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FAQ(よくある質問)

 

Q.民事トラブル、裁判の構造とは?

民事裁判は原告が訴状を提出することで始まり、「現状を動かしたい人」が訴えを起こす仕組みです。

相手からの不当な請求に対しては、無理に自分から裁判を起こす必要はなく、相手の出方を待つ選択肢もあります。

裁判は申立手数料や弁護士費用といった経済的負担、時間的コストを伴うため、訴訟を起こす際は費用対効果を考慮した判断が重要です。

民事トラブル、民事裁判の構造を理解することで、適切な対応を取りやすくなるでしょう。

この記事は、

  • 民事裁判を起こそうとしている人
  • 不当な請求を受け、対応に迷っている人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2025.5.19

 

民事裁判の原告になる人

民事裁判は、原告が裁判所に訴状を提出することから審理が始まり、被告の答弁書提出などを経て和解または判決に至ります。

民事裁判(民事訴訟)は、当事者同士の私人間のトラブルを解決するための裁判です。

刑事事件のように警察や検察が動いてくれるわけではなく、「自分の権利を主張して何かを請求したい人」が、自ら訴えを起こさなければ裁判は始まりません。

 

裁判を起こす人を「原告」、訴えられる相手を「被告」と呼びます。

民事裁判は、原告が訴状(訴えの内容を記した書面)を裁判所に提出することでスタートし、被告はそれに対して反論や言い分を述べる、原告が再反論——このように双方の主張と証拠を出し合う構造になっています。

 

現状を動かす人が原告になる

たとえば、AさんがBさんに「貸したお金を返してほしい」というトラブルになった場合を考えてみましょう。

お金を返してもらえず困っているAさんは、自分の権利(貸金返還請求権)を主張する側ですから、裁判所に訴状を出してBさんを訴える必要があります。

Aさんが原告、Bさんが被告となり、裁判所が間に入って両者の言い分や証拠を確認します。

そして最終的に、「BさんはAさんにお金を返す義務があるかどうか」を裁判官が判断し、判決などの形で解決が図られます。

いま相手にあるお金をこちらに払わせたい、動かしたい人が原告になる仕組みです。

現状を動かしたい人、変えたい人が原告になるというイメージです。

動かしたい側が原告になるイメージ

お金を動かしたい人、貸したものを自分に移動させたい人、賃貸物件から相手を退去させたい人、現状の不動産登記から変更したい人、現状の結婚関係を終わらせたい人などが原告になる構造が大半です。

このように民事裁判では「請求する側が訴えを起こす」のが基本であり、裁判所は当事者から訴えが出されて初めて動くのです。

 

 

相手の主張がおかしい場合

トラブルの中には、「相手の請求がおかしいので、何とかしてほしい」と相談に来るケースもあります。

たとえば、突然相手から「あなたに貸したお金を返してもらっていない!」と身に覚えのない請求をされたり、事実とは違うことを言われたりする状況です。

こうした場合、不安になって「自分の潔白を証明するために、こちらから裁判を起こすべき?」と考える人もいるかもしれません。

しかし、結論から言えば、自分が請求したい側でないなら、無理に自分から民事裁判を起こす必要はありません。

なぜなら、民事裁判は権利を主張する側(請求する側)が起こすものだからです。

もし、相手が「お金を払え」などと主張し、お互いの主張が違うのであれば、本来その相手こそがあなたに対して裁判を起こす立場にあります。

相手が裁判を起こしてこない限り、こちらから積極的に裁判所へ訴え出なくても大丈夫です。

裁判になっていない段階では、相手の主張はあくまで一方的に言っているだけの状態であり、法的に支払いを強制されたり責任を認定されたりしているわけではありません。

一応、民事裁判では、相手の請求、要求がひどい場合に、請求されている側から、「そのような義務はない」ことを認めてもらう債務不存在確認の訴えという制度はあります。ただ、相手の言動があまりにひどい場合に使うことを検討する程度の制度で、基本的には、権利を実現したい人が起こすものです。

この債務不存在確認の訴えを起こすには、自分が原告となって裁判を起こす負担を負うことになるため、一般的には相手が実際に裁判を起こすかどうか様子を見るのが得策です。

 

