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FAQ(よくある質問)

 

Q.行政書士の委任契約が無効になる場合とは?

依頼者が、行政書士に返金を求めた裁判があります。

原告は、行政書士との間で、2件の委任契約をしました。

1つ目は、原告の元妻の子のDNA鑑定等に係る委任契約。

2つ目は、実子との面会交流に関する調整等に係る委任契約。

これらの契約が弁護士法72条に違反し無効であるとして、不当利得返還請求権として、報酬の返金を求めた内容です。

裁判所は原告の請求を認め、行政書士に返金を命じています。

福岡地方裁判所令和3年12月7日判決です。

この記事は、

  • 行政書士費用の返金を求めたい人
  • 行政書士に依頼するか迷っている人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.6.13

 

紛争の経緯

原告は昭和49年生まれの男性。

平成13年10月に元妻と結婚。

平成29年9月19日に協議離婚。

被告は特定行政書士であり、弁護士資格は有していません。

 

原告及び元妻は、平成29年5月8日、公正証書を作成。

内容は、元妻が離婚の届け出を同月末日までに行うこと、

原告が第一子らの養育費を支払うことなどを合意するものでした。

しかし、この前後に、妻の妊娠が発覚。原告は夫婦関係がなかったためDNA鑑定を希望、妻は拒絶。

 

行政書士への依頼経緯

原告は、同年6月9日、被告との間で、第四子に関するDNA鑑定を行うための諸手続や、その結果に基づく新たな公正証書の原案の作成等を報酬27万5000円で被告に委任する内容の契約を締結し、被告に対し、27万5000円を支払いました。

また、原告は、同年8月22日、被告に対し、「離婚給付契約締結の成功報酬」との名目により20万円を支払いました。

 

原告及び元妻は、同年9月2日、原告と元妻が本件公正証書①の契約内容を合意解除することや、原告が第一子ら及び第四子の養育費を支払うこと等を合意する内容の公正証書②を作成。

 

原告は、平成30年9月20日、被告との間で、第一子らが原告との面会交流を行える精神状態にあるかを考慮するために第一子らと面談すること、元妻と面談して本件面会交流の是非に関する見解を聴取するとともに、その実現に向けた助言等を行うことなどを報酬15万円で被告に委任する内容の契約を締結し、同月21日に被告に対し、15万円を支払いました。

 

被告は、同月28日に第一子と、同年10月11日に第二子とそれぞれ面談。

各面談の録音内容を書き起こした書面を平成31年1月8日に原告に交付し、同月9日に元妻に交付。

原告と行政書士である被告との間の2回の委任契約が弁護士法違反ではないかが争われました。法的紛議が生じることが不可避であった事件ならば、行政書士は取り扱えず、弁護士法違反となります。

 

委任契約の公序良俗違反

原告は本件委任契約①が法72条に違反する旨主張。

裁判所は、当該契約に基づく事務ないしその処理につき、法的紛議が生じることがほぼ不可避であるような基礎事情が存在していた場合においては、当該事務は、法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものということができる(最高裁平成22年7月20日第一小法廷決定)と前提確認。

そのうえで、裁判所は、委任契約①は、本件DNA鑑定を行うための諸手続や、その結果に基づく諸手続等を被告に委任するものであるところ、そもそも、婚姻中の妻が妊娠出産した子について夫がDNA鑑定の実施を求めていたこと自体が、夫婦間に子の嫡出性に関ずる紛争が存在していたことを推認させるものであるといえると指摘。


また、本件委任契約①の締結に至るまでの事実経過によれば、原告は、第四子が自分の子ではないと考えて本件DNA鑑定の実施を希望していたのに対し、妻は第四子が原告の子であるとしてこれに応じない姿勢を示していたのであるから、原告と妻の間では、第四子の父親が原告であるか否か、それを明らかにするために本件DNA鑑定を実施するか否かについて意見の対立があったということができると指摘。


さらに、原告からかかる対立の存在について説明を受けた被告が、妻に本件DNA鑑定の実施を受け入れさせるために提案した方法は、原告が強制執行認諾付きの誓約香を作成することや、本件DNA鑑定により原告と第四子の間の父子関係が判明したときは原告が妻に封して1000万円及び養育費月額30万円を支払う内容の誓約書を作成することであるところ、これらの提案内容から見ても、原告と妻との間には、本件委任契約①締結時点においても、第四子の嫡出性ないし本件DNA鐙定の実施に関して相応の対立が継続していたことが推認できるとしています。

 

加えて、一般に、離婚協議中の夫婦にとって、妻が妊娠出産した子が夫以外の男性との間の子であるか否かは、夫婦が離婚する際の金銭面に関する取り決めにも大きな影響を及ぼすものである上、本件委任契約①においては、第一子らの養育費や財産分与について定めた本件公正証書①の内容を、本件DNA鑑定の結果に基づいて変更することが想定されていたといえるとしています。

