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FAQ(よくある質問)

 

Q.フリーランス新法とは?

2024年11月に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスの取引環境を大きく改善する重要な法律です。

契約書面の交付義務化、60日以内の報酬支払いルール、不当な扱いの禁止など、発注者に対する具体的な義務が明確化されました。

一人で事業を営む個人事業主や一人法人が対象となり、従来の曖昧な契約関係から脱却し、より公正な取引環境の実現を目指しています。

この記事は、

  • フリーランス、自営業者
  • 取引相手からフリーランス新法の主張をされた人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2025.5.23

 

フリーランス新法の背景と目的

近年、会社に属さず個人で仕事を請け負う「フリーランス」として働く人が増えています。

働き方の多様化やテレワークの普及、新型コロナ禍での副業解禁などが背景となり、フリーランスという柔軟な働き方が注目されてきました。

しかし、一方で、「契約内容があいまいなまま仕事を始めてトラブルになった」「報酬を支払ってもらえない」「一方的に契約を切られた」といった、フリーランスと発注側企業とのトラブルの懸念も増していました。

特にフリーランスは企業に比べ立場が弱く、労働者ではないため労働法で守られず、また取引上は個人事業主でも従業員を持たない小規模事業者であるため十分な交渉力がないケースも多いです。

こうした状況を受けて、フリーランスとして働く人が安心して仕事に取り組める環境を整備し、取引上の不公平を是正することを目的に制定されたのが「フリーランス新法」です。

正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、2023年4月28日に国会で可決・成立し、同年5月12日に公布されました。

この法律は大きく分けて、①フリーランスと発注事業者間の取引の適正化(=契約内容や支払条件の明確化、公正な取引慣行のルール整備)と、②フリーランスの就業環境の整備(=労働者ではないフリーランスにもハラスメント防止等の環境整備)を図ることを目的としています。

つまり「フリーランスとして働く人が不当に不利益を被らないようにする」ことが法律の柱になっているのです。

 

フリーランス新法の施行時期と基本情報

フリーランス新法は2024年(令和6年)11月1日から施行されています。

2023年に成立後、施行まで1年半ほどの準備期間が設けられ、2024年11月から本格的に新法のルールが適用開始となりました。

法律の所管官庁は複数にまたがっており、公正取引委員会(独占禁止法などで有名な公取委)や中小企業庁が主に取引の適正化に関する部分を、厚生労働省(労働局)が就業環境の整備に関する部分を担当しています。

違反時の措置についても、関係省庁が連携してフリーランスの取引環境改善に取り組む位置づけです。

施行日(2024年11月1日)以降に開始される契約から、この法律のルールが適用されます。

ただし、施行日前からすでにフリーランスと企業との間で基本契約を結んで継続取引が行われている場合、施行日以後にその基本契約に基づいて新たに業務委託の合意をした時点で新法が適用されると考えられます。

たとえば、2024年以前から基本契約を結んで定期的に業務委託を受けているフリーランスの方も、2024年11月1日以降に発注される個々の業務については新法の保護対象となりえます。

また、契約期間が満了して施行日後に契約を更新した場合は、その更新の時点から新法が適用されます。

したがって「施行前から契約済みだから自分には関係ない」とは言えず、現在進行中の契約であっても施行後の発注分や更新分については新法のルールに沿った対応が必要になります。

 

 

「フリーランス」に該当する条件

「自分は法律上の“フリーランス”に当たるのか?」――まずここを確認しましょう。

フリーランス新法では、一般的な意味でのフリーランスに該当する人すべてが対象になるわけではありません。

法律上の用語では、フリーランス新法で保護されるフリーランスのことを「特定受託事業者」と定義しています(難しい名前ですが、要は「特定の業務を受託する事業者」という意味です)。

