相続財産が絡む財産分与裁判で特有財産を否定するものの一切の事情として一定額を考慮した裁判例を弁護士が解説

HOME 〉FAQ 〉Q.相続財産が絡む財産分与裁判、解決策は?
法律相談イメージ

FAQよくある質問

相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

FAQ(よくある質問)

 

Q.相続財産が絡む財産分与裁判、解決策は?

離婚時に問題になる財産分与で、相続財産がある場合の裁判例を紹介します。昔の相続で資料が残っていない、お金の流れが明らかでない場合に、特有財産だと主張することが有効なのでしょうか。

この裁判例では特有財産については否定したものの、民法768条3項の「一切の事情」として考慮して財産分与の金額を決めていますので、一定の範囲では有効といえそうです。

東京高等裁判所令和4年3月25日決定です。

この記事は、

  • 財産分与で争っている人
  • 結婚期間中に相続で財産を受け取った人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.2.27

 

財産分与裁判の事案の概要

本件は、離婚した夫婦の妻が、夫を相手に、財産分与の協議に代わる処分を申し立てた事案。

財産分与対象財産の基準時は、別居日である平成27年8月10日。

夫は、基準時における夫名義財産である預金の一部につき、相続した財産(平成20年に父から相続した約2900万
円の預金、昭和56年に母から相続した約500万円の預金、平成7年に祖父から相続した約200万円の預金)や生前に贈与を受けた特有財産が含まれていると主張。

その金額を争ったものです。

 

家庭裁判所は特有財産を否定

家庭裁判所は、財産分与の基準時における夫名義財産中の預金(2474万9875円)のうち、974万9875円の範囲で、相続した特有財産と認定。

それ以外の基準時財産については、証拠上、相続等により父らから承継した財産が基準時において残存していたものであることを裏付ける資料はないとして、特有財産との主張を否定

家庭裁判所は、特有財産部分を除く基準時において存在した財産を財産分与対象財産として金銭的に評価し、夫婦の財産形成の寄与の程度を2分の1ずつと判断。

夫が妻に対して分与すべき財産分与の額を5441万円としました。

夫が不服申立て。

 

高等裁判所はその他の事情で認定

高等裁判所の決定では、原審判を一部変更。

財産分与の額を5000万円に変更する旨の決定をしました。

 

高等裁判所は、特有財産の主張について、父らから承継した遺産等(特有財産)が残存していたことを認めるに足りる資料はないとした家庭裁判所の認定判断自体は維持。

しかし、夫が約2000万円の相続財産を取得していた事情を民法768条3項の「一切の事情」として合理的な範囲で考慮して、財産分与の額及び方法を定めるのが相当であるとし、夫に残る財産額を増やす判断をしました。

お金の流れが明確には示せなかったため、特有財産との主張は否定されたものの、諸般の事情を踏まえて、相続財産を取得していた事情は「一切の事情」として、ざっくり認定した判断です。

家庭裁判所の判断より400万円程度有利な解決になっています。

 

高等裁判所が考慮した事情

もっとも、夫の相続した2882万7500円の預金は高額であり、相手方には収入がなく、一方で夫の基準日までの収入に照らして、同相続預金の取得は、預金において考慮する部分を除き、資料上は特定できないものの、基準日における抗告人名義の財産を増加させ、あるいはその費消を免れさせたものと推認できるから、それを本件における財産分与において、合理的な範囲で考慮するのが相当であるので、上記相続預金の取得の事実を財産分与における一切の事情として考慮することとするとしています。

預金の額や、妻側の収入などもポイントになりそうです。

 

 

 

財産分与の決め方

法律では、離婚した夫婦の一方は相手方に対して、婚姻期間中の財産を分与するよう請求できます。

協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。

裁判所は、財産分与の決め方については、 「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」とされています。

この一切の事情で、柔軟な解決がされる裁判例もよく見かけます。

本件も、特有財産と明確に認定はできないものの、相続もあったはずだということで、一切の事情で一定額を考慮した判断をしています。

相続

 

財産分与での特有財産の主張

財産分与の基準時としては、別居時とされることがほとんどです。

別居時に、存在する夫婦の財産が婚姻期間中に婚姻関係から得た財産かどうかが争われます。

そうでない財産は、特有財産として、財産分与の対象にならない、個人の財産とされます。

よく問題になるのが、婚姻前から持っていた財産相続や贈与により取得した財産です。

婚姻関係で築いた財産ではないから、財産分与の対象にならないという主張です。

このような特有財産の主張をする場合には、特有財産だと証拠を出す必要があります。通常、相手は争うので、残っている財産の中で、この金額は別だと主張するならば、その主張をする人が証拠を出す必要があるのです。

別居までに、財産に入出金があったり、口座の変更などがある場合には、特有財産の取得時からの動きを証明する必要が出てきます。

このような立証ができないと、特有財産としては認められないリスクが高まります。

ただ、そのような場合でも、本件のように蓋然性を示すことで、その他の事情として考慮されることはあります。

そのため、証拠がない場合でも、一定の主張・立証はしておいた方が良いといえるでしょう。

 

 

 

 

財産分与を含めた離婚に関する法律相談は以下のボタンよりお申し込みできます。

 

相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

ジン法律事務所弁護士法人のロゴオフィス

ジン法律事務所 弁護士法人

代表者:弁護士 石井琢磨

〒243-0018
神奈川県厚木市中町4-14-3
雅光園ビル702号室

TEL:046-297-4055

 

<主要業務エリア>

神奈川県の地図

クリック 相談予約

ジン法律事務所弁護士法人Webサイト

厚木本店

4/30相談会開催

 

横浜駅前事務所

5/1相談会開催

Zoom相談予約


動画配信中↓↓



ページトップへ