 

本件委任契約①が諦結された時点において、原告と妻の間には、本件DNA鑑定の実施を含む第四子の嫡出性並びに離婚に伴う養育費及び財産分与については、法的紛議が生じることがほぼ不可避であるような基礎事情が存在していたといえるから、この点に関する本件委任契約①に基づく被告の事務は、法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものということができとし、法72条に違反するものであり、公序良俗に違反するものとして無効と結論付けました。

契約が無効なので、支払った行政書士費用は返金を求めることができるというものです。

 

本件委任契約②の公序良俗違反

妻は本件公正証書①においては第一子らが希望すれば本件面会交流を認めることに合意したものの、その後、本件委任契約①に基づき原告と妻との関係に関わるようになった被告に対し、本件面会交流について消極的な態度を示すようになったこと、これを受けて、被告は、妻に対し、本件面会交流についてば1年後協議して決めることをど提案し、妻の了解を得ました。

被告は、原告にも同様の助言をし、しばらく妻と本件子らをそっとしてあげた方がよい、1年後には被告からも妻に本件面会交流の実施をお願いするつもりであるなどと伝えたこと、その上で原告と妻が本件公正証書②を作成するに至ったことを認定。

 

原告と妻が本件公正証書②を作成した時点においては、その1年後に原告と妻が協議の機会を持ったとしても、本件面会交流の実施について再び意見の対立が生じる可能性が残っていたことは明らかであって、本件公正証書②の作成によって本件面会交流に関する意見の対立が収束したとは到底評価し得ない状況にあったといえるとしています。

 

そして、本件全証拠によっても、その後本件委任契約②が締結されるまでの間に、原告と妻の本件面会交流に対する姿勢や考え方に変化があったことは認められず、むしろ本件委任契約②の締結に先立ち、第一子らと同居していた妻が、被告に対し.第一子らの原告に対する心情を聴取するよう求めていることからすると、本件公正証書②作成時点における本件面会交流に関する意見の対立状況が、本件委任契約②締結時点まで継続していたことが推認されると指摘。

このような点から、本件面会交流の実施に関し、法的紛議が生じることがほぼ不可避であるような基礎事傭が存在していたといえるとし、法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものということができるとしています。

委任契約1と同じく、公序良俗に違反するものとして無効という判断です。

 

不当利得に基づく請求の信義則違反

被告は、原告が本件委任契約①の無効を主張しながら、当該契約に基づいて作成された本件公正証書②によって利得を得ていることからすると、原告の不当利得に基づく請求は信義則に違反する旨主張

「私の活動で、あたなは利益を得ているんだから、無効だって主張して報酬返せってのはおかしいんじゃないかい?」という主張ですね。

しかし、裁判所はこの主張も排斥。


この点、本件公正証書①及び②の内容ないしその作成経緯に照らすと.前者で取り決められた養育費及び財産分与が後者において減額されたことによる財産的利益のみを取り上げて、本訴請求との両立の可否を判断することには疑問を抱かざるを得ないが、仮にその点をおくとしても、本件公正証書②は原告と妻が合意によって作成したものであって、被告は、本件委任契約①に基づいて公正証書の原案を作成したにすぎないのであるから、本件委任契約①の効力が本件公正証書②の効力に影響するものとは解されないし、原告が本訴においで本件委任契約①の無効を主張しつつ、本件公正証書②に基づく法的効果を享受していたとしても、そのことをもって信義則に違反するものと解することはできないとして被告の主張を排斥しました。

 

不当利得返還請求と利息

過払い金の返還と同じく、被告は、報酬の受領につき法律上の原因がないことを知っていたものとして、悪意の受益者というべきであるとして、受領日から年5%(当時)の利息をつけての返還を命じています。

 

まとめ

弁護士法72条の「事件性」の解釈につき、最高裁平成22年7月20日判決が用いた「法的紛議不可避性」を前提にした事件です。

経緯からすると、被告行政書士が関与したのは、単なる公正証書の作成ではなく当事者である原告と妻の合意形成にも関与したと評価できるでしょう。

行政書士が関与をする時点で、原告と妻の離婚条件に関する意思は統一されていなかったので、法的紛議があった状況といえます。

認定された経緯をみると、どうみても争いがあったように見えますね。

この判決を前提にすると、行政書士を主人公にしたカバチタレなんかでは、ほとんどの話が委任契約無効になりそうですね。

令和元年の事件番号で判決日が令和3年12月ですので、2年近く争っての判決だったと推測される事件です。

 

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