この「特定受託事業者」に該当するためのポイントは次のとおりです。

個人または自分一人だけの法人として事業を行い、企業などから業務の委託を受けていること

フリーランス新法の適用対象となるのは、「発注事業者(依頼主)」から仕事を委託される側である個人事業主や一人社長の法人です。会社員のように雇われて働くのではなく、請負契約や業務委託契約によって仕事を引き受けている人が該当します。

例えばデザイナーやプログラマーの方が、企業と業務委託契約を結んで成果物を作成するようなケースです。

なお、副業でフリーランス的な仕事をしている場合でも、本業とは別に個人事業として仕事を請け負っていればこの法律のフリーランスに当たります。

また、フリーランスという言葉のイメージとは違いますが、一人だけの法人・会社も保護対象になっています。

 

自分自身以外に常時使用する従業員を雇っていないこと

フリーランス新法は「従業員を使用しない事業者」をフリーランス(特定受託事業者)としています。

ここでいう「従業員」とは週20時間以上かつ1か月超の期間雇用する労働者を指し、家族や短期アルバイトなど一時的な手伝いは含まれないとされます。

要するに一人で仕事をしていることが条件です。

例えば、あなたが個人事業主でデザイン業を営み、アルバイトも含め誰も雇っていないならこの条件を満たします。

一方、もし事業を拡大して社員を1人でも雇用すると、その時点で法律上は「フリーランス」とは見なされなくなるので注意が必要です。

 

取引の相手が企業や個人事業主など「事業者」であること

フリーランス新法が対象とするのは事業者間の取引です。

つまり、依頼主が法人企業や商売として業務委託を行う個人事業主である場合に、この法律が適用されます。

反対に、お客さんが単なる消費者(一般個人)である場合は、本法律の対象外です。

例えば、写真撮影を生業とするフリーランスカメラマンの場合で考えると、企業から宣伝用写真の撮影を請け負う案件は事業者間取引なので新法の適用対象ですが、一般のご家庭(消費者)から家族写真の撮影を個人的に依頼される案件は事業者からの委託ではないため対象外となります。

このように、取引相手がビジネスとして発注を行っているかどうかが一つの線引きです。

 

契約形態が「物の売買」ではなく「業務の委託」であること

フリーランス新法はあくまで業務委託(請負や委任)を対象にしています。

自分で製造した商品を売る場合などは単なる売買契約であり、この法律で想定する「業務の委託」には当てはまりません。

例えば、イラストレーターの方がクライアントの要望に沿ったイラストを制作するのは業務委託ですが、自身で描いた既存のイラスト作品を商品として不特定の顧客に販売するのは業務委託ではなく物品販売ですので新法の適用範囲外です。

ご自身の契約が「〇〇してくださいと頼まれて、その成果に対して報酬を受け取る」形であれば業務委託といえます。

 

実態として「労働者」ではないこと(いわゆる偽装フリーランスではないこと)

名目上は業務委託契約となっていても、働き方の実態が発注元企業の従業員同様である場合、労働基準法などの労働法令が優先適用されるためフリーランス新法の対象から外れます。

例えば、勤務時間や場所、仕事の進め方まで企業から細かい指示命令を受け、事実上会社員と変わらない働き方であれば「労働者性」が強く、形式が業務委託でも実質は雇用契約と判断される可能性があります。

その場合は本来フリーランス新法ではなく労働法の保護を受けるべきであり、企業側も労働法規を守る義務があります。

近年問題視されている「偽装フリーランス」(名ばかり業務委託)についても、対象外です。

ご自身の働き方が独立事業者としての働き方か、それとも指揮監督下での労働に近いか、振り返ってみることも重要です。もし「ほぼ社員と同じように働いている…」という場合には、フリーランス新法より労働基準法等で保護されるべきケースかもしれません。

そのような場合は労働基準監督署や専門家に相談し、適切な契約形態となるよう是正を検討しましょう。

なお、逆に、発注者側から見ると「本当は業務委託なのに実は労働者扱いだった」というケースは重大な法令違反になりえます。この点でも、企業側はフリーランス新法と労働法の線引きを意識して契約を結ぶ必要があります。

