法定養育費と自己破産・個人再生の関係について弁護士解説

HOME 〉FAQ 〉Q.法定養育費と自己破産・個人再生の関係は?
法律相談イメージ

FAQよくある質問

面談相談の予約は 0120-141-961

FAQ(よくある質問)

 

Q.法定養育費と自己破産・個人再生の注意点とは?

離婚後も親には子どもを養う義務があり、その中心となるのが「養育費」です。

2026年4月施行の民法改正では、養育費の取り決めがなくても一定額を請求できる「法定養育費制度」や、未払い時の回収を強化する仕組みが導入されました。

これにより、自己破産や個人再生への影響も出てくるため、養育費の基本的な考え方から法定養育費制度、不払い時の問題などもあわせて解説します。

この記事は、

  • 2026年4月以降に離婚後、破産や再生をする人
  • 自己破産・個人再生と養育費の関係を知りたい人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2026.3.6

 

養育費とは何か

養育費とは、子どもの健やかな成長に必要な生活費や教育費などを指します。両親はたとえ離婚しても親であることに変わりはなく、経済力に応じて子どもの養育費を分担する法的義務があります。

具体的には、別れて暮らす親(非監護親)は、子どもを引き取って養育している親(監護親)に対して養育費を支払う責任を負います。これは民法上の扶養義務に基づくもので、話し合いで決めたか裁判所で決めたかに関わらず、子どもが自立できるまで継続する重要な義務です。

養育費とは何か

「法定養育費」制度の概要

2024年5月に成立した民法改正によって、新たに「法定養育費」制度が創設されました。

これは、離婚の際に父母間で養育費の取り決めがない場合でも、監護親が法律に基づいて一定額の養育費を請求できる制度です。

離婚協議や調停がまとまらず養育費の合意がないまま離婚したケースや、DVなどで相手と話し合いができない場合でも、子どもの最低限の生活を守るために国が一定額の支払いを義務づける仕組みとなっています。

その法定養育費の金額は子ども一人あたり月額2万円と定められました。

この月2万円という金額は、子どもの衣食住など最低限度の生活維持に必要な費用を基準に算定されたものであり、公的に「養育費は月2万円が標準」という意味ではありません。あくまで正式な養育費が決まるまでの暫定的な補助として国が定めた最低ラインだと理解してください。

法定養育費

対象と期間

法定養育費を請求できるのは、改正法施行(2026年4月1日)後に離婚した夫婦で、未成熟子(経済的・社会的に自立していない子ども)を養育しているケースです。

監護親でない親(子どもと別居して養育していない側)はこの制度を利用して請求することはできません(支払義務者の立場になります)。

法定養育費は離婚した日から発生し、支払義務者(非監護親)は毎月末までにその月分を支払う必要があります。支払いが続く期間(終期)は以下のいずれか早い時点までです。

父母間で正式な養育費の取り決め(合意)が成立した日

家庭裁判所で養育費の審判が確定した日

子どもが18歳の誕生日を迎えた日(成年年齢に達した時)

つまり、子どもの成人(18歳)か正式合意のいずれかまで、法定養育費の請求権が存続することになります。

なお、この制度は離婚直後から養育費の取り決めができるまでの「空白期間」を埋めるための補充的措置であり、最終的には各家庭の実情に即した適正な額の養育費を改めて取り決めることが重要だとされています。

養育費はいつまで?

 

養育費の計算方法(裁判所の算定表など)

子どもの養育費の具体的な金額は、本来は子どもの生活に必要な費用と両親それぞれの収入・負担能力に応じて決められるべきものです。

家庭裁判所では養育費や婚姻費用の標準的な算定方法として「養育費算定表」を用意しており、調停や審判の場で金額を決める際にはこの算定表が参考にされるのが一般的です。

算定表では、双方の親の収入額(給与所得か自営業所得か等で補正あり)と、子どもの人数・年齢に応じて、標準的な養育費の月額の目安が示されています。

たとえば子どもが1人で幼児の場合と、子どもが2人で高校生と中学生の場合では必要費用も異なるため、別々の表で金額の目安が示される仕組みです。裁判所の手続ではまず算定表に当てはめた金額を参照しつつ、医療費・特別な教育費・親の収入変動など個別事情も考慮して最終的な養育費額を検討する形となります。

