FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.会社の準自己破産とは?
会社が支払不能や債務超過に陥っているにもかかわらず、代表取締役の死亡・失踪や取締役会の対立などにより「会社名義での自己破産申立て」ができない――そのような行き詰まりの局面で活用されるのが、実務上「準自己破産」と呼ばれる手続です。
本記事では、準自己破産の法的根拠や通常の自己破産・債権者破産との違い、特別代理人の問題、費用や実務上の注意点を解説します。
この記事は、
- 代表取締役が死亡して会社を破産させたいご家族
- 代表者が行方不明になった会社の取締役
に役立つ内容です。
準自己破産とは?
準自己破産は、会社としての「自己破産(会社自身による破産申立て)」ができない事情があるときに、取締役などが会社の破産手続開始を申し立てられる実務上の呼び方です。
根拠は、破産法が法人について取締役等に申立権を認めている点にあります。
会社が資金繰り破綻(支払不能)や債務超過に陥っても、代表取締役が行方不明・死亡している、取締役会決議が取れない、社内対立がある――などの理由で、会社名義としては申立てが進められないケースがあります。

そこで、法律上申立権を持つ取締役等が申立てをする「準自己破産」が、実務上の“出口”になります。
裁判所統計(令和6年=2024年)では、地方裁判所の破産新受は総数85,115件(自然人76,454件/法人・その他8,661件)で、前年(令和5年=2023年)の78,215件から増加しています。
また、同統計上「自己破産」区分は圧倒的多数ですが、少数ながら「自己破産以外」の申立ても存在します(2024年は総数85,115件のうち308件が「自己破産」以外に相当)。
準自己破産の疎明
準自己破産は、条文上の正式名称ではなく、実務の世界で使われる呼称です。内容は「法人について、取締役等が破産手続開始を申し立てること」を指します。
破産法は、法人(例:株式会社など)について、取締役等に申立権を認めています(条文上は「法人について取締役等が申立てできる」構造)。さらに、清算人にも申立権があり、解散後でも残余財産の引渡し・分配が終わるまで申立て可能とされています。
重要なのは、「取締役等が単独(または一部)で申し立てる場合、破産原因(支払不能等)を疎明しなければならない」という点です。例外として「取締役等の全員が申立てるとき」は疎明が不要とされています。

自己破産・債権者破産との違い
混乱しやすいので、整理します(ここでの「自己破産」は、一般に使われる“申立人が本人(側)”という意味で記載します)。
(会社の)自己破産:会社が申立人となり、会社として破産を申し立てる形。取締役会設置会社では取締役会決議が問題になり得ます。申立て時に取締役会の議事録や同意書を添付します。
準自己破産:会社の意思決定ができない・代表者不在などで会社名義の申立てが難しい場合に、取締役等が申立人となる形。
債権者破産:債権者が申立人となって破産を申し立てる形。債権者は「債権の存在」と「破産原因」を疎明する必要があります。
統計上の“少数派”に入りやすいのが、(実務上)準自己破産や典型的な債権者申立てです。

準自己破産が必要になる典型ケース
準自己破産が検討されるのは、概ね「会社が破産に向かうべき状態なのに、会社名義での申立てが詰まる」場面です。
代表例は次のとおりです。
代表取締役が死亡・失踪・行方不明で、会社の代表行為ができない
取締役会決議が取れない(対立・不在・招集不能など)
清算段階・解散後などで、清算人選任が間に合わない/清算人が申立てる

この文脈でよく問題になるのが「代表者不在のまま申立てできるのか」です。
結論としては、取締役等に申立権はありますが(準自己破産)、代表者不在という状態自体は変わらないため、事件手続を進める主体(手続追行者)が必要になり、特別代理人の選任申立てが必要になる場合があります。
ここからは「準自己破産で会社破産を進める」ことを前提に、実務で問題になりやすいポイントを、できるだけ具体的にまとめます。
準自己破産の流れ
会社破産の実務では、事業停止日(いわゆる「Xデー」)を定め、事業停止・従業員対応・受任通知発送などを行いながら申立準備を進める、という流れです。
破産手続そのものは、裁判所が開始決定を出し、破産管財人を選任し、破産管財人が財産を換価して配当する、という基本構造です。
(自然人の場合は、別途「免責」により借金の支払義務を免れる制度がありますが、法人はこの「免責」による再出発という構造ではなく、清算・消滅へ進むのが通常です。)

準自己破産の書類準備
破産手続開始の申立ては、所定事項を記載した書面で行う必要があり、また債権者以外の者(=債務者側の申立て等)が申立てをする場合、原則として債権者一覧表の提出が求められます(提出できない場合でも、遅滞なく提出)。
準自己破産では「会社にアクセスできる取締役等」が申立人となるため、帳簿・通帳・契約書類・売掛/買掛管理・税務資料・人事資料などを一定程度回収できているかが、現実的な成否を左右します。
帳簿等が入手できず資産負債状況が把握できないと、手続進行自体が困難になったり、予納金が高くなります。
裁判所書式・提出先
裁判所は破産手続で使う書式(申請書類)を案内しています。
提出先の裁判所(管轄)・事件類型によって必要書類や運用が変わるため、まずは裁判所の案内と、依頼する専門家の実務に合わせて準備するのが確実です。
破産の申立ての際の必要書類は、自己破産手続とさほど変わりません。決算書や預金通帳など会社の書類にアクセスできるのであれば、破産自体は認められる可能性が高いです。