 

以上がフリーランス新法で保護される「フリーランス(特定受託事業者)」の条件です。

まとめると、「一人で事業を営み、企業などから請負契約で仕事を受けている人」が典型的な対象像と言えるでしょう
。副業フリーランスもOKですが、従業員を抱えていたり、取引相手が消費者だったり、実態が労働者である場合は対象から外れる点に注意してください。

フリーランス新法要件

 

フリーランス新法の対象となる取引範囲

前項と重なる部分もありますが、この法律が適用される取引の範囲について整理します。

フリーランス新法は、一言でいうと「事業者(発注者)とフリーランス(受注者)との間の業務委託契約」に適用されます。

取引の範囲

 

◎適用される取引例

企業が個人事業主に対して業務を発注する契約、フリーランス(従業員なしの一人法人含む)が他の会社から案件を受託する契約、など。業種は問いません。

ITエンジニアの業務委託、ライターやデザイナーへの制作依頼、コンサルタントや通訳者への業務委託など、あらゆる分野のBtoB契約が対象になります。

発注者側は法人企業はもちろん、個人事業主(例:フリーランス同士の仕事の発注)であっても事業者として発注する限り対象です。

例えばフリーランスのウェブデザイナーが、下請けとして別のフリーランスプログラマーに作業を再委託する場合も、両者とも従業員を使わない事業者なので新法の一部規定(契約書面の交付義務など)が適用されます。

 

× 適用されない取引例

発注者が事業者ではない一般消費者の場合や、契約が物品の売買である場合などは対象外です
。例えば先ほどのカメラマンの例で言えば、個人のお客様からの写真撮影依頼(これは事業者間の取引ではありません)は新法の規制対象にはなりません。

また、イラストレーターが自作のイラストをネット上で不特定多数に販売する場合(物の売買)は「業務委託」ではないため対象外です。

さらに、フリーランスが従業員を1人でも使用している場合は、そのフリーランスは法律上「特定受託事業者」に当たらないため、そうした人との取引自体がこの法律の適用範囲外となります。

要するに、事業者対事業者の委託契約かどうかがラインであり、一方でも事業者でなければ除外、一方でもフリーランスでなければ(例えば相手が大企業同士の取引や、自分が法人+従業員ありの場合など)除外となります。

 

なお、プラットフォーム経由の取引についても基本的には同じ考え方です。

例えばクラウドソーシングサイトを介して企業から仕事を受注する場合、その本質は企業(事業者)からフリーランス(事業者)への業務委託なので新法の適用があります。

実際、フリーランス新法ではクラウドソーシング等で募集情報を掲載する際のルールも定められています。

 

 

発注側に課される主な義務内容

フリーランス新法では、発注者(特定業務委託事業者=フリーランスに業務を委託する事業者)の側に、フリーランスを保護するための様々な義務や禁止事項が課されました。

ここからは、フリーランスである皆さんが「自分に仕事を発注する企業はどんなルールを守らなければならないのか」を把握できるよう、発注者の義務を解説します。

発注者が守るべきポイントを知っておくことで、もし義務違反があった場合に適切に指摘・対処しやすくなります。

 

契約条件の明示(書面またはメールの交付義務)

発注者はフリーランスに業務を依頼する際、契約内容の条件を書面または電子メールなどの電磁的記録で明示しなければならないと定められました。

口頭やチャットだけで済ませて後から食い違いが起きる…といった事態を防ぐため、契約書や発注書の交付が法律上の義務となった形です。

明示すべき具体的な取引条件は次のとおりです

業務の内容(どのような仕事・役務の提供か)
報酬の額(いくら支払われるか)
報酬の支払期日(いつまでに支払われるか)
発注者およびフリーランス双方の名称(氏名・社名など)
発注を行った日付
成果物の納品日/役務提供を受ける日
成果物の納品場所/役務提供を受ける場所
(検収がある場合)検査の完了日
(現金以外の支払方法の場合)報酬の支払方法に関する事項

