悪質リース商法で、リース会社の請求を3割減らした裁判例を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.リース会の請求が減額できた裁判例は?

リース会社からの裁判では、契約者に厳しい判断がされてしまうことも多いですが、一部、請求額が減らせることもあります。

リース事業協会の自主規制規則の存在や、電話機リースという以前から問題になっていた物件という性質から、信義則上リース会社の請求を制限した裁判例を紹介しておきます。

消費者法ニュース135号に掲載されている、大阪地方裁判所令和5年2月3日判決です。

リース会社は、シャープファイナンス株式会社でした。


この記事は、

  • リース会社から請求を受けている人
  • 虚偽説明をしてきた販売店は倒産してしまったという人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.8.10

 

勧誘内容

販売店から虚偽説明を受け、電話機リースを契約。

契約者は、販売店に対して損害賠償請求訴訟を起こし、勝訴判決。

しかし、販売店は倒産。

リース会社から裁判を起こされたという流れです。

 

判決では3割の減額

電話機リースの契約で、リース会社の請求を3割減額したという内容になっています。

リース会社から裁判を起こされたケースでは、契約者側には厳しい裁判例も多いですが、反訴を起こす等して、請求額を下げることなどはありえます。

 

自主規制規則を主張

リース事業協会は、本件自主規制規則を定めた平成27年当時、一部のサプライヤーによる虚偽説明、物件未納品、書類不備等を原因として、小ロリース取引の顧客からリース会社に苦情が寄せられている状況を踏まえ、小ロリースに係る苦情の極小化を目指すため、サプライヤーの取引停止情報を会員会社間で共有するサプライヤー情報交換制度の登録情報を拡充することのほか、会員会社において、苦情が生じているサプライヤーとの取引関係を見直し、改善・指導を更に強化すること、顧客の対面による契約確認活動を行うに際して、苦情発生サプライヤー及び新規に取引を開始したサプライヤー案件を重点的に確認することなどをその活動方針としていた点を指摘。

また、リース事業協会は、平成27年2月、小ロリース取引を行う会員各社は本件自主規制規則を遵守し、商談が適正に行われたかを顧客に確認すること、物件見積書の写しを取得し、その内容を顧客に確認すること、申込書控えの交付等の事務手続に不備があれば是正を要請することを必ず行うとして、サプライヤーに対して苦情の極小化への協力を求める書面を作成して公表したと言及。

 

本件販売店の問題

本件で問題となった販売店には、破産した関連会社の代表者や従業員らが関与し、偽名を用いて営業活動を行っていた点を指摘。また、関連会社に対しては、「従来の電話機が使えなくなる」などの虚偽の説明により契約を締結させられたとして、多数の損害賠償請求訴訟が提起され、販売店の責任を認める判決が言い渡されていた点を指摘。

原告は、平成30年10月25日、販売店の顧客から物件が入っていないなどのクレームを受け、販売店や顧客から聞き取りをした。その結果、双方の言い分が異なり、販売方法や顧客の管理体制に問題があると判断して、クレームのあった取引については契約解消を求めて清算し、新規取引は停止したと認定。

 

リース会社と販売店の契約

多数の小ロリース契約における販売店による違法な営業活動が問題となり、リース事業協会は、顧客の苦情の極小化を目指して、小口リース取引について本件自主規制規則を定め、会員がこれを遵守することを公表し、販売店に対しては本件自主規制規則に定める物件見積書の交付等を含めた事務手続の適正を求める文書を作成公表していた点に言及。

リース事業協会の会員は、本件自主規制規則を遵守し、これに沿った確認を行うことが期待されていたといえるとしています。

本件自主規制規則は業務提携契約を締結したリース会社とサプライヤーの関係について定めたものであるところ、原告は、本件販売店とは業務提携契約を締結していないと主張。

本件自主規制規則が想定する業務提携契約と本件の原告と本件販売店との覚書による協力関係の具体的な差異は明らかではないものの、原告が本件販売店と交わした覚書では、原告と販売店が、協議の上定めた商品を割賦販売、ローン提携販売、立替払、一括払販売、提携ローン保証、リース、レンタルその他の方法により顧客に提供し(1条)、販売店が顧客からのクレジット申込みに係る事務手続を原告の定める手続で処理すること(2条)を合意していると指摘。

