死後離縁が家裁で否定、高裁で許可された裁判例を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.死後離縁が許可される要件とは?

養子縁組をしたものの、当事者の一方が死亡してしまった後に、これを解消したいという人もいます。

この場合、死後離縁という手続をとります。

家庭裁判所の許可が必要です。どのような場合に許可されるのか、その要件、判例等を解説していきます。

この記事は、

  • 死後離縁の手続をしたい人
  • 養子から発生した親族関係を整理したい人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.5.31

 

死後離縁とは?

死後離縁とは、普通養子縁組の当事者の一方が死亡した後に、生存当事者が家庭裁判所の許可を得て、養子縁組を解消することです。

死後離縁をすると、養子と養親の間の親子関係は法的に消滅します。

死後離縁は、すでに生じた相続には影響を与えませんが、今後生じる相続には影響を与えます。

たとえば、養親が死亡したケースでは、死後離縁をした養子は、養親自体の相続人ではあります。すでに生じている相続だからです。ただ、養親の親(祖父母)が生きていて、養親の死亡後に死後離縁がされた場合、祖父母の死亡時には、死後離縁により、代襲相続がされないことになります。

養親から養子に対する相続自体をなくしたいのであれば、生前に離縁が必要です。

また、養子の立場で、養親の死亡後に、養親からの相続を放棄したい場合は、死後離縁ではなく相続放棄の手続きを行う必要があります。相続放棄は、相続の開始を知ってから3ヶ月以内に手続きする必要があります。

死後離縁

死後離縁の条文

民法の第811条などの規定があります。

縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。

死後離縁が認められる要件としては、許可が相当であることとされています。

裁判例では、恣意的な離縁でないか、申し立てが真意に基づくものかが調査されています。

 

死後離縁の効果

死後離縁を行うことで得られる効果は以下の通りです.

・発生済の相続には影響を及ぼさない

死後離縁をしても、すでに発生した相続には影響を及ぼしません

すでに相続した遺産は、死後離縁後も引き続き所有できます。死後離縁は、亡くなった日まで遡って関係を解消するものではなく、申立てが認められた時点から有効となります。そのため、相続時点で養子縁組の関係にあれば遺産は相続できます。

 

・養親や養子方との親族関係が終了する

死後離縁により、養親や養子方との親族関係が終了します。これは民法第729条に定められています。

「 養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。」

例えば、養親に弟がいた場合、その弟は養子にとって法律上の叔父となります。しかし、死後離縁によりこの関係が解消されるため、扶養義務が発生しなくなります。

 

死後離縁のメリットとデメリット

死後離縁のメリットは、養子と養親の親族間に不和やトラブルがあった場合に、関係を清算することができることです。

親族としての扶養義務等を解消したい場合や、今後の相続に影響を与えることができます。

 

死後離縁のデメリットは、養子が、亡養親の親族ではなくなるので、親族側からすれば扶養・今後の相続について影響が出る点にあります。

また、死後離縁は、家庭裁判所の許可が必要なので、手続きに時間や費用がかかる点もデメリットといえるでしょう。

さらに、死後離縁は、養子縁組の当事者が生存している間にしか行えません。本人だけができる手続きです。もし養親と養子の双方が亡くなっている場合、死後離縁を行うことはできません。したがって、離縁を希望する場合は早めに手続きを進める必要があります。

なお、死後離縁を行うと、原則として元の苗字(養子縁組前の苗字)に戻ります。民法第八百十六条によれば、養子は離縁によって縁組前の氏に復します。ただし、養子縁組が7年以上続いている場合は、今の苗字を使用することも可能です。

仕事などで苗字を変えたくない場合、これもデメリットとなるでしょう。

 

死後離縁と死後離婚の違い

「死後離縁」と似た言葉に「死後離婚」があります。

一般的に「死後離婚」とは、配偶者と死別した後に生存配偶者が「姻族関係終了届」を役所に提出する手続きです。

例えば夫が亡くなった場合に、妻が夫の親族との関係を終了させるために行います。

死後離縁と死後離婚は、亡くなった当事者との関係を終了させる点で共通していますが、死後離縁は養子縁組から生じた親族関係を終了させるものであり、死後離婚は婚姻から生じた親族関係を終了させるものという違いがあります。

死後離縁の許可基準と必要書類

死後離縁をするには、家庭裁判所の許可が必要です。

裁判例では、恣意的な離縁でないか、申し立てが真意に基づくものかが調査されています。

相当性の判断の際に、以下のような事情は考慮されることが多いです。

養子縁組の目的や経緯
養子と養親の間の関係や事情
養子と実親の間の関係や事情
養子の年齢や意思
養子の経済的な状況や将来の見通し
亡養親の遺言や遺族の意向
死後離縁の動機

 

死後離縁の申立て

死後離縁の申立ては、家事審判の申立てとして行います。

申立てには、以下の書類が必要です。

養親が死亡した場合の例で解説します。

死後離縁許可の申立書
養子縁組の証明(自分の戸籍謄本など)
亡養親の死亡したことを示す書類(除籍謄本等)

