FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.家庭裁判所のウェブ調停とは?
家庭裁判所の家事調停では、ウェブ会議による「ウェブ調停」の利用が広がっています。
遠方の裁判所へ通う負担や相手方と鉢合わせる不安を減らせる一方、本人確認、参加場所、資料提出、離婚成立後の手続きには注意が必要です。
この記事では、実務で使って見えたメリットと注意点、向くケース・向かないケースを解説します。
この記事は、
- 離婚調停をウェブで進めたい方
- 遠方の家庭裁判所への出頭に負担を感じている人
に役立つ内容です。
家庭裁判所のウェブ調停
「離婚の話し合いのために、何度も仕事を休んで遠方の裁判所へ通う」。
家事調停といえば長らくそういうものでした。それが、ウェブ会議による調停(ウェブ調停)の普及で、かなり様子が変わってきています。
裁判手続のIT化が進むなかで、家事事件では調停のウェブ化が先行しました。
移動の負担や「裁判所に行く」という心理的なハードルを理由に調停をためらっていた方には、使い勝手が大きく変わる仕組みです。
試行から全国展開まで
ウェブ調停は段階的に広がり、いまはどの家庭裁判所でも利用できる建前になっています。
・令和3年12月 東京・大阪・名古屋・福岡の4本庁で試行開始
・令和6年2月 全国の家庭裁判所本庁で運用開始
・令和6年7月 支部・出張所を含む全庁へ展開完了
地域によって使える/使えないという差は、ひとまず解消されました。

当事者から見たメリット
まず、出頭の負担がなくなります。遠方にお住まいの方はもちろん、育児や介護、仕事の都合で自宅を長時間空けられない方にとっては、移動時間がゼロになる意味は大きい。拘束時間が短ければ次回期日の調整もしやすく、結果的に解決が早まることもあります。
心理的な負担も違います。裁判所の空気は独特で、待合室で待っているだけで疲れるという声はよく聞きます。自宅や弁護士事務所の会議室からなら、周囲の目を気にせず落ち着いて話せます。
相手方と庁舎内で鉢合わせるリスクを避けられる点は、後で詳しく書きます。ほかに、狭い調停室で長時間同席せずに済むので、健康面に不安のある方にも選びやすい方法です。

弁護士から見たメリット
移動時間・拘束時間が減ることの効果は、代理人にとっても大きいものです。
従来は「移動を含めて半日つぶれる」のが普通でしたが、ウェブなら必要な時間だけデスクに向かえば済みます。そのため、調停期日の予定が入りやすくなり、弁護士のスケジュールを理由に無駄に先の期日になることが減ります。
管轄の問題も軽くなりました。家事調停の管轄は原則として相手方の住所地です。
相手が遠方に住んでいると、地元の弁護士に頼んで出張費を負担するか、費用を抑えるために相手の所在地に近い弁護士を探すか、という選択を迫られていました。ウェブなら、地元の弁護士に依頼して、そのまま事務所から参加できます。
待ち時間の使い方も変わります。調停では相手方が調停委員と話している間、30分から1時間ほど待つことも珍しくありません。裁判所の待合室でただ座っているのと、事務所で他の仕事を進めながら待つのとでは、同じ待ち時間でも中身がまるで違います。
DV事案・高葛藤事案での安全性
ウェブ調停は、相手方との物理的な接触を完全に断ちます。エレベーターや廊下で相手と遭遇するかもしれない、という恐怖から解放されるだけでも、意味があります。
「同じ建物のどこかに相手がいる」という事実だけで動悸がする、という方は実際にいます。安心できる場所から参加できることが、冷静な判断につながります。調停成立の場面でも、交互に画面へつなぐことで、最後まで一度も相手の顔を見ずに手続を終えられます。

ウェブ・電話・対面をどう使い分けるか
あまり多くはありませんが、電話調停という方法もありました。
ウェブと電話調停との一番の違いは、表情やしぐさが伝わることです。
調停委員との間に信頼関係を築くうえで、この差は小さくありません。離婚を成立させられるかどうかという点でも扱いが違います。
一方で、当事者間の感情的なもつれが強く、対面で腹を割って話さないと動かない局面もあります。親権や面会交流をめぐる争いでは、あえて対面を選ぶ判断もあると考えています。

法改正:ウェブでの離婚成立も可能に
令和4年の民訴法改正と令和5年の整備法により、実務上の制約が大きく緩みました。
なかでも影響が大きいのが、家事事件手続法268条3項の改正です。従来はできなかったウェブ会議による離婚・離縁調停の成立が認められました。ただし、これは映像を伴うウェブ会議に限られます。音声だけの電話会議では、いまも離婚を成立させることはできません。映像を通じて本人の真意を確認できるからこそ認められた運用です。
注意が必要なのは、当事者が海外に住んでいる場合です。現行の運用では、ウェブ調停だけで離婚を成立させることはできません。この場合は調停に代わる審判(家事事件手続法284条)を検討することになります。
利用の条件も変わりました。
以前は「遠隔地に居住していること」が求められていましたが、この要件は削除されています。いまは居住地を問わず、事案の性質に照らして裁判所が相当と認めれば使えます。

