「第三者のためにする契約」のデメリットや事例を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.「第三者のためにする契約」とは?

契約では、当事者に権利や義務が発生するのが普通です。これを、契約当事者以外の第三者に発生させる契約もあります。第三者のためにする契約と呼ばれるものです。

当事者は、そのような認識がなくても、意外なところで第三者が主張できたりするものですので、事例なども参考にしてみてください。

この記事は、

  • 第三者のためにする契約について知りたい
  • 契約当事者以外の人に権利設定をしたい人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.2.27

 

「第三者のためにする契約」とは何か?

第三者のための契約は、契約の当事者の一方が、第三者に対して給付をすることを約する契約のことです。民法537条以下に書かれています。

契約によって第三者に権利を取得させることが可能である性質が必要です。

また、第三者の権利は、その第三者が受益の意思表示をした時に発生します。

その第三者の権利が発生した後は、契約の当事者もこれを変更できません。

ただし、債務者は、契約に基因する抗弁、たとえば同時履行の抗弁権で受益者に対抗はできます。

 

第三者のための契約当事者

利益を得る第三者を受益者と呼びます。

そのために約束する人が、諾約者。もうひとりの契約当事者が要約者と呼ばれます。

諾約者が、受益者に100万円を支払うと要約者との間で約束すると、第三者のための契約になります。

契約当事者ではない受益者が、諾約者に対して100万円の債権を取得するという契約です。

このような第三者の契約がされる場合には、要約者が諾約者に対して、何らかのメリットを与えるのが通常です。何も利益がないのに、諾約者が第三者に利益を与えることは考えにくいからです。

補償や対価関係があるのが通常です。

第三者のための契約

 

 

「第三者のためにする契約」の種類

第三者のためにする契約は、契約当事者でない人に利益が出てくる点が特徴です。

たとえば、何らかの売買契約がされ、代金を受益者に払うという契約があります。

また、贈与などの契約で、普通は契約相手に対して負担するべき債務を、第三者に対して負担する特約がされる場合もあります。

 

第三者の権利の発生

第三者のための契約がされた場合、受益者である第三者の権利は、その第三者が債務者に対して契約の利益を享受する意思を表示した時に発生します。

ただ、契約当事者の補償関係は、第三者の権利にも影響します。

たとえば、売買契約で、代金を第三者に払うという契約の場合、売買の目的物に問題があるなどして、目的物に関する債務が成立しない場合、第三者に対する債務も成立しない扱いになります。

 

第三者のためにする契約は、第三者に直接権利を取得させる旨の合意が必要です。これが成立要件とされます。

合意があるといえるかどうかについては、当事者の意思以外に、契約の種類や、取引慣行も考慮されます。

 

第三者の義務設定も

第三者のためにする契約は、第三者が利益を単純に得る以外の形式もあります。

たとえば、第三者が一定の対価を負担ししたり、一定条件を満たすことで、権利をもらえるという形式もあります。

第三者としては、条件や負担付きの権利を取得するかどうかを判断するのです。

 

第三者の存在時期

「第三者」は、契約の当時には存在しなくてもよいとされます。

よくあるのが、胎児、まだ生まれていない妊娠中の子を第三者とする契約です。

胎児

同様に設立されていない法人を第三者とすることもできると言われます。

 

第三者の対価関係

契約当事者である諾約者は、第三者に何らかの権利を取得させます。

その代わりに、契約当事者間では、要約者が何らかの義務を負うことが多いです。

要約者がなぜ、義務を負い、権利を第三者に渡すのかというと、通常は、要約者と第三者の間に、何らかの関係があるからです。この関係を「対価関係」と呼びます。

要約者が第三者に対し、別に何らかの義務を負っていることもありますし、親子などの関係のために、そのような設定をすることもあります。

この対価関係は、補償関係とは違い、第三者のためにする契約の要素とはなりません

対価関係に問題があっても、第三者のためにする契約自体には影響を及ぼさないのです。

 

「第三者のためにする契約」のメリットとデメリット

「第三者のためにする契約」のメリットとデメリットは以下の通りです。

【メリット】

第三者の利益を設定できる:契約当事者以外の第三者に権利を設定ができる点がメリットです。

【デメリット】

第三者の受益の意思表示という不安定さ:第三者の権利は受益の意思表示があって初めて効果が発生します。これがない場合、曖昧なまま期間が過ぎていくこともありえます。

第三者の誤解:第三者に対し、権利の適切が説明がない場合さ、誤解を招く可能性があります。第三者は契約の当事者ではないため、契約内容を正確に把握できず、誤解を持つこともありえます。

 