以上の事項が契約書や発注書に盛り込まれていればOKですが、これらを満たさないと新法違反となりえます。

メール等電子的な方法でも良いので、必ず書面で条件提示を受け取ることが重要です。

もし発注側が書面を交付してこない場合は、フリーランス側から「新法で義務づけられていますので、契約内容をメールか書面でください」と依頼してもよいでしょう。

なお、この義務はフリーランス同士の取引(発注者側も従業員を持たない個人事業主)でも適用されます。

たとえ相手も小規模とはいえ、曖昧なやり取りでトラブルにならないよう契約条件を明確化することが求められるためです。

 

報酬の支払期日の設定と支払義務

発注者はフリーランスに対し、あらかじめ報酬の支払期日を定めたうえで契約しなければなりません。

また、その期日は成果物の納品や検収が完了した日から起算してできるだけ早い日、かつ60日以内に設定する必要があります。

そして定めた期日までに実際に報酬を支払わなければなりません。

これを簡単に言えば、「検収後60日超の支払いサイトは禁止」ということです。

例えば、「毎月末締め翌月末払い」のような支払い条件であれば、検収日から数えて30日ほどで支払われるので問題ありません。一方、「月末締め翌々月15日払い」のように、検収から約75日後の支払いとなる条件は60日ルールに抵触し違法となります。

実際、多くの企業では従来から下請代金支払遅延等防止法(下請法)により親事業者は下請事業者へ60日以内に支払う義務がありました。

フリーランス新法では、これと同等の支払期限ルールをフリーランス取引にも拡大した形です。

発注者にとっては支払サイトの見直しが必要ですし、フリーランス側にとっては契約時に何月何日支払いかをはっきり決めておけるメリットがあります。

万が一「検収後○ヶ月先に払う」といった契約を提示された場合は、新法の規定を確認して適切な期日設定を求めましょう。

さらに、発注者が業務を第三者に再委託している場合(多重下請けのようなケース)は、発注者(元請)が発注元から支払いを受けた日から30日以内にフリーランスへ報酬を支払うルールもあります。

これは元請企業が資金を受け取っていながら下請フリーランスへの支払いを長期間留保するといった不公正を防ぐ趣旨です。

 

※なお、発注者もフリーランスである場合(フリーランス同士の取引)には、この60日支払期日ルールは適用されません。

お互い様の関係であり資金繰り事情もあるでしょうから、法律として期限までは縛らないということです。しかし、たとえ違法にはならなくとも信頼関係のためには可能な限り早めに支払うことが望ましいのは言うまでもありません。

フリーランス同士で仕事を発注する場合も、できれば60日以内を目安にスムーズな支払いを心がけましょう。

 

不当な扱いの禁止

発注事業者は、フリーランスとの取引において一方的・不当にフリーランスに不利益を与える以下の7つの行為をしてはならないと定められました。

これらはいずれも従来問題視されていた不公正な取引慣行で、フリーランス新法によって明確に禁止事項として規定されたものです。

正当な理由なく成果物の受領を拒否すること
正当な理由なく報酬の額を減額すること
正当な理由なく納品物の返品をすること
市場相場に比べて著しく低い報酬を不当に押し付けること(いわゆる「買いたたき」)
発注者に指定された商品購入やサービス利用を不当に強制すること
発注者のために金銭やサービス提供など経済上の利益供与を要求すること
フリーランスに責任のない範囲で契約内容を変更させたり、やり直しを要求したりすること

例えば、発注者側の都合で「やっぱり要らなくなったから受け取らない」「予算オーバーだから報酬を勝手に2割カットする」といったことは許されません。

また、報酬相場を著しく下回る金額で契約させたり、取引の条件として発注者指定の機材を自腹で買わせる(実質的なマイナスの強要)といった行為も禁止です。

加えて、本来の契約にない追加作業を一方的に要求する「タダ働きの強要」も禁止されています。

 

