FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.相続不動産の国庫帰属とは?
相続などで取得した不要な不動産を手放す方法として、国庫帰属制度が作られました。
今回は、この相続不動産の国庫帰属制度について解説します。
この記事は、
- 相続不動産の国庫帰属を検討している人
- 不要な不動産を持っている人
に役立つ内容です。
相続土地の国庫帰属制度とは?
相続土地国庫帰属制度は、令和3年4月28日に施行された法律によりできた新たな制度です。一連の不動産法改正と同時期にできました。
この帰属制度は、相続等により手に入れた使用しない土地を、特定の条件下で国が引き取るという、これまでにない制度です。
流れとして、法律ができた後、国が引き取ることができない土地など詳細な条件や、負担金の額などを決めた政令(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令)が令和4年9月29日に公布。
申請書の記載事項や添付書類等について定めた省令も令和5年1月13日に公布。
法務局における制度運用の詳細を定めた通達が令和5年2月8日に発出。
そして、制度の運用が、令和5年4月27日から開始となっています。
国庫帰属の制度趣旨
この国庫帰属制度は、相続などで土地を取得したものの、使わないため放置されてしまう土地が増えるのを防ぐ趣旨です。
特に地方では土地の所有意識が薄れ、土地を利用したいというニーズも低下していると言われます。しかも、売ろうとしても買い手が見つからないことも。
相続を通じて望まない土地を取得した所有者の負担が増し、それを手放したいと考える人が増え、何とかしようという制度です。
同時期の不動産法改正として、所有者不明土地等の管理制度ができていますが、それにつながる制度です。
ただし、どのような不動産でも国が引き受けてくれるわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。
承認申請の手続き
国庫帰属のためには、要件を満たすことを承認をしてもらう必要があります。
承認申請では、承認申請書及び添付書類を提出する必要があります。
提出先は、承認申請に関する土地の所在地を管轄する法務局等の本局です。
法務局等の支局及び出張所では、取り扱っていません。神奈川県ですと、厚木の法務局などでは対応してもらえず、横浜となります。
承認申請書及び添付書類は書面で提出します。
窓口への提出以外に、郵送による提出もできまs.
承認申請を受け付けた法務局等の本局は、申請された土地について、国が引き取ることができない土地の要件(却下要件)または承認をすることができない土地の要件(不承認要件)のについて審査します。
書面調査及び実地調査をするものとされます。
承認申請書記載内容、添付書類
承認申請書には、①承認申請者の氏名または名称及び住所、②承認申請に関する土地の所在、地番、地目及び地積
③承認申請に関する土地の表題部所有者または所有権の登記名義人の氏名または名称及び住所は記載する必要があります。
添付書類として、申請書に記名押印した者の印鑑証明書、相続等により土地の所有権を取得しているものの登記に反映されていない場合にはそれを証する書面(相続人であることを示す戸籍事項証明書、遺産分割協議書等)
承認申請に関する土地の位置及び範囲を明らかにする図面、写真、隣接する土地との境界点を明らかにする写真、
登記移転に関する承諾書
などが必要とされています。
国庫帰属の申請時費用
承認申請には審査手数料が必要です。
手数料は、土地1筆につき14,000円と定められています。
隣接する複数の土地を一括で申請した場合でも、審査手数料は1筆ごとに必要です。
審査手数料は、必要金額の収入印紙を承認申請書に貼ります。
承認申請が受け付けられると、承認申請を取り下げたり、却下されたり、不承認という結果になっても、返還されません。
国庫帰属の負担金
この不動産の国庫帰属制度は、申請時の印紙代以外に、費用がかかります。
申請が通り、国庫帰属となった場合に支払う必要があります。
国が無償で引き取ってくれるわけではなく、お金を払って引き取ってもらうイメージです。
申請が承認された場合、承認申請者は、国有地の種目ごとに、その管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して定められた負担金を納付する必要があります。
基本としては、その金額は、土地1筆につき20万円とされています。ただし、草刈等の管理を要する一部の市街地等の宅地、農地及び森林については、面積に応じて算定される負担金を納付する必要があります。
申請者が負担金を納付すれば、その時点で、土地の所有権は、国庫に帰属します。
申請者が負担金の額の通知を受けた日から30日以内に負担金を納付しないときは、承認はその効力を失ってしまいます。
国庫帰属にかかる期間
法務局長等は、承認申請の件数や事務の処理状況等を考慮の上、承認申請の受付から承認、不承認または却下をするまでに通常要すべき標準的な期間を定め、法務局等のホームページに掲載する等の方法により明らかにしておくものとされています。
帰属制度は、できたばかりの制度のため、どれくらいの期間が必要かわかりにくいところもあります。
実地調査等をしなければならないことや、実際の申請件数もわからないところから、文献等では、承認、不承認または却下の判断までに半年から1年程度かかるのではないかと言われています。
国庫帰属の申請をできる人は?
