
FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.戸籍訂正許可の審判の手続は?
戸籍の続柄欄に誤りがある場合、相続や身分関係に重大な影響を及ぼすため、適切な訂正手続きが必要です。
市区町村での職権訂正が困難な場合は、家庭裁判所への戸籍訂正許可申立てが求められます。
審判手続の申立となります。
本記事では、戸籍訂正許可審判の具体的な申立て手続き、必要書類、費用等を解説します。
この記事は、
- 戸籍の続柄や記載に誤りを発見し、訂正手続きを検討している方
- 相続手続きで戸籍の誤記が判明し、法的対応が必要な方
に役立つ内容です。
戸籍訂正の必要性とよくあるケース
戸籍は身分を証明する公的な帳簿であり、「続柄」欄には戸籍筆頭者に対する家族の関係(長男・長女・父・母など)が記載されます。
戸籍が手書きから電子化される過程や他の自治体に移す際に、筆写ミスや誤解による転記ミスで誤った続柄が記載されることがあります。たとえば、本来「長男」と書くべきところが「次男」となっていたり、非嫡出子の続柄欄が「男」「女」のままになっていたようなケースが典型例です。
また、届出自体が間違っていたということもありえます。
こうした誤りがあると、相続や身分関係に影響が出るため、正しい続柄に訂正する必要があります。
まずは市区町村役場の戸籍担当に相談し、明らかな誤記の場合は市区町村長の職権により訂正してもらえないか確認します。
市区町村での訂正と家庭裁判所での審判
軽微な筆写ミスや自治体側の明らかな過失による誤りであれば、市区町村が法務局の許可を得て自主的に訂正(職権訂正)してくれることがあります。
たとえば、手書き戸籍の字体間違いや一部の入力ミスなら、市区町村で比較的簡単に直せます。
しかし、それ以外のケースでは戸籍法の規定により家庭裁判所の許可が必要です。
戸籍訂正許可の審判です。
戸籍法第113条では、戸籍の記載が法律上許されないもの、錯誤または遺漏がある場合には、「利害関係人」が家庭裁判所の許可を得て訂正の申請をできると定められています。
「戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。」
また、114条では次のような規定があります。
「届出によつて効力を生ずべき行為(第六十条、第六十一条、第六十六条、第六十八条、第七十条から第七十二条まで、第七十四条及び第七十六条の規定によりする届出に係る行為を除く。)について戸籍の記載をした後に、その行為が無効であることを発見したときは、届出人又は届出事件の本人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。」
つまり、続柄の誤りが法律上のミスであると認められれば、市区町村ではなく家庭裁判所での審判手続で訂正を求めることになります。
訂正内容によっては判決が必要
戸籍の訂正方法については考え方が分かれている部分があります。
訂正すべき事項が戸籍から明白でない場合や、訂正結果が身分法上重大な影響を及ぼす場合には、裁判所の判決や合意に相当する審判など別手続が必要という考えがあります。親子関係不存在の訴えなどです。
この考え方による裁判例も多いですが、そこまで求めずに、戸籍訂正許可審判で良いとする家庭裁判所も増えつつあるようです。
少なくとも当事者が争っている場合には判決が必要とされるようです。たとえば、夫婦や養子関係の訂正の場合には、紛争性が高いことから、裁判所の判決を求める傾向にあるとの文献があります。
裁判所の判断にばらつきがある分野といえるでしょう。
裁判例の中では、虚偽の出生届に基づく戸籍の訂正、出生届をした日の訂正などで戸籍法113条で進められているものがあります。代理母関係での虚偽の出生届などの訂正の場合は、戸籍訂正許可の申立をしてみる方法が選択肢になるでしょう。
家庭裁判所による訂正審判の概要
家庭裁判所の手続(審判)を利用する場合、戸籍訂正は「許可審判」によって行われます。
申立人になれるのは、113条の場合、訂正対象の戸籍について身分上または財産上の利害関係を有する者、114条の場合は戸籍の届出人、あるいは戸籍に記載された本人です。
申立て先は、訂正対象戸籍の本籍地を管轄する家庭裁判所です。
