FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.団体信用生命保険の告知義務違反とは?
通常の生命保険のほか、団信に関する相談もあります。
告知義務違反や解除を理由とするものが多い印象です。
この記事は、
- 団信の問題を抱えている
- 告知義務違反を主張されている人
に役立つ内容です。
住宅ローンの返済計画
住宅ローンを組む際には、返済計画をしっかりと立てることが重要です。返済計画を立てる際には、自分の収入や生活費、将来のライフプランなどを考慮に入れる必要があります。
返済期間は、自分のライフプランや収入状況によって設定します。
返済期間が長いほど、毎月の返済額は少なくなりますが、長期的に見ると返済総額は増えます。逆に、返済期間が短いほど、毎月の返済額は多くなりますが、返済総額は少なくなります。
住宅ローンの団信(団体信用生命保険)
住宅ローンの団信とは、住宅ローン利用者が死亡または高度障害になった場合、住宅ローンの残高をゼロにする保険です。
住宅ローンを組んだ本人が死亡しても、家族がそのまま住宅に住み続けることができるメリットがあります。
住宅ローンの長い返済期間中のリスクをカバーする制度です。
住宅ローンは最長35年など、長い期間をかけて返済していくものです。途中で事故にあったり、重い病気になったりする可能性はゼロではありません。団信に加入していれば、万が一、そのような事態になったときに、少なくとも家族には家を残すことができ、生活をある程度守ることができるのです。
団信に加入しないとどうなる?
団信に加入していないと、万が一の場合、住宅ローンが残り、相続人が住宅ローンを支払えなければ、家を手放す可能性が高くなります。
住宅ローン債権者が家を競売にかけるなどして、出ていくことになるでしょう。
団信の契約者と仕組み
契約者・保険金の受取人は金融機関、借主が被保険者ということが多いです。
保険料は金融機関が負担することもありますが、一定期間ごとに借主が負担することもあります。
被保険者である借主に万が一のことがあった場合、生命保険会社が保険金の受取人である金融機関に対して、住宅ローンの残高に相当する保険金を支払います。
団信への加入が借り入れの条件に
最近では、ほとんどの金融機関で団信への加入が必須とされています。それだけ住宅ローンが支払えるか疑いがあり、回収可能性を上げたいと金融機関が考えてるということでもあるでしょう。
しかし、健康状態によっては加入できないケースもあります。
団信に加入するには、健康状態の審査、告知が重要となります。団信は生命保険と同様に、現在の健康状態について告知が必要で、この審査をクリアできないと加入できません。
健康状態の告知は、保険会社所定の書式で行われます。内容は、金融機関によって異なりますが、過去の病歴や治療歴について正確に記入します。
万が一加入できない場合は「ワイド団信」などの選択肢もあります。
健康上の理由で通常の団信に加入できない場合でも、一部の金融機関では「ワイド団信」など、引受基準が緩和されている団信を提供しています。ただし、借入金利が通常の団信よりも0.2〜0.3%程度高くなることが一般的です。
団信に加入できるタイミング
団信は契約時のみ加入可能とされています。
住宅ローンの借り換えでは、新たに審査が必要となります。
借り換えも含め、団信加入時には、万一のときにどうなるのか考えるために、免責事項や保障の上限額など、細かい条件も確認しておくようにしましょう。
団信の種類
死亡・高度障害だけでなく、がんや生活習慣病になった場合などの保障が付いている団信も増えています。
がんと診断された場合、住宅ローン残高が全て清算される「100%保障」や、残高の半分が保険でカバーされる「50%保障」や、3大疾病保障団信などです。
団信に関する裁判例
告知義務違反を理由に、団信の保険が払われなかったという事例もあります。裁判になることもあります。
団信の裁判例で、告知義務違反が、不動産会社に責任があるとして損害賠償請求した事例がありますので、紹介します。
東京地方裁判所令和4年5月27日判決です。
団信裁判の事案概要
1. マンション購入: 原告は被告とワンルームマンションの購入契約を結びました。その購入代金を借り入れるため、銀行とローン契約を結びました。
2. 団信保険契約: さらに、がん診断時に残債務額を支払う生命保険契約と、がん診断時に100万円を支払う損害保険契約を結びました。
3. がん診断: 原告は肺がんと診断され、保険金の支払いを請求しましたが、告知義務違反を理由に拒否されました。
原告は、被告がマンションのリスク説明や保険契約の申込みに関する説明を怠ったと主張し、約3302万円と100万円、および遅延損害金の支払いを求めました。
この判決は、原告が不動産会社である被告に対して、マンション購入と保険契約に関連する問題で損害賠償を求めたもので、最終的に原告の請求は棄却されました。
団信の告知事項
原告は、昭和58年生まれの男性。被告は、不動産の売買、賃貸、仲介、管理などを行う株式会社でした。
マンションの売買契約は、平成29年9月13日に締結され、売買代金は3480万円(現金100万円、残りは銀行融資)。
団信の保険契約は、平成29年9月11日申し込み。
