FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.家事審判に対する不服申立ては?
家事審判に対する不服申立て手段は、即時抗告。
審判告知から2週間が期限です。
今回は、この即時抗告の流れ、審理期間などを解説します。
この記事は、
- 養育費、婚姻費用、遺産分割などの家事審判を受けた
- 家事審判に不服がある
という人に役立つ内容です。
家事審判の不服申立て
家庭裁判所の審判に対しては、特別の定めがない限り、即時抗告ができます。
これが審判に対する不服申し立ての方法となります。
即時抗告については、家事事件手続法の85条に書かれています。
家事審判への不服申し立ての期間は2週間
即時抗告の期間は、特別の定めがない限り2週間とされています。
家事事件手続法の86条1項の規定です。
この2週間という期間は、以前の家事審判法と同じです。
なお、審判以外の裁判に対する即時抗告では、抗告期間は1週間とされています。
2週間はいつから
即時抗告の期間は、審判の告知から2週間とされています。
審判は郵送によることがほとんどですので、この受領から2週間となります。
即時抗告できる権利者が複数いる場合、その起算点はそれぞれ別々に決まります。
相手側の受領が遅れたりすると、自分側の期間は過ぎたのに審判が確定していない、というタイミングもありえます。
即時抗告と執行停止
審判に対する即時抗告があると、審判は確定されないので、その効果が生じないことになります。
特に執行停止の動きは必要ありません。
これに対し、審判以外の裁判に対する即時抗告の場合には、執行停止の効力が認められないのが原則です。
そのため、執行停止の申し立てまで必要とされます。
家事審判への不服申し立てをするには
家事審判が出された後、不服申し立ての即時抗告をするには、抗告状をつくります。
その抗告状を原裁判所に提出するとされています。
原裁判所というのは、判断をした裁判所です。家事審判の場合は、家庭裁判所となります。
抗告の手数料に関しては、別表第1事件の審判であれば1200円、別表第2事件では1800円、その他の審判では1000円とされています。
婚姻費用などは別表第2事件です。
これが、抗告状に貼る印紙代です。
それ以外に、郵便切手代が数千円かかってきます。切手については、裁判所によって組み合わせが違うものを求められるので、事前に確認して準備することになります。
これらの手数料を納付しない場合には、原裁判所の裁判長が抗告状を却下することになります。
抗告状の相手方への送付
裁判所は、抗告状が提出された場合、明らかに不適法や理由がない場合を除いて、当事者に対しこれを送付することになっています。
例外として、抗告審における手続きの円滑な進行を妨げる恐れがあると認められる場合は、即時抗告があった旨を通知することだけで足りるとされていますが、基本的には抗告状が相手にも送付されます。
そのため、抗告状については、相手方に送るための副本も提出する必要があります。
相手方の数に応じた通数を提出するよう求められています。
相手が1名であれば、3部を作成し、裁判所用と相手用の2部を提出、もう1部を手元の控え用とします。
抗告理由書の提出
抗告状に、抗告理由の具体的な記載がないような場合には、抗告から14日以内に、これを記載した書面を原裁判所に提出しなければならないとされています。
こちらも、副本を、相手方の数に応じた通数、提出する必要があります。
民事裁判の場合の控訴状、控訴理由書のような関係にはありますが、提出期限が短くなっていますので、ご注意ください。
抗告審での審理
裁判所は、原審における審判を取り消すには、原審の当事者及びその他の審判を受ける者の陳述を聞かなければならないとされています。
また、調停をすることのできる事項についての審判事件の抗告審では、即時抗告が不適法または理由がないことが明らかな場合を除き、抗告人を除く当事者の陳述を聞かなければならないものとされています。
原審判を維持するかどうかにかかわらず、当事者の陳述を聞く必要があるとしているものです。
ただ、この内容としては、裁判所に出頭する審尋が必要であるとまでは限定されていません。
そのため、書面での陳述を聞くことで判断をすることも多いです。
採用されるかは不明であっても、即時抗告後、当事者の審問を希望する場合には、その旨の申出もしておくべきとなります。
高等裁判所での判断
即時抗告に対しては、決定で裁判がされます。
抗告裁判所は、即時抗告に理由があると認めた場合には、自ら審判に代わる裁判をするか、原審に差し戻すことができます。
抗告に理由がない場合には、決定で抗告を棄却することになります。
抗告棄却の場合には、手続き費用について、抗告費用は抗告人の負担とするものとされます。
抗告認容の場合には、手続き費用は、第一、第二審とも相手方の負担とするとの記載になります。
家事審判での即時抗告の流れ
即時抗告の流れをまとめると次のようになります。
・家庭裁判所の審判が出される
・即時抗告の申立
・即時抗告の申立理由書を提出
・相手方の反論
・意見陳述(事案によって出頭)など
・審理終結日の告知
・審理終了後、高裁で判断
即時抗告の審理期間
即時抗告の審理期間がどの程度であるのかは、事案によって異なります。
一つの婚姻費用審判の事案では、
審判(7月下旬)
即時抗告(8月初旬)
高裁から審理終結日通知(9月上旬)
答弁書提出(9月上旬)
双方資料提出(9月中旬)
審理終結(9月下旬)
高裁決定(10月)
という流れで進められました。
即時抗告の審理期間は2ヶ月弱、判断まで3ヶ月程度の期間がかかっています。
注意:即時抗告で不利益変更もあり得る
民事訴訟については、一新の判決に対して、不服申し立ての範囲についてのみ変更することができるとされています。
不服申し立てをしたことによって、不服申し立てをした側の不利益に変更することは禁じられているのです。
これは民事訴訟法304条です。不利益変更禁止の原則です。
これに対して、家事審判の場合には、この規定が準用されていません。
そうすると、即時抗告をしたことによって、抗告裁判所は、不服申し立てをした側に、より不利な判断をすることもできることになります。
例えば、婚姻費用の請求をしていて、「家庭裁判所の審判では金額が低い」として不服申し立てをした場合、高等裁判所において、家庭裁判所よりも低い認定をされるリスクもあるということです。
もともとの請求が20万円、家庭裁判所の審判が15万円だった際に、即時抗告をしたことで12万円に下がるということもあり得るのです。
そのため、即時抗告をするかどうかの際には、不利益に変更されるリスクも考えて判断する必要があります。
なお、不利益変更の禁止が適用されないので、付帯抗告も認められていません。
即時抗告の取り下げ
抗告審の審判があるまで即時抗告は取り下げることもできます。
取り下げについては、書面ですることとされており、当該事件の記録がある裁判所に対してすることになります。
そのため、記録が、家庭裁判所にあるのか、高等裁判所に移されているのかの確認が必要です。
即時抗告後、家庭裁判所から高等裁判所に事件記録が移されるので、その時期によって提出先が異なります。
早いタイミングであれば、まず、家庭裁判所に確認するのが良いでしょう。取り下げがほぼ確実であれば、口頭で取り下げ予定と伝え、高裁に記録を移さないよう求めておくほうが良いといえます。
即時抗告後の決定への不服申立
即時抗告後の決定に対する不服申立手続きは、特別抗告、抗告許可の申立となります。
特別抗告の期限は決定の告知を受けた日から5日以内です。
ただ、特別抗告は、決定が憲法違反、抗告許可申立は最高裁判例違反を理由にする必要があり、不服申立てをできる理由が限定されていますので、簡単ではありません。
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