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FAQ(よくある質問)

 

Q.パワーストーンの高額販売は違法?

パワーストーンなど、価値があるのか不明なものを高く売りつけられた場合、その態様によって違法だとして損害賠償請求が認められることがあります。

有名なのが、高額な天珠を繰り返し販売した行為が違法とされた裁判例です。

ただし、勧誘の一部が違法とだけされています。

大阪高等裁判所令和元年12月25日判決です。

 

この記事は、

  • 高額商品を売りつけられた
  • 売買契約を争いたい

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.12

 

事案の概要

消費者が、業者の店長や従業員らから勧誘を受け、高額の石を購入した事件。

6回にわたり天珠を買う旨の契約をして代金を支払いました。

それらの契約は、従業員らによる詐欺などの不法行為に当たる販売方法により締結されたと主張。

不法行為による損害を被ったとして、損害賠償金約330万円の請求をした事件でした。

 

予備的請求でクーリングオフ

不法行為以外に、予備的請求もありました。

5回にわたり天珠を買う旨の本件契約2ないし6については、その後にそれらの契約を特定商取引法によるクーリングオフにより解除したと主張。

不当利得返還請求権に基づき、本件契約2ないし6の合計代金額に相当する291万6000円等を請求というものでした。

 

地方裁判所は損害を認める

消費者の主張を認め、不法行為責任を認定。

損害賠償金約320万円等を支払うよう命じました。

業者が控訴。

 

高等裁判所は、消費者の請求を一部認めるという内容にしました。

地方裁判所よりも減額されています。

いわゆる霊感商法に当たるような違法な態様の勧誘を主張していましたが、それは否定されています。

高額すぎる売却の場合、公序良俗違反とされることもありますが、こちらも否定されています。


 

一部の不法行為を否定

本件契約2の締結について、不法行為を否定しました。

控訴人従業員らは、被控訴人に対し、本件商品2を代金108万円で購入するように勧誘し、被控訴人は、それに応じて購入したものでした。


被控訴人は、従業員の詐欺行為によって契約を締結させられたものであると主張。しかし、これらの事実を認めるに足る証拠はないとして排斥されています。

 

イオンモール内での長時間の勧誘

また、本件契約2は社会的相当性を欠く違法な勧誘行為により締結されたもので、本件商品2の購入に当たって、控訴人従業員らが、被控訴人が契約締結を決意するまで数時間にわたって被控訴人を取り囲むなどして購入を勧誘したため、仕方なく購入したと主張し、その旨の供述をしていました。

しかし、数時間にも及ぶ勧誘行為の具体的なやり取りについて、何ら明らかにしておらず、被控訴人の供述以外に控訴人従業員らが被控訴人が購入するまで取り囲んで勧誘したとの事実については、これを認めるに足りる客観的な証拠はない上、控訴人店舗は、イオンモール店内に、他の店舗を含め多人数の消費者が行き来するモール通路に面する場所にあり、通路に面しては店舗巾の全空間が解放されていることからすると、被控訴人が購入に関心がなく、その意思のないことを明らかに示しているのに、被控訴人主張のような態様でのあからさまに違法行為となる勧誘行為をすれば、人目についたり、イオンモールに対して苦情が寄せられたりして、店舗の存立自体にも影響すると考えられると指摘。

したがって、控訴人従業員らが被控訴人を取り囲んで商品を購入する意思のない被控訴人に対し、執拗に、商品を購入するまで勧誘するといった行為があったとは認められないとしました。

 

むしろ、被控訴人は、平成28年8月8日に自らの意思で控訴人店舗に再来店して本件商品1を購入したように、その後も天珠に興味をもっていたといえることからすると、被控訴人が本件商品2を購入するまでに二、三時間を要した理由は、本件商品2に興味はあるものの、それが高額であるために躊躇していたであろうことによることは容易に想像できるとしています。

 

