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FAQ(よくある質問)

 

Q.詐害行為取消権とは?

債権回収の一つとして使われる詐害行為取消権があります。

債務者が不当に財産を減らしている場合に使われる方法です。

 

この記事は、

  • 債権回収をしたい債権者
  • 詐害行為取消訴訟を起こされた人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.5.22

 

詐害行為取消権とは

詐害行為取消権とは、債務者が自分の財産を減少させたり、一部の債権者に偏った弁済を行ったりする行為をしたとき、債権者がこれらの行為を取り消し、責任財産を保全できる権利のことです。

責任財産は、債務者が債権者に支払う財産群のイメージです。これを不当に減らした場合に、債権者の立場から元に戻させる制度です。

債務者が債権の弁済が不可能になることを認識していながら、財産を不適切に流出させたり、特定の債権者に対してだけ不公正に弁済したりする行為は、債務者が債権者に対する背信行為と評価できるでしょう。

民法は、このような債務者の行為を許さず、債権者が債務者の背信行為を取り消すことを認めた制度です。

似たような制度として、破産法での否認制度があります。こちらも破産者が不当に財産を減らしたり偏った弁済をした場合に取り消される制度です。否認制度と詐害行為取消権では、似たような要件もあり、判例での判断も重なるところが多いです。

 

詐害行為取消のイメージ

AはBから100万円を借りています。

しかし、AはBに返す意思がなく、そのお金を自分の息子であるCに贈与してしまいます。

Bはその事実を知り、Cに対して詐害行為取消権を行使し、その100万円を取り戻すための訴訟を起こします。

このケースにおいて、Aは債務者、Bは債権者、Cは受益者となります。

詐害行為取消

 

詐害行為取消権の民法改正

詐害行為取消権に関しては、民法に書かれています。その条文の規定は抽象的なため、裁判例によってルールが決められている実情がありました。

そのため、2020年4月1日施行の改正民法では、詐害行為取消権に関しても、要件と効果等が具体的に規定されることとなりました。

内容としては、概ね、改正前の判例が組み込まれたものといって良いでしょう。

債権者としては、万が一の事態に備え、詐害行為取消権に関するルールを正確に理解しておくべきです。

 

詐害行為取消権の要件

改正後の現行民法は、詐害行為取消権の基本的な要件を明確にしています。

詐害行為取消権の要件がどのように規定されているのか整理してみましょう。

まず、詐害行為取消権が原則的に行使できる状況は、債務者が「財産減少行為」を行った場合です。

責任財産の保全が制度趣旨ですので、これが減少したことが前提です。

具体的には、以下の要件を満たす必要があります。

・債務者が詐害行為を行った
「詐害行為」は、その行為により債務者の財産の総額が債務の責任財産として不十分になることを指します。

無資力は債務を弁済できない状態のことです。単に財産が減少するだけではなく、このレベルまで下がることが必要です。

 

・債務者と受益者が債権者を損害することを認識していた

詐害行為取消権の行使は債務者及び該当行為により利益を得た者(受益者と呼ばれます)に犠牲を強いるものです。

債務者・受益者の双方の認識が必要です。

これを主観的要件と呼びます。債務者がこの要件を満たさない場合、行為は詐害行為とは認定されません。

詐害意思は、債務者の主観と行為の客観的な側面を総合的に判断します。債務者が特定の債権者を害する意図を持って行為を行っていないとしても、行為の性質や規模等の客観的な側面が強い詐害性を示す場合、詐害意思の存在は認められやすくなります。

 

・法律行為が財産権に関わるものである
身分に関する行為は財産権を目的としていないため、詐害行為取消権の対象にはなりません。

 

・債権が詐害行為以前の原因によって生じている

債権が成立→詐害行為という順番が必要です。詐害行為後に発生した債権であれば、詐害行為後の責任財産をあてにしたはずですので、それ以前の行為は取り消せないのです。

債務者が詐害行為を行わないという合理的な期待を保護する観点から、債権の成立原因が詐害行為以前にあることが必要とされています。

詐害行為時に保全されるべき債権が既に存在していれば、履行期の到来は問題となりません

取引状況に応じて債権額が変動する債権でも、保全されるべき債権となります。債権額が確定している必要はありません。

 