告知事項として、原告は、以下の項目に対し、「なし」に丸印を付け、署名押印。
- がんなどの悪性新生物の診断
- 過去3ヶ月以内の医師の診察・治療
- 過去3年以内の手術や2週間以上の治療
- 視力、聴力などの障害
- 過去2年以内の健康診断での再検査指摘など
住宅ローン契約は、平成29年9月29日でした。
団体信用生命保険契約
契約日は平成29年9月29日。
契約者を銀行、被保険者を原告とした特定疾病保障特約付きの団体信用生命保険契約でした。
その内容として、原告ががんに罹患した場合、未償還の借入金元本と約定未収利息の合計額を支払うというものでした。
なお、告知義務違反による解除条項として、原告が故意または重過失で事実を告げなかった場合、保険契約を解除できるとされていました。
また、損害保険契約も、同日、締結されました。
悪性新生物診断給付金特約付きの就業不能信用費用保険契約であり、原告ががんに罹患した場合、100万円を支払うというものでした。
同じように告知義務違反による解除条項があります。
給付金の支払請求と拒絶
原告は、平成30年11月9日、右下葉肺がんの確定診断を受けました。
そこで、生保に対し3301万9858円、損保に対し100万円の支払いを請求。
両社は、原告が告知義務を違反したとして、支払いを拒絶。
保険会社は、原告は、保険契約の告知日前の平成29年9月4日に右肺下葉小結節との指摘を受け、初期のがんの可能性が否定できないとして、がんの専門医を紹介されており、同事実が告知されていれば、保険契約を締結することはなかったとして、告知義務違反を理由として本件生命保険契約を解除するとともに、本件請求に係る右下葉肺がんとの疾患は前記不告知事実との因果関係が認められるとして、がん診断給付金の支払を拒絶。
この結果を受けて、原告は、不動産業者を被告として訴えを提起。
争点としては、本件売買契約の締結に係る説明義務違反の有無、本件各保険契約の申込みに係る説明義務違反等の有無でした。
争点に対する当事者の主張
争点1の不動産売買契約の説明義務違反の有無については、原告は、被告(不動産業者)は、リスク(空室、家賃滞納、価格下落、金利上昇など)を正確に説明する義務があったのに、レントロール(賃借条件の一覧表)を提供せず、リスクを説明しなかったため、説明義務違反があると主張していました。
争点2の保険契約の説明義務違反の有無として、原告は、健康状態を伝えたが、被告は説明、指摘、確認を怠ったと主張。さらに、被告が、告知書の記載が不要などと誤った説明をしたと主張。
これらについて被告には説明義務違反等があると主張。
これに対し、被告は、原告の健康状態の詳細を知らず、説明義務は果たしていたと主張。
売買契約の説明義務違反は否定
売買契約時の説明義務違反も主張していましたが、裁判所は否定。
本件の3ヶ月前には、投資用マンションの購入をしていたという事実がありました。
本件売買契約の約3か月前に投資用のワンルームマンションの契約説明をしていることもあり、原告が主張する説明義務が、どのような情報、資料等を示すべき義務を負うのかや、シミュレーション表のどの点が不合理であるのかについて、何ら具体的な主張立証をしていないとして排斥しています。
保険契約の説明義務違反等も否定
原告は、被告の従業員が、原告において、人間ドックを受診した結果、再検査が必要であるとの指摘を受けたことを把握していたから、当該再検査の結果を確認すべき義務を負っていた旨を主張。
しかしながら、従業員は、
①遅くとも平成29年7月14日までに、原告から、原告が、人間ドックを受診した結果、再検査が必要であるとの指摘を受けた旨を伝えられていたものの、同年9月25日(本件ローン契約等の締結日)に至っても、再検査の具体的部位、内容、理由等の詳細については伝えられていなかったこと、
②原告に対し、同月11日、本件告知書を交付した上で、本件各保険契約は、がんと診断された場合にも保険会社が借入金の残債務又は所定の給付金を支払うとの保険であること、本件告知書については、その内容をよく読み、該当しないものについては「いいえ」に印を付け、該当するものについては「はい」に印を付け、その内容を記載すること等を説明したこと
を前提として、本件告知書は、本件各保険契約の被保険者となる原告自身において、その内容を十分確認した上で記入すべきものであることに鑑みると、原告が主張する当該再検査の結果を確認すべき義務を負っていたと解することはできないとしました。
従業員が十分な情報を持っていたことを立証できずに原告敗訴となっています。
その理由として、以下の経緯も重視されているようです。
原告が肺がんとの確定診断を受けるまでの経緯
原告は、平成29年5月26日、勤務先の健康診断の一環として、L病院人間ドックセンターにおいて、人間ドックを受診したところ、同年6月上旬頃、レントゲン検査の結果、右肺に影のようなものが見えるとして、要精密検査との指摘を受けたため、同年7月1日、L病院を受診し、CT検査を受けたところ、やはり右肺に影があるとして、H病院を紹介されました。
原告は、平成29年7月3日頃、H病院呼吸器内科を受診し、CT検査を受けたところ、右肺に影が見えたことから、同月19日、いわゆるPET(Positron emission tomography)検査を受けることに。