運気が向上するとの説明も詐欺とまではいえない

裁判所は、控訴人従業員らは、本件商品2は珍しい赤色の龍眼天珠であり、運気が向上するということを説明したものと認定。

しかし、この説明をもって、被控訴人が確実に運気が向上するものと信じてこれを購入したものとは認められないし、控訴人従業員の説明が虚偽を用いたとして詐欺行為に当たるとすることはできないとしました。

 

また、控訴人従業員らの説明がそれを超えて、本件商品2を購入しないと災いが降りかかるなどと被控訴人に対して恐怖を与えたり、心理的に不安な状態に陥れて商品を購入させようとするなどいわゆる霊感商法に当たるような違法な態様の言動があったことを認めるに足りる証拠はないとしています。

 

資力がなくても不法行為にはならない

被控訴人は、100万円もするような商品を購入する経済的余裕はなく、自己の収入状況に照らすと購入するはずもない買い物であることを根拠に、控訴人従業員らによる不法行為に当たるような勧誘行為があった旨主張していました。


確かに、被控訴人は、本件契約2当時は非正規社員であり、本件商品2を現金払いで購入することのできる預貯金はなかったことが認められ、被控訴人にとっては、本件商品2が108万円(消費税込み)と高額なものであり、被控訴人の当時の給料からは非日常的な高価な買い物であったものと思われると指摘。

しかし、被控訴人は、本件商品2に興味を持って、これを購入したいとの意思を有していたもので、実際に、本件契約2の締結時(平成28年8月14日)に、上記代金のうち16万2000円をクレジットカード(楽天カード)で支払い、当日はイオンカードの新規申込み受付時刻を過ぎていたことから、その日に全ての決済をすることはできず、3日後の同月17日に再度控訴人店舗に赴き、残代金のうち43万2000円をクレジットカード(三井住友カード)で支払った上、残代金48万6000円をイオンカードで支払うことにしてイオンカードの新規申込みをして一旦決済していること、ところが、当日は同カードの手数料無料キャンペーン期間中ではなかったため、分割支払をする場合の手数料が発生することになるところ、それを免れるため、控訴人従業員のアドバイスを受けて、手数料無料のキャンペーン期間となる同月29日に再々度控訴人店舗に赴いて本件商品2を一旦返品扱いとする処理をし、手数料無料キャンペーン期間中である当日に購入したことにして手数料無料での分割支払とする方法を採ったものと認定。

 

このような被控訴人の行動は、控訴人従業員の指導に基づいたものであったことを考慮しても、上記期間中のいずれの時点においても本件契約2を解消する旨を述べる機会があったことにもなるのに、それをすることなく、ひたすら支払方法を算段していたということができるのであって、これからすると、被控訴人には本件商品2を購入したいという強い意思が顕れているということができると指摘。

また、このことは、高額な買い物ではあるが、上記方法を採ることにより被控訴人の給与でも支払い可能であるとの判断があったものと思われるとしています。被控訴人は、4年制の大学を卒業し、上記契約締結当時、システム開発に従事する34歳の会社員であり、その判断能力に特段の問題はなかったことからしても、被控訴人の支払可能との判断に基づく購入であったものと結論づけました。

複数回の接触があったことから、冷静になれる時間もあっただろうとの前提でしょう。

 

アポイントメントセールスは否定

不法行為でなければ、クーリングオフができないか検討することになります。

訪問販売ではなくても、アポイントメントセールスであればクーリングオフができます。

例えば、販売業者が、電話等により、当該売買契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所への来訪を要請する方法により誘引し、営業所で販売する態様です。

商品2の勧誘経緯として、本件商品1を購入した時点で、1週間ほど後の日である8月14日に四柱推命による運勢診断士により浄化してもらえるということで来店を予約させたことが認められると指摘。

しかし、店舗内で次回来店の予約をさせているという点で販売目的隠匿型アポイントメントセールスとの差異があるといえる上、控訴人は、次回来店当日に、控訴人店舗において、被控訴人の来店目的のとおり本件商品1の浄化を行っており、その点に虚偽は見られないとしています。