・債権が強制執行により実現できる性質

強制執行により実現できない債権は、裁判手続きを通じて保護する価値がないと考えられるため、詐害行為取消権の対象から除外されます。

身分関係に基づくもの、たとえば、夫婦の同居義務に基づく債権のようなものは対象外です。

 

保証人と詐害行為

保証人や物上保証人がいる場合には、保証人の財産が債務者の責任財産のように考えられるため、財産不足とはいえないように思われます。

しかし、保証人や物上保証人の財産から債権者が回収ができたとしても、その後、保証人は債務者に対して求償権を行使できます。結果的には債務者の責任財産が減少します。

そのため、このように保証人がいて、そこから回収できる場合でも、詐害行為取消権との関係では財産不足であると言え、詐害行為取消権を適用することが可能です。

 

 

受益者からの譲渡と詐害行為取消権

財産が移転する場合には、受益者からさらに別の人(転得者)へと財産が移転された場合も想定されます。

そのような状況では、全ての転得者が詐害行為の存在を知っていた場合に限り、転得者に対しても詐害行為取消権を行使できます(民法第424条の5)。

詐害行為取消権の趣旨と取引の安全を調整したものといえるでしょう。

 

詐害行為取消の追加類型

債務者の全体的な財産が減少しないような行為でも、以下の3種類の行為は例外的に詐害行為に含まれ、取消権の対象になることがあります。

・相当対価を得た処分

・特定の債権者への保証提供等

・過大な代物弁済等

相当の対価を得て行われた財産の処分

債務者が責任財産を減少させる行為は問題になるのですが、対価をもらっていた場合にはどうなるでしょうか。

債務者が財産の処分によって適正な対価を得た場合でも、責任財産が流出するリスクはあります。

例えば、法改正前から問題になっていたのが、不動産を売却して現金を得るケースです。適正価格で不動産を売却した場合、数字で見れば、債務者の財産は取引前後で変わらないことになります。しかし、不動産よりも現金のほうが流動性があり、債務者の財産の流出リスクは増大します。

 

したがって、このような対価を得た処分行為についても、一定の条件が満たされた場合に限り、詐害行為取消権の対象と明記されました(第424条の2)。

・財産の種類を変更することにより、隠蔽や無償供与など、債権者の権利を侵害する処分(隠蔽等の処分)が現に行われる可能性があること。
・債務者が財産を処分する行為を行った時点で、隠蔽等の処分を行う意図を持っていたこと。
・受益者が、処分行為が行われた時点で、債務者が隠蔽等の処分を行う意図を持っていたことを知っていたこと。

隠蔽意図や受益者側の認識が要件とされたものです。

 

特定の債権者への保証提供等に関する特例

特定の債権者に対する担保の供与や債務の消滅に関する行為が問題になります。不公平に債務の弁済や担保の提供を行うことを「偏頗行為」と呼びます。

特定の債権者だけに対して担保を提供したり弁済しても、資産のプラス・マイナスは変わりません。債務の返済をしているだけなので、債務者の財産を見れば、マイナスもプラスも減ってはいます。しかし、限られたプラスの財産を一部の債権者だけに分配すれば、他の債権者は支払がされないことになります。

偏頗行為は、一部の債権者に対する不公平な行為として評価され、その結果、他の債権者を不利益にする可能性があるため、一定の条件下では詐害行為取消権が認められます。

これが詐害行為取消になるかどうかは、弁済期が来ていて支払が義務だったかどうかで分類されます。まだ払わなくて良かったのに払ったという方が厳しい対応をされるわけです。

 

債務者の義務行為である場合

・偏頗行為が、支払い不能となった時点で行われたこと
・債務者と受益者が共謀、他の債権者を害する意図を持っていたこと

債務者の義務行為ではない場合(弁済期未到来の場合を含む)
・偏頗行為が、債務者が支払い不能になる前の30日以内に行われたこと
・債務者と受益者が共謀、他の債権者を害する意図を持っていたこと

