FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.訴えの変更の要件、手続は?
訴訟を進める中で、訴えを変更する必要が生じることは珍しくありません。
しかし、訴えの変更には手続きや条件が存在し、その適切な取り扱いが訴訟結果に大きな影響を与えることもあるため、注意が必要です。そんなとき、どのように対処すればよいのでしょうか?
この記事では、訴えの変更に関する概要や手続き、要件、影響、注意点をわかりやすく解説します。
この記事は、
- 裁判の途中で請求内容を変えたい人
- 訴えの変更手続を知りたい人
に役立つ内容です。
訴えの変更とは?
訴えの変更とは、民事訴訟において、原告が請求や請求の原因を変更することです。
民事訴訟法第143条により、原告は口頭弁論の終結まで、訴えの変更をすることができます。
ただし、請求の基礎に変更がないことや、訴訟手続を遅滞させないことが条件です。
143条1項「原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。ただし、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときは、この限りでない。」
例えば、損害賠償請求事件で、当初は100万円の請求をしていたけど、訴訟中に新たな損害が判明したので、請求額を200万円に変更するケースが考えられます。
つまり、訴えの変更とは原告が自分の主張を修正する権利であり、一定の要件を満たせば行うことができるものです。
訴えの変更の種類
訴えの変更には、追加的変更、交換的変更などがあります。
訴えの変更は、同じ被告に対する訴えを変えるものです。被告自体を変えることはできません。
追加的変更は、原告が従来の請求を維持しつつ新たな請求を追加することです。例えばAさんがBさんから慰謝料だけでなく他の損害賠償も求める場合です。
交換的変更は、原告が従来の請求を取り下げて新たな請求に置き換えることです。例えば、物の引渡しを求めていた裁判で、物が滅失していたことが判明したので、損害賠償請求に変更するような場合です。
もともと、同じ相手に対して複数の訴えをする方法(客観的併合)としては、単純併合、選択的併合、予備的併合があります。訴えの変更でも、このような併合の訴えに変えることがあります。
訴えの変更は、その内容によって影響や効果も異なるものです。
訴えの変更をする理由
訴えの変更をする理由は、原告が訴訟中に新しい事実や法律関係を発見したり、和解交渉や被告の防御活動などで自分の主張や立場を見直す必要が生じたりする場合です。
訴えを起こす段階では見えなかった内容が裁判で明らかになったため、訴えを修正した方が良いことがあります。
民事訴訟法第143条では、原告は、「請求又はその原因」を「口頭弁論終結まで」に限り変更ができると規定しています。
民事訴訟における判断対象は、原告が決めたものです。原告の訴えについて判断するもので、裁判所が勝手に無関係な内容を決定することはできません。
つまり、原告だけが自分の主張などを変更することができるということです。
たとえば、AさんがB社に対し、賃金未払い分100万円を求めていた裁判があったとします。
しかし、裁判が進むなかで支払われていなかった賃金額が150万円であることがわかったとします。この場合、Aさんは賃金未払い額を100万円から150万円へ変更して請求することが考えられます。
訴えの変更をする必要があるといえます。
訴えの変更の手続き
訴えの変更の手続きは、民事訴訟法に基づいて行われ、手続きの遵守が必要です。
143条2項、3項では、
2 請求の変更は、書面でしなければならない。
3 前項の書面は、相手方に送達しなければならない。
とされています。
訴えの変更の申立て方法は、訴えの変更申立書のような書面を作成して申し立てます。
訴状の訴えを変更するものですので、請求の趣旨や請求の原因がどうなるのか記載して提出します。
また、143条4項では、
裁判所は、請求又は請求の原因の変更を不当であると認めるときは、申立てにより又は職権で、その変更を許さない旨の決定をしなければならない。
と書かれています。
そのため、この判断ができるように、請求の基礎を裏付ける事情は書いておく必要があります。
訴えの変更をするために必要な手数料、印紙代
訴えの変更により請求額が増加した場合は、手数料(収入印紙)の追納が必要になります。
訴え変更の申立書は、請求の趣旨や原因などを変更することを裁判所に通知するものです。
民事裁判の手数料(収入印紙)は、原則として請求額に応じて決まります。
訴状を出す際にも、収入印紙を貼っていたと思いますが、請求額が増加した場合は、最初からその訴えだったらいくらの収入印紙だったのかを計算し、その差額分だけ手数料として支払わないといけません。
例えば、AさんがBさんに対し100万円の損害賠償を求めて裁判を起こしたとします。
その後、訴えの変更で請求額を150万円に増額しようと考えたとします。
100万円の裁判の場合、印紙代は1万円です。これを訴状に貼ったはずです。
150万円の裁判の場合、印紙代は1万3000円です。
そこで、差額の収入印紙3000円が必要になります。
訴えの変更にかかる費用
訴えの変更にかかる印紙代は上記のとおりです。
訴えの変更に伴う弁護士費用については、個別の事案や法律事務所によって異なります。
変更が必要だと言われた場合には、実費や弁護士費用の負担がどうなるのかは担当弁護士に確認するようにしましょう。
訴えの変更と被告の対応
訴えの変更のなかで、交換的変更の場合、被告の同意が必要になることもあります。