しかも、天珠(パワーストーン)とその浄化は古くから不可分のものとして行われており、浄化目的での来店予約自体は販売促進のために考案された新手の詐欺的手法とは異なるものであるから、浄化目的での来店を促したことをもって直ちに販売目的を隠匿して来店予約をさせたものということはできないとしました。

浄化を行う運勢診断士は、控訴人店舗のブース内にいて、被控訴人の持参した本件商品1を浄化したほか、複数の天珠商品の中で本件商品2の波動が被控訴人に最も合っているということを述べただけで、それ以上に、被控訴人に対して同商品を購入するように仕向けるという販売勧誘行為を行った事実はないと指摘。

被控訴人が浄化を受けるために予約時間に控訴人店舗を訪れたのにしばらく待たされて、その間に控訴人従業員らから店舗内で本件商品2などの天珠の説明を受けることにはなったが、当日は先行客によりブースが塞がっていたというのであるから、控訴人において作為的に待ち時間を作り、被控訴人に対して商品を見せて購入を勧めていたとまでは認められないとしました。

アポイントメントセールスの主張も否定されたため、初回の本件商品2の購入は合法と判断されたことになります。

これに対し、さらにその後の販売は違法とされました。

 

 

支払不能状態を知って売るのは違法

本件契約3ないし6についても、控訴人従業員らによって、商品の購入を拒絶する被控訴人に対し、つきまとい(囲い込み)や長時間にわたる勧誘行為などの違法行為がされたものとは認められないとしました。

しかしながら、被控訴人は、当時、非正規の会社員で賞与の支給されない勤務条件であり、本件商品2を購入するに当たっては、数種類のカードを組み合わせて、なんとか支払可能となる状態であったものと認定。

このことは、本件店舗に来店した客について、商品購入の有無に関わらず「来店ノート」に顧客情報を記録していたこと、控訴人従業員らが被控訴人に対してそのような商品の決済方法を指導していたことからすれば、同人らは被控訴人の経済状況を十分に把握できたものといえると指摘。

被控訴人の経済力からは更なる高額な天珠購入は被控訴人の生活を圧迫し、支払不能の状態に悪化させてしまうことを容易にうかがい知ることができたものといえるとしています。

 

そして、本件商品2の代金の支払方法は、最終的に、本件商品1の代金支払を2回の分割支払で済ませた後に、20回の分割払をするというものであるから、この上にさらに本件商品3(108万円)を購入するとなれば、この108万円の20回の分割支払分か本件商品2の支払分に同時に重なることになり、そうすると、毎月の支払額が約10万円にもなるから、被控訴人がその支払を継続することは不可能であったものと認定。

 

虚偽事実の告知での勧誘も違法理由

それなのに、控訴人従業員らは、本件商品3について関心を有している被控訴人に対し、チベットのポタラ宮殿で多くのお経を聴き強い力を持っている特別なものであり、石の価値としては400万円くらいするものであるなどと説明したほか、被控訴人が天珠を既に2個購入しているので、代金を200万円に減額するとか、本件商品4のほか2点の天珠(代金総額120万円)を景品としてプレゼントするなどとして購入を勧誘。

このような控訴人の販売方法は、被控訴人が支払困難となることを予見しながら、商品に関心を持つ気持ちに付け入って、クレジットカードを利用して商品を購入させるもので、石がお経を聴いて強い力を持っているなどと虚偽を告知して購入を勧誘するものであることや、本件商品3の価格が400万円であると説明しつつ最終的に108万円(消費税込み)で本件契約3を締結させた経過に照らせば、その商品価格についての不実告知があるといってよいほどの説明がされていると指摘。

その結果、代金の支払について正常な判断能力を失った状態にある被控訴人に本件契約3を締結させたことは、詐欺に当たるか、そうでなくても被控訴人の軽率又は稚拙な判断能力の低下に乗じた社会的相当性を欠く販売方法が採られたものとして、不法行為に当たるとしました。


その上、控訴人従業員らは、被控訴人が本件商品3の購入から4日後に控訴人店舗を訪れて、やはり同商品を購入できないと告げたのに対し、解約することはできないとして、イオンモールが閉店した後である午後11時過ぎまで3時間以上にわたり、その支払をするように求めたとも言及。

