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FAQ(よくある質問)

 

Q.債権差押えの取立とは?

裁判所で判決などを取得した後、債務者の財産である債権を差し押さえることがあります。預金や給与などであることが多いです。

このような債権差押をした後、実際の回収業務、取立はどのように行われるのでしょうか。

この記事は、

  • 債権回収中の人
  • 相手の預金・給与を差し押さえたい人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.8.23

 

債権差押えとは

債権差押えは、債務者が支払いを怠った場合に、債権者が法的手段を用いて債務者の財産のうち債権を差し押さえる手続きです。

裁判所の判決等の債務名義を取得してから、執行文の付与、判決正本の送達、債権差押命令の申立てなど、一連の手続きが必要です。

 

差押え可能な財産

差押え可能な財産には、預貯金、給料、不動産などがありますが、一部の財産には差押えが制限されています。

例えば、給料の4分の3(多くの金額帯の場合)、公的年金などは差押えが禁止されています。これらの制限は、債務者の最低限の生活を保護するために設けられています。

このような差し押さえのなかで、預貯金や給料などの債権を差し押さえる手続きが債権差し押さえです。

 

債権差押えの工夫

債権差押えには、特定のケースで工夫が必要な場合があります。

例えば、債務者が複数の金融機関に預金口座を持っている場合、複数の口座を差し押さえることがあります。

一箇所の預金口座だけを差し押さえると、その預金口座にお金がなければ差し押さえは空振りとなります。これを避けるために、複数の口座を差し押さえ、少しずつでも回収しようという動きです。

各銀行に対して差し押さえをおこなうため、実費等の費用は余計にかかりますが、空振りのリスクを減らすために、このような方法がとられることはあります。


債権差押えの対象となった預金が存在するかどうかは、金融機関からの陳述書を通じて確認されます。この陳述書は、差押命令の発令から2週間以内に提出されます。


 

債権差押後の取立方法

債権差押え後の取立方法は、差し押さえた権利を第三債務者から取り立てることで行います。

第三債務者は、預金を差し押さえたのであれば銀行等の金融機関、給与を差し押さえたのであれば、職場の会社となります。


債権差押命令が第三債務者に送達されると、債務者に対して差押債権の取立て等の処分を禁止し、第三債務者に対して債務者への弁済を禁止する効力が生じます。

しかし、これだけでは不十分で、債権者は差押債権を換価する手続きを取る必要があります。

換価方法としては、転付命令、譲渡命令、売却命令などもありますが、最も基本的な方法は取立てです。

 

債権差押え

債権差押え後の取立権の発生

債権者が第三債務者から直接取り立てることができる取立権の発生時期について解説します。

差押債権が給与等債権以外の場合の原則としては、差押命令が効力を生じた後、債務者に送達された日から1週間経過した時に発生します。この期間の計算は初日不算入です。例えば、送達された日が令和5年7月12日であれば、取立権発生日は同月20日となります。

差押債権が給与等債権であり、請求債権に扶養義務等債権を含まない場合(養育費などではない場合)、令和2年4月1日以降に申し立てられた事件で、差押債権が私的年金等、給料等、退職金等債権の場合で、請求債権に扶養義務等債権を含まない場合、取立権の発生日は、債務者への差押命令送達後4週間を経過したときとされました。

 

差押債権が給与等債権であり、請求債権に扶養義務等債権を含む場合(養育費、婚姻費用等の場合)、取立権の発生時期は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過した時とされています。

 

 

取立権行使の要件

取立権を行使するためには、以下の要件が必要です。

1.差押債権の支払期が到来していること:条件付きや期限付きの差押債権の場合、条件成就や期限到来を待つか、そのままの状態で換価することが考えられます。

2.他に競合する差押債権者や配当要求債権者がいないこと: いる場合、第三債務者は差押債権の全額を供託する義務があります。

3.執行停止文書が執行裁判所に提出されていないこと: 提出された場合、裁判所から取立てや支払いの禁止通知がされます。

 

取立権行使の方法及び範囲

取立権が認められると、差押債権者は、自己の名において差押債権の取立てに必要な一切の行為をすることができます。
取立権行使の範囲は、差押命令に表示された差押債権全額に及びますが、支払いの限度は請求債権及び執行費用の合計額です。
第三債務者は、取立権行使の障害がなければ取立てに応じるべきとされます。

支払方法は協議で決定されます。

預金差押などの場合には、金融機関が店舗まで取りに来るよう求めてくることもありますし、給与差押の場合には、毎月、指定口座に振り込んでもらえることもあります。

 