販売店は、原告からリース申込書等所定の契約書式一式の交付を受けて、申込事務手続の一部を担っていたと認定。業務提携契約と題してはいないものの、実質的に、販売店が顧客を原告に斡旋し、原告から小ロリース取引の申込みに係る事務手続の委託を受けてこれを行っており、本件自主規制規則の目的に照らしても、販売店との取引についても、本件自主規制規則を遵守し、これに沿った確認が期待されることに変わりはないと指摘。

ところが、原告と販売店との間の覚書締結の際、リース事業協会の作成した販売店向け書面は本件販売店に交付されておらず、本件自主規制規則の趣旨を踏まえた適切な営業活動について注意喚起がされた形跡も見当たらないと指摘。

 

 

電話機のリースの特徴

過去の裁判例からもうかがわれるとおり、電話機のリースは、かなり以前から虚偽説明による勧誘が問題となっていた取引類型。

原告においても、電話機のリース契約については、専用の確認書の書式を用意して、販売店による不当な行為がないかを確認する項目を設けて確認していたのであり、不当な勧誘が行われやすい案件として特に注意を要すると認識していたことが認められると言及。

本件リース契約の申込みにおいては、従前の契約の解約に関する記載はなかったとは認定。しかし、被告会社が高齢の夫婦のみによって運営されている零細企業であって、原告の審査担当者はそのことを把握していたところ、合計5台の電話機を設置するビジネスホンの案件であることからすれば、新規に電話機を設置するのではなく、既存の電話機についてのリース契約があることも十分に想定されたといえると指摘。

 

リース契約確認はしっかりすべき

そして、本件販売店は、設立から日が浅く、動向を注視する必要のある取引先であると認識されていたことも併せ考えると、審査担当者では、直ちに違法な営業活動を認識し得たとはいえないまでも、リース料が安くなるなどといった不当な勧誘行為が申込みの契機となっていないかという具体的な問題意識を持って審査に当たってしかるべきであったと考えられると言及。

そうであれば、原告において、被告らに対し本件リース契約の申込みについての確認を取るに当たっては、本件販売店の従業員から口止めをされている可能性も念頭に置きつつ、特に本件販売店との間の取引行為の状況について、「はい」や「いいえ」で答えられる質問ではなく、具体的に話してもらう方式で尋ねることが考えられたと指摘。

そのような方式で確認がされていれば、原告において、本件リース契約の申込みに至る経緯や、従業員の説明内容を察知できた可能性があり、本件リース契約の締結に至らなかった可能性があったといえるとしました。

 

ところが、原告の審査担当者の確認結果には、そのような確認がされた形跡はなく、被告らの発言としては、「あってます」しか記録されていないと認定。

本件リース契約は、無効であるとは認められないものの、以上本件において認められる諸事情に照らし、原告においては、その締結に当たり、より慎重な確認を行うことが期待され、そうしていれば契約締結を回避できる可能性があったといえるとしました。

そこで、原告の本件リース契約に基づくリース料の請求は、信義則上一定の制限を受けると解するのが相当であると判断しています。

 

リース契約者側の事情の考慮

他方、被告らが契約書等に押印するに当たり、その記載内容を十分に確認していれば、中途解約はできない契約であり、解約によってリース料の負担がなくなることはなく、リース契約を解約するには新たなリース契約の締結が必要である、リース料を本件販売店で負担するといった従業員の説明が不合理であり、虚偽であることがおよそ認識できなかったとは認められない点にも言及。

被告会社は、本件販売店から相当額の支払を受けていた点にも指摘。各リース物件は現に納入され、少なくとも電話機については実際に事業に役立っていると認められると言及。

これら被告会社側の事情をも考慮すると、請求制限の程度としては、総リース料額の3割とするのが相当であるとしています。

そうすると、原告が被告会社に対して請求できる残リース料の額は、本件リース契約に基づく総リース料134万2656円のうち3割を控除した93万9859円から、被告会社の既払額19万1808円を控除した74万8051円となるとして、減額という結論としています。

 

販売店が倒産、リース会社からの裁判という事例は多くありますが、自主規制などを根拠として、信義則で請求を一部制限するというロジックが採用されることもあります。主張の一つとして検討してみると良いのではないでしょうか。

 

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