これら7項目はいずれも「フリーランス側に落ち度がないのに不利益を与える行為」であり、従来から下請法などで問題とされてきた行為を包含しています。

フリーランスとして仕事をしていると、立場上なかなか強く言いづらい部分ですが、法律で明確に禁止されていますので、万一こうした不当要求があった場合は「それはフリーランス新法で禁止されています」と伝えることもできます。

 

※取引期間に関する注意: ただし、この7つの禁止行為が適用されるのは取引期間が一定以上の場合に限る点に注意が必要です。

新法では「政令で定める期間以上の期間継続して行う業務委託」に対して上記禁止行為規定を適用するとされており
、その期間について「1か月以上」とされています。

つまり、1か月未満の単発の短期契約にはこれら禁止行為規定が法的には及ばない可能性があります。

実務上は、1週間程度のスポット案件など極めて短期の取引では契約解除や返品といった問題も起こりにくいため対象外とし、1か月を超える継続取引や複数回にわたる発注では保護を厚くする趣旨と考えられます。

したがって、仮に数日のごく短期契約で納品拒否等を受けても新法違反とはならない場合がありますが、その場合でも民法上の債務不履行として損害賠償請求などは可能です。

いずれにせよ、常識的に許されない不当な扱いであることに変わりはありませんので、期間にかかわらず泣き寝入りする必要はありません。

 

公募・募集情報の適正表示義務

最近では、企業がフリーランスを募集する際にウェブサイトの公募ページやクラウドソーシングサービス、SNSなどで求人情報を掲載することも一般的です。

フリーランス新法では、不特定多数に向けてフリーランス募集の広告等を行う場合、虚偽や誤解を招く内容を表示してはならず、常に正確で最新の情報に保たなければならないと規定しました。

これは、せっかく応募してみたら条件が違った・募集が終わっていた、といったミスマッチを防ぐための規制です。

具体的に禁止される表示例として、以下のようなものが挙げられています。

虚偽の報酬額を掲載する(例:実際より高い報酬額を広告に載せる)
実際とは異なる発注者名で募集をかける(例:関連会社の案件なのに有名企業の名前を使って募集する)
報酬が確約されているかのように誤解させる表示をする(例:「最大○○万円!」とだけ書き、あたかも必ずその額がもらえるように見せる)
古い募集情報をそのまま掲載し続ける(例:募集終了したのに削除せず放置する)

以上のようなケースは新法違反となります。

要するに、募集段階から「釣り案件」的な嘘でフリーランスを集めることを禁止したものです。

なお、仮に募集時の条件から実際の契約時に当事者の合意で条件変更すること自体は問題ありません。

たとえば募集広告には「報酬10万円〜(スキル等に応じ決定)」と書いてあった案件で、実際に話を聞いた結果8万円で合意したとしても、双方納得ずくであれば構いません。

 

違法となるのは最初から誤解させる嘘を載せることなので、正確な情報を掲載し、変更がある場合は合意の上で契約する限り問題ないわけです。

フリーランスの方は、案件募集を見て応募する際に「話が違うな」と感じたら、この法律のことを思い出してください。悪質な誤認募集は法律違反となりますので、そのような場合は応募を辞退するか、必要に応じて関係機関に相談することも検討しましょう。

 

長期契約における配慮義務(育児・介護と仕事の両立)

フリーランス新法では、取引関係が6か月を超えるような継続的な業務委託について、発注者に対しフリーランスの仕事と育児・介護等との両立に配慮する義務を課しています。

具体的には、契約期間が長期にわたる場合でフリーランスから申し出があったときは、その人が育児休業や介護と仕事を両立できるように納期や業務量、働く場所や時間帯などを調整するよう努めなければならないとされています。

法律上は「必要な配慮をしなければならない」と義務規定ですが、実質的には努力義務(ベストエフォート義務)に近い位置づけです。

たとえば「子どもが急病のため予定していた作業時間が取れなくなった」とフリーランスから申し出があった場合に、発注者は納期延長や作業方法の変更など可能な対応策を検討し、対応するか理由を説明するかいずれかの対応をすべきとされています。

