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FAQ(よくある質問)

 

Q.保証会社による追い出し行為の違法性は?

家賃の保証会社等による強制的なカギの設置、家財撤去などの追い出し行為は違法です。追い出し屋の行為も違法です。

借主から損害賠償請求をして認められる裁判例も多数あります。

たとえば、東京地方裁判所平成28年4月13日判決です。

慰謝料20万円、家財道具損害30万円を認定しています。

 

この記事は、

  • 保証会社の追い出し行為を受けた
  • 保証会社にカギの設置をされ、家に入れなかった借主

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.14

 

事案の概要

原告は、平成21年1月、賃貸人との間で、神奈川県海老名市所在の二〇五号室を、月額賃料を4万円、契約期間を2年間として、賃貸借契約を締結、借りました。


本件賃貸借契約は、平成23年、平成25年、平成27年1月に、それぞれ更新。

被告は、賃貸建物における家賃、共益費、管理費、電気・ガス・水道料金、駐車場料金、物置賃料・使用料、修繕費等の代金支払保証業務などを目的とする株式会社であり、本件賃貸借契約において、原告の連帯保証人となっていた会社です。

保証会社という立場ですね。

借主が原告、保証会社が被告という裁判です。

家賃滞納で、保証会社が玄関を施錠、荷物を撤去したということで、借主から保証会社に損害賠償請求をした事案です。

 

家賃滞納と保証会社の鍵による施錠

原告は、平成27年3月分から家賃の支払が滞るようになり、同年4月分も滞納。

同年4月13日ころ、被告から、書面が届けられました。

同月17日までに被告が立て替え払いした家賃を支払わなければ、「鍵の交換、家財の撤去を行う」、「法的な手続を採る」旨の記載。原告は、同書面を見ても、被告に連絡をしませんでした。

被告は、同月23日、本件物件の玄関扉に補助錠を取り付けて、原告を本件物件に入れないようにしました。

原告は、自宅に入れず、同日の夜は、厚木駅前のネットカフェで過ごし、同日以降、日雇いの仕事に行かなくなり、数日間、公園やコンビニエンスストア、ファーストフード店などに入って夜を過ごすことに。

 

 

保証会社による荷物の無断撤去

原告は、同月25日ころ、被告の担当者に対して連絡をとったところ、被告の担当者は、「4月末までに4万円、5月初旬に4万円を支払え。これができなければ荷物を撤去する。」などと原告に告げました。

原告は、被告の担当者に対し、「違法行為ではないですか。」と問いただしたところ、被告の担当者は、「そんなの知らない。」などと返答。

被告は、同年5月1日ころ、本件物件内に立ち入り、原告の家財、設置物等一切を撤去し、処分。

 

原告は、同年5月1日、本件物件を訪れたところ、本件物件内に置かれていた一切の荷物がなくなっていたことを認識。原告は、その後も、当分の間、被告に連絡を取りませんでした。

 

 

賃貸の保証委託契約書の条項

違法行為ではないかと疑うときには、一応、契約書をチェックします。それを許可するような条項が含まれていることもあります。

 

今回の保証委託契約の契約書には、

「原告は、次の各号に該当したとき被告及び被告が委任する者が、賃貸物件に立ち入ることを承諾する。

①被告に求償権が生じた時又は生じるおそれがあるとき、

②賃貸人及び被告が賃貸物件の管理上必要と認めたとき。」

と記載されていました。

 

補助錠設置行為は違法

裁判所は、被告が平成27年4月23日に行った本件補助錠設置行為は、原告の住居たる本件物件への立ち入りを強制的に遮断する行為であり、被告は不法行為責任を免れないと断定。

このような強制的な追い出し行為は認められるわけがありません。

 

家財撤去行為は犯罪行為

さらに、本件家財撤去行為は、刑事において窃盗罪又は器物損壊罪に処せられるべき行為であって、被告は不法行為責任を免れないと指摘。

被告は、原告が家賃滞納後も被告に対してあえて連絡を行わず、原告自身が必要な物以外の物は被告に撤去させるように仕向けたと主張しており、本件家財撤去行為について原告の同意があったから違法性を欠くという趣旨の主張をするものと解されると言及。

しかし、平成27年3月から同年4月にかけて、原告が被告と連絡を取ることを避けていたことは認められるものの、原告は、同月25日ころには被告に連絡を取っている上、本件家財撤去行為の予告を受けた際には、「違法行為ではないですか。」などと述べて本件家財撤去行為に対する拒否の姿勢を示していたのであるから、原告が本件家財撤去行為を仕向けたとか、原告の同意があったと認定することはできず、被告の上記主張を採用することはできない、と被告の主張を排斥しています。

