リース会社相手の裁判で敗訴となった裁判例を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.リース会社相手の裁判で敗訴事例は?

悪質リース商法の勧誘を受け、裁判でリース会社と争う事件は多いのですが、簡単ではありません。

リース契約という性質上、勧誘会社とリース会社は別のため、勧誘の悪質性をリース契約に持ち込みにくいという事情があります。

このような紛争で、リース会社の請求が認められる、ユーザーが敗訴する場合の判決を見ておくと良いでしょう。このようなロジックに反論できないと、同じような判決が出されてしまう確率が高いからです。

今回は、リース会社の請求を認めた判決を解説します。東京地方裁判所平成31年4月11日判決です。

色々と悪質リース商法の勧誘の問題を主張したものの、排斥された事案です。

この記事は、

  • 悪質リース商法の勧誘を受けて争いたい
  • リース会社と争っている

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.18

 

事案の概要

本件は、リース会社が、ユーザーに対し、リース契約に基づくリース料の支払を怠り、期限の利益を喪失したと主張して、リース料残金85万3200円と遅延損害金の支払を求めた事案。

一審では、リース会社の請求を認めました。

ユーザーは、特定商取引に関する法律による契約の申込みの撤回、詐欺を理由とする意思表示の取消し及び錯誤を理由とする意思表示の無効を主張したものの、すべて排斥され、リース会社の請求を認めました。

ユーザーがこれを不服として、本件控訴を提起したものの、控訴も棄却されたという内容です。

リース商法では、このような主張をして、リース契約を解約したいという希望も多いのですが、主張・立証のハードルは高いのが現実です。

 

リース契約の対象物件

ユーザは、個人として、マッサージ業を営んでいる者。

情報通信コンサルティング等を目的とする株式会社が販売店として、勧誘。

本件リース契約が締結されました。

リース物件は、IPフォンアダプタ1台、VPNルーター1台。

リース期間が7年、リース料総額が90万7200円。

 

期限の利益喪失条項として、リース料の支払を1回でも怠ったときは、通知・催告を経ることなく、期限の利益を失い、残リース料総額を直ちに支払うとの記載がありました。

ユーザは、合計5万4000円のみ支払い、それ以降のリース料の支払を停止しました。

 

リース物件の引き渡しを争った

ユーザーは、本件リース物件は、販売店から納品されておらず、引渡しを受けていないと主張しました。

悪質リース商法では、よくされる主張です。

 

ファイナンス・リースでは引渡が要件

本件リース契約は、販売店から引渡しを受けたリース物件について、借主と貸主であるリース会社との間でリース契約を締結するものとされ、契約が終了したときは、借主は、本件リース物件を原状に回復した上で、リース会社の指定した場所に送付して返還するものとされていました。

これによれば、本件リース契約が効力を有するためには、販売店からユーザーに対し、本件リース物件が引き渡されていることを要します。引渡しがあれば、ファイナンス・リース契約としての効力を有し、リース料支払請求権が発生するものとされます。

 

引き渡しについて電話確認があった

契約内容について、裁判所は、本件リース契約を承諾するに先立って、リース会社の電話確認担当者がユーザーに電話をかけ、本件リース契約の内容を確認したと認定。

その際、「納品の方は済んでおりますでしょうか?」と尋ねたところ、ユーザーが「あ。済んでます。昨日きました。」と応答し、同担当者が引き続いて、「もう、お使いになれる状態であるということでよろしいですか?」と尋ねたところ、「はいー」と答えていることを認定。

しかも、ユーザーは、本件リース物件の設置場所が申込書の記載の住所であることを確認しただけでなく、自ら進んで設置場所を変更することが契約に及ぼす影響を尋ねて、同担当者から差し支えない旨の回答を受けていると認定。

これによれば、ユーザーは、本件リース物件の内容を十分に把握した上で、昨日受領したと自発的に述べ、また、設置を完了したことを認めた上で設置場所の変更の可否を尋ねているのであって、しかも、平成28年2月から同年5月にかけて、4回にわたり、本件リース契約に基づく所定のリース料を支払っていることなどから、本件リース物件の引渡しを受けたことは、優にこれを認めることができるとしました。


リース契約では、このように引き渡しの事実が争われることもありますが、電話でのやりとりを含め、その確認の意思表示や納品書を発行していたりすると、それにより引き渡していたものと認定されることが多いです。

契約を争う場合には、どのようなやりとりがあったかを確認したうえで主張する必要があるといえるでしょう。

 

詐欺の主張も否定

ユーザーは、本件リース契約を締結するに当たり、販売会社から通信関連費用の負担を減少させる効果がないにもかかわらず、毎月の費用負担が減少するとの虚偽の事実を告知されて欺罔されたと主張。

しかし、裁判所は、ユーザーの主張や供述をみても、販売会社の従業員が、通信関連費用に関して、どのような事実を告げ、また、それが真実と異なるのかについては必ずしも明らかでないと指摘。

また、証拠の記載からは、本件リース物件のリース形式による販売を勧誘するに当たって、販売会社からの請求分を減額する提案をしていることがうかがえるところ、ユーザーの銀行預金通帳からは、ユーザの銀行預金口座から販売会社の親会社宛てに引き落とされる月々の金額が減少している事実も認められると指摘。

通信関連費用について、ユーザーが主張するような虚偽の事実の告知があったと認めるにはなお合理的な疑問が残るところとし、他にこの主張を認めるに足る的確な証拠はないとしました。

 

