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FAQ(よくある質問)

 

Q.養育費の先取特権改正とは?

養育費等に関する民法改正がされました。

養育費部分については変更点が多いため、改正内容のポイントをまとめておきます。

令和6年5月に成立した民法等の一部を改正する法律、施行日は2年以内と予定されています。

この記事は、

  • 子供がいる、離婚予定の人
  • 養育費の請求

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.8.23

 

養育費不払いの深刻な影響

ひとり親世帯の貧困率が高くなっていると言われます。

その大きな要因の一つとして、養育費の支払い率の低さが挙げられます。

これを何とかしようという目的の改正です。

養育費という制度自体は広く知られているかもしれませんが、厚生労働省の調査では、養育費の取り決めをしている割合は約42%に過ぎず、実際に養育費を受け取っている割合は更に低く、約24%程度とのこと。

養育費が支払われないことで、子どもの教育や生活に必要な費用が確保できず、結果として子どもの将来の可能性を狭めてしまう恐れがあります。また、養育費の不払いは、監護親の経済的・精神的負担を増大させ、親子関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

そこで、養育費の支払をさらに進めるための制度改正がされました。

 

養育費の改正

現行法の養育費の根拠

現行の民法では、養育費支払い義務の根拠はどのように定められているのでしょうか。

民法877条は、親族間の扶養義務を定めています。この条文によれば、直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務があるとされています。ただし、その扶養の順位や程度についての具体的な定めはありません。

一般的な解釈では、親の未成年の子に対する扶養義務は、子どもが親と同水準の生活を維持する義務(生活保持義務)と解されています。つまり、親は子どもに対して、自分と同じレベルの生活水準を保障する義務があるとされているのです。

 

改正法で親の義務を明記

今回の改正では、親の責務をより明確に示すために、民法に新たな節が設けられました。

改正法では、親は子どもの心身の健全な発達を図るため、その子どもを扶養し、自己と同程度の生活を維持させる義務があることが明確に規定されました。

この義務は、親権の有無にかかわらず親が負うものとされ、生活保持義務としての性格が強調されています。

これにより、養育費支払いの法的根拠がより明確になり、支払い義務の履行を促進することが期待されます。

 

養育費の合意の重要性

養育費を確実に受け取るためには、まずその支払いに関する取り決めが必要です。

合意がなければ、法的な根拠が曖昧になり、支払いを求めることが困難になってしまいます。

しかし、現状では養育費の合意が十分に行われていないのが実情です。厚生労働省の調査によると、養育費の合意をしている割合は約42%に過ぎません。これは、多くの子どもたちが養育費を受け取る機会を失っていることを意味します。

現行法では、養育費の合意についてどのように定められているのでしょうか。

民法766条に基づき、父母が協議離婚をする際には、子どもの監護に関する事項(養育費を含む)について協議しなければならないと定められています。しかし、この協議が行われなかったり、不十分であったりするケースが多く存在します。

その理由としては以下のようなものが考えられます:

1. 離婚時の感情的な対立により、冷静な協議が困難
2. 養育費の必要性や重要性に対する認識不足
3. 経済的な問題で養育費を支払う余裕がないと考える
4. 将来の紛争を避けるため、あえて取り決めを避ける

今回の改正では、合意の促進に関する直接的な法改正は行われませんでした。

 

養育費支払いの履行確保

養育費の取り決めがあっても、支払われないケースが多いのが現状です。

現行制度では、養育費の履行を確保するために法的制度があります。

・家庭裁判所による履行勧告制
強制執行制度(差押、財産開示)

などです。

しかし、これらの制度にはいくつかの問題点があります。

1. 家庭裁判所による履行勧告は、法的拘束力がなく、実効性に乏しい
2. 強制執行を行うには債務名義が必要ですが、その取得には時間と費用がかかる
3. 債務者の財産を特定することが困難な場合がある
4. 給与等の差押えには上限があり、十分な額を回収できない場合がある

債務名義は、裁判所がつくった書類(判決や和解調書、調停調書)や公証役場で作成した公正証書です。養育費の合意がこれらの手続きでされていればよいのですが、当事者の間での合意だけだと、差押などをするには、あらためて裁判所の手続きをする必要があるのです。

これらの問題点により、養育費の迅速かつ確実な履行確保が困難となっているのです。

 