養育費の計算

養育費算定表の入手と活用

養育費算定表は裁判所のウェブサイトで公開されており、誰でも閲覧・利用できます。表は子の人数(1~6人)と年齢区分(0~14歳と15歳以上)ごとに分かれており、縦軸に支払う親の年収、横軸に受け取る親の年収をとって交差する欄に養育費の推定月額が示されています。

自分たちの収入状況に近いところを見れば、概ねどの程度の養育費が相場となるかが把握できるでしょう。

もっとも、算定表で示されるのは標準的な目安額であり、子どもの特別な事情や両親の資産状況などによっては適切な額が上下する場合もあります。話し合いや調停で金額を決める際は、この算定表を参考にしつつ、自分の家庭の事情に合った金額になるよう主張・調整していくことが大切です。

養育費を請求する方法と手続き

養育費の金額や支払い方法は、まずは父母間の話し合い(協議)によって決めるのが望ましいです。両者が合意できれば、口頭の約束だけでなく書面に残すことが重要です。特に公証役場で公正証書(強制執行認諾文言付き)を作成しておけば、後に相手が支払を滞らせた場合でも直ちに差押えなど強制執行の手続きが可能になるため安心です。

公正証書は公証人によって作成される公式な合意文書で、判決と同様の効力を持つため、養育費の支払契約を公正証書にしておくことで支払い確保の強力な手段となります。話し合いで合意に至った場合は、必ずこうした形で合意内容を残しておきましょう。

当事者間の協議がまとまらない場合や、そもそも話し合いができない場合には、家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てることができます。

調停では、調停委員会(家事調停委員2名以上と裁判官1名で構成)が双方から事情を聞き取り、合意点を見いだせるよう仲介します。

養育費の調停では、子どもの年齢や生活費、双方の収入資料(源泉徴収票や確定申告書など)を提出して話し合うのが一般的です。

離婚調停の場合、調停手続き内では、親権者や面会交流、財産分与など離婚に付随する他の事項も一緒に話し合うことが可能です。

調停が成立して合意に至れば、調停委員会が内容を調書にまとめ、当事者はその調停調書の正本を受け取ることができます。調停調書は公正証書と同様に強制執行が可能な文書(債務名義)となり、合意した養育費について法的な支払義務が確定します。

万一その後支払いが滞った場合は、家庭裁判所に履行勧告を申し出たり、地方裁判所で強制執行手続きをとることも可能です。

調停でも話し合いがまとまらない場合、調停不成立となります。その際、養育費についてさらに争いがある場合には、家庭裁判所が職権で審判(裁判官の判断)を行う場合があります。

また離婚自体が合意できず訴訟(人事訴訟)となった場合でも、その訴訟の中で養育費の支払いを求めることが可能です。審判や離婚訴訟で裁判所が養育費の額を定めた場合、その審判書や判決正本は債務名義となり、やはり強制執行が可能です。調停と異なり審判では裁判官の判断で金額等が決まるため不服が残ることもありますが、当事者は後日事情変更があれば変更調停を申し立てる道も残されています。

養育費の請求手続き

養育費の支払い義務と不払い時の強制執行

養育費の支払い義務は法律上強く保護されています。離婚後であっても親としての扶養義務を果たす必要があり、正当な理由なく支払いを怠れば法的措置の対象となりえます。養育費を支払わない状態が続けば、受け取る側の親(債権者)から訴訟を起こされたり、給料や預貯金などの財産を差し押さえられたりする可能性があります。

実際、養育費の不払いは子どもの生活に直接影響を与える重大な問題であるため、法は支払いを確保する様々な仕組みを用意しています。

養育費の強制執行

履行勧告と履行命令

相手が養育費を支払わない場合、まずは家庭裁判所に「履行勧告」を申出できます。これは家庭裁判所が支払い義務者に対して支払うよう促す制度で、裁判所からの通知・督促状が相手に送付されます。履行勧告には法的強制力はありませんが、公的機関から催促されることで心理的プレッシャーを与え、支払いを促す効果が期待できます。