「第三者のためにする契約」の解除方法

契約当事者間で、諾約者に債務不履行があった場合に、要約者が第三者の承諾なく契約を解除することができるか問題になることがあります。

以前は解釈に争いがありましたが、法改正により利益を得る第三者が承諾しないと契約を解除できないとされました。

ただし、任意規定とされているため、当事者は契約締結時に、第三者の承諾なしに要約者が契約を解除できる旨の合意はできるとされています。

なお、第三者自身は、契約当事者ではないので、契約を解除することはできません。

 

第三者による受益の意思表示がなされれば、第三者の権利は確定的に生じます。

あとから、その権利を消滅させらせないというルールです。

逆に、第三者が受益の意思表示をする前であれば、第三者は権利を取得していません。そこで、第三者が取得する権利の内容を変更したり、消滅させることもできます。

三者間の関係

 

「第三者のためにする契約」の紛争形態は?

第三者のための契約は、契約の当事者の一方が、第三者に対して給付をすることを約する契約のことです。

紛争形態として、第三者が諾約者に対して給付請求をするものがあります。

第三者のためにする契約がされた後、利益を受けるという意思表示をした第三者が、契約に基づいて、諾約者に対し、給付請求をする事件です。

これに対し、諾約者は、当該契約に基づく抗弁をもって、第三者に対抗できます。

例えば、要約者の債務との同時履行の抗弁や、錯誤無効・詐欺取消しなどの主張ができます。

また、受益の意思表示により第三者の権利が発生する前ならば、契約当事者間で第三者の権利の変更・消滅ができます。このような変更等があったという反論もできます。

次に、受益の意思表示をする権利の時効消滅もありえます。

判例では、契約締結時から10年以内に受益の意思表示をしなければ、消滅時効が完成するとされています。

 

 

「第三者のためにする契約」におけるトラブル事例

第三者のためにする契約に関する裁判例をいくつか紹介します。

どのような事例でこの契約が使われるのか、裁判になるのかが見えてきます。

 

賃貸借契約と第三者のためにする契約

東京地方裁判所平成28年6月9日判決

土地賃借人から、借地権と土地上の建物を買受けた原告。

賃貸人と賃借人間の第三者のためにする契約により、土地の譲渡も受けたと主張。

土地の賃貸人に対し、土地代金の支払を受けるのと引換えに所有権移転登記手続を求めた事案。

裁判所は、本件賃貸借契約には、賃借人が借地権を第三者に譲渡する場合、賃貸人は借地権及びその底地の譲渡に同意し、売買代金の取得割合も明記されているとして、第三者のためにする契約と認めました。

売買代金額は借地権の買受人が決まった際の時価を指すとした上で、消滅時効、賃借人の同族会社の原告は実質的に同一であり権利の濫用である等の被告の主張を退け、鑑定評価額による相当時価額を算定し、契約に基づく割合の金額の支払を受けるのと引き換えに請求を認容しました。

原告は、借地権を譲り受ける際に、この契約内容を引き継ぎ、第三者のための契約だとして土地の取得を請求したものでした。契約時点では、第三者が特定しなくても良いという内容や、単純な利益ではなく、第三者も対価を負担するという内容も含まれています。

 

不法行為と第三者のためにする契約

東京地方裁判所令和3年12月20日判決。

原告は会社。

その関連会社の被告法人や、代表取締役でもある被告らが、第三者から航空機用格納庫の取得資金として原告名義の口座に振り込まれた金員を私的に流用したという事件。

原告が被告らに対し、共同不法行為に基づいて損害賠償請求

さらに、第三者と被告会社との間において、原告のために、原告設立までの間、被告不動産会社が上記資金の一部を保管するとの第三者のためにする契約が成立していたとして、原告が被告不動産会社に対して受益の意思表示をして、保管していた金員の支払を求めた事案。

裁判所は、原告の請求を全部認容した。

不法行為だと立証が微妙な場合に、契約関係がなく、債務不履行構成などが使えない場合に、このような第三者のためにする契約という構成で攻めることも選択肢となりえます。

 

消滅時効と第三者のためにする契約

大阪高等裁判所平成30年10月25日判決

契約形態からして時効での争いもよく見かけます。

第三者のためにする契約において、第三者の諾約者に対する権利は、要約者と諾約者間の契約に基づくから、要約者の諾約者に対する給付すべきことを請求する権利が10年で時効消滅すれば、第三者の諾約者に対する権利も同様に10年の時効により消滅。

第三者のためにする契約において、諾約者(その相続人)において、要約者が諾約者に対し、第三者に給付すべきことを要求する権利について、10年の消滅時効を援用することが信義則に照らして許されないと判断。

第三者のためにする契約において、受益者が第三者のためにする契約の成立を知らされていなかった場合、受益の意思表示の消滅時効の起算点は、契約成立時点ではなく、受益者が契約の成立を知った時であると判断。

 

 

 

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