おかしい請求の例

たとえば、先ほどのBさんが逆に「Aさんに昔貸した100万円を返してもらっていない!」と言い出したとします。

しかし、Aさんにはまったく心当たりがなく、Bさんの主張は事実と異なるようです。

このケースでは、Aさんは自分からお金を請求したいわけではない(むしろ請求されている)ので、無理に裁判を起こす必要はありません。

Aさんとしては「本当に返してもらう権利があると思うなら、Bさんが裁判を起こせばよい」という姿勢で構いません。

もしBさんが本当にAさんに100万円を請求したければ、Bさんが原告となって裁判を起こすはずです。相手が訴えてきたら、そのとき初めて裁判所から訴状(訴えの書面)が届きます。

訴状が届いたら、Aさん(被告)は自分の主張を書いた答弁書を提出し、「借りていない(返す義務がない)」ということを証拠とともに示して争えばいいのです。

裁判になれば、最終的には裁判所が証拠に基づいて真実を判断してくれます。

 


裁判の手間と費用(動く側が負担)

民事裁判では、先に動いた側(訴えた側)が様々な手間や費用を負担する仕組みになっています。

まず、お金の負担があります。

裁判を起こすには、まず裁判所に申立手数料(訴えを起こすための費用)を納める必要があります。

これは請求する金額に応じて額が決まっており、たとえば100万円の請求なら約1万円、1000万円なら5万円程度の収入印紙代を訴状に貼って納める必要があります。

この他にも、裁判所から相手に書類を送るための郵便切手代(数千円~)や、証拠を集めるための資料コピー代・交通費などの実費がかかります。

弁護士に依頼すれば弁護士費用も必要です(着手金や報酬金として何十万円単位の費用が発生するのが一般的です)。つまり、裁判を起こすには一定の出費を覚悟しなければなりません。

このうち、印紙代や切手代などの訴訟費用は、勝訴判決をもらえた場合には、被告負担となることもありますが、回収するのも、原告自身となります。

 

次に、時間・労力の負担があります。

裁判は書類のやり取りや期日(法廷での審理)を重ねて進行するため、解決までに時間がかかります。

第一審の判決まで半年~1年、内容次第ではそれ以上かかることも珍しくありません。

その間、原告となった人は主張を整理したり証拠を集めたりするために、多くの時間と労力を割く必要があります。

裁判所への提出書類を準備したり、何度も期日に出廷したりする負担は決して軽くありません。

 

勝っても全ての費用は戻らない

もし裁判を起こして勝訴した場合、相手(敗訴した側)に対して裁判所に納めた訴訟費用の負担を求めることができます。

具体的には、先述の申立手数料(収入印紙代)や郵便切手代などは判決で相手に支払いを命じてもらえる可能性があります。しかし、弁護士費用については原則として自分で負担しなければなりません。

一般的な紛争では弁護士費用は勝っても自己負担です。ただし交通事故など一部の訴訟では、判決でごく一部の弁護士費用相当額を認めてもらえる場合もあります。

つまり、裁判で勝っても時間やお金の負担が完全になくなるわけではなく、リスクとコストを覚悟して挑む必要があります。

以上のように、裁判を起こすことには経済的・時間的な負担が伴うのです。

当事者の主張が食い違っている場合、権利を実現しようとする側は、これらの負担を受け入れて裁判を起こすかを検討するという構造です。

 

違法・不当な請求への対応事例

相手が請求してきている内容が違法な場合や、不当な請求の場合、こちらが相手に対して自分の言い分を伝えても聞いてもらえないということがあります。

このような構造のときに、自分の気持ちをスッキリさせたいため、問題を解決したいという相談を受けることがあります。

しかし、問題を積極的に解決する選択肢としては、相手の言い分を一部でも認めるなどして交渉・和解をするか、そのような解決を目指した調停などを使うか、自分から裁判を起こすなどするあたりのものとなります。一部も認めたくないけど、解決したいとすると、債務不存在確認のような裁判になりますが、本来は、権利の実現を望む人が動くものです。

そうであれば、このような構造では、相手の動き待ちという対応になります。

こちらが和解を拒絶するのであれば、相手の選択肢は、裁判を起こして請求を認めてもらうか、断念するかというものになります。

そうであれば、こちらの考えるべきポイントは、相手が裁判を起こしてきそうか、という点です。

請求自体が違法な内容や不当な場合には、そもそも相手が裁判を起こしてくる可能性は低いと考えられます。問題解決にはなりませんが、こちらの法的な主張をぶつけたうえで、請求を拒絶し、相手の断念を待つという選択になります。

たとえば、パパ活で合意した代金(性交渉の対価)やヤミ金などの違法金利などは、違法請求になるので、相手が裁判を起こしてくる可能性は低いと判断できます。

問題は解決しなければならない、ものでもないのです。

モヤモヤするかもしれませんが、放置という選択もあるのです。

不当請求の選択肢

 