PET検査の結果、右肺下葉抹消に結節が認められたものの、積極的に肺がんを疑う所見は確認されなかったが、PET検査では、初期の肺がんの場合は必ずしも明らかな所見が現れないため、がんの可能性を完全には否定できないこと、別の検査の結果、肺炎の原因となり得る菌が同定されており、気管支肺炎である可能性も考えられること等から、H病院呼吸器内科のM医師は、気管支肺炎の治療薬として抗生剤を処方した上で、2箇月後にCT検査を実施することとし、平成29年7月24日、原告に対し、その旨を説明。
原告は、平成29年9月4日、H病院呼吸器内科を受診し、再度、CT検査を受けたが、抗生剤を服用したにもかかわらず、右肺下葉の結節の大きさに変化が見られなかったところ、M医師から、PET検査の結果は陰性であり、積極的に肺がんを疑うまでではないものの、初期のがんの芽である可能性も否定しきれないとして、同科のがん専門医であるN医師の紹介を受けました。
N医師は、平成30年9月頃まで、原告の経過を観察していたが、右肺下葉の結節が縮小する気配がなく、肺がんの可能性を否定することができないことから、これを手術により切除することとし、原告は、同年10月16日、H病院呼吸器外科において、腹腔鏡下肺悪性腫瘍手術を受け、同科のO医師から、同年11月9日、当該手術において切除した組織に係る病理組織学的検査の結果、右下葉肺がんとの確定診断を受けました。
原告と不動産会社のLINE
原告は、被告従業員に対し、平成29年6月頃、勤務先の健康診断の一環として受診した人間ドックにおいて肺に異常があるので再検査を受診するように指摘されたことを伝え、同年8月頃、PET検査の結果異常なしとの結果であったことを伝えるとともに、同年9月11日に本件告知書に記入する際、どこまで記載する必要があるのか尋ねたところ、従業員から再検査でも異常がないなら大丈夫である旨の回答を受けた旨を陳述書に記載するとともに供述。
そこで検討すると、原告は、平成29年7月14日、従業員らと、先行売買契約の「決済後食事」と称して会食をしているところ、当該会食直前の原告と従業員との間のLINE経由でのメッセージのやり取りの内容をみると、従業員は、原告に対し、当該会食場所である飲食店内における喫煙が全面的に可能であることを告げ、原告から、「またぁ」、「そうやって俺の禁煙の邪魔するのかー」などと返信されると、「あれ、禁煙してたんですか?笑」と返信し、原告から、つい1時間前から禁煙している旨の冗談交じりの返信を受けていると指摘。
肺に異常があるので再検査を受診するように指摘されていれば、異常がないことが判明するまで、喫煙を控えたり、たばこの副流煙を避けたりするのは当然のことであって、真に、従業員が、原告から、当該会食に先立つ同年6月頃、勤務先の健康診断の一環として受診した人間ドックにおいて肺に異常があるので再検査を受診するように指摘されたことを伝えられていたのであれば、飲食店内における喫煙が全面的に可能な飲食店を会食場所に選択することや、原告との間で、前記のように喫煙や禁煙をめぐって緊迫感の欠如したやり取りを行うことは、考え難いとしました。
そうすると、原告が、従業員に対し、平成29年6月頃、勤務先の健康診断の一環として受診した人間ドックにおいて肺に異常があるので再検査を受診するように指摘されたことを伝えた旨の原告の前記陳述書の記載及び供述は、不自然かつ不合理であるとしています。
銀行や保険会社に不満を述べた
また、原告は、平成31年4月25日及び同月26日付けでE生保及びE損保により本件各保険契約の解除及び給付金の支払を拒絶された後の同年6月頃以後、被告を通じて、本件銀行並びにE生保及びE損保との間で、給付金の支払等の交渉をしていたところ、E生保及びE損保はこれに応じないことから、同年8月2日頃、被告から、被告において、本件マンショを買い取ることによる解決を提案されたのに対し、「ろくな説明もしなかったD銀行や、他人任せなE生命がリスクを負わないのは違う気がします。」、「本来はEが残金を保証して資産は残すという契約のはずです。」等と、被告ではなく本件銀行及びE生保の対応に対する不満を述べている点を指摘。
真に、平成29年6月頃及び同年8月頃、原告が供述するようなやり取りが原告と従業員との間でされており、その結果記載した本件告知書について、E生保及びE損保から、告知義務違反を主張されて、給付金の支払を拒絶されたのであれば、当該拒絶に対する不満は、従業員及び被告に対して向けられるはずであるところ、前記のとおり、令和元年8月2日時点で、当該拒絶に対する不満は、被告ではなく本件銀行及びE生保に対して向けられていると言及。そうすると、この点でも、原告の前記陳述書の記載及び供述は、不自然かつ不合理であるとしています。
これらのことに加えて、原告の前記陳述書の記載及び供述の内容を裏付ける客観的な証拠はないことも併せ考慮すると、原告の前記陳述書の記載及び供述を信用することはできないとしています。
基本的には、書類重視、告知事項に違反した部分について、原告側の立証が足りていないという結論になっています。LINEなどの生々しいやりとりも証拠提出されていることから、この点に対する弁解もできないと原告としては難しい請求になってしまうでしょう。
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