事例紹介
ケース紹介
売買代金返還請求の解決事例
売買契約の代金自体の請求や、売買契約の解除に伴う精算の相談も多いです。
債権回収の一般的な流れもあわせて解説しておきます。
売買契約の成立要件
売買の対象となる目的物と代金の確定が必要です。
民法555条によれば、売買契約の成立には目的物と代金が明確である必要があります。
目的物は売買契約の対象となる財産権であり、代金はその対価です。
また、支払い条件が要件になることもあります。
東京地裁平成26年10月22日判決では、支払条件の重要性を明確に示しています。
交渉段階で支払条件が議論されている場合、その条件に関する合意も売買契約成立のためには不可欠であるとされる場合もあります。
契約実務においては、支払条件は交渉の重要な要素です。
基本契約書に支払条件を含めることは、代金債務を明確化し、契約の成立要件の一部となることがあります。
事後的に支払条件を変更する必要が生じる場合、契約書に「支払条件は別途定める」と明記することが望ましいです。これにより、契約自体の有効性に疑義が生じることを防ぎます。
売買代金の回収
未払の売買代金がある場合、段階的な回収手順を解説します。
1. 直接請求
最初のステップとして、相手方(購入者)に対し、電話や手紙で支払いを請求します。
この段階では、入金漏れを指摘するための請求書の送付や、必要に応じて直接相手の事務所や事業所を訪問して請求することが考えられます。
書面による請求では、売主自身の名義で行う方法と弁護士名義で行う方法があります。どちらを選択するかは、買主との関係や未払いの経緯、期間などを考慮して決定します。
2. 内容証明郵便による請求
直接請求でも支払いが行われない場合、内容証明郵便を用いて請求書を送る方法があります。
内容証明郵便自体は、相手への到達を証明する手紙に過ぎず、それ以上の効力は持ちません。
ただ、このような内容証明郵便を受け取ることで、相手に放置してはいけないという気持ちを抱かせ、回収可能性が上がる実情もあります。
この方法は、相手の性格によっては、法的な手続きへの移行を示唆することで、相手に支払いの圧力をかける効果があるといえます。
内容証明郵便は、送付した書面の内容と発送日時が郵便事業株式会社(郵便局)によって証明されるものです。この方法は、弁護士でなくても可能ですが、弁護士名義で行うと、支払いを受けやすくなることが多いです。内容証明郵便の実費は枚数にもよりますが、通常は2000円程度です。
3. 支払督促または少額訴訟
内容証明郵便を用いた請求後も支払いがない場合、支払督促手続きや少額訴訟(請求額が60万円以下の場合)を検討します。これらの手続きでは、相手方が異議を申し立てると通常訴訟に移行する可能性がある点に注意が必要です。
どちらも放置すれば、相手の財産を差し押さえることができる裁判所の手続きですので、内容証明郵便よりも遥かに無視されにくい手続きです。
4. 通常訴訟
支払い義務の争いがある場合や未払金額が高額な場合、通常訴訟を進めることが必要になります。
民事裁判を起こすという方法です。
相手が争う場合には、自分の請求を裏付ける証拠が必要になります。
込み入った紛争になる場合には、法廷での尋問が行われることもあります。
5. 強制執行
裁判での勝訴判決後も相手方が支払いを行わない場合、強制執行によって相手の資産を差し押さえ、換価することになります。
ここでは相手の資産を特定して申立をする必要があります。
その他に、裁判前に財産が判明している場合には、担保金を支払って財産を処分できなくする仮差押えや、請求のなかで交渉をすることもあります。
弁護士による売買代金回収のメリット
弁護士に代金回収を依頼するメリットは、法的リスクを避けながら合法的な方法で債権を回収できる点です。
弁護士は取引先との関係や未払金の金額などに応じて最適な回収方法を選択し、法的手続きを進めます。これにより、債権者は日常業務に集中することが可能となり、重要な経営判断や業務執行の滞りを防ぐことができます。
請求段階では、弁護士名義の内容証明郵便等が届くことで、相手が裁判リスクを避け支払ってくることが増えます。
また、請求後に支払いがない場合にも、スムーズに裁判手続きに移行できるという点もあります。
このようなメリットを得るために、弁護士費用を負担するかという判断になります。
売買代金返還請求の訴訟事例
売買代金返還請求の依頼を受け、内容証明郵便を送ったものの回収ができなかったため、民事裁判を起こし、回収できた事例があります。
請求額は、約180万円でした。
依頼会社は、貿易業を営む会社でした。
相手は個人事業主でした。
相手からの求めで、売買契約が成立し、内金を支払ったものの、売買契約は合意解除することに。
内金について返還請求権が発生し、請求したところ、相手からは、分割払いの申入れがありました。これに承諾したものの、約束の期日に支払を行わず、待ってほしいと繰り返すのみで、返還がされませんでした。
そのような経緯で訴訟提起に至りました。
裁判上の和解により回収
内容証明郵便でも返還はされませんでしたが、民事裁判を起こしたことで相手も無視できなくなり、裁判所での和解が成立しました。
裁判を起こした後は比較的スムーズに和解ができています。
3回の分割払いでの和解となり、約束通りの支払いを受けることができ、解決となりました。
裁判上での和解では、過去の経緯から、分割金の支払を1回でも怠ったときは、当然に期限の利益を失い、 被告は、原告に対し、既払金を控除した残額及びこれに対する期限の利益を喪失した翌日から支払済みまで年15パーセントの割合による遅延損害金を直ちに支払うとの条項までつけています。