特別縁故者・相続人不存在
特別縁故者・相続人不存在
相続財産管理人の申立
相続人が誰もいない場合で、亡くなった人と密接な関係だった人は、特別縁故者として、財産の一部を受領できる可能性があります。
この場合、まず相続財産管理人の申立をします。
特別縁故者として、財産をわけて欲しいと考えている人は、「利害関係人」という立場で、相続財産管理人の申立ができます。
相続財産管理人の選任事件は統計上、増えています。
(国土交通省・建設産業局「遊休不動産の現状と課題」36頁)
特別縁故者は、亡くなった人と、生計を同じにしていたとか、療養看護をしていた人などがあてはまります。
過去の裁判例で、特別縁故者として認められた例として
- 内縁の配偶者
- 事実上の養子
- 叔父や叔母
- 亡くなった長男の妻
などがあります。
療養看護について、見舞いに行く程度の通常の交際や、近所の人なら誰でもできる程度のことをしていただけでは、認められないとした裁判例があります。
亡くなった人の財産から負債を返済した残りは、国に帰属します。これではもったいないという場合には、特別縁故者の主張ができないか検討してみてはいかがでしょうか。
特別縁故者への分与額
特別縁故者の主張が認められたとして、いくら分与されるかどうかも家庭裁判所が決めます。
亡くなった方との関係、縁故の程度、財産の金額等の諸事情によって決められています。
その際には、相続財産管理人の意見を求めます。
相続財産管理人は、長期間、相続財産の管理をしていることから、現状を把握しており、特別縁故者との関係を知ることができる立場だからです。
通常は、書面での意見を求められます。
そもそも特別縁故者に該当するかどうか、該当するとして分与は相当か、相当だとしてその内容や程度、その理由などを意見書に書きます。
したがって、特別縁故者として、これらの意見書に必要な情報を相続財産管理人に伝える必要があります。
ただ、相続財産管理人の意見がそのまま反映されるものでもありません。
財産全ての分与が認められることもあれば、具体的な金額を算出し、一部のみ分与が認められるケースもあります。
たとえば、東京家裁平成24年4月20日審判では、2名の特別縁故者が認められていますが、相続財産1億4000万円のうち、1名が500万円、もう1名が2500万円という認定がされています。不服申立として抗告がされていますが、棄却され、この内容が確定しています。
500万円の縁故者は、亡くなった方の義理の姪(姉の長男の妻)、2500万円の縁故者は、義理の従妹(亡くなった方の妻Sの母の妹の娘)です。
前者の方は、一時期、息子夫婦のように可愛がられていた、後者の方は、長期にわたり交流があり、自宅の鍵を預り、家事をしたり、亡くなった方の妻の葬儀をしたりしていたことなどから、通常の親戚付き合いを超えた密接な関係にあったと認定しています。
相続財産管理人が、すべて分与すべきという意見を出したのに、家庭裁判所が全財産の数分の1のみ分与という決定を出すことも多いのです。
特別縁故者への財産分与確定後
家庭裁判所によって、特別縁故者への財産分与の審判が確定したら、実際に、引渡を受けます。
分与の審判は、申立人と相続財産管理人に告知されます。
この告知を受けた日から2週間以内であれば、即時抗告ができます。
審判が確定した場合、裁判所の書記官は、相続財産管理人に、審判確定の通知します。
分与の審判が確定することで、相続財産法人から特別縁故者に対象財産が譲渡されたことになるので、特別縁故者は、遅滞なく引渡を求めることになります。
対象財産が不動産の場合、特別縁故者は、相続財産管理人の同意がなくても登記は移転できます。
対象財産が預貯金の場合、通帳や印鑑の引渡がされることになりますが、多くのケースでは、現金扱いでの分与となります。
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