FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.市町村は特別縁故者になれる?
市が申立人となり、特別縁故者への財産分与を申し立てた事件があります。
特別縁故者の判断として不動産の生前の利用形態が重視されているので、そのような主張をしたい場合には参考になる裁判例でしょう。
水戸家庭裁判所令和4年7月13日審判です
この記事は、
- 特別縁故者の利用を考えている人
- 公共不動産の対応が必要な市町村
に役立つ内容です。
特別縁故者の事件背景
被相続人は平成25年に死亡し、唯一の法定相続人であった相続人の夫が相続を放棄。
これにより法定相続人は存在していない状況でした。
市が、相続財産管理人の選任を申し立て。
相続財産管理人が選任され、相続人捜索の公告が行われました。しかし、相続人を名乗る者は現れず、結果的に申立人が特別縁故者として相続財産分与を申し立てたのです。
相続財産とは、被相続人がその母から相続した各土地でした。被相続人とその母は、各土地を地域の公共財産として活用し、市や地元の自治会に管理を任せていました。
それらの土地は市道の敷地、通学路近くの土地、湿地帯の一部など、地域の機能や美観に寄与していました。
裁判所は特別縁故者を認定
裁判所は、被相続人が長年にわたり地元の公共財産として土地を供してきた意向を認め、その維持・管理を続ける申立人を「特別縁故者」と認めました。そして、申立人に被相続人の相続財産である土地を分与することは被相続人の意思にも合致するとの結論を下しました。
なお、被相続人の負債として発生していた固定資産税・都市計画税は、市の徴税部門により当面の執行停止と即時欠損の処理が進められることとなり、相続財産による清算は不要とされました。
裁判所は、各土地の特性を認定しています。
市道の敷地については、母も被相続人も長く、市による無償での使用を認めていました。市がこれらの土地を管理してきました。
近隣の小学校の通学路として多数の小学生が利用する市道と接する土地もあり、通学の安全確保のためには同土地に自生する草木を伐採する必要があり、管理を、市及び地元の自治会に任せていました。
一部の土地は、隣接地が、自治会が市から貸与を受けて管理する湿地帯であり、自治会において蛍を育成しあやめを植栽して市民の憩いの場となっている点を指摘。本件土地は、その水源となっており、湿地帯を管理する上で必要不可欠な土地であると認定。
母は、生前、本件土地の管理を市及び自治会に任せるとともに市への寄付の意向も述べていた点を指摘しています。
母は、生前、市に居住して地域の小学校の教員を長年務め、地域の発展に対する想いが強く、本件各土地の管理を市や自治会に委ねてきたのもそのような郷土愛に基づくものであり、被相続人も、母の想いを受け継いで本件各土地の管理を市や自治会に委ねてきたものである天に触れています。
負債の認定
被相続人の負債としては、本件各土地に関する市の平成29年度から令和4年度分までの固定資産税・都市計画税合計9万0200円があるが、市の徴税部門担当者によれば、当面は執行停止の形とした上で即時欠損の方向で処理を進めることとなっており、相続財産による清算は不要である点に言及しています。
裁判所の判断理由
被相続人の相続財産である本件各土地につき、申立人を特別縁故者と認めてこれを分与すべきか否かにつき、以下検討するに、被相続人は、母の意向を受け継ぎ、本件各土地を長年にわたり地元の公共財産としてその用に供してきており、将来的にも現状が維持されることを望んでいたと認められると指摘。
そうすると、申立人は、被相続人の相続財産である本件各土地の維持・管理を通じて、生前、被相続人と密接な交流があり、本件各土地を申立人に分与することが被相続人の意思にも合致するというべきであって、申立人は、「その他被相続人と特別の縁故があった者」(民法958条の3第1項)に該当するものと認められるとしました。
不動産を市に特別縁故者として分与するとの判断がされたものです。
特別縁故者には法人や市町村も
特別縁故者には法人も含まれます。
さらに、地方公共団体も「その他被相続人と特別の縁故があった者」として特別縁故者となり得ることが一般的に認められています。
過去の審判例から見ても、地方公共団体が特別縁故者と認められた事例は複数存在します。一方で、地方公共団体が特別縁故者として被相続人の相続財産分与を求める申立てが却下された事例もあります。
特別縁故者の適用基準
特別縁故者に該当するか否かについては、被相続人との間に具体的かつ現実的な精神的・物質的に密接な関係があった者であり、その者に相続財産を分与することが被相続人の意思に合致すると判断される程度に特別の関係があった者とされています。これは地方公共団体にも適用されます。
本件では、分与対象となる土地が長年にわたり市の公共の用途に供されてきたという特別な事情を考慮し、被相続人と市との関係、および分与意思を肯定し、当該地方公共団体への分与を認めました。
この事例は地方公共団体が特別縁故者と認められるか否かについての参考になります。
被相続人と申立人である市との関係というより、対象不動産がどのように扱われてきたのかという不動産との関係を重視して分与を認めているかのように読めます。
もちろん、被相続人の母が、市への貢献を重視していたような点も指摘していますが、申立人が地方公共団体のような場合には、被相続人との特別な関係は認定しにくく、財産の特性などをポイントにして判断するしかないのではないかと感じます。
このような不動産については、できれば生前に寄付などで受け入れておきたいところですね。もし、相続人が相続した場合には、紛争になるリスクも高まっているため、生前に処理しておいた方が無難でしょう。
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