後出しマルチ商法のクーリングオフを認めた裁判例を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.後出しマルチ商法のクーリングオフは?

何らかの契約後に、マルチ商法のような契約をさせられることがあります。この場合、複数の契約を一体と評価して、全体をマルチ商法の契約としてクーリングオフの主張をすることが考えられます。

そのような主張が認められた裁判例を紹介します。最初にビジネスコーチング契約、その後に紹介料契約をさせた契約について、全体としてクーリング・オフを認め、返金を命じた内容です。

松戸簡易裁判所令和4年3月18日判決です。

この記事は、

  • マルチ商法契約を解除したい
  • 複数契約をまとめてクーリングオフしたい

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.9.20

 

ビジネスコーチングとマルチ商法

原告は、被告関係者と出会い系マッチングアプリで知り合いました。

その後、ビジネスの勧誘を受け、2020年10月4日、被告との間で「ビジネスコーチング」を主とする契約を交わします。代金として110万円を支払いました。

契約後、被告は原告に対し、ビジネスの「集客については、マッチングアプリを使用し、勧誘目的であることを隠してお茶などに誘ってアポイントを取っていく」ようにと告げられます。

その際、被告は原告に対し、他の人に契約を締結させたら紹介料を10万円支払うと説明。紹介料契約が締結されました。

契約が2つに分かれているものです。

 

マルチのクーリング・オフ

原告は、このような勧誘方法の説明を受け、疑問を感じました。

このビジネスはマルチ商法なのではないかと不安になり、クーリング・オフの意向を被告に伝えています。

しかし、被告は、マルチ商法ではない、「8日」の期限が過ぎても解除できると告げられたので、明確なクーリング・オフはしませんでした。

ところが、「8日」の期限後、原告からのクーリング・オフを被告は拒絶。

支払済みの代金返還を求めて提訴したという流れです。

 

一連の契約でマルチ商法と主張

原告は、被告の契約をマルチ商法だと主張。

被告の一連の契約は、特商法の連鎖販売取引に該当すると主張しました。

そうすると、クーリング・オフの期間は契約書面受領時から20日間。

それにも関わらず、いずれの契約書にも20日間のクーリング・オフが記載されていない点を主張。

クーリング・オフ妨害とも主張しています。

 

これに対し、被告の主張は、2個の契約は別であるというもの。

連鎖販売取引の規定は適用されないと主張し、期間を8日間とするクーリング・オフ条項が明記されており、同期間をすでに徒過しているので、クーリング・オフはできない。クーリング・オフ妨害はないと反論しました。

 

裁判所はマルチ商法と認定

原告の主張を認めました。マルチ商法だとしてクーリングオフが可能。

被告に対し110万円を返すよう命じました。

 

原告は、本件契約1の締結について勧誘をするに際し、被告は、「稼いだお金で返済ができる」と原告に利益となる事実を告げ、かつ、「集客については、マッチングアプリを使用し、勧誘目的であることを隠してお茶などに誘ってアポイントを取っていくこと」であるとの原告に不利益となる事実(集客について違法ないし不当な方法が必要になるという不利益事実)を故意に告げなかったと主張。

本件契約1の直後にオリエンテーションが開催され、その際、被告が原告に対し、契約を他の人に締結させたら紹介料10万円を支払うと説明し、本件契約が締結されたことが認められると指摘。

そして、被告代表者の陳述によれば、契約の主な内容は「ビジネスコーチング」であり、会員が事業を行っている場合は事業コンサルティングもサービスとして提供しており、会員のニーズによりオーダーメイドで種々のサービスを行っているが、原告のように、まだやりたいことが決まっていない場合はコンダクター契約を締結させて、そこでコミュニケーション技術を教えた上で、マッチングアプリ等のツールを使って顧客を勧誘してもらう。そして、顧客との契約が締結できた場合は紹介料報酬として10万円を支払うというものであると認定。

この2個の契約を全体としてみれば、特商法の連鎖販売取引に該当するものと認めることができるとしました。

 

連鎖販売取引なら20日

その場合のクーリング・オフの期間は契約書面を受領したときから20日間であるところ、本件契約1及び本件契約2の契約書面にはクーリング・オフ期間の記載がなされていないと指摘。

また、マルチ商法ではないかとの不安を感じた原告が証人に対してクーリング・オフの相談をした際に、証人は、クーリング・オフの期間を延長できる旨を申し向けたことにより、故意に原告のクーリング・オフの申出期間を徒過させたことが認められるとしました。

したがって、原告には適法な契約書面が交付されておらず、クーリング・オフの期間は未だ経過していないので、原告によるクーリング・オフが認められると結論づけました。

 

書類交付から20日間

クーリング・オフの期間がいつから始まるのかといえば、要件を満たした書面が交付されてから

本件では、20日間の記載がされた書面交付が必要なところ、これがまだ交付されていないので、クーリング・オフ期間はまだ始まっていない、いつでもクーリング・オフできるという結論になったわけです。

事業者からすれば、契約を別にしていても、マルチ商法だと主張されそうな場合には、20日間のクーリング・オフ記載がされた書面の交付をしておかないとクーリング・オフされるリスクがありますので、適切な対応が必要でしょう。

 

同種被害も証拠で出す

この裁判での被告となった業者については、PIO-NET情報にも苦情が数十件と寄せられていたようです。マッチングアプリ、出会い系サイトでの勧誘報告も目立っていたようで、そのような情報も裁判官の判断に影響している可能性はありそうです。

詐欺事件などでは、同種被害の有無、件数についても裁判所に証拠提出することが望ましいといえるでしょう。

 

副業詐欺

副業、起業ブームもあり、これに関連する悪質商法が増えています。

SNS、出会い系アプリからの勧誘も多いです。完全な詐欺事案も多いです。

本件も、「ビジネスコーチング」だと言われたら、結局は、マルチ商法によって他人を勧誘をしないと利益があげられない仕組みだったという話です。

そのような話だったら、最初からビジネス・コーチングなる契約はしなかったといえる事案でしょう。

2つの契約が直後に締結されていることから、各契約を一体として考えて連鎖販売取引と認定されたものと認められます。

このように当初契約とは別に、後からマルチ商法のような契約をさせられることを後出しマルチと呼ぶこともあるようです。

契約の一体性を主張して、クーリング・オフ等を主張する際には参考にしてみてください。

 

 

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