手続きの流れは、申立→家庭裁判所での審理→審判(許可または却下)→審判確定→市区町村への届出という順序になります。
戸籍訂正許可申立ての手続き
申立人は「当該戸籍の記載に利害関係を有する者」や届出人、戸籍記載本人などがなれます。
身分上の利害関係には、たとえば訂正によって相続順位が変わる場合や家庭裁判所調査官が認識すべき親子関係を有する場合などが含まれます。
申立先は、訂正対象戸籍の本籍地を管轄する家庭裁判所です。
所在地が遠方の場合でも、戸籍上の本籍地の家庭裁判所への申立てが原則となります。
申立書の書き方・書式について、裁判所のホームページなどに記載例が公開されています。
申立書には「申立ての趣旨」と「申立ての理由」を書きます。
「趣旨」欄には、具体的に訂正を求める項目と訂正後の内容を書きます(例:本籍○○の戸籍中、○○の父母との続柄欄に「二男」とあるのを「三男」に訂正することを許可する審判を求めます)。
今の記載を削除して違う内容の記載が必要な場合には、◯◯の記載を削除し、◯◯と記載する旨の戸籍の訂正という記載になるでしょう。
「理由」欄には事実関係を時系列で詳述し、誤りの原因や正しい状況を説明します。
たとえば、出生時の事情、家族構成の変遷、他の戸籍とのつじつまなどを挙げ、関連資料(出生届の写し、死亡診断書、母子手帳など)を根拠として示します。
申立書は法定の別表様式を用い、2ページ目(理由欄)には慎重に事実を書きます。
戸籍訂正許可審判の必要書類
申立てには以下の資料を用意します。
・申立書(所定様式)
・訂正する戸籍の全部事項証明(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本など、訂正対象となる戸籍の全履歴)。
・申立人の戸籍謄本など、自身が当該戸籍に載っていない場合は利害関係を示す資料。例えば申立人の戸籍謄本や印鑑証明書などです。
・訂正内容に関する証拠資料:出生証明書、病院の出生記録、親子関係を示す認知届や確認書、住民票の附票など、誤りを証明できる文書。内容に応じて準備します。
収入印紙・郵便切手:申立て手数料として収入印紙を800円分(訂正原因1件につき)貼付し、押印します。連絡用の郵便切手(裁判所指定額の返信用切手)も準備します。
申立て後の流れ
家庭裁判所へ申立てを行うと、裁判所は内容を精査しながら手続きを進めます。
多くの場合、書面照会(照会書)という形で申立内容に関する質問が郵送で送られてきます。
裁判所から送られてくる照会書には予め返信用封筒が同封されており、期日(通常は2週間程度)までに必要事項を記入して返送します。
これにより裁判所は事情を一次的に把握します。
場合によっては、家庭裁判所から申立人や関係者に対し審問(口頭審理)が行われることがあります。
審問には裁判官や家庭裁判所調査官、場合によって参与員(裁判所参与員)が同席し、申立人に直接事情を確認します。参与員は氏名変更や戸籍訂正など家事審判事件に関わる専門家で、裁判官の判断の参考となる意見を述べます。
申立人や関係者は、調査官や参与員の質問には正直に答え、証拠提出の補足説明などを行います。
なお、照会や審問は必ずどちらも行われるわけではなく、裁判所が必要と判断した手続きだけが実施される(照会のみ、審問のみ、両方、あるいは何もない場合もある)ため、裁判所からの連絡を待ちましょう。
審判確定後の手続き
家庭裁判所で審判(判断)が下りると、許可審判書または却下審判書が申立人に送付されます。
許可審判の場合、戸籍の訂正許可が認められたことになり、却下審判では訂正は認められません。
審判が確定(裁判が確定)した後は、申立人には戸籍法上の届出義務があります。
具体的には、「審判確定の日から起算して1か月以内」に、訂正を要する戸籍の本籍地または申立人の住所地の市区町村役場に訂正届を提出します。
届出の際には家庭裁判所が発行する審判書謄本と確定証明書を添付します。
確定証明書は審判をした家庭裁判所で交付申請し、審判書謄本は裁判所から送られてきます。
訂正届により、役場では改めて戸籍事務手続きを行い、審判の内容に従って戸籍上の続柄欄が訂正され、新しい戸籍謄本に反映されます。
却下審判の場合は、既存の戸籍内容に変更は生じず、訴訟で示した証拠等に不足がなかったか再検討する必要があります。
申立てに必要な費用
家庭裁判所への申立てにかかる主な費用は、申立手数料の収入印紙800円分(訂正原因1件につき)と、連絡用の郵便切手代です。