この制度では、相続等により土地を取得した者が、その土地について申請できるというものです。
自分で希望して購入したような土地は含まれません。相続など、やむを得ない事情で取得したことが要件とされます。
相続ができない会社などの法人は対象外です。
申請は、相続等により土地を取得した本人または法定代理人が行う必要があり、任意代理は認められていません。
共有不動産の国庫帰属は?
この制度は共有不動産でも使えます。相続の場合には、共有になっていることも多いでしょう。
土地が共有地である場合、共有者の全員が共同して行う必要があります。
また、相続等以外の原因により土地の共有持分の全部を取得した共有者であっても、相続等により共有持分の全部または一部を取得した者と共同して行うときに限り、申請をすることができるとされています。
共有者のうち一人でも、相続による取得者がいれば良いということです。
国庫帰属制度が使えない土地とは?
国側でもコスト面で受け入れられない土地があります。
「通常の管理または処分をするに当たり過分な費用または労力を要する土地」とされる場合には、国庫帰属制度は使えません。
具体的には、却下要件と不承認要件が決められています。
まず、却下要件ですが、その事由があれば直ちに通常の管理または処分をするに当たり過分な費用・労力を要すると扱われるものとされます。以下の土地です。
・建物の存在する土地
・担保権または使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
・通路その他の他人による使用が予定される土地(墓地、境内地、現に通路・水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地)が含まれる土地
・ 土壌汚染対策法上の特定有害物質による汚染がある土地
・ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
次に、不承認要件ですが、費用または労力の過分性について個別の判断を要するものとされます。
・崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用または労力を要するもの
・土地の通常の管理または処分を阻害する工作物、車両または樹木その他の有体物が地上に存在する土地
・ 除去しなければならない有体物が地下に存在する土地(法5条1項3号)
・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理または処分をすることができない土地(隣接地所有者等によって通行が現に妨害されている土地等
上記のほか、通常の管理または処分をするに当たり過分な費用または労力を要する土地
・土砂崩落、地割れなどに起因する災害による被害の発生防止のため、土地の現状に変更を加える措置を講じる必要がある土地(軽微なものを除く)
・鳥獣や病害虫などにより、当該土地または周辺の土地に存在する人の生命または身体、農産物または樹木に被害が生じ、または生じるおそれがある土地(軽微なものを除く)
・適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が追加的に必要な森林
・国庫に帰属した後、国が通常の管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
・国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地
法務局等における審査の流れ
申請後、法務局では審査が行われます。却下要件、不承認要件がないかどうかのチェックです。
まず、書面審査がされます。
承認申請を受け付けた法務局等は、申請書や添付書類の内容、関係機関から取得した資料、登記所が保有する資料(登記事項証明書や登記所備付地図等の写し)を基に調査を行います。
この際、申請土地が所在する地方公共団体に対し、申請土地に関する資料提供依頼を行います。この資料は書面調査のための資料となります。登記情報だけではわからない「市街化区域」かどうか「用途地域」、農地などの確認をするための資料です。
さらに、実地調査がされます。
書面調査の結果、直ちに却下すべき事由がない場合、法務局等の職員が実地調査を行います。書面調査のみで却下要件がある場合には、却下されるでしょう。たとえば、抵当権の設定など、登記関係の書面のみで明らかにわかる内容もあります。
実地調査では、申請土地及びその周辺を調査し、必要に応じて隣接地所有者や周辺住民等への聴取も実施するとされています。
地域における土地の有効活用の機会を確保する観点から、承認申請を受け付けた法務局等は、承認申請者の同意を得た上で、その旨を申請土地が所在する国や地方公共団体等の関係機関に情報提供をします。地方公共団体にて有益に使えるなら、受け入れやすいでしょう。国庫帰属ではなく、寄付の受け入れで対応してもらえることが想定されています。
法務局等における審査結果
審査の結果、却下要件に当たらず、不承認要件にも該当しないと認められるときは、土地の所有権の国庫への帰属を承認することになります。
却下要件に該当する場合は、承認申請が却下されます。
不承認要件に該当するならば、承認をしない理由を明記した通知を書面で作成し、承認申請者に交付します。
承認がされれば、基本的には、あとは国に引き継ぐことになるので、その不動産には関与しなくても良くなるでしょう。
承認の取消し
ただし、法務大臣は、承認申請者が虚偽や不正な手段によって国庫帰属の承認を受けたことが明らかになった場合に限り、その承認を取り消すことができるとされています。
承認決定が出たなら、簡単には取り消されないというものです。申請をした土地の所有権の期待を保護する趣旨でしょう。
不正手段などの問題があった場合には、取消がされてしまうリスクは残っています。
以上のように、基本的には、法務局と相談しながら進める制度かと思いますが、法律相談等で対応を協議することもあるでしょう。
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