6か月以上の長期契約では雇用に近い継続関係になりますから、発注者にも労働法的な観点での配慮が求められるイメージです。

この規定によってフリーランスにも仕事と家庭の両立支援が及ぶ点は画期的です。

フリーランスは自己責任で時間管理しがちですが、長期契約ではお互い様の部分も出てきます。

発注者側は一方的に「できないなら契約打ち切りだ」とするのではなく、まずは事情を聴いて柔軟に対応策を検討することが求められます。

フリーランス側も、育児・介護等との両立が難しい状況になったら遠慮なく相談してみましょう。法律のお墨付きがあることで、声を上げやすくなるはずです。

 

ハラスメント相談体制の整備義務

フリーランス新法は、フリーランスが孤立無援で仕事をする中でのハラスメント問題にもメスを入れました。

具体的には、発注事業者に対しフリーランスに対するハラスメント相談窓口の整備と周知を義務づけています。

これは2019年改正の労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)で企業に労働者へのハラスメント相談窓口設置が義務化されたことを受け、フリーランスにも同様の配慮を及ぼすものです。

発注側企業は自社の従業員だけでなく、業務委託先のフリーランスからのハラスメント相談にも対応できる窓口を設け、契約時などにその連絡先をフリーランスへ伝える必要があります。

また、相談者であるフリーランスのプライバシー保護や、相談したことを理由とする不利益取り扱い禁止も周知しなければなりません。

つまり「困ったときはここに相談してください。内容は守秘し、不利な扱いはしません」という体制を作るわけです。 ハラスメントにはパワハラ・セクハラ・マタハラ等様々ありますが、フリーランスは取引打ち切りを恐れて泣き寝入りしやすい立場でした。新法により発注側に相談窓口が義務化されたことで、少なくとも「訴える場」が保証されることになります。

発注者側は既存の社内相談窓口をフリーランスにも開放するなどして実効性のある運用を求められます。

フリーランスとしては、契約書や発注書に相談窓口の連絡先が記載されているか確認しておくとよいでしょう。もしハラスメントを受けた場合は遠慮なくその窓口に相談し、必要なら事実関係の調査や加害者への対応を求めることができます。相談したことで取引停止などの報復をすることは禁止されていますので、安心して声を上げましょう。

 

継続契約の解除・更新拒絶時の予告義務(30日前まで)

フリーランスと発注者の関係が長期に継続している場合(契約期間が6か月以上)、発注者が一方的に契約を打ち切る際のルールも設けられました。

具体的には、契約期間途中で解除する場合や、契約更新が慣例となっていた中で契約期間満了後に更新しない(終了させる)場合には、少なくとも30日前までにその旨を予告しなければならないと定められています。

突然「今日で契約終了です」と言い渡されると、フリーランスは収入計画が狂って大変困ります。そこで1か月前には通知して、次の仕事を探す猶予を与えるよう義務づけたわけです。

さらに新法では、発注者が契約解除や更新打ち切りを行う際、フリーランスから求めがあった場合にはその理由を速やかに書面(電子メール等含む)で開示する義務も課しています。

不透明な形で関係を断たれるとフリーランス側も納得がいかないでしょうから、理由を明示することでトラブル防止につなげる狙いです。

ただし、この30日前予告なくしても直ちに契約無効になるわけではありません。

あくまで行政指導や罰則の対象になるということで、民事的には予告なし解除自体は有効でも、フリーランス側が損害を被った場合には損害賠償請求の余地が出てくると考えられます(例えば急な解除で発生した損失について請求するなど)。