実際の費用総額は、収入印紙のほか裁判所で発生する印刷・郵送等の手数料を含めて約2,500~3,000円程度とされています。
手続きを弁護士に依頼した場合は別途報酬がかかります。
戸籍訂正許可の申立例(仮名使用)
山田三郎さんは1970年に父・太郎、母・花子の間に生まれた三男です。しかし出生届では、先に生まれた長男(仮に次郎さん)が出生直後に死亡し届出もされなかったため、続柄欄に誤って「二男」と記録されていました。
三郎さんは子育て中は特に問題を感じていませんでしたが、結婚に際し戸籍謄本を取得してこの誤りを発見しました。三郎さんは家庭裁判所に訂正許可を申立て、「山田家戸籍中の三郎の父母との続柄欄を『二男』から『三男』に訂正することを許可する審判」を求めました。
申立書には、①出生届や母子健康手帳の写し、②本人と両親の戸籍謄本、③長兄次郎さんの出生・死亡記録などを添付し、理由欄で「三郎さんは事実上3人目の子であり、兄が死亡したため誤記が生じた経緯」を詳細に説明しました。
家庭裁判所は照会や面談で事情を聴取し、提出した医師の出生証明書や住民票などに基づいて誤りを認定し、審判で訂正を許可しました。
その後、三郎さんは審判書謄本を持って市役所に届出を行い、戸籍続柄の訂正を完了しました(全体で約半年の手続き期間)。
弁護士等への依頼判断
戸籍訂正の申立て手続きは本人でも可能ですが、手続に不安がある場合は専門家に依頼する選択肢があります。
弁護士であれば、申立書類の作成に加えて、申立ての代理人として裁判所審理に同行できます。
一般的に戸籍法113条・114条に基づく訂正手続きは本人申立ても可能です。誤記の訂正程度なら専門家への依頼をしなくても対応できる場合が多いでしょう。
一方で、戸籍の創設的届出(婚姻や養子縁組)の無効確認が絡む場合や相手方との対立がある場合は、単なる戸籍の訂正とは異なり、複雑な手続や訴訟対応が必要になる可能性もため専門家に依頼や相談しながら進めた方が安心でしょう。
いずれにせよ、手続きの慣れや裁判所とのやりとりに自信がなければ、相談だけでも専門家に依頼することを検討しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q1: 申立てはどこの家庭裁判所にすればいいですか?
訂正対象の戸籍の本籍地を管轄する家庭裁判所へ申立てます。遠方でも本籍地を管轄する裁判所で手続きします。
Q2: 申立人は誰でもいいですか?
申立人は当該戸籍の記載に利害関係を有する者(戸籍記載本人や相続人・兄弟姉妹等)、届出人、戸籍の記載本人などがなれます。利害関係が証明できれば、被相続人の相続人なども申立て可能です。
Q3: 必要な書類や証拠は何ですか?
申立書のほか、訂正する戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本・除籍謄本)、申立人の戸籍(利害関係証明)、出生届写し、診断書、住民票など訂正内容を裏付ける資料を提出します。裁判所指定の収入印紙800円と返送用郵便切手も忘れず用意してください。
Q4: 申立てにかかる費用は?
申立て手数料として収入印紙800円を貼付します。その他、裁判所で発生する手数料(証明書発行費用等)を含めて、合計でおよそ2,500~3,000円程度かかります。(必要に応じて弁護士報酬等が別途発生します。)
Q5: 申立てから結果までどのくらい時間がかかりますか?
申立てから審判確定までは申立内容や裁判所の混雑状況にもよりますが、一般に半年以上かかることが多いとされています。照会書への回答準備や審問の調整など時間を要するため、気長に進める必要があります。
Q6: 弁護士に頼むべきでしょうか?
軽微な誤記訂正で証拠も明白な場合は本人申立ても可能ですが、裁判所での手続きに不安がある場合は専門家依頼を検討してもよいでしょう。
Q7: 審判が確定した後は何をすればいいですか?
審判確定後は1か月以内に、戸籍のある市区町村役場へ訂正届を出します。届出には家庭裁判所からの許可審判書謄本と確定証明書を添付します。
役場で訂正手続が完了すると、新しい戸籍謄本が交付され、続柄欄が訂正されます。
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