改正法の内容~先取特権の導入

今回の改正では、養育費の履行確保に向けて新たな制度が導入されました。

それが、養育費債権への先取特権の付与です。

先取特権(さきどりとっけん)とは、特定の債権について、他の債権者に優先して弁済を受ける権利のことです。

改正法では、養育費債権に先取特権が付与され、債務名義がなくても取り決めがあれば担保権の実行として強制執行が可能となりました。裁判所の判決などがなくても、いきなり差押ができる強い権利です。

これにより、養育費請求権を有する債権者は、債務者の財産を差し押さえることができ、他の一般債権者と競合しても優先して回収を図ることが可能になります。

実際には、債務名義の代わりに「その存在を証する文書」 (民事執行法181条1項4号)を提出し、相手の財産の差押や、財産開示手続、第三者からの情報取得手続の申立てができるようになります。

一般先取特権(民法306条)は、以前から民法に規定があります。

これが競合した場合、共益の費用、雇用関係、葬式の費用、日用品の供給の順序に従う(民法329条)とされています。

養育費は雇用関係に次ぐものとされました。

これにより、債務名義の取得にかかる時間と費用を省略できるなどのメリットが出てきます。

 

養育費の合意文書の作成

先取特権による差押等をするには文書提出が必要です。

通常は養育費の合意文書を提出することになるでしょう。

当然ながら、合意文書は、債務者の意思を反映したものである必要があります。

本人によって作成されたと示す必要があるため、署名・押印、可能であれば実印を使ったほうが良いでしょう。

誰との間で作成されたかが問題にもなるため、念書のような差し入れ文書の場合には、対象者の特定ができないと、文書としては不十分として、申立が認められないリスクも高くなります。

差押をするということは、未払の金額等を確定する必要があります。

そのため、金額だけではなく、いつから払うのか、いつまでなのか等の記載は必要になるでしょう。

当事者間で作成した養育費の文書でも差押ができるようにはなりますが、実際の運用では、しっかりした文書がないと申立が認められないリスクがあるため、合意書等を作成する段階でしっかりとした文書を作っておく必要があります。

不十分な文書だと、結局、先取特権としての効力は認められず、改正前と同じように裁判所の手続きなどが必要になってしまうでしょう。

 

法定養育費制度の導入

さらに、養育費に関する合意がない場合でも、法定養育費制度が新たに導入されました。

これは、父母が養育費の取り決めをしなかった場合でも、一定額の養育費を確保する制度であり、子供の生活が保障されることを目的としています。


法定養育費は、離婚の日から支払義務が発生し、子が成人か父母の協議で定めた日、家庭裁判所の審判が確定した
日までとされています(改正後民法766条の3第1項)。

 

養育費の金額は、「父母の扶養を受けるべき子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案して子の数に応じて法務省令で定めるところにより算定した額」とされています。

合意ができないい場合の最低限度の補償という趣旨でしょう。

 

債務者の支払いの拒絶、免除、猶予

この法定養育費は、養育費の合意なく協議離婚した場合に発生します。

債務者となる親の資力や収入は考慮されません

そのため、調停等で使われる算定表よりも高額になることもあります。

また、支払えない場合もありえます。

そこで、債務者は支払い能力を欠くためにその支払いをすることができないとき又はその支払いをすることによってその生活が著しく窮迫することを証明したときは、その全部又は一部の支払いを拒むことができる(改正後民法766条
の3第1項ただし書)とされました。

家庭裁判所は、免除やは猶予など相当な処分を命ずることができるとされています。

 

法定養育費に基づく担保権実行の申立てでは、執行裁判所が差押命令の発令前に債務者審尋を行うことができるとされています。離婚から長期間経過した後に申立がされる可能性もあり、債務者側の事情を確認した方が良いといえるでしょう。

子どもの養育をしない側の親は、離婚時に養育費の合意をしておかないと、法律で一方的に決められた養育費を支払うよう命じられるリスクが出てきます。離婚時に養育費の合意をしておくほうが無難でしょう。

 

情報開示命令

家庭裁判所は、債務者の収入及び資産の状況に関する情報を開示することを命ずることができるとされました。

情報の開示を命じられた当事者が、正当な理由なくその情報を開示しなかったり、虚偽の情報を開示すると、家庭裁判所は、決定で、10万円以下の過料に処するものとしています。

この規定は子の監護に関する処分の調停事件及び離婚についての調停事件について準用されています。

調停の中でも、必要な資料開示を求めるため、裁判所の裁量で命ずることができるので、養育費等の算出がしやすくなるという効果が期待されます。

 

 

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