅建業の名義貸しも問題になっているのではないか、そのような違法性がある合意ではないかを審理すべきであるとの判断です。


宅建士の名義貸しと不法行為

宅建士の名義貸し問題は、詐欺などの不法行為が行われた場合にも問題となります。

原野商法詐欺など、不動産取引を含む詐欺事件では、宅建士の名義貸しがあった場合、そのような名義貸しがなければ被害が発生しなかったとして、共同不法行為責任を宅建士にも追及することが増えています。

名義貸しをした宅建士に対しても賠償責任を認める裁判例も多くあり、名義貸し責任は厳しく責任追及されています。

 

合意と公序良俗違反

民事事件では、合意は重要です。

人と人が合意しているなら、その効力を認めてあげようというのが民事事件の基本ルールだからです。

しかし、あまりにもひどい合意は、公序良俗違反として無効になるのです。

公序良俗違反とされるものは、違法性が高いものがほとんどです。

たとえば、闇金融の高金利の合意は、出資法違反などの理由で、無効とされます。

違法ギャンブルの支払も、賭博罪という刑法違反の理由で、無効とされます。

今回の名義貸し利益分配も、法律で違法とされている名義貸しと一体化していることから無効という原則を導き出しています。

このような名義貸しと一体となった合意については、宅建士に限らず、他の業界でも適用されることでしょう。

名義貸しが禁じられている業界における利益分配合意は、同じように無効とされる可能性が高いです。

違法な名義貸し自体、おこなわないほうが良いのですが、万一、そのようなトラブルで利益分配合意がされたような場合には、この判例の論理を使うことができるでしょう。

 

こちらの最高裁判決は動画でも解説しています。

 


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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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