もっとも、自己破産手続きと準自己破産では、申立てをする人が変わるので、申立書の記載方法は変わります。
申立書における当事者の表示や申立ての趣旨等の記載で、法人自体は「被申立人」と記載することになります。
弁護士に対する委任状の作成名義人も、申立人となる取締役個人となる点に注意が必要です。
予納金自体を法人の財産から支払うことは許されるとされますが、弁護士費用を法人資産から支出できるかどうかは問題になります。
準自己破産費用の考え方
費用は大きく分けて「裁判所に納める費用」と「専門家費用(弁護士費用など)」です。
裁判所費用側では、運用として「予納金(管財人の引継予納金等)」が問題になりやすいです。
通常の自己破産のような詳細な説明ができない場合には、予納金が高くなりやすいです。
準自己破産で特別代理人の選任が必要になる場合には、引継予納金とは別に特別代理人報酬の原資を要する可能性がある、とされています。神奈川県では5万円程度が案内されるでしょう。

準自己破産と特別代理人
代表者不在で準自己破産の申立てがなされた場合、法人を代表する者がいません。
法人は、自分が破産申立をしていないのに、破産開始決定が出されることに対し不服申立てができます。
この即時抗告権を確保するため、法人の特別代理人を選任して開始決定がなされることになります。不服申立てがあるなら特別代理人が判断しなさいという趣旨ですね。
文献によれば、準自己破産申立ての場合に、この理論のとおり、特別代理人が選任されるかどうかはケース・バイ・ケースとされています。
代表者が所在不明であっても、他の取締役等が同意書を提出し、法人として破産を申し立てることに異存がないと判断されれば、法人に不服申立の機会を与えなくても良いだろうという考えです。

準自己破産の特別代理人事例
神奈川県の県西部・横浜地方裁判所小田原支部での運用を紹介します。
以前には準自己破産で特別代理人は選任されない事案もありました。
2025年では代表者死亡により、取締役が不在になり、親族が債権者として破産申立てをした事例がありますが、ここでは原則通り特別代理人が選任されました。
私が破産管財人に選任された事案では、代表者死亡により親族のみ取締役となっていた事案で、その取締役による準自己破産の申し立てがされました。経営には関与していなかったため、あまり事情がわからないという内容でした。このケースでは、法人の特別代理人が選任されたうえで破産手続開始決定が出されています。
ケースバイケースとはいっても、原則どおりに特別代理人が選任されることが多いように感じます。
準自己破産は「申立ての入口」を開く制度である一方、準備不足のまま進めると関係者に不利益が生じたり、後から問題が顕在化しやすい手続でもあります。
準自己破産のメリット
最大のメリットは、会社としての意思決定が詰んでいても、破産手続という法的清算の枠組みに乗せられることです。取締役会決議が得られない場合でも取締役に申立権が認められ破産手続きができます。
また、破産手続は裁判所監督のもとで財産を換価し、優先順位に沿って配当するため、債権者間の公平を図る枠組みとして説明されています。
準自己破産のデメリット
第一に、疎明負担です。取締役等の全員申立てでない限り、破産原因(支払不能等)を疎明しなければならないため、資料・説明の準備が必要になります。
第二に、代表者不在型では、特別代理人の選任が必要になる場合があるなど、手続が増えて時間・費用が上乗せされ得ます。

失敗しないための実務ポイント
準自己破産で最も重要なのは「申立て前後の行動で、財産の散逸や偏った弁済を生まない」ことです。倒産局面では財産散逸防止(コントロール)を含む実務対応が問題になり、倒産申立てが予定されている場面での行為が後から検証対象になり得ることが論じられています。
また、少し現実的な話として、準自己破産が必要な局面では「通帳・印鑑・会計データ・契約書」などの管理権限が社内でねじれていることが多いです。
申立てを担う取締役が、最低限の帳簿等を確保できないと手続進行は難しくなります。

まとめ
準自己破産は、会社が破産状態にありながら、代表者不在・取締役会決議不能などで「会社名義の自己破産」が進まないときに、取締役等が申立てを行える重要な制度(実務用語)です。破産法上、取締役等に申立権があり、全員申立てでない場合には破産原因の疎明が求められます。
一方で、準自己破産が必要な局面は、資料不足・社内対立・代表者不在など“難事件化”しやすく、特別代理人の選任など追加対応が必要になる場合もあります。

FAQ
取締役が1人だけで会社破産を申し立てられますか?
破産法は取締役等に申立権を認めています。ただし、取締役等の全員で申し立てない場合、破産原因となる事実の疎明が必要です。
代表取締役が死亡・行方不明のときはどうするのが現実的ですか?
状況により、①新代表者の選任→会社名義で申立て、②準自己破産(取締役が申立て)+必要に応じて特別代理人、などが検討されます。実務上、準自己破産では特別代理人の選任が必要になる場合があります。
株主が別にいて、新代表者を法的に選任でき、破産手続のための代表者になってくれる人がいるならば、そちらの方がスムーズには進む可能性が高いです。
ご相談をご希望の場合には、お電話、相談予約フォーム、LINEよりご連絡ください。
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