亡養親の遺言書などを出すこともあります。

申立書には、死後離縁の理由や事実、許可の必要性、関係者の状況などを具体的に記載します。申立書は、養子本人が作成し、署名捺印します。

申立書と必要書類は、申立人の住所地の家庭裁判所に提出します。

申立人となれるのは、生存している縁組当事者です。他の相続人や実親などは申し立てできません。

生存している養子が15歳未満の場合には、離縁した後に法定代理人となる人が代理して手続を行います。

裁判所への申立

 

死後離縁の申立て方法と手続きの流れ

死後離縁の申立ては、養子の住所地の家庭裁判所に行います。

申立てには、収入印紙800円が必要です。また、裁判所によって異なりますが、800円程度の切手を予納する必要があります。組み合わせは裁判所に確認しましょう。

申立て後、裁判所は、養子や関係者に対して調査などを行います。

裁判所は、死後離縁の許可基準に基づいて、許可するか否かを判断します。

裁判所の判断は、許可決定書や不許可決定書として文書で通知されます。

許可の審判がされた場合には、交付された日から14日以内に、養子は、戸籍の変更手続きを行わなければなりません。

戸籍への届出には、審判書の謄本・確定証明書が必要です。離婚と同様です。

150円分の収入印紙を貼って確定証明書を申請します。

死後離縁の手続きは、申立てから許可までに約半年から1年ほどかかることが多いです。

 

死後離縁の実際の事例と注意点

死後離縁は、不当な目的でないかが重要な判断基準です。

しかし、これはケースバイケースで判断されます。

以下に、死後離縁の実際の事例と注意点を紹介します。

事例:養子は、養親との間に不和やトラブルがあり、養親の死後に死後離縁を申し立てた。養親は、遺言で養子に遺産を残していなかった。裁判所は、養子と養親の間に実質的な親子関係がなかったこと、養子が実親との関係を回復したいという意思があったこと、養子が相続財産を放棄することに同意したことなどを考慮して、死後離縁を許可した。

注意点:養子と養親の間に親子関係がなかったことを証明するためには、具体的な事実や証拠が必要です。例えば、養親が養子に暴力や虐待を加えたこと、養親が養子に対して経済的な援助をしなかったこと、養親と養子が長期間にわたって連絡を取っていなかったことなどが挙げられます。

 

死後離縁の裁判例

死後離縁では、家庭裁判所と高等裁判所で判断が分かれることもあります。家庭裁判所で不許可とされても、高等裁判所で認められる事例もあります。

個別事情による判断のバラツキがありますので、あきらめないようにしましょう。

一つ、裁判例を紹介しておきます。


死後離縁許可申立却下審判に対する抗告事件で、大阪高等裁判所令和3年3月30日決定です。

養子が死亡したという事例です。

 

事案の概要

養親が死亡した養子との死後離縁の許可を求めた事件。

家庭裁判所は不許可

推定相続人廃除の手続を潜脱する目的でなされた恣意的なものであると認めざるを得ないとして申立てを却下。

養親は不服として、即時抗告。

高等裁判所は、申立てが生存養親又は養子の真意に基づくものである限り、原則としてこれを許可すべきであるが、離縁により養子の未成年の子が養親から扶養を受けられず生活に困窮することとなるなど、社会通念上容認し得ない事情がある場合には、これを許可すべきではないとしました。

本件は、利害関係参加人(養子の子)の就労実績や相当多額の遺産を相続しており、利害関係参加人が養親の代襲相続人の地位を喪失することとなっても生活に困窮するとは認められないことなどから、社会通念上容認し得ない事情があるということはできないと判断。

このことは養親に利害関係参加人を自らの相続人から廃除したいという意図があるとしても左右されるものではないとし、原審判を取り消し、本件申立てを許可。


高等裁判所は死後離縁を認めた

1 原審判を取り消す。
2 抗告人が、本籍C養子亡Dと離縁することを許可する。

 

養子縁組の事情

養親(昭和10年生)は、昭和32年、亡妻と婚姻。

養親と妻は、長女と二女のほか、2人の娘をもうけました。

妻は、昭和32年に家業を法人化し、昭和44年に株式会社に商号変更して、これを経営。

株式会社は、妻と養親及びその子らを株主とする同族会社。

 

養子は、昭和56年、養親の娘と婚姻。

養子は、家の当主及び株式会社の経営の後継者となるため、娘とともに、妻及び養親夫婦と同居を開始。

平成11年1月4日、妻及び養親夫婦と養子縁組。

養子は、平成4年に株式会社に入社。平成15年1月には、代表取締役社長に就任し、主としてその経営に当たりました。妻が代表取締役会長としてこれを支援していたという経緯です。

 

養子の夫婦には、子がいなかったことから、将来の家の当主及び株式会社の経営の後継者となることを期待して、平成14年6月11日、親族である利害関係参加人(当時12歳)と、養子縁組。