いずれにせよ長期取引では計画的な関係終了がルール化されたと押さえておきましょう。

なお例外的に、フリーランス側に契約違反などやむを得ない即時解除理由がある場合はこの限りではありません。

例えば守秘義務違反や重大な契約不履行がフリーランスに認められた場合、発注者は猶予なく契約解除できる旨が契約で定められていれば、その条項に従い即時解除も可能です。

この点は企業側を過度に縛らないよう配慮されています。ただし「やむを得ない事由」がないのに突然の解除は違法ということになりますので、お互い信頼関係を保ちながら継続契約を運用することが大切です。

 


違反した場合はどうなる?-行政による対応と罰則

以上のような義務に発注事業者が違反した場合、どのような措置が取られるのでしょうか。

フリーランス新法では、主に行政当局からの指導・勧告や罰則規定が設けられています。

発注者が新法に違反する行為をしたことが明らかになった場合、まずは所管官庁(公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省労働局など)が助言や指導を行い、必要に応じて報告徴収や立入検査を実施します。

これは「是正しなさい」という行政指導の段階です。

それでも従わない悪質なケースでは、改善命令(公正取引委員会や厚労大臣等からの是正命令)が出されることもあります。 もし命令に違反したり、立入検査を拒否・妨害したりすると、50万円以下の罰金刑が科される可能性があります
。この罰金は刑事罰に当たりますので、企業名公表や信用失墜にもつながる重大な結果です。

また、発注事業者の担当従業員個人が違反行為を行った場合でも、その企業(法人)自体も罰則の対象となり得ることが明記されています。

例えば社員がフリーランスにパワハラをして是正命令を受けたのに、それを放置すれば会社自体も処罰され得るということです。

ここで押さえておきたいのは、フリーランス新法違反それ自体に直接科料や罰金が科されるケースは限定的だという点です。多くの場合は、まず行政指導→それでも改善しなければ罰則、という二段階になっています。

これは下請法(親事業者が下請代金を遅延した場合などもまず勧告や公表を経て罰則)と似た構造です。

したがって、一度違反したから即ブラックリスト入り…というよりは、公的機関が是正に乗り出してくれる仕組みと捉えるとよいでしょう。

フリーランス側から見れば、明らかな新法違反行為に直面したら泣き寝入りせず、行政に伝えることで相手に指導が入る可能性があります。

結果的に相手企業が改善すれば、同じような被害に遭う人も減るはずです。

 

一方で、フリーランス自身が直接損害を回復する手段としては、引き続き民事上の請求や話し合いによる解決が基本となります。これは下請法でも同じです。

新法は刑事罰こそありますが、違反があってもフリーランス個人にお金が支払われたり損害が自動で補填されたりするわけではありません。

ですので、報酬未払いなどがあれば契約不履行として支払いを求める交渉や裁判を起こすことになります。

ただ、新法に違反している事実があれば交渉や裁判でもフリーランス側が有利に立てる可能性が高まります。

特に相手が行政指導などを受けたくないと考える事業者であれば、フリーランス新法の指摘により改善される可能性もあるでしょう。

行政と民事の両面から、フリーランスを守る仕組みが強化されたと考えてください。

 

以下はAI作成のなんとなくのイメージ図です。

フリーランス新法イメージ

 

フリーランスができる備えと対応策

フリーランス新法によって環境整備が進むとはいえ、実際に自分の身を守るためにはフリーランス側の心構えや対策も大切です。

最後に、フリーランスの方が取っておくべき具体的な対応策をまとめます。

契約内容を書面で残す・記録する

新法で契約書等の交付義務がありますが、万一口頭のまま進んでしまった場合でも、必ずメール等で契約条件を確認しておきましょう。

例えば「◯月◯日までに▲▲を納品、報酬□□円、検収後翌月末支払いでお引き受けします」といった内容をメールで送信し、相手から了承の返信をもらっておくだけでも証拠になります。

チャットでのやり取りもスクリーンショットなどで保存し、契約の証拠や仕事の指示記録を残しておく習慣をつけましょう。書面交付は相手の義務ですが、自衛のためにこちらから議事録的メールを送るのも有効です。