不当な請求を支払ってから裁判をするという考え

ぼったくりのような不当請求を考えてみましょう。

請求を受けて支払を拒絶した場合、お店が代金回収をしようと考えれば、民事裁判を起こす立場になります。

これに対して、支払ったものの、おかしいと考えて返せと請求、損害賠償請求などを起こす場合、いったん相手に渡ったお金を動かして取り返すため、こちらが民事裁判を起こす立場になります。

裁判を起こす側の負担はこちら側に出てきます

いったん支払ってから裁判で決めれば良いという考えは、このような負担が生じるものなのです。

詐欺被害や脅迫被害などで、一定額を支払った後に、まだ請求されているという相談があります。

違法な請求を拒絶する、という対応は、そこまで難しくありません。

動くとしたら、相手が裁判を起こさなければならないからです。

これに対し、払ってしまったものを取り返したいという場合には、こちらが動く必要が出てきますので、負担が発生するのです。加害者からお金を取り戻すというのは、かなり大変な作業になるのです。

詐欺脅迫と民事裁判

 

請求が認められるか微妙な場合の考え方

明らかに違法な請求であれば、支払い拒絶の意思を示して、相手の出方待ちという対応が最も良いことが多いです。

これに対し、相手の請求が認められるか微妙なケースもあります。

証拠上、請求が通るか微妙な内容であったり、その証拠評価が裁判官によって分かれそうだったり、こちらの想定している反論が認められるか微妙な内容であったり、問題となる論点の裁判例が分かれていたりするケースです。

民事裁判では、誰が判断しても、このような結論を出すだろうという問題もあれば、裁判官の判断のばらつきがあり、結論が断定できない事案もあります。

後者の場合、最終結論が見えず、見通しとしては、割合的に考えることになります。

イメージとしては、証拠関係等から、相手の請求が認められる確率40%、こちらの請求が認められる確率60%、というように割合的に将来の見通しを考えます。

この精度を上げるために、証拠を整理したり、法律相談を利用したり、ときには、複数の専門家に意見を聞くことも有効でしょう。

ただ、このような場合には、結論が断定できないため、期待値やリスクという考え方を使って判断することになります。

確率的に、相手の請求が否定される可能性のほうが高いと判断し、請求を拒絶したものの、民事裁判を起こされ、相手の請求が完全に認められてしまうということもあります。あくまで確率問題だからです。

相手の請求が認められた場合、多くの事件では、遅延損害金を含めて支払義務が出てきます。

最大の金銭コスト値が、このような遅延損害金を含めての支払義務の負担と、民事裁判を弁護士に依頼したのであれば、その費用の負担ということになるでしょう。それ以外に、裁判対応にとられる時間や、精神的負担をどう評価するかという問題になります。

 

 

民事裁判での立証責任

相手の請求が否定される確率を考える際に、立証責任がどちらにあるかというポイントがあります。

まず刑事裁判のほうがイメージしやすいかもしれません。

刑事裁判では、検察官が、被告人が犯罪行為をしたと立証する必要があります。無罪推定の原則があり、検察側が有罪を立証できなければ、有罪判決は出ないという構造です。

同じように、民事裁判でも、それぞれの請求内容で立証責任があります。

たとえば、お金を貸したという裁判では、請求する側が、お金を貸したことを立証しなければなりません。

お金を貸したことを立証するとはどういうことなのかを分解したものを要件事実と呼んだりもします。

お金を貸したということは、まず、お金を渡す、振り込むなど移動させているはずです。また、それ以外に、返すという話があったはずです。このような点が要件事実を呼ばれます。

この要件事実が立証され認められた場合、次に、相手は抗弁という言い分を出すことができます。

たとえば、お金を返したという主張です。この抗弁は、今度は返した側が立証しなければなりません。返した際の送金記録や領収書などを準備する必要が出てきます。

このように民事裁判では、それぞれの請求について、要件事実、抗弁、さらに再反論の再抗弁という構造があり、これを立証できる証拠があるか、という点が問題になるのです。

 

相手の請求が民事裁判で認められそうかどうか、確率を考えて判断する場合には、このような立証責任の視点から、どこがポイントになりそうかを分析するのが有効なのです。

 

弁護士の法律相談は、このようなポイントを確認し、将来予測の精度を上げるために使うと有効でしょう。

 

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