FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.不動産の仮差押えの手続とは?
債権回収手法の一つである仮差押えの中で、よく使われるのが不動産仮差押えです。
債務者の財産の中でも、不動産は比較的、見つけやすく特定しやすいので、仮差押えも使いやすいという特徴があります。
そこで、今回は不動産の仮差押え手続について解説します。
この記事は、
- 債権回収、相手の不動産を知っている人
- 不動産仮差押えを検討している人
に役立つ内容です。
仮差押えとは
仮差押えは、裁判が終わるまでの間、特定の財産(主に不動産)を一時的に"凍結"する法的手続きです。
この手続きがなければ、裁判中に財産が売却されたり、他の人に移されたりするリスクがあります。
不動産仮差押えの方法
仮差押えは債権者が裁判所に申し立てをして認めてもらいます。
不動産の場合、仮差押えが認められると、不動産登記に仮差押えの情報が載ります。誰でも見ることができます。
仮差押えを命じた裁判所が、この手続きを担当します。
不動産の仮差押えの場合、仮差押え命令が出されたら、その命令に執行申立てが含まれているとされます。つまり、債権者は新たに執行手続の申立てをする必要はありません。
仮差押えの登記嘱託
仮差押えが認められると、裁判所の書記官が、仮差押えについて不動産の登記申請を行います。
この登記は、他の登記と同じく法務局で行われます。
裁判所は、一つの不動産に対して一つの嘱託書を作成するのが原則です。しかし、特定の条件下では、複数の不動産に対して一つの嘱託書を用いることも可能です。
登記義務者である債務者の情報について、住所や氏名など、登記簿と一致する情報を記載する必要があります。もし不一致があれば、登記は却下される可能性があります。登記が変更されていたり、誤記がある場合などが考えられます。
裁判所から直接、不動産の所在地の登記所に登記の依頼が出ます。緊急の場合、債権者自身が書類を持参することもあります。必要書類として、債権者は、登記目録と登録免許税の領収証を裁判所に提出する必要があります。
不動産仮差押えと登録免許税
不動産の仮差押えの場合、登記に反映させるため、登録免許税を負担することになります。
算出方法として、仮差押えの登記をする際の登録免許税は、請求債権額に1000分の4を乗じて算出されます。
なお、端数の処理として、請求債権の計算では1000円未満の端数は切り捨てられます。また、登録免許税の算出では、100円未満は切り捨てられます。
たとえば、債権者Aが債務者Bに対して323万4830円を請求している場合、登録免許税は12900円になります。
3234000*0.4%
なお、債務者複数として複数の不動産を仮差押える場合、登記嘱託は個別に行われ、それぞれ登録免許税がかかります。
不動産仮差押えの対象
仮差押えができる不動産は、一般的な土地や建物、そして特定の権利(地上権、永小作権など)です。
土地や建物の一部だけを仮差押えすることはできません。
すでに仮差押えがある土地や建物でも、新たな仮差押えが可能です。
不動産仮差押え申立てに必要な書類
債務者が所有していることを証明する資料が必要です。通常は、登記情報の証明書になるでしょう。
また、不動産の価値を示す書類として固定資産評価証明書も必要です。
担保金を決めるための資料として使われます。
不動産仮差押えの手続きと注意点
不動産の仮差押えには、登記と強制管理の2つの方法があります。
基本ルールとして、仮差押えは基本的に登記によって行います。
仮差押えの効力は、登記が完了した時点で発生します。
債務者の権利としては、仮差押え後も、不動産を通常通り使用できます。仮差押えは権利移転に制限がかかるだけですので、使用自体は禁止されません。
強制管理の方法は、債務者の不利益が大きいことから認められにくいです。
不動産仮差押えの効果
不動産を仮差押えした場合、債務者は、不動産の処分制限を受けます。
仮差押えが本執行により競売となった際には、仮差押えの登記後の不動産処分などは効力を失うことになります。仮差押え債権者が優先して不動産から回収できることになります。
不動産仮差押えの登記が認められない場合
登記嘱託書の内容が不正確な場合、登記は却下されます。
ただし、軽微な誤記であれば、登記所で訂正可能とされます。
しかし、大きな誤りがあれば、登記依頼を取り下げて再度行う必要があります。
登記が却下されて再依頼する場合、新たに税金を納付する必要がありますが、最初の税金は返還されます。
複数の不動産への仮差押え
複数の不動産があって、その価値が請求額を超える場合、裁判所は「取り下げを勧告」すべきです。これは、債権者が必要以上に多くの財産を押さえることを防ぐためです。
複数の不動産がある場合、債務者の被る損害が少ない不動産を対象とすべきとされます。
たとえば、100万円の債権回収のための仮差押えの際、不動産が1000万円のもの、200万円のものの2種類があるとします。この場合、200万円の不動産を仮差押えすれば足りるため、1000万円の不動産の仮差押えは認められないということです。
一つの不動産だけがあり、その価値が請求額の数倍程度の場合、仮差押えは許される場合もあります。しかし、その不動産の価値が請求額を大幅に超える場合、裁判所は「保全の必要性を否定」する可能性が高いです。
少ない債権額で大きな資産を制限するのは望ましくないと考えるわけです。
ただし、債務者がその不動産以外に財産を持っていない、またはその不動産を売って隠す可能性がある場合、保全の必要性は認められることもあります。
裁判所は、「過剰な仮差押え」を防ぐため、債権者と債務者の財産状況、負債状況、そしてその他の事情を総合的に考慮して判断します。
不動産仮差押えの担保金
仮差押えが認められるには担保金が必要です。
通常、担保金額は、仮差押えの対象不動産の評価額をもとに、パーセンテージで決められます。
建物だけを仮差押えする場合には、敷地利用権の評価額も加算されます。敷地の固定資産評価証明書も提出し、これも算出資料とされます。敷地利用権の内容が賃借権である場合には、敷地の7割程度の評価額とされます。
不動産に抵当権が設定されている場合には、その債務額を控除した金額とされます。
ローンのほうが高いオーバーローン物件の場合には、裁判所で仮差押えの必要性が否定されてしまうこともあります。
不動産仮差押え登記の抹消
仮差押え自体が取り下げられた場合には、裁判所書記官は、登記の抹消を嘱託しなければならないとされます。
仮差押えの登記自体は、情報として公開されますが、取り下げにより登記が抹消されます。
ただし、過去に仮差押えがあった物件という情報は残ります。
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