任意後見契約でも成年後見人が選任された裁判例を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.任意後見契約でも成年後見人が選任されるケースは?

家族の財産を守りたいということで、任意後見制度が活用されることがあります。

任意後見人は契約をした相手を後見人にできる制度ですが、これに反し、第三者の成年後見人が選ばれるというケースもあります。

親族間での紛争などがあると、そのような例外的な取り扱いがされることもありますので、任意後見制度を過信せずに、全体的なプランを考える必要があります。

参考になる裁判例を紹介しておきます。

この記事は、

  • 任意後見制度を検討中
  • 親族間で財産争いが起きかけている

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.4.15

 

事案の概要

おそらく一部の親族が任意後見制度を使おうと考え、知人の弁護士に相談。

弁護士が任意後見人になる予定だったものの、他の親族が異議を出し、裁判所の判断で成年後見制度が採用されたという事案です。

任意後見契約をしたからといって安心ではない、しかも、弁護士に依頼しても異なる結論が出されるという点に注意が必要です。

 

今回の事件は、水戸家庭裁判所令和2年3月9日審判です。

養子から後見開始の審判の申立てがされました。

その後、本人と任意後見契約を締結していた弁護士から任意後見監督人選任の申立てがされました。

どっちで進める?という事件です。

 

裁判所は成年後見を優先

任意後見で進める場合、後見人になるのは弁護士です。親族ではないです。監督人もつきます。

任意後見人によって権限が濫用される具体的なおそれまでは認められないとされています。

ただ、それでも、公平らしさという点で問題が残る、同意権や取消権のない任意後見人では本人の保護の万全を期することができるかについて問題がある、という理由で、任意後見人ではなく、成年後見人が選任されることになりました。

何だったの?任意後見制度

 

成年後見が優先される根拠

その法的な根拠としては、任意後見契約が登記されている場合における後見開始の審判の要件「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」に該当するというものでした(任意後見契約に関する法律10条1項)。

 

任意後見人が親族などで問題がありそうという場合に、第三者が成年後見人として選任されることがあります。そのときには、この規定が使われます。今回は、親族でなく、弁護士という専門職が任意後見人予定者であっても、全く別の成年後見人が選ばれたという経緯です。


 

成年後見申立の流れ

本人、妻の養子が、後見開始の審判申立てをしました。

任意後見受任者である弁護士が、任意後見監督人選任の審判申立てをしました。

2つの事件が家庭裁判所で併合審理されました。

本人との間では、複数の養子縁組がされていました。

任意後見受任者でった弁護士は、本人の親族の一部と親しかったようで、他の親族との間では対立があったようです。

 

診断書後に出金あり

裁判所は、後見相当という診断書が作成された後に、寄託契約が締結され、親族による口座からの出金がされていた点について、解明を要するとしました。

また、任意後見の弁護士は、対立親族の一人と約20年来の関係であることから、公平らしさに疑問が残るとも指摘。

法定後見を開始することが「本人の利益のため特に必要がある」として、成年後見が相当としたものです。

任意後見について、第三者の専門職ではあるものの、長い間の知り合いということで、公平に処理されるか怪しんだので、全く関係ない成年後見人を選ぶべきとしたものです。

任意後見人を選ぶ際に、弁護士であれば、専門職なのでちゃんと選ばれそう、知り合いの弁護士に頼んでおくか、という流れはよくある考えなので、注意が必要です。

 

裁判所の結論としては、法定後見を開始し、任意後見監督人選任の申立てを却下という内容です。

 

法定後見と任意後見の優先関係は?

成年後見制度などを法定後見と呼びます。

法定後見と任意後見では、どちらが優先するのかについては、法律にかかれています。

任意後見契約に関する法律10条1項です。

任意後見制度は、もともと法定後見制度では、誰が後見人になるか分からない、それよりは本人の意思を尊重すべきではないかというところからスタートしています。

そのため、法律では、任意後見制度を優先すべきとされています。ただし、例外として、法定後見を優先するためには「本人の利益のため特に必要がある」ことが要件とされています。

抽象的な規定なので、これが裁判(審判)では争われることになります。

厳しく判断する裁判例もあれば、緩やかに例外を認める考え方もあり、どう判断されるか読みにくい争いになってきます。

相続人予定の親族の間で紛争が起きていることあり、濫用的な任意後見契約があると指摘されています。厳しく任意後見が優先としてしまうと悪用を許すことになってしまうような事件もあり、例外的な判断がされることも増えています。

ジン法律事務所弁護士法人の弁護士が担当した事件でも、このような経緯で、任意後見人ではなく、成年後見人として裁判所から選ばれて活動した事案もあります。

 


任意後見予定の弁護士にも問題?

この弁護士が関連事件でも登場していたことも考慮されている可能性があります。

この弁護士は、本人の妻の成年後見人に選任されていました。

しかし、親族から、解任申立てをされました。

その後、裁判所からの勧告を受けて辞任しています。

その理由としては、成年後見人の当時、本人の意思に基づかずに離縁訴訟を遂行したとされています。

通常、成年後見人としての活動をまともにしていれば、親族から解任の申立がされても、裁判所が辞任を勧めることはありません。成年後見人としての活動に、何らかの問題があったものと推認されます。

そのような事情も考慮された判断である可能性もあります。

 

診断後まもなく口座から出金した金額

本人は、令和元年5月10日付け診断書で「自己の財産を管理・処分することができない(後見相当)」と診断されているにもかかわらず、同月13日に弟や養子との間で、1000万円や500万円をに寄託する旨の寄託契約が締結され、銀行普通預金口座から1500万円が引き出されているなどの事情がありました。

さらに、本件診断書作成以後にも、銀行普通預金口座から、合計360万円が引き出されている点が確認されています。

任意後見予定の弁護士は、これらの金員の返還を求めるべきところ、出金者と旧来の知人であり、上記各金員の返還請求等に関し、馴れ合いが生じるおそれがあると主張されています。

 


裁判所も、口座からの出金に関し、引き下ろしないし振替の疑問点は解明されないと指摘。

弁護士が任意後見人となることにより権限が濫用される具体的なおそれまでは認められないものの、公平らしさという点では問題が残ると指摘。

 

同意見や取消権を優先という理論

さらに、本件寄託契約が締結されたことからすると、今後本人が、財産上の契約をする可能性もあるところ、同意権、取消権のない任意後見制度では、事件本人の保護の万全を期することができるかについて問題があると指摘。

任意後見制度における本人の自己決定の尊重という趣旨を考慮しても、後見を開始することが「本人の利益のため特に必要がある」というべきであり、成年後見人としては中立的な第三者である弁護士を選任することが相当であると結論付けました。

その結果、成年後見人選任の申立ては理由があるからこれを認容。任意後見監督人選任の申立ては理由がないからこれを却下という結論となりました。

 

任意後見契約が絶対ではないということはしっかり覚えておきましょう。

 

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