もっとも、利害関係参加人は、その後も養子夫婦とは同居しませんでした。

 

利害関係参加人は、平成24年に大学を卒業し、他社に就職した後、平成29年4月、株式会社に入社。

養子は、平成30年、死亡。

そのため、同年、利害関係参加人が、株式会社の代表取締役社長となり、養子の葬儀や一周忌法要を喪主等として主催。利害関係参加人は、養子の相続により約7400万円の遺産を相続。

 

妻は、その後に死亡。利害関係参加人は、妻の相続において、養子を代襲して、約1億2700万円の遺産を相続。

その後、養親及び娘と利害関係参加人とは、株式会社の経営を巡って対立するようになり、その関係が著しく悪化したところ、利害関係参加人は、令和元年11月、代表取締役及び取締役を辞任。

利害関係参加人は、令和元年の養子の一周忌、令和2年の三回忌の各法要をいずれも欠席。

 

元々が法人関係での養子縁組、法人で祖父と対立、法人からは離れた養子の子を自分の相続から外したいという目的に見えますね。

対立構造

高等裁判所の死後離縁判断ポイント

養子縁組は、養親と養子の個人的関係を中核とするものであることなどからすれば、家庭裁判所は、死後離縁の申立てが生存養親又は養子の真意に基づくものである限り、原則としてこれを許可すべきであるが、離縁により養子の未成年の子が養親から扶養を受けられず生活に困窮することとなるなど、当該申立てについて社会通念上容認し得ない事情がある場合には、これを許可すべきではないと解されるとしました。

本件についてみると、本件申立ては、抗告人の真意に基づくものであると認められることから、社会通念上容認し得ない事情があるかにつき検討するとしています。

 

上記認定事実によれば、養親と妻夫婦は、妻が引き継いできた家の財産や法人の経営を承継させることを目的として、養子と養子縁組したものであるところ、養子は、養親と妻よりも先に死亡して、その目的を遂げることができなくなったことが認定。


そして、利害関係参加人は、養子の死亡により、養親の代襲相続人の地位を取得したものではあるが、既に、大学を卒業して就労実績もある上、養子及び妻から相当多額の遺産を相続しているものであって、上記代襲相続人の地位を喪失することとなったとしても、生活に困窮するなどの事情はおよそ認められないと指摘。

その上、養親と利害関係参加人との関係は著しく悪化しており、利害関係参加人は、法人の代表取締役及び取締役を辞任したことも認められると指摘。


上記の諸事情に照らせば、本件申立てを許可することにより、利害関係参加人が養親の代襲相続人の地位を失うこととなることを踏まえても、本件申立てについて、社会通念上容認し得ない事情があるということはできないとしました。

この点、利害関係参加人は、本件申立ては、養親の推定相続人から利害関係参加人を廃除することを目的としてされた恣意的なものであると主張するが、抗告人と養親との関係は著しく悪化しており、一件記録によれば、養親には、利害関係参加人を自らの相続人から廃除したいという思いがあることはうかがわれるものの、そのような意図があるからといって、上記の諸事情に鑑みれば、本件申立てについて社会通念上容認し得ない事情があるとはいえないとの上記判断を左右するものとは認められないとしました。


以上によれば、本件申立ては、これを許可すべきであるとし、死後離縁を認めました。

廃除したいという気持ちがあっても良いでしょう、という結論です。

許可申立の段階で、廃除したいと明記するのはよろしくありませんが、気持ちが伝わっても、それだけでは否定されないということです。

 

 

死後離縁の許可基準

養親子関係は、養親又は養子の一方の死亡により当然に消滅しますが、法定血族関係は、一方の死亡によっても当
然には消滅しません。

しかし、養親縁組関係は養親と養子の個人的関係を前提にするものです。

これに付随する養親族関係の効果が、当事者の死亡後に他方当事者を拘束するのが不相当・不適切な場合には、死後でも離縁を認めるべきとされます。

民法811条6項は、この法定血族関係を消滅させるために、縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得てこれをすることができるとしています。

 

家庭裁判所の許可が必要なのは、養親子間や養親族間の道義に反するような恣意的な離縁を防ぐためとされます。

そのため、死後離縁の申立てが申立人の真意に基づくなら恣意的離縁に該当しない限り、原則として許可されるべきとされます。


恣意的離縁とは?

養親の死亡後に養子が多額の相続をしながら、養親の親族に対する扶養義務を免れることのみを意図した離縁のように、親族の扶養義務を免れる目的での離縁が該当しやすいとされています。

家裁の許可の前提として、申立の動機も問われますので、その際に、扶養義務を避けるためとか、法事が嫌だとかの理由だと否定されてしまうこともあります。

今回の事例でも、養子の子が何も相続していなくて、将来が大変そう、という状態だったなら、社会通念上容認しえないとして、否定された可能性があります。この判断も、恣意的かどうかのなかでされるのかな、という印象です。

 

どのように構成するのかが重要になってきますので、内容を押さえておくようにしましょう。

 

 

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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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