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FAQ(よくある質問)

 

Q.先取特権とは?

民法上、先取特権という制度があります。

これが認められる債権については、しっかりした文書等があれば、裁判所の判決を経ずに強制執行という差押を利用できる可能性があり、債権回収ができやすくなっています。

今回は、先取特権の全般的な解説をしておきます。

この記事は、

  • 債権回収を考えている人
  • 不動産、工事などの権利を持っている人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.9.12

 

先取特権とは

先取特権とは、法律で定められた特定の債権を持つ者が、債務者の財産から他の債権者に優先して弁済を受けることができる権利です。

この権利は、担保物権として法律上当然に成立し、特定の財産に対して優先的に弁済を受けることが可能です。

先取特権は、他の担保権と異なり、法律上自動的に成立するため、当事者間の合意は不要です。


通常、債務者が破産した場合、その財産は「債権者平等の原則」に基づき、全債権者に平等に分配されます。しかし、すべての債権者が同額の債権を持っているわけではありません。特定の債権を持つ債権者にとって、この平等分配はかえって不利な状況を招くことがあります。こうした事態を避け、特定の債権者が他より優先して債権を回収できるようにするために、先取特権が存在します。

先取特権の種類

先取特権は、一般先取特権と特別先取特権に分類されます。

一般先取特権: 債務者の総財産を対象とし、雇用関係による賃金債権や葬式費用、共益費用などが含まれます。

これらは、債務者の財産全体から優先的に弁済を受けることができます。

特別先取特権: 特定の財産を対象とし、動産や不動産に関する特定の債権に対して優先弁済が認められます。例えば、不動産の賃貸借における賃料債権や、不動産の保存や工事に関する費用がこれに該当します。

先取特権

一般先取特権とは

一般先取特権は、特定の債権者が債務者の全財産から他の債権者に優先して弁済を受けることができる権利です。この特権は、法律で定められており、特定の状況下で自動的に成立します。

特定の債権に対して認められます。一般の先取特権が認められるのは、特に保護の必要が高いとされる特定の債権に限定されています。

共益の費用: 債務者の財産を管理するために必要な費用。
雇用関係に基づき生じた債権: 労働者が未払いの賃金を請求する権利。
葬式の費用: 葬儀に関連する費用。
日用品の供給代金: 電気やガスなど日常生活に不可欠な物品の供給に関する費用。

一般先取特権の優先順位

特別先取特権よりも一般先取特権の方が優先されます。

また、一般先取特権内でも優先順位があります。

1. 共益の費用
2. 雇用関係に基づき生じた債権
3. 葬式の費用
4. 日用品の供給代金

の順番です。


動産先取特権

動産先取特権とは、債務者が所有する特定の動産(商品や設備など)を対象として優先的に弁済を受ける権利です。動産先取特権が認められるのは、以下のような動産に関わる債権です。

不動産賃貸借による賃料。
旅館の宿泊に関する費用。
旅客や荷物の運送費用。
商品の保存や売買に関する費用
農業や工業に従事した際の労務費用。

動産先取特権は、債権者が商品や設備などの動産を現金化し、優先的に弁済を受けることが可能なため、特に商品の販売や取引を行う企業にとって重要な手段です。

不動産先取特権

不動産先取特権は、不動産に関連する債権で優先的に弁済を受ける権利です。

例えば、建物の修繕費用や不動産売買代金などに適用されます。

不動産先取特権は、債権者が対象土地や建物を競売にかけ、その売却代金から優先的に弁済を受けることが可能です。

その不動産を修繕して価値を上げたり、その不動産自体を売ったりしている権利なので、その不動産に関しては優先してあげようという制度ですね。

 

不動産先取特権で、特定の不動産に対する複数の先取特権が競合した場合には、優先度が決められています。

1.不動産の保存に関する費用。
2.不動産の工事に関する費用。
3.不動産の売買に関する費用。

この順番で回収されることになります。

 


先取特権の実行方法

先取特権を行使するには、通常の債権回収と異なり、裁判所の判決や和解調書などの「債務名義」がなくても、特権の存在を証明できれば直接差し押さえが可能です。

ただし、特に雇用関係に基づく先取特権の行使には、裁判所が慎重な態度を取ることがあり、有効な証拠が必要とされる場合があります。一般先取特権では、文書により先取特権を有することを証明する必要があります。

判決等の公的機関の判断を経ていないので、審査が若干は厳しくなるというわけですね。

 

先取特権による申立書記載例

先取特権も担保権ですので、回収するためには強制執行の申立書を作成することになります。

 

給料債権で債権差押をする場合には、債権差押命令申立書を作成し、給料債権に基づく一般先取特権による申立であることを記載する必要があります。担保権目録もつけることになります。申立の趣旨には、「別紙担保権目録記載の一般先取特権(給料債権)に基づき、債務者が第三債務者に対して有する別紙差押債権目録記載の債権の差押命令を求める」等の記載をすることになります。

給料債権の場合、添付書類として、従業員名簿、給与台帳、給与債権未払明細などを提出することが考えられます。

 

担保権・被担保権債権・請求債権目録としては、担保権の目録として、債権者と債務者間の雇用契約に基づく、毎月◯日締切、同月◯日払いの約定による債権者が債務舎に対して有する給料債権に基づく一般先取特権

のように記載します。

被担保債権及び請求債権目録としては、

元金の記載として、債権者の債務者に対する給料債権にして、令和◯年◯月分から同年◯月分までの未払分の合計額(各月分の内訳は次のとおり)

などと記載する方法が考えられます。

 

他の先取特権でも、差押の申立書には、何の権利に基づくかの記載が必要です。その結果、通常は、差押命令では、担保権目録記載の先取特権(物上代位)に基づき・・・差し押さえる、という記載がされます。

 

養育費の先取特権化

2024年改正により、養育費に一般先取特権が認められるようになります(施行時期は2年程度先)。

一般先取特権は、
1. 共益の費用
2. 雇用関係に基づき生じた債権
3. 葬式の費用
4. 日用品の供給代金

の順番でしたが、養育費は雇用の次に入ります。

1. 共益の費用
2. 雇用関係に基づき生じた債権
NEW 養育費
3. 葬式の費用
4. 日用品の供給代金

の順番になります。

 

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