交換的変更は、それまでの訴えの取り下げを含みます。
訴えの取り下げの要件を満たさなければならないという考えもあります。
訴えの変更は、原告の専権事項とされていますが、被告の防御活動を保護するために一定の制限がありるものです。
ただ、被告が同意しない場合には、別に訴訟を起こされる可能性もあります。その場合、2つの裁判に対応することになるので、相手がどのように動くのか予想したうえで検討する必要があるでしょう。
訴えの変更の影響
訴えの変更は、裁判の進行や相手方に影響を与えることがあります。
そのため、訴えの変更が、著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときは、裁判所は変更を認めないことがあります。
訴えの変更により、訴訟の進行が遅れることがあります。
そのため、口頭弁論終結までという時期的な制限以外に、訴訟手続を遅延させることとなるときはだめだという制限がされているのです。
たとえば、一審でもできたであろう訴えの変更について、控訴審になってから申立をして、そのために新たに証拠調べが必要になったような場合には、この要件で否定されることもありえます。
訴えの変更が必要になったら、裁判の進行も考え、早めに変更を行うことが重要です。
訴えの変更ができる場合とできない場合
訴えの変更の要件としては、事実審の口頭弁論の終結前までに変更申立てを行う必要があります。
そのほかに、訴えの変更が訴訟の遅延を招かないことが必要です。
内容的な要件として、請求の基礎に変更がないことが必要です。
請求の基礎とは何かというのは厳密には争いがあります。ただ、争点が同じとか、証拠書類が同じであるとか、それまでの審理が使えるとか、被告側の反論に対してなされた場合などには、この要件を満たすと判断されることが多いです。
これらの要件を満たさず、訴えの変更ができない場合は、口頭弁論終結後や判決確定後などです。
訴えの変更は何度でもできるか?
訴えの変更の回数について明記はありませんが、複数回の訴えの変更を繰り返す場合は裁判所から不当な遅滞行為とみなされるおそれはあるでしょう。
ただ、争点が同一で、損害額が変わり、形式上、複数回の訴えの変更がされたという程度の場合には、許容されるのが通常です。
そのような事件で、将来的に訴えの変更が予定されているような場合には、予め予定を伝えて、訴訟の後半で、まとめて訴えの変更をすることもあります。
訴えの変更を無制限に認めると、乱用され裁判期間を不当に延長したり、被告へ圧力をかけることになってしまうので、そのような場合には制限されるでしょう。
訴えの変更が認められなかった場合はどうなるか?
訴えの変更が認められなかった場合は、その裁判では従前の請求が維持されます。
変更したかった訴えについては、別に訴訟提起できるか検討することになるでしょう。
訴えの変更における弁護士の役割
裁判を担当している弁護士は、訴えの変更手続きにおいて、適切なサポートとアドバイスを提供し、手続きを円滑に進める役割を果たします。
訴えの変更の適切なタイミングでの情報提供や手続き支援、書類の作成などをしてくれるでしょう。
訴えの変更は、通常、裁判の進行とともに必要になるものですので、裁判期日に出席し、流れを把握している弁護士から提案することがほとんどです。
訴えの予備的請求への変更
訴えの予備的請求とは、原告が従来の請求を維持しつつ、新たな請求を追加することです。
予備的請求は、従来の請求が認められない場合に限って有効とされます。
このような予備的請求は、訴え提起の時点ですることもできますし、訴えの変更手続で予備的請求を加えることも多いです。訴えの予備的請求をする場合の訴えの変更手続については、以下のようになります。
訴え変更の場合、訴えの変更申立書を作成し、裁判所に提出します。訴えの変更申立書には、予備的請求の趣旨と理由を明記します。
被告に対しても訴えの変更申立書を送付し、被告は、訴えの変更申立書に対して変更後の請求に対して答弁書を提出することになります。
もともと訴えを提起する際には、予備的併合のほか、単純併合や選択的併合というものもあります。訴えの変更では、予備的請求への変更のほか、単純併合等への変更もあります。
請求金額のみの変更
訴えの変更の分類についても、請求の趣旨や原因自体を変更するもの、請求の趣旨だけを変更する場合や、請求の原因だけを変更するもののほかに、金額だけを変更するもおのもあります。
貸金請求で一部を撤回したり、追加したりするものです。
請求の拡張、請求の減縮と呼ばれるものです。
請求を拡張する場合は訴えの変更(民事訴訟法143条)の性質があります。
これに対して、請求の減縮は基本的に訴えの取り下げとしての性質です。
請求の拡張を行う場合には、訴えの変更手続きが必要で、訴えの変更申立書を提出します。
被告側は、拡張後の請求内容に対する反論や拡張後の請求理由に対する認めるか否かの回答が必要です。
まとめ
訴えの変更は、民事訴訟において重要な手続きです。
適切なタイミングで変更を行い、手続きを円滑に進めるためには、弁護士と連携することが重要です。
訴えの変更は、原告が求める法的救済を変更したり、具体的な請求内容を修正する場合に行われますが、変更が許される範囲や要件は民事訴訟法で定められています。
通常、訴えの変更は口頭弁論の終結前までに行う必要があるほか、訴訟の遅延がないタイミングでおこなうことが求められます。訴えの変更が認められなかった場合は、弁護士と相談して訴訟戦略の見直しや上訴を検討することが重要です。
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