使うツールと運用のルール
家庭裁判所のウェブ調停で使われるのは、主にCisco Webexです。民事訴訟で使われるTeamsとは別のソフトなので、初めての方はインストールから必要になります。
セキュリティと公平性の観点から、チャット、文字起こし、ファイル共有はいずれも制限されています。画面共有は、裁判官の判断で、調停成立の直前に調停条項を画面に映して一文字ずつ確認する、といった場面で使われます。

統計から見える「本人利用」の壁
ウェブ調停の利用件数は増え続けており、令和8年3月には月間8,000件を超えて過去最多を更新しました。
ただ、内訳を見ると、本人(代理人なし)による利用は1割強にとどまります。理由は難しくありません。
厳格な本人確認や、自宅からの接続で非公開性をどう担保するか(部屋に第三者がいないことをどう保証するか)といった裁判所の要求水準を、個人で満たすのは簡単ではないからです。いまのところ、弁護士が間に入って初めてスムーズに進むのが実情だと感じています。
裁判所や担当部によっては、当事者本人が代理人事務所以外の場所から参加することを認めない、あるいは複数箇所からの参加自体を認めない運用もあります。当事務所でも、現時点では依頼者に来所いただき、相談室の1台のPCから一緒に参加する形をとっています。
家庭裁判所調査官のウェブ立会い
令和5年整備法により、家庭裁判所調査官もウェブ会議(TeamsやWebex)で調停期日に参加できるようになりました。
調査官が専門的な立場から意見を述べる場面で、物理的な距離に縛られなくなった意味は大きく、特に子の監護に関する事案で効いてくるはずです。
申込みから当日までの流れ
1 利用を希望する
まず、裁判所に「ウェブでやりたい」と伝えます。申立人側は、申立時に提出する「進行に関する照会回答書」に記載するか、別途上申書を出します。相手方側は、弁護士が関与する段階で希望を伝えれば足ります。
特別な理由を疎明する必要はなくなりました。ただし、裁判所が持っているウェブ調停用PCの台数には限りがあるため、希望すれば必ず通るわけではありません。台数の都合で次回期日が先送りになる、と言われることもあります。過渡期の問題だとは思いますが、当面は織り込んでおいたほうがいいでしょう。
2 期日までの準備
利用が認められると、書記官とのやり取りが始まります。裁判所からFAXか郵送で連絡先メールアドレスの案内が届き、そのアドレスへ参加者のメールアドレスを送ります。期日の1週間ほど前に、Webexの招待リンクがメールで届きます。
この招待メールを見落とすと当日つなげません。迷惑メールフォルダも含めて確認してください。

3 調停期日
リンクをクリックして参加します。よくあるのが、起動時に突然Webexのアップデートが始まって入室が数分遅れるパターンです。開始前に一度接続を試しておくのが鉄則です。
調停は交互に話を聞く形で進むため、自分の番でないときはロビー機能で待機します。これは技術的な必要というより、「相手がいま同じ空間にいる」という圧迫感を避けるうえでも有効な仕組みです。

実務から見えた注意点
まず、参加する場所です。喫茶店からの参加はできません。内容が他人に聞こえれば調停の非公開原則に反しますし、手続を打ち切られるリスクもあります。
次に、態度です。ウェブ調停に関する文献や記事では、自宅からの参加でリラックスしすぎている当事者が実際にいるそうです。洗濯物を畳みながら、在宅ワークの片手間に、といった参加の仕方は調停委員会の心証を確実に悪くします。画面の向こうは裁判所だという緊張感は保ってください。

書類は事前提出が鉄則です。Webexには画面共有機能がありますが、調停委員がデジタル操作に慣れておらず、画面上での資料確認を嫌がるケースがほとんどです。対面なら当日持参で通ることもありましたが、ウェブで「当日見せればいい」は通用しません。郵送かFAXで先に届けておいてください。

見落としやすいのが、調停成立後の郵送タイムラグです。離婚調停が成立したら10日以内に離婚届を出す必要がありますが、ウェブの場合は、裁判所へ謄本申請書を送る、手数料(収入印紙・郵券)の案内が届く、印紙等を送り返す、ようやく謄本が郵送されてくる、という往復が発生する可能性があります。
これだけで数日かかります。速達郵便を活用しても、10日という期限はかなりタイトになるので、成立の見込みが立った段階で準備を始めておくくらいでちょうどいいと思います。

ウェブ調停に向くケース・向かないケース
ウェブに向くのは、次のような場面です。
・養育費や財産分与など、金銭の調整が中心の事案
・遠方の裁判所での手続
・DV・モラハラ事案など、安全確保を優先すべき事案
・遺産分割のように当事者が多数にのぼる事案
逆に、対面を検討したほうがよいのは次のような場面です。
・親権や面会交流など、感情的な対立が深く、直接の説得が要る事案
・IT操作に強い不安がある場合
・当事者が手続に真摯に向き合うか懸念がある場合
・海外居住者が当事者に含まれる場合(離婚成立には審判の検討が必要)

ウェブか対面かは、どちらが優れているかという話ではなく、事案ごとの使い分けの問題です。
迷う場面は今も少なくありません。ご相談の際は、事案の性質を踏まえて一緒に検討します。
ご相談をご希望の場合には、お電話、相談予約フォーム、LINEよりご連絡ください。
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