私立学費の婚姻費用加算で、貸与型奨学金を理由に否定した裁判例

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FAQ(よくある質問)

 

Q.私立学費の婚姻費用加算と奨学金の関係は?

子の学費と婚姻費用加算問題で、貸与型奨学金が考慮された裁判例があります。

貸与型とはいえ奨学金を受けているのだから、算定表以上の学費加算はしないと否定した判断です。

住宅ローン負担が一定額あったことも事実上、考慮されているとは思いますが、進学自体に承諾があったものの、それは奨学金を前提にしたものだったと認定し、増額を否定している事例です。

東京家庭裁判所平成27年8月13日審判です。

 

この記事は、

  • 養育費、婚姻費用の紛争中
  • 私立学費等の教育費加算で争っている

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.6.7

 

事案の概要

申立人が、相手方に対し、別居期間中の婚姻費用の分担を求めている事案。

申立人(昭和44年生まれ)と相手方(昭和41年生まれ)は、平成5年に婚姻した夫婦。

同年に長男、平成7年に長女、平成12年に二男が出生。

申立人住所地にある当事者双方で共有(申立人の持分5分の1、相手方の持分5分の4)する自宅で子らと生活していたが、相手方は、平成25年、本件自宅を出て、別居。

申立人は、会社員として、勤務先の会社から平成26年の給与収入として、約364万円を受け取っています。
相手方は、会社員として働いており、勤務先の会社から平成26年の給与収入として、約464万円を受け取るとともに、別に同年の給与収入として、約21万円を受け取っている状態。

相手方は、現在、賃貸住宅に居住し、毎月8万4000円の家賃を負担。

 

子らの私立学費の金額

長男は、平成24年に私立の4年制大学の法学部に入学し、現在、大学4年生。

上記大学への学費その他の学校納付金は、大学2年次は92万7500円、大学3年次は94万7500円、大学4年次は96万7500円。

長女は、平成26年に2年制の美容関係の専門学校に入学し、現在、2年生。

上記学校への学費その他の学校納付金(任意の受験費用を除く。)については初年度は159万6000円、2年次は144万7000円。

相手方は、長男及び長女の上記各学校への進学について承諾していたが、これは長男及び長女が奨学金の貸与を受けることを前提としたものでした。

実際、長男は、平成24年から平成25年までは、毎月5万円、平成25年からは、毎月12万円の奨学金の貸与を、長女は、毎月12万円の奨学金の貸与をそれぞれ受けています。

ちなみに、二男は、公立の中学校に在籍。

 

婚姻費用の請求と内容証明郵便

申立人は、平成26年1月の内容証明郵便で、相手方に対し、婚姻費用として毎月10万円を支払うことなどを求めました。
申立人は、平成26年2月、本件につき東京家庭裁判所に調停の申立て。裁判所は、平成27年、調停事件の解決のため、調停に代わる審判をしたものの、申立人は、この審判に対し、異議を申し立て。

相手方は、本件自宅の住宅ローンを負担。

申立人は、平成25年から平成26年まで、毎月約8万8000円、相手方に代わって、本件ローンを支払いました。その後、相手方が、平成26年に、毎月約8万9000円、本件ローンを支払ったものの、返済条件を変更して支払うことに。

平成27年以降は毎月約5万円程度の負担。

 

婚姻費用はいつから

婚姻費用の具体的な分担額については、算定方式に基づく算定表を参考にして算定するのが相当。

そして、その分担の始期については、婚姻費用分担義務の生活保持義務としての性質と当事者間の公平の観点からすると、本件においては、申立人が相手方に内容証明郵便をもって婚姻費用の分担を求める意思を確定的に表明するに至った平成26年1月とするのが相当。


また、長男については、同月時点で既に成人に達しており、また、長女についても、平成27年に成人に達するものの、長男及び長女ともに就学中であることに鑑み、算定表による算定に当たっては、未成熟子として取り扱うのが相当。

 


算定表による婚姻費用算定

申立人の総収入は約364万円、相手方の総収入は約485万円。

これらの総収入を、算定表に当てはめると、本件は、平成26年から平成27年までは、月額8~10万円の範囲内に、同年以降については、月額10万円の境界線付近に位置付けられると認定。

 