一般的にも、仕向けたなどということは想定しにくく、合法であるとの反論の理論構成ができないことから、苦し紛れの主張だったといえるでしょう。

 

このような、違法行為によって、被告は、不法行為に基づく損害賠償責任を免れないとしています。

 

財産的損害について

損害については立証責任がありますが、これがなかなか難しい問題です。

被告によって搬出及び処分された物品に係る財産的損害について検討するに、本件家財撤去行為当時、本件物件内には、テレビ、ブルーレイレコーダー、掃除機、電動ひげ剃り、炊飯器三合炊き、オーブン電子レンジ、携帯電話機等の電化製品が存在したこと、そのほかに食卓、食器等の家財道具や衣類、寝具が存在していたと認定。

本件物品のうち、比較的価値の高い電化製品といえるのは、テレビやブルーレイレコーダーだけであると考えられるところ、その客観的な価値に関する立証はなく、その他の家財道具等についても何ら客観的な価値に関する立証がないことからすると、本件物品に係る財産的損害の評価に当たり、原告が主張する火災保険の再取得価格300万円の3分の1である100万円とすることは相当でなく、その損害額は30万円にとどまると認めるのが相当であるとしました。

損害額を特定しにくく、設定されていた火災保険の金額からの概算を主張していたものですが、通らなかったものです。

動産の特定ができない場合の立証としては、スペックの特定、市場価格、再調達価格などの資料を証拠として提出することは考えられるでしょう。

 

慰謝料は20万円

原告は、本件補助錠設置行為によって本件物件を追い出され、その後、平成27年5月2日に寮に入るまで、9日間にわたってホームレス状態を強いられ、また、本件家財撤去行為によって突然、本件物品を処分されたことで、その後の生活に多大な不便や経済的支出を強いられたであろうことは容易に想像ができると指摘。これらによる原告の精神的苦痛は重大であったとしています。


他方で、原告は、平成27年3月分の賃料の支払が遅滞してから、管理会社に対して同月分及び同年4月分の支払の約束をするもこれを反故にし、支払期限後も管理会社への連絡を怠ったばかりか、同年4月中旬に届けられた被告からの書面を見ても被告に連絡しなかった上、本件家財撤去行為を認識した後も、当分の間、被告に連絡を取らず、滞納家賃を支払う姿勢を示さなかったのであって、原告の対応も著しく不誠実であったということができるとも指摘。

そのために被告が不法行為責任を免れるものではないものの、原告の上記のような不誠実な対応によって、保証会社である被告において対応に苦慮することとなったことは否定できないと言及。

また、原告は、仮に、賃貸人から本件賃貸借契約を解除の上で明渡しを求められた場合には、直ちに応じざるを得ない法的立場にあったことも明らかであると指摘。

さらに、原告は、未だに被告が立て替えた滞納家賃を被告に支払っていない点にも触れ、慰謝料額の算定上、重要な要素であるとしています。

以上の諸点に鑑みれば、原告の精神的苦痛に係る慰謝料額は、20万円と認定

 

損害賠償請求の弁護士費用

原告は、被告の不法行為のため、本訴の提起、遂行を弁護士に委任せざるを得なくなったことが認められるところ、上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は5万円と認定。

財産的損害、慰謝料の合計50万円の1割としています。

 

 

自力救済の禁止

家賃を払わなかったからといって、このように施錠したり、家財道具を撤去することは、自力救済と呼ばれ、許されない違法行為です。

法律では、権利が実現されていないからといって、自力救済をすることは禁止されています。

このような場合には、裁判を起こすなどして、明渡を命じる判決をもらい、裁判所を通じて強制執行手続きをする必要があります。

これには、費用や時間がかかりますが、勝手に自力救済を認めれば、権利侵害が起きるのでやむを得ない制度なのです。

 

自力救済としての追い出し行為が違法であるとして社会問題にもなりましたが、この時期でも、まだこんな行為をしている保証会社があるのは、認定慰謝料が低いからではないかという気もします。

明渡の裁判や強制執行をした場合には、数十万円の費用負担が出てくるほか、その期間の家賃回収が難しくなることも多いです。

本件のような認容額だと、リスクをとって、自力救済に及んでしまおうと考える業者がいても不思議ではありません。

もちろん、住居侵入等、犯罪行為にはなるのですが、このあたりの侵入行為が、安否確認等の条項で賃貸借契約上、正当だと主張される事例もあり、刑事事件化はしにくいという事情もあります。

このような社会問題では、制裁的な慰謝料の認定も必要ではないでしょうか。

 

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