取立訴訟

第三債務者が理由なく取立てに応じない場合、差押債権者は第三債務者に対し、取立訴訟を提起できます。

第三債務者が法的なルールをよく理解していない場合や、他に法的な主張がある場合などに訴訟提起が検討されます。通常は、第三債務者と協議などをしてから訴訟提起に移ることが多いでしょう。

なお、差押命令申立事件を取り下げた場合、取立訴訟の原告適格はなくなります。

 

取立訴訟の判決

取立訴訟を提起した際、裁判所が債権者の請求を認容する判決を出すことがあります。

訴状送達時までに差押え等の競合がなければ、単純に支払を命じる判決となるでしょう。この判決を債務名義として、今度は、第三債務者の財産に対して強制執行できます。

これに対し、差押えの競合がある場合、金銭の支払を供託の方法によりすべきとした判決となります。

供託がされた場合には、配当が実施されます。

 

取立て後の処理

差押手続きを申し立てた裁判所へ取立届を提出します。

差押債権者が第三債務者から支払を受けた場合、その額の限度で請求債権の弁済があったとみなされます。その際、取立届の提出が必要です。

支払を受けた旨を執行裁判所に書面で届け出る必要があります。この書面を「取立届」といいます。

 

取立完了届と一部取立届

請求債権全額が弁済された場合は「取立完了届」、一部弁済の場合は「一部取立届」と呼ばれます。
取立届には事件の表示、債務者及び第三債務者の氏名、支払を受けた額と日付などを記載する必要があります。

判決や和解調書などの債務名義にこれらの情報が追記されます。

一部だけ取り立てをおこない、債務名義を還付してもらう場合、債務名義の金額がいくらで、取り立てた金額がいくらか分かるようになるのです。

 

債権差押事件の終了

取立届により請求債権全額が弁済されたとみなされた場合、執行裁判所は事件を終了させます。

一部空振りの場合、つまり差押命令に表示された差押債権額に満たない場合、一部取立届を提出し、取立不能に終わった残部を取り下げることで事件が終了します。

 

長期間の放置に対する取り消し

令和元年改正法により、差押債権者が長期間にわたって取立ての届出等をせずに事件を放置している場合、執行裁判所が職権で差押命令を取り消して事件を終了させることができる仕組みが設けられました。

具体的には、差押債権者が2年間支払を受けずに放置した場合、4週間以内にその旨を執行裁判所に届け出なければならず、怠った場合は差押命令の取り消しとなります。

 

令和元年改正法による改正の経緯

以前の民事執行法では、債権執行事件の終了は、差押債権者の取立完了届や申立ての取下げなど、差押債権者の事後的活動に依存していました。

執行裁判所が職権によって事件を終了させる方法は存在しなかったため、放置された事件が増えました。

差押債権者が取立届の提出を怠ったり、取立ての意欲を失ったにもかかわらず取下げがされないまま、事件が長期間放置されるケースが多く見られました。

また、長期間にわたって差押えの拘束を受け続けることが、銀行などの第三債務者にとって負担となっているとも言われていました。

特に預貯金債権の差押えでは、特別な口座管理などの事務的な負担が伴っていました。

さらに、執行裁判所でも、未解決の事件が増え続ける状態になっていました。

これらの問題を解決するため、令和元年改正法により以下の新しい仕組みが導入されました。

取立届の義務化となりました。債権者に対して、取立届(一部取立届を含む)の提出が義務付けられました。
また、支払いのない場合の届出も必要とされました。
このような届出がされない場合、執行裁判所が職権で差押命令を取り消し、事件を終了させることが可能となりました。

 

取消予告通知

5項届が2年間提出されない場合、執行裁判所は職権で差押命令を取り消すことができるとされています。


しかし、取り消し前に、裁判所書記官は差押債権者に対し、取り消されることとなる旨を通知する必要があります(取消予告通知)。
通知方法は普通郵便や電話など、相当と認める方法で良いとされています。この取消予告通知から取消決定までに4週間の猶予を設ける場合があります。

債権差押命令の取消決定は債権者に送達し、1週間以内に一部取立届または5項届が提出されなかった場合に確定します。これらの届出をすることで、取消決定は失効します。
取消決定が失効した場合、債務者への告知及び第三債務者への通知はされません。

5項届は原本により提出する必要があり、ファクシミリによる提出は無効とされています。

 


第三債務者が複数のとき

この取消決定は、第三債務者が複数のときには、どうするのか問題となります。

東京地裁では、差押債権者が、いずれかの第三債務者から支払を受けた旨の一部取立届を提出していれば、差押債権者が事件全部の進行管理を行っていると評価し、支払を受けていない第三債務者との関係でも、取立届を提出した日から2年と4週間が経過するまでは取消決定をしない運用とされています。

一部の第三債務者からは2年以上の回収がなくても、取消決定がされないことになります。

 

 

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