義務ではなかった場合には、その後に30日以内に支払不能になったというタイミングでも問題にされるわけです。

債務者に対して複数の債権者が存在する場合、責任財産をあてにしていると考えられます。その場合、債権の発生原因、履行期、債権金額に関わらず、債権者は平等に扱われるべきとの考えがあり、これを反映させた規定です。

 

 

過大な代物弁済等に関する特例

特定の債権者に対して過大な代物弁済を行う行為は、財産の減少と偏頗行為の組み合わせとして評価されます。

代物弁済とは、債務者が債権者との間で、元の債務とは異なる給付をすることにより債務を消滅させることです。金銭債務の返済としてお金の代わりに財産を譲渡する方法が典型的です。

受益者が受け取る給付の価額が元の債務額よりも過大である場合、財産が減っています。資力が減ってきた人から、債権者が強制的に財産を奪取して、代物弁済として充てることが多く、これを規制するものです。

財産を譲渡していることから財産の減少という性質を持つほか、弁済しているので偏頗弁済の問題も含むものです。

厳密には、過大な部分が財産減少行為、債務を支払ったという部分が偏頗行為になるでしょう。

したがって、過大な部分については一般的な財産減少行為の要件に従い、債務額に対応する部分については偏頗行為の要件に従って詐害行為取消権が認められるとされています。

 

 

詐害行為取消権の効果

詐害行為取消権が行使されると、詐害行為に関連する全ての当事者間の法律的関係が元に戻される効果が発生します。

まず、債務者・全債権者との関係において、詐害行為が無効になります。

民法改正前は、裁判所の判断により、詐害行為取消の効果が債務者には及ばないとされていたこともありましたが、債務者も効果の範囲内に含まれています。

次に、詐害行為取消権の効果として、財産の返還または価値の返済を求めることができます。

詐害行為が無効になる結果として、債権者は受益者や転得者に対し、取得した財産の返還を求めることができます。

財産そのものの返還が困難な場合、その価値に相当する金額の返済を求めることもできます。

 

財産が分割できるときは、債権額の範囲内でのみ詐害行為を取り消すことができます。

分割できないときには、詐害行為全体の取消を求めることができます。

ただし、価値の返済を求める場合には、常に分割可能として扱われ、返済を求めることができるのは債権額に相当する金額のみです。

 

また、取消債権者は、金銭の支払を求める場合、受益者または転得者に対し、債権者自身へ支払うよう求めることができます。直接財産の返還や価値の返済を受けた後、それを自身の債権の弁済に事実上、充てることができます。

 

 

取り消しにより、受益者・転得者の権利は復活します。

詐害行為取消権が行使されると、受益者や転得者は、債務者から得た利益を失います。

この反動として、受益者や転得者は、反対給付の返還請求権を行使できるようになり、受益者の債権者に対する債権も現状に準じて行使できるようになります。

 

詐害行為取消権の注意点

2年間の期間制限を認識しておく必要があります。

詐害行為取消権は、以下のどちらか早い期間が過ぎた場合、行使できなくなります。

債権者が詐害行為と債務者の悪意を知った時点から2年
詐害行為が行われた時点から10年

認識から2年、行為時から10年で時効になってしまうのです。

 

詐害行為取消の権利行使には裁判

詐害行為取消権の適用は、法的手続きを経て行わなければならないとされています。

つまり、口頭や書面で受益者や転得者に伝えるだけでは不十分で、必ず訴訟を提起しなければならないのです。

詐害行為取消訴訟の訴額は、債権者である原告の債権額になります。

ただし、取り消す法律行為の目的となる価額が上限です。

債権額が1000万円、取り消す行為の額が500万円なら500万円が訴額になります。

詐害行為取消訴訟の裁判管轄は、取消によって形成されるべき義務の履行地が適用されます。

被告は、法律行為の受益者または転得者となります。

債務者本人は被告となりませんが、訴訟後、債権者は、遅滞なく、債務者に対し訴訟告知をしなければならないとされています。これにより、債務者も事実上、訴訟に参加することになるでしょう。