販売会社は、本件リース契約及び別件リース契約といった通信機器に関するリース契約を短期間に複数締結し、ユーザーがこれらの契約内容や販売会社によるサービス内容を充分把握することができず、高額の通信料を支払っているとの不信を抱いていたことが認められ、不適切な勧誘をしたとの疑いも残るものの、本件証拠からは、欺罔行為があったと認めることは困難としました。

詐欺の欺罔行為の立証ができていないとして、主張が排斥されています。

 

 

第三者の詐欺の視点でも否定

販売会社は、リース会社とは別会社です。リース契約の当事者にはなりません。

そうすると、販売会社の虚偽説明について、リース会社が責任を負うのかという点も問題になります。裁判所は、この点も否定しています。

ユーザは、本件リース契約が提携リース契約に当たるとして、販売会社とリース会社を一体として評価すべきであると主張していました。

しかしながら、販売会社がリース会社を代理してユーザからの申込みの意思表示を受領する権限があったことは、本件証拠上認められないと認定。

また、本件リース契約がいわゆる提携リース契約に当たることは、当事者間に争いがないところ、本件リース契約を含むリース会社が締結する比較的小口のリース契約においては、複写式の書式を用いてリース契約の申込みとリース契約書及び販売契約書等の作成を簡易迅速に行うものの、リース会社が独自に与信の可否について審査を行い、自らリース契約を締結するか否かを判断していることが認められ、しかも、リース会社と販売会社との間に、資本関係その他密接な関係が存在することは本件証拠上認めることができないと指摘。

以上の事実関係の下では、販売会社の勧誘行為をもってリース会社の行為と同視し得るものとみることはできないとしました。

仮に、販売会社に欺罔行為があったとしても、第三者による詐欺と解すべきことになるが、リース会社が詐欺について悪意であることについての主張立証はないと指摘しています。

 

錯誤無効も否定

リース契約申込みの際、動機について錯誤があり、これを販売会社に表示したと主張。リース会社と一体として評価すべきであるから、錯誤を理由とする意思表示の無効を主張することができると主張していました。

主張する錯誤は、毎月の通信関連費用が減少することについての誤信であるところ、ユーザが主張する通信関連費用は、本件リース物件のリース料とは別に生じるものであって、本件リース契約の申込みの意思表示における効果意思を構成するものではないから、かかる事実の錯誤は、動機の錯誤に当たるものと認定。

もっとも、毎月の通信関連費用がユーザの認識と一致せず、錯誤が存在すると認めることはできないとして排斥しました。また、動機は、これを表示しなければ意思表示の内容とすることができないと解されるところ、本件証拠によっても、リース会社に対し、上記の動機を明示に又は黙示に表示した事実を認めることはできず、一体として評価すべきであるとする主張は、独自の見解であって、採用の限りでないとして排斥されました。

 

信義則違反も否定

ユーザは、本件リース契約の勧誘が社会的担当性を逸脱する違法な行為であるとした上で、リース会社には販売会社が違法な勧誘行為を行っていないか注意・監督をすべき注意義務があったにもかかわらず、違法な勧誘行為を防止できなかったことについて過失があるからリース料の請求は信義則に反し許されない旨主張。

しかしながら、勧誘行為が不適切であった疑いは残るものの、その具体的態様は本件証拠上明らかでなく、これが直ちに違法であると認めることは困難と指摘。

また、リース会社には販売活動を監督すべき義務が認められるべきであると主張するが、かかる義務がリース料支払請求権の行使を信義則違反として否定する根拠となる理由は明らかでなく、リース契約に関して、提携関係にあることから直ちにリース会社にかかる義務が発生すると認めることもできないと指摘。

信義則違反も否定されました。

 

 

悪質リース商法の裁判での主張

このように、販売会社が行き過ぎた勧誘、虚偽事実による勧誘などをし、契約をしてしまったユーザとリース会社との間でリース契約の有効性を争う裁判は少なくありません。

ユーザの主張が認められた裁判例もありますが、契約をしていることや、リース契約の性質から、リース会社側の主張が認められる裁判例のほうが多いといえるでしょう。

ユーザができる主張としても、本件のようにリース物件の引き渡しのほか、詐欺、錯誤、信義則などにとどまることが多いです。

これらの主張は、契約の無効を争う場合などに使われますが、なかなか認められにくいのが実情です。

今回のように複数のリース契約が入り乱れていると、勧誘文句を整理しきれないこともあります。しかし、それでも、具体的な言動、勧誘文句を主張できないと、詐欺とまでは認定してくれないでしょう。

 

その他、消費者救済のための法律が利用できる場合には、クーリングオフや消費者契約法の主張も考えられます。とはいえ、判決に記載されているように、提携リースとはいえ、販売会社は別会社なので、その勧誘態様の責任をリース会社に負わせることができるのかがポイントになってきます。

また、リースは、多くの場合、事業用として導入される契約のため、ユーザの消費者性が争われることもあり、こちらの主張も簡単に通るものではありません。

本件でも、確認書の「契約の目的」欄には、「営業のため」又は「営業として」締結する契約について、特定商取引法に定めるクーリングオフ等の適用がない旨が記載されていたという事情がありました。

 

悪質リース商法で、販売会社に責任追及ができない状態の場合、リース会社と争うしかなく、厳しい構造になることも多いです。もっとも、ユーザの請求が認められた裁判例もあったり、個別事情によっては、リース会社から譲歩を受けられて和解により解決できた交渉事例もあります。

 

なお、販売店相手の損害賠償請求訴訟などでは、通常の悪質商法のような主張ができます。

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