 

結局、控訴人は、9月30日、本件商品3の代金を108万円に減額することには応ずるが、上記3点のプレゼントを無しにした上で、本件商品4を21万6000円で購入する旨の提案を行い、被控訴人をして本件商品4を購入させたと認定。

このような販売方法による本件商品4以降の商品購入についても、控訴人従業員らにおいて、そのいずれについても被控訴人の経済状態に照らして高額な天珠を購入できるような状態ではないことを認識しながら、被控訴人がそれらの商品に関心を持ち、その代金の支払ができないことについて正常な判断ができる状態にないことに乗じて、その生活に必ずしも必要のない高額の天珠を購入させたものと指摘。

その販売方法も、当初購入できないと述べて断っていた被控訴人に対し、二時間位の勧誘を行ったり(本件商品5)、その数日後、特別な減額を強調した勧誘を行ったりするなど(本件商品6)、上記の本件商品3、4の販売方法と同様に、被控訴人の意図及び経済状況を無視した社会的相当性を欠く販売方法により購入させたものであったということができるのであって、いずれも不法行為に該当すると結論付けました。

 

不法行為と使用者責任

本件商品3ないし6の販売は、控訴人従業員らが、控訴人の事業(営業)の執行として行ったものであるから、控訴人は、控訴人店舗において上記販売行為に携わった控訴人従業員らを使用するものとして、同人らの不法行為について使用者としての損害賠償責任を負うとしています。


過失相殺は否定

過失相殺は、交通事故などでよく問題になる争点です。被害者側にも損害を公平に分担させるべき場合に、被害者側に過失を想定して、損害額を減らす制度です。法的な意味での過失だけではなく、落ち度があったという場合に減額されてしまうものです。投資取引での損害などでも適用されることが多いです。

今回の判断では、過失相殺は否定しています。

被控訴人は、本件契約3ないし6については、自らの経済力からすると購入できないような高額な商品について契約したものであり、その点に軽率な判断をしたそしりは免れないところであると指摘。

しかし、控訴人の本件契約3ないし6の販売方法は、被控訴人に代金の支払能力がないことを認識している控訴人従業員らによって行われた相当に悪質な販売行為であったと認められるところ、被控訴人は、控訴人に対して本件契約3を締結した4日後にやはり購入できないと告げたのにそれに応じてもらえず、逆に支払を強く求められたことから、控訴人に精神的に抑圧されたのではないかと思われ、それ以降も、被控訴人は購入資力がないことを自覚しながら、次々と高額な天珠を購入させられていったという経過に鑑みれば、被控訴人は控訴人に抵抗する気力を失い、控訴人の言いなりに近い精神状況に追い込まれていたのではないかと考えざるをえないのであって、被控訴人に上記の軽率さがあったことをもって過失相殺されるべきである過失と認めるのは相当ではないとしました。

過失相殺は否定しています。

 

 

損益相殺も否定

損害賠償請求の際に、被害者が利益を得ている場合には、それが差し引かれることがあります。

損益相殺と呼ばれる制度です。

今回は、代金分の損害が発生しているものの、その対象として石を取得しています。これをどう評価するかが問題となりました。しかし、高等裁判所は損益相殺を否定、減額はしないとの判断でした。

本件商品3ないし6の所有権を取得したものであるが、その時価が明らかでないことや、民法708条に関する判例法理の趣旨に鑑みれば、上記所有権取得による利益を損益相殺として原告の損害額から控除すべきではないとしています。

価値があるかどうかは微妙ですが、商品を取得でき、代金分は損害として請求できるという結論になっています。

 

 

結論として一部の販売が違法とされました。

悪質商法の裁判で問題になる勧誘態様などの点で違法性が否定されていますが、客観的な販売金額や支払い能力の点からして、行き過ぎた販売は違法であるとの判断がされています。

このような判断は、消費者側の立証が勧誘態様よりもラクであると思われます。使い方によっては、消費者救済の判決となるでしょう。

 


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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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