それでも支払われない場合、家庭裁判所に申し立てて履行命令(支払命令)を出してもらうことも可能です。

履行命令は家庭裁判所が支払を命じ、従わないときは過料(罰金)を科すことができる手続で、不履行者に一定の強制力を及ぼします(家庭裁判所の審判手続の一種)。

履行勧告・履行命令はいずれも比較的迅速かつ低費用で利用できますので、まずはこうした措置で支払を促すことが考えられます。

強制執行(差押え)による回収

相手がどうしても支払わない場合の最終手段が強制執行です。強制執行を行うには、債務名義となる書面(調停調書・審判書・判決書、または公正証書など)が必要です。債務名義を得ていれば、地方裁判所に強制執行の申立てを行い、相手方の給与や銀行預金、不動産などの財産を差し押さえて未払い養育費の支払いに充てることができます。

一般的には勤務先が分かっている場合は給与の差押えを行うケースが多く、法律上、給与の手取り額の最大2分の1まで強制的に天引きして養育費に充当することが可能です(民事執行法152条)。

また銀行口座を差し押さえれば、そこにある残高から未払い分を回収できます。

強制執行の手続きには手数料や多少の時間がかかりますが、一度執行決定が出れば相手の意思に関係なく強制的に回収が行われます。養育費支払いの確保において非常に強力な手段と言えるでしょう。

養育費差し押さえ

法改正による新たな優先権

2026年施行の民法改正では、養育費債権の保護強化のため「先取特権」と呼ばれる優先的な権利も導入されました。先取特権が付与されると、養育費の支払いが滞った場合に、従来必要であった公正証書や調停調書などの債務名義がなくても財産の差押え手続を行うことが可能になります。さらに、差押えた財産から弁済を受ける際に他の一般の債権(例えば金融機関の借金など)よりも養育費債権が優先して支払を受けられるようになります。

この優先権が及ぶのは一定の金額までで、具体的には子ども一人あたり月額最大8万円までの養育費について他の債権に優先して回収できると定められました。このように法律面でも養育費の不払いに対処しやすくする措置が整えられてきています。

こちらの法改正では、施行日前に養育費の合意があっても、施行後に発生した養育費に先取特権が認められています。

 

養育費と自己破産・個人再生

養育費は非免責債権(破産しても支払義務は消えない)です。

養育費の支払義務者(通常は非監護親)が多額の借金を抱え、やむを得ず自己破産や個人再生といった債務整理を検討する場合でも、養育費の債務だけは原則として整理できないことに注意が必要です。

日本の破産法では、税金や悪意の不法行為による損害賠償請求権などと並んで、扶養義務に基づく養育費債権は「非免責債権」(免責されない債務)とされています。そのため、自己破産手続を経て他の借金が帳消しになっても、養育費の支払い義務だけは免除されずに残り続けます。

言い換えれば、自己破産をしても養育費だけは支払いを免れることはできないということです。これは養育費が子どもの生活のために不可欠であり、特に強く保護すべき性質の債権と考えられているためです。

したがって、自己破産後も従前どおり養育費は支払い続けなければなりませんし、仮に破産中に支払を滞らせれば後に相手方から差押え等の強制執行を受ける可能性があります。

養育費と自己破産

過去の未払い分と将来分の扱いの違い

債務整理手続においては、既に発生している未払い養育費と、将来発生する養育費で扱いが異なります。

まず、破産手続開始以前に支払い期が到来している未払養育費(滞納分)は、手続上「債権」として扱われます。

自己破産の申立ての際には、他の借入金などと同様に未払い養育費も債権者一覧表に記載する必要があり、破産管財人や裁判所にもその存在を明らかにします。債権者一覧表に記載された相手方(養育費の受取人)には裁判所から破産手続開始の通知が送られます。もっとも、養育費債権は非免責債権ですので、破産手続でその債務が消えることはなく、手続終了後も支払義務が存続します。

ただ、破産管財手続において債務者に換価処分できる財産(めぼしい資産や高額所得)がある場合には、他の債権とともに養育費債権にも一定の配当が行われる可能性があります。

改正民法により養育費債権には先取特権(優先権)が付与されていますので、破産管財手続で配当原資がある場合には未払い養育費について優先的に配当を受けられることになります。

一方で、将来の養育費(これから毎月発生する分)は破産手続における「債務」には該当しません。将来分はまだ支払い期が到来していない扶養義務であり、破産手続とは切り離されて、破産後も毎月支払っていくべきものです。したがって、自己破産しても子どもが未成年でいる限り、今後の養育費は支払いつづけなければならない点に変わりはありません。

