別居後の行為は離婚慰謝料の原因にはならないとした裁判例を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.別居後の行為で離婚慰謝料?

離婚裁判では、相手となる配偶者を責めることはよくあります。

そのなかで、別居後の行為を責めて慰謝料請求することもあります。

しかし、婚姻関係破綻後の行為は、離婚慰謝料の原因とはならないとする考えもあります。その場合、離婚裁判で、破綻後の相手の行為を色々と主張するのは、慰謝料請求の観点では意味がないことになります。

今回は、そのような裁判例を解説します。

東京家庭裁判所令和4年7月7日判決です。

この記事は、

  • 離婚裁判を考えている人
  • 離婚慰謝料の請求をしたい人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.5.23

 

離婚裁判のポイント

この裁判は、某国籍の夫と日本人妻の離婚訴訟です。妻(原告)は、夫(被告)からの暴言などで婚姻関係が破綻したとして離婚を求めました。

また、子供たちの親権、養育費、財産分与、年金分割などを求めました。

判決内容としては、離婚の成立、長男と長女の親権は原告に、子供たちが20歳になるまで毎月一人あたり16万円の養育費、財産分与として、原告に対して3830万円を支払うこと、一部の土地と建物の共有持分を譲渡することが命じられています。

なお、国際的な背景として、妻は、某国の裁判所から逮捕状が発布されているにもかかわらず、親権が認められた点が特徴的です。婚姻関係の破綻については、婚姻関係が原告と被告の相互の不満や苛立ちから破綻し、別居に至ったと認定。

判決は、妻の訴えを認めたものの、別居後の夫の行動に対する離婚慰謝料は否定しました。破綻後の行為は、離婚慰謝料にはならないとしています。

親権者の認定、有責配偶者からの離婚請求か、別居後の行為で離婚慰謝料が発生するか等が問題となりました。

まずは経緯を確認してみましょう。

 

離婚に至る経緯

平成21年に婚姻。
平成24年頃、口論を繰り返し、離婚届に署名するも提出を思い留まる。
平成26年に、自宅を購入(妻の共有持分は5%、夫の共有持分は95%)。
平成27年、長男が出生。
平成29年、長女が出生。
平成30年6月、互いに不満や苛立ちを募らせ、被告がシャワー後にシャワー室の壁面に水滴が残っていたことを巡って口論。
同年7月、夫の実家を家族で訪問するも夫婦関係は改善せず、帰国後に被告は離婚について弁護士に依頼した旨を原告に告げる。
同年8月、妻は子らを連れて自宅を出て、別居。

その後、夫と子らとの面会は、一度も実施されていない。

 

 

有責配偶者からの請求主張について排斥

被告は、有責配偶者からの離婚請求であると主張していました。

その内容として、原告は、平成30年8月10日、被告の勤務中に、被告の承諾なく、ほぼ全部の家財道具と共に子らを連れて本件自宅を出て行き、被告から原告に対する家庭内暴力(DV)がないにもかかわらず、・・・DVがあったという証拠を捏造しようとした可能性が高く、・・・別居の原因は専ら原告にあるから、本件離婚は有責配偶者からの請求として許されないといものでした。

 

裁判所は、離婚事由について、

原告と被告は、遅くとも平成28年頃から、原告は、被告が被告の両親の事ばかりを慮り原告に強く当たると感じたり、被告の長男に対する躾が厳しすぎると感じたり、平成30年4月にハワイに旅行に行った際に被告から万事において精神的に責められたと感じたりしたことなどから徐々に被告に対する不満や苛立ちを募らせ、他方、被告は、原告から、被告との性交渉によって長女を妊娠したと言われたことに疑問を持ったり、被告が高収入を得ているにもかかわらず原告から応分以上の家事の分担を求められたと感じたり、口論の際に原告から子らと会わせないようにするといった意味合いの事を言われたりしたことなどから徐々に原告に対する不満や苛立ちを募らせ、平成30年6月24日午前中、被告がシャワーを浴びた後にシャワー室の壁面に水滴が残っていたことを巡って口論となり、同年7月4日から2週間程度Eに旅行したものの、帰国後も夫婦関係は改善せず、被告は、同月25日、原告に対し、離婚について弁護士に依頼した旨を告げ、原告は、同年8月10日、被告が出社した後、被告に告げず、子らを連れて本件自宅を出る形で被告と別居した点を指摘。

原告と被告は、同居中、考え方の相違や性格の不一致から互いに不満や苛立ちを募らせ、遂には婚姻関係が破綻して別居に至ったものと認められると認定しました。

有責配偶者の主張については、証拠上、DVがあったという証拠を捏造しようとした可能性が高いとは認められないと指摘。

同居中、考え方の相違や性格の不一致から、互いに不満や苛立ちを募らせ、遂には婚姻関係が破綻して別居に至ったものであって、原告に専ら又は主として婚姻関係が破綻した原因があるとはいえないから、本件離婚が有責配偶者からの請求として許されないということはできないとしました。

 

親権者判断のポイント

家庭裁判所調査官は、妻と子どもたちが在籍する保育園の園長や担任保育士と面談した上で、子どもの発育が順調で生活も安定していると報告。

また、妻が公的なサポートや自身の両親の助けを受けながら、子どもの登園準備や食事の用意、日常的な世話を行っていることが確認されました。これらの点を踏まえ、妻が子どもの親権者として適格であると判断されました。

外国の裁判所が妻に対して逮捕状を発布し、国際指名手配されている点については、妻が現に子どもを養育監護しており、その状況に特段の問題がないことから、逮捕状の存在だけでは親権者として不適格であるとは言えないと判断されました。

 

離婚慰謝料に関する妻の主張

妻は、夫による暴言や暴力に加え、別居後に夫が長女に虐待をしたと吹聴し、家事調停手続の際にカメラクルーを裁判所内に入れて撮影しようとしたり、実名でパネルディスカッションに登壇し、妻に子らを拉致されたと述べたり、SNSでの発信、母国で妻を誘拐犯として告訴したり、国内外のメディアからの取材に対して妻から脅されていると客観的事実に反する主張をし、その結果、妻は国内外のメディアから犯罪者のように扱われるなどの誤った情報が広まったことを理由に、婚姻関係が破綻したと主張。離婚慰謝料の支払を求めました。

 

裁判所は、

別居の時点において互いに強固な離婚意思を有しており、原被告間の婚姻関係は既に破綻していたと認めるのが相当であると指摘。

そうすると、原告が主張している被告が別居後にしたとされる種々の行動は、離婚慰謝料の発生事由とはならないというべきであるとして、慰謝料は認めませんでした。

 

離婚慰謝料と消滅時効

離婚慰謝料とは、離婚自体から生じる慰謝料だけでなく、一方配偶者の有責行為により生じた離婚原因慰謝料を含むとする「一体説」が一般的です。

最高裁判所の判例も、この見解を前提としており、離婚慰謝料が認められるか否かは、離婚を求められている配偶者が専ら責任があるかどうかを判断します。

そして、離婚慰謝料は離婚が成立して初めて評価されるため、離婚成立前に損害を知り得たとすることは相当ではなく、消滅時効の起算点は離婚成立時とされています。

 

 

本判決において注目されるべき点

本判決は、離婚慰謝料の判断において婚姻関係破綻の時期を別居時と認定し、別居後の夫の行動は離婚慰謝料の発生原因にならないとしました。

妻が別居後の夫の行為について責任を問うためには、別途民事訴訟を提起する必要があり、本判決の既判力が及ぶかなど、様々な問題を提起しています。

 

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