 

詐害行為取消訴訟は専門的な手続きであり、主観面の立証負担も高いため、法律専門家に依頼したほうが無難でしょう。

訴訟準備を適切に行い、債権者の主張が認められる可能性を高めることができます。

 

 

詐害行為取消訴訟の類型

詐害行為取消訴訟としては、金員の返還請求があります。

金員の返還は、債務者に対する返還ではなく、債権者への支払いを求めることができます。債権者は受け取った金員を債務者に返還する義務と、債務者の債権者に対する金銭債務を相殺することにより、事実上優先的な弁済を受けることが可能となります。もっとも取消の効果は債務者にも及びます。その結果、債務者自身も受益者等に対し返還請求権を持ちます。

次に、現物返還請求があります。動産の返還は、債務者への返還ではなく、債権者への直接の引渡しを求めることができます。もっとも取消の効果は債務者にも及ぶ点のリスクは、金員の返還請求と同じです。

さらに、不動産登記名義の回復請求もあります。

不動産登記名義では、受益者名義への移転登記の抹消請求であることが多いです。

所有権移転登記が受益者から移転し転得者名義になっている場合には、受益者と転得者の双方を被告とし、それぞれに対して所有権移転登記の抹消登記を求めます。

または、転得者だけを被告とし、真正な登記名義の回復を原因とする債務者への所有権移転登記を求める方法もあります。

 

保全されるべき債権は金銭債権

詐害行為取消権は、債務者の財産を保護し、債権者がその債権を回収できる状況を作り出す目的で適用する権利です。

そのため、債権者は、金銭債権を保有している必要があります。

このような金銭債権を保全されるべき債権、被保全債権と呼びます。

 

詐害行為取消の典型例

わかりやすいのが贈与です。
贈与は詐害行為取消の対象となる典型的な例です。無償で財産をあげる行為ですので、責任財産は減少します。

贈与と類似のものに債務免除があります。
債務者が債権を持っている場合の話です。売掛金等の権利を持っているのに、これを免除するとプラスの財産が消えます。詐害行為となり、取り消しの対象となります。

特定の債権者へのみ債務の支払があります。

特定の債権者だけに債務を支払うことも詐害行為とみなされます。偏頗弁済と呼ばれるものです。

債務を支払うと、支払に使われた財産は消える一方で債務もなくなります。

したがって、全体的な財産収支では、プラスマイナスゼロとなります。しかし、他の債権者にとっては、回収確率が下がります。責任財産が減ったことになるので、詐害行為となり得ます。

任意売却も問題になります。
詐害行為取消権に関連して、「相当価格での財産売却」が問題となります。

相当価格での売却とは、適正な価格で物を売ることです。

例えば、時価1000万円の不動産を1000万円で売却した場合、不動産はなくなりますが、その代わりに1000万円が手に入るため、債務者の総資産は減少しません。

しかし、このような相当価格での売却であっても、不動産を現金に換えると、資産を隠すのが容易になり、債務者の財産保全が難しくなるため、一定要件を満たせば詐害行為取消権の対象となります。

 

詐害行為取消権と相続放棄

相続放棄をした場合、詐害行為として債権者によって取り消される可能性はあるかと質問されることもあります。

遺産分割など相続関係でも詐害行為取消権は使われます。

相続財産があるのに、相続放棄をしたのであれば、債権者からすれば、本来もらえた財産を手放したとして、財産の贈与などと同じように感じるかもしれません。

しかし、相続放棄は身分行為とされており、詐害行為取消権の対象とはならないとされています。自己破産での否認権の問題でも、同じように対象外とされています。相続放棄のような身分行為については、他者の意向で強制されるべきではないと考えられているのです。

詐害行為取消権の関係では、遺産分割の話し合いをして、自分の取り分をゼロとするような遺産分割協議を成立させると詐害行為取消権の対象になる可能性がありますが、相続放棄の場合には本人の自由だとして対象外とされます。

そのため、相続人としては相続放棄を家庭裁判所にしておいたほうが取り消されるリスクは少ないといえます。

 


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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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