養育費の滞納

個人再生手続と養育費

自己破産と同様に、個人再生(民事再生手続)の場合でも養育費債権は特別な扱いがなされます。

個人再生では、債務の一部をカットして残額を原則3~5年で分割返済する計画を立てますが、養育費のように扶養義務に基づく債権は「非減免債権」として減額の対象から除外されます。例えば再生手続開始前に滞納していた養育費がある場合、その滞納分は個人再生手続によっても減額されず、全額支払義務が残ります。

ただし非減免債権も手続上は他の債権と同じく再生計画に組み入れる必要があるため、債権者として申告しなければなりませんし、手続中に勝手に支払うことはできません。

結局、滞納養育費については再生計画期間中に一部を返済し、計画終了後に残額を一括払いするといった形で清算する必要があります。

このため、再生手続を利用する場合は計画遂行中も将来の一括払いに備えて貯金をするなどの対策が求められます。再生手続開始決定後に発生する毎月の養育費は手続とは別枠で支払いを続ける必要があります(手続中の新たな扶養債務は「共益債権」として扱われ、計画と関係なく支払義務が継続します)。

教育費と個人再生

債務整理手続上の注意点

養育費債権者である相手方(元配偶者)に対しては、自己破産を申し立てる段階で通知がいくことになります。

養育費を滞納しているまま自己破産をすると、相手に「養育費も踏み倒すつもりか」と不信感を与え紛争が深刻化する恐れもあります。誠実に対応するためにも、事前に相手方に事情を説明し、可能であれば減額や支払猶予について話し合ってみることも検討すべきでしょう。

また、自己破産直前に滞納している養育費だけまとめて優先的に支払うことは注意が必要です。特定の債権者に偏った弁済(偏頗弁済)を行うと、破産手続上その支払いは破産管財人によって取り消されたり、免責不許可事由と判断されてしまう可能性があります。養育費の支払いは子どものためとはいえ、一部の債権者だけに有利な弁済になる点は変わりません。

適切な金額の養育費支払いであれば偏頗弁済とみなされないケースも多く、「子どもの生活のための支払い」としてある程度は容認される傾向があります。

法定養育費と債権者一覧表

2026年4月1日以降の離婚、婚姻取消、認知の場合、法定養育費請求権が発生することになります。

また、養育費と監護費用を含む婚姻費用について、4/1以降の分は先取特権の対象にもなります。

養育費等について合意・調停成立の場合、法定養育費を含む場合と含まない場合が出てきます。

そのため、非監護親の自己破産や個人再生申立の際には、法定養育費が債権者一覧から漏れないよう注意する必要があると裁判所から意見が出されています。

2026年4月1日以降に離婚し、子供がいて養育費を支払っていない場合や、養育費の取決め自体をしていない場合であっても、養育費を債権者一覧表に記載しなければならないことになります。

 

そうすると、債権者(監護親)の住所等については可能な限り調査をする必要が出てきます。子供がいる、離婚している、連絡を取っていない、養育費は全く払っていないという場合には、法定養育費が未払として、離婚した配偶者を債権者一覧表に載せる、裁判所からの連絡も行くことになります。

また、破産管財人の立場でも、法定養育費があるなら優先支払いが必要となるため、この点の調査や債権認否が必要になってくると協議されています。

逆に監護親の立場からすると、法定養育費の未払があれば、債権として財産扱いとなります。

まだ議論は進んでいませんが、法定養育費の未払額がたまり、相当額になった場合、他の債権と同じように管財手続きに回されることになるのか(子のための制度によって監護親の管財予納金負担を発生させて良いのか)という点は今後議論されることになるでしょう。

 

 


ご相談をご希望の場合には、お電話、相談予約フォーム、LINEよりご連絡ください。

債務整理についての法律相談(面談)は以下のボタンよりお申し込みできます。

面談相談の予約は 0120-141-961

弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

ジン法律事務所弁護士法人のロゴオフィス

ジン法律事務所 弁護士法人

代表者:弁護士 石井琢磨

〒243-0018
神奈川県厚木市中町4-14-3
雅光園ビル702号室

TEL:046-297-4055

 

<主要業務エリア>

神奈川県の地図

クリック 相談予約

ジン法律事務所弁護士法人Webサイト

厚木本店

3/17相談会開催

 

横浜駅前事務所

3/18相談会開催

Zoom相談予約


動画配信中↓↓



ページトップへ