マンション管理費滞納で弁護士費用の全額請求が違約金として認められた裁判例

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FAQ(よくある質問)

 

Q.マンション管理費滞納で弁護士費用は?

管理費滞納があった場合に、民事裁判になる事例もあります。

その場合、弁護士費用の負担も区分所有者にさせられるケースが増えています。

今回は、その金額が問題になった事例で、地方裁判所は一定額、高等裁判所は全額とした裁判例を解説します。

東京高等裁判所平成26年4月16日判決です。

この記事は、

  • マンション管理費を滞納している
  • 管理費滞納が発生し、訴訟を検討している管理組合

という人に役立つ内容です。

(著者:弁護士石井琢磨、記事更新:2021.10.21)

 

事案の概要

マンションの区分所有者が控訴人。

被控訴人がマンション管理組合。

管理規約に基づき、

平成22年9月分から平成25年8月分までの未払管理費等459万5360円と遅延損害金のほか、弁護士費用102万9565円の請求をした事件です。

 

地方裁判所の判断

地方裁判所は、弁護士費用の請求について、50万円の範囲で認めました

区分所有者が、これを不服として、控訴。

これに対し、管理組合が、当審において、さらに、平成25年9月分から平成26年1月分までの未払管理費等及びこれに対する遅延損害金の支払を求めて附帯控訴、弁護士費用102万9565円についても支払を求めたという内容。

 

管理規約の内容

マンションの管理規約では、区分所有者が、管理費及び修繕積立金、専用使用部分の使用料、駐車場等の使用料その他本件管理規約に基づき組合に支払うべき費用を、所定の支払期日までに支払わないときは、組合は、当該区分所有者に対し、年18%(年365日の日割計算)の割合による遅延損害金及び「違約金としての弁護士費用」を加算して請求することができると定められていました。

「違約金」とは、債務不履行による損害賠償とは別途請求できる制裁金としての性格を有しています。

 

弁護士費用の相当性

今回、請求する弁護士費用は、東京弁護士会の旧報酬基準に準拠した報酬基準に基づいて算出したもの。

平成25年1月30日時点での未払管理費等及びこれに対する遅延損害金の合計額473万6937円を経済的利益として、着手金32万6846円、報酬金65万3693円(合計98万0539円)を算出し、これに消費税を加算したもの。

控訴人がその後も管理費等の滞納を続け、控訴しているため、被控訴人において、さらなる対応を余儀なくされているのであって、上記弁護士費用の額が著しく合理性を欠くものとはいえないと主張しました。

弁護士会の報酬基準は廃止され、弁護士報酬は、弁護士によって自由化されているのですが、このように参考にされることは多いです。

 

国交省の標準管理規約

国土交通省の作成にかかるマンション標準管理規約は、管理費等の徴収について、組合員が期日までに納付すべき金額を納付しない場合に、管理組合が、未払金額について、「違約金としての弁護士費用」を加算して、その組合員に請求することができると定めているところ、本件管理規約もこれに依拠するものです。

そして、違約金とは、一般に契約を締結する場合において、契約に違反したときに、債務者が一定の金員を債権者に支払う旨を約束し、それにより支払われるものと指摘。

債務不履行に基づく損害賠償請求をする際の弁護士費用については、その性質上、相手方に請求できないと解されるから、管理組合が区分所有者に対し、滞納管理費等を訴訟上請求し、それが認められた場合であっても、管理組合にとって、所要の弁護士費用や手続費用が持ち出しになってしまう事態が生じ得ます。

しかし、それは区分所有者は当然に負担すべき管理費等の支払義務を怠っているのに対し、管理組合は、その当然の義務の履行を求めているにすぎないことを考えると、衡平の観点からは問題だと指摘。

そこで、本件管理規約36条3項により、本件のような場合について、弁護士費用を違約金として請求することができるように定めているのであると認定。

このような定めは合理的なものであり、違約金の性格は違約罰(制裁金)と解するのが相当としました。

したがって、違約金としての弁護士費用は、上記の趣旨からして、管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用と解されるとしました。

 

滞納管理費と弁護士費用の判断は分かれる

裁判例では、滞納管理費請求の際の弁護士費用について、地裁のように一定額にするケースと、高裁のように実費相当額とするケースの両方があります。

判断が分かれる事例です。

通常、違約金とは、契約に違反したときに、債務者が一定の金員を債権者に支払う旨を約束し、それにより支払われるものを指します。

民事裁判を弁護士に依頼した場合の弁護士費用については、自己負担が原則です。訴訟費用にも含まれません。

例外的に不法行為による損害賠償請求などでは、認容額の1割程度が認められる傾向にあります。しかし、債務不履行のような契約の場合には、自己負担が原則とされています。

本件では、このような弁護士費用の負担というよりは、違約金としての費用負担が問題になったものです。

滞納管理費請求をされている人は、管理規約を確認し、このような費用負担の記載がある場合、訴訟になれば、負担額が増えることを意識しておく必要があるといえるでしょう。

 

また、合理性があるのであれば、他の場面でも、このように違約金条項を入れておくことで、費用負担を求めることができる可能性もあるといえるでしょう。


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