 

報酬・支払条件を明確に交渉する

契約前に報酬額や支払サイト(支払期日)は遠慮せず確認しましょう。

「検収後60日以内」という上限が法律で決まったので、例えば「御社の規定で支払は検収後90日です」と言われたら、それは新法違反ですから交渉余地があります。

適正な対価と支払条件をきちんと取り決め、不明確な点を残さないことがトラブル予防につながります。

 

長期案件では定期的に状況を共有

6か月以上続くようなプロジェクトでは、契約更新の時期や今後の予定について発注者とコミュニケーションを図りましょう。「更新しない場合は30日前までに知らせる義務」があるとはいえ、ギリギリになって慌てないよう早めに「来期も契約継続見込みか」尋ねておくなど主体的に動くと安心です。

また、育児や介護で柔軟な働き方が必要になったら、遠慮なく相談してみましょう。

企業側も配慮義務があるので、誠実に話せば理解を得られる可能性は高いです。

 

おかしいと思ったら専門家や公的機関に相談

フリーランス新法には、相談・紛争解決の支援策も用意されています。

例えば、厚労省や関係団体はフリーランス向け相談ダイヤルを開設しています。

ここに連絡すれば、内容に応じて弁護士による無料相談やADR(裁判外紛争解決)による和解あっせんのサポートが受けられます。

また、公正取引委員会や各地の労働局にも違反申出や相談窓口があります。

発注者との直接交渉が難しいと感じたら、第三者を交えて解決を図ることも検討しましょう。

必要に応じて弁護士に個別相談することも有効です。

 

自分は当てはまる?フリーランス新法チェックリスト

最後に、あなた自身がフリーランス新法の保護対象となる「フリーランス(特定受託事業者)」に該当するかどうかを判断するためのチェックリストを示します。

以下の項目に該当する数が多いほど、新法の適用を受けるフリーランスである可能性が高いです。

当てはまらない項目がある場合は、その理由に応じて他の法律の適用や対策を検討しましょう。

 

・現在、会社などに雇用される立場ではなく、業務委託契約(請負契約や委任契約)によって仕事を請け負っている。
例: 「○○業務の委託契約書」を交わして企業から仕事を受注している(=正社員アルバイト等ではない)。

 

・事業を自分ひとりで行っており、常時雇用する従業員(社員やパート等)を一人も抱えていない。
例: 個人事業主として自分だけで業務を行っている。あるいは自分が代表の法人だが社員は自分のみ(役員のみ)で、他に雇用している人はいない。

 

取引先(クライアント)は企業や個人事業主などの「事業者」であり、一般消費者との取引ではない。
例: 依頼主の会社から業務委託契約で仕事を受けている


・契約による仕事の内容は、サービスの提供や成果物の作成など「業務委託」であり、完成品の売買契約ではない。
例: ウェブサイト制作の依頼(業務委託)を受けている

 

・仕事の進め方や働く時間・場所について、発注者から社員のような細かい指示を受けていない(比較的自由に業務遂行している)。
例: 在宅で自分の裁量で業務を進めている

 

 

フリーランス新法は意外に広い

フリーランス新法というと、イメージしやすいフリーランスの職種である、ライター、デザイナー、プログラマーなどを想定した規制のように感じます。

しかし、定義を見ていくと、その適用範囲は広いように感じます。

自営業者の相当部分が適用される可能性があります。

業務委託の内容として、物品製造委託、情報成果物作成委託、役務提供委託とされます。

一人親方、マッサージ師、風俗嬢、弁護士などの士業も、人を雇用していなければ対象になり得ます。

つまり、従業員を雇用しない弁護士と顧問契約した場合、フリーランス新法の対象になりえます。

契約への効力などの直接的な民事効果は規定していないものの、契約内容の交渉などでは、この知識をもっておくと役立つことが多いでしょう。

 

ご相談をご希望の場合には、お電話または相談予約フォームよりご連絡ください。

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