住宅ローンの支払

相手方が、本件ローンの支払を行っている場合、申立人は自らの住居関係費の負担を免れる一方、相手方は自らの住居関係費とともに申立人世帯の住居関係費を二重に支払っていることになるから、婚姻費用の算定に当たって住宅ローンを考慮する必要があると指摘。

もっとも、住宅ローンの支払は、資産形成の側面を有しているから、相手方の住宅ローンの支払額全額を婚姻費用の分担額から控除するのは、生活保持義務よりも資産形成を優先させる結果となるから相当でないと認定。

そこで、当事者双方の収入や住宅ローンの支払額、相手方の現在居住している住居の家賃の額や家計調査年報の当事者双方の総収入に対応する住居関係費の額などの一切の事情を考慮し、本件では、次のとおりの金額を婚姻費用の分担額から控除するのが相当としました。

最初は、3万円、その後は、1万円を控除という内容。

 


私立学費について加算を否定

長男及び長女の教育にかかる学費等を算定表の幅を超えて考慮するかどうか検討するに、相手方は、長男が私立の大学に通うこと及び長女が専門学校に通うことについて承諾していたものの、これらの承諾は長男及び長女が奨学金の貸与を受けることを前提としたものであったことを確認。

長男及び長女は毎月12万円の奨学金の貸与をそれぞれ受けており、長男及び長女の教育費にかかる学費等のうち、長男の通う大学への学校納付金については全て、また、長女の通う専門学校への学校納付金についても9割以上、各自の受け取る奨学金で賄うことができると指摘。

これに、算定表で既に長男及び長女の学校教育費としてそれぞれ33万3844円が考慮されていること、相手方が、現在居住している住居の家賃の支払だけでなく、本件ローンの債務も負担していること、長男及び長女がアルバイトをすることができない状況にあると認めるに足りる的確な資料がないこと、当事者双方の収入や扶養すべき未成熟子の人数その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、長男及び長女の教育にかかる学費等を算定表の幅を超えて考慮するのが相当とまではいうことはできないとしました。


申立人は、長男及び長女が奨学金の貸与を受けていることは、相手方の婚姻費用の分担義務を軽減させるべき事情とはならないと主張。

しかしながら、貸与とはいえ、これらの奨学金により長男及び長女の教育にかかる学費等が賄われていることは事実であり、しかも、これらの奨学金で賄われる部分については、基本的には、長男及び長女が、将来、奨学金の返済という形で負担するものであって、当事者双方が婚姻費用として分担するものではないのであるから、奨学金の貸与の事実が、相手方の婚姻費用の分担義務を軽減させるべき事情にならないということはできないとしました。

 

 

 

婚姻費用の支払の始期を請求時から

婚姻費用の支払がいつからになるかという始期について、内容証明郵便をもって婚姻費用分担を求める意思を表明した時期としています。

請求時からとする最近の裁判例の主流と同じ判断といえます。早めに調停申し立てをするか、証拠に残る形で請求しておくようにしましょう。

 

私立学費の婚姻費用への加算

算定表で考慮されているのは、公立の学費であり、私立学費の支出については通常不足します。

この不足分を婚姻費用として加算すべきではないかと争われることが非常に多いです。

私立学費加算については、双方の収入や学歴などの諸要素が考慮されますが、そのなかでも、義務者側の承諾があったかというポイントが重要です。

今回の判断は、承諾したものの、それが奨学金貸与を前提にしたと認定しています。

そして、実際の奨学金の貸与による不足分等を認定し、各自の受け取る奨学金で賄うことができることや、住宅ローンの債務も負担していることから、算定表以上の加算を否定するという結論をとっています。

 

この判断を前提にすると、私立大学や専門学校に進学する際には、親の承諾をとるだけではなく、学費支出の承諾もとっておかないと、婚姻費用や養育費での加算は難しいという結論になってしまいます。

また、アルバイトができない事情という言葉も使われていることから、大学のカリキュラムなども立証範囲に含めた対応が必要かもしれません。

これ以外の判断をする裁判例もありますが、高額な学費負担が発生する場合には、学費捻出について事前に親と協議をしておいたほうが無難ということになります。大学生ならアルバイトできるだろうという前提も、子